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番外編『酸性雨は頭皮どころか体に悪いってマジで』

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番外編『酸性雨は頭皮どころか体に悪いってマジで』 ◆nkOrxPVn9c


七月七日は天気が悪いとは誰が言ったものだろうか。
曇り空は、昼頃には太陽を完全に隠してしまうほど空を覆ってしまい、全て雨雲へと変貌してしまった。
絶え間なく降り注ぐ雨から私を守るものは無く、放課後の校舎の中に閉じ込められてしまっている。
ふと教室を見渡してみると、クラスメイトはほとんどいない。
6/さん目当てでやってきた1年の岩崎さんは彼と一緒に帰ってしまい、
他のクラスメイト達も、皆それぞれの帰路についている頃だろう。

「まいったなぁ、これじゃ夕飯の材料買いに行けないわ」

でも生憎私は傘を持っていない。
いや家を出るときには持っていたのだが、シンヤ先輩とタカヤ先輩の追いかけっこに巻き込まれて破損してしまったのだ。
それもあってか、学校の傘は全て貸し出されてしまっている。
壊れた傘は事務室のおじさんにお願いしたとして、今は雨が止むのを待つばかりだ。

「それにしてもこれは当分止まないわね」

今日の授業が終わってからもう数十分程が経過している。
なのに雨は止むどころか、更に勢いを増して振り続けていた。
家でなら雨音を楽しむだけの余裕があったのだが、ここは放課後の学校。
そんな気分になれるはずもない。

「そんなに帰りたいなら帰ればいいじゃないか。 一旦ずぶ濡れになってしまえばどうってことないだろう」
「それは嫌よ」

無茶なことを言い出したアカギさんに反論する。
いくら帰りたいとはいえ、替えの無い制服を濡らしてまで無理したいとか思えない。
窓から覗いたら、相羽兄弟が走り回っているけれど、あの人達は正直もっと周りのことを考えるべきだと思う。
というかシンヤ先輩、今日その格好で夏奈に会いに行くつもりですか?
一応夏奈は風呂沸かしてくれると思うけどできれば今日は控えてください。

「あの二人を思い出してみろ。 まるで雨など最初から無かったかのように平然と歩いていたぞ」

アカギさんが言ったのは、先ほど校舎から出て行ったChain情さんとフラグビルドさんのことだ。
諦めたのかどうかは知らないが、彼らは雨の中、そのまま歩いていったのだ。
彼らは確か傘を持ってきたはずだが、彼らもあの兄弟の被害にあったのだろう。
同情せざるにはいられない。

「うーん、もう少し待つことにするわ」

かと言って流石に真似する気にもなれまい。
アカギさんは軽く相槌をうって窓を眺める。
そんなアカギさんは何処か退屈そうで、いつもの約束がなければ一人で帰っていただろう。
本来私達は、下校後に夕食の買い物を済ませるために共にスーパーに寄っていくはずだった。
そのため、普段は一緒に帰ることが非常に多い。
だからこうして私が動けないときは彼も動くことをせず、ともに雨が止むまで待ってくれているのだ。
それはたまたま家がお隣同士だからという理由で生まれた利害関係。

でも、もし私達がそうでなかったらどうなるだろう。
アカギさんとはただのクラスメイトってだけで、お互い家も離れ、唯一つの言葉も交わさない関係。
よく遊びに来るイチゴウちゃんやアカギさん達はいない、私と夏奈と千秋とピッピだけの南家。
数年前まではそれが南家であり、そこにいることが楽しかったんだけど、でも・・・・・・

「どうした?」
「い、いえなんでもないわ!」


アカギさんを眺めていると、案の定逆に問い返される。
咄嗟に否定するとまた沈黙が訪れた。
アカギさんがいなくなる? 今の私にはとても考えられない。
ただのお隣さんだったはずが、今では一緒に話をしたり買い物する仲になっている。
登校すること、授業を受けること、下校して、メモを見ながら食材を買い集めること、
家に帰ってもともに料理を食べることもある。
日常というものはどうやら増え続けるピースの集まりであるらしい。
それらから、アカギさんが欠けてしまったらなんて考えたくも無い。
いつからだろう。 彼をこんな目に見るようになったのは。
いつからだろう。 一緒にいたいと願うようになったのは。

「南」
「何かしら?」

突然立ち上がったアカギさんは鞄を持って歩き出す。
扉をスライドさせて開くと私の方を振り向いた。

「傘、捜しに行くぞ。 まだ持っている奴がいるかも知れない」


☆ ☆ ☆

「やふー」
「こんにちはー」
「泉さん! それにつかささんも」

廊下を出ると、待っていましたとばかりに3年の泉さんとつかささんが現れる。
彼女達も6/さんと仲が良く、いつもは彼目当てでやって来るのだが、今日は随分と遅い到着だ。

「いやーつかさが『1000%SPANKING!!(民明書房)』が欲しいっていうから図書室で探していたんだよ」
「お姉ちゃんには内緒だよー」

するとつかささんは、何やら怪しげな表紙の本を誇らしげに見せる。
猫とヨーグルトまみれの少女が表紙とは如何なものか。

「ところでお二人は今までナニヲシテイタノカナ?」
「傘が無いからこれから探しに行こうとしていたところだ」

泉さんは、何故か物凄くニヤニヤした表情で問いかけてきた。
私は一瞬うろたえるが、アカギさんは別に気にすることも無く答える。

「傘ならこれをしんぜよう」

すると泉さんは、ピンク色の折りたたみ傘を取り出す。
そして『フラグ作っちゃったねYOU!』とか言いながらアカギさんに手渡した。
満足したのか、泉さんは手を振りながらつかささんと一緒に階段の方角に消えていく。
二人とも傘を持っていたので、彼女達がずぶ濡れになる心配の必要はなさそうだ。


☆ ☆ ☆



「南、もっと詰めないと濡れるぞ」

アカギさんが私の方に傘を寄せてくる。
私を濡らさないようにするための配慮なのだが、
そのせいで肩が触れ合ってしまい、ちょっとした満員列車状態だ。
折りたたみ傘のせまい面積では私達を覆うのは困難なので、
こうして密着しないと雨を凌ぐことはできないのだ。

「そんなこと言っても・・・・・・」

それはわかっているのだが、私も一介の女の子なわけで、
男性と付き合った経験なんてない。
家のことで精一杯で、ろくにそんなこと考えたことが無いのだ。
そんな私がいくら親しいと言えど、こんなに男の人と近い距離にいるということは考えがたいものであった。
制服ごしから、アカギさんの体の感触が伝わってきて、体が熱くなるのを感じる。
そして同時に、今にも破裂してしまいそうな程高鳴っている私の心臓の音が、彼に聴こえているのかが気になってくる。

「顔赤いぞ」
「あ!? これはその・・・・・・あの・・・・・・」

耳まで真っ赤にして返答に困っている私に対して、彼の表情はいたって変わらない。
この人はいつもそうだ。
毎日を何処か退屈そうに過ごし、身の回りで起こっていることを全て他人事のように見ている。
自分の居るべき日常はここではないとして、彼は光に照らされようとしない。
放って置いたら気づかない内に何処かに行ってしまいそうで、だから私は傍にいたかったのかも知れない。

「なんでもないわ。 早く帰ろう」
「ああ」

アカギさんの手を握り締め、私は彼と一緒に歩き出した。












       //  パカ
     / / 人    
     /  /(  )   
    /∩'´ ̄  `ヽ  
    / .|( ( 人人)))__ ハルカ姉さま、お迎えにあがりました!
   //|ノ| ■_■|ノ / 
   " ̄ ̄ ̄ ̄∪ ̄" 

「私も迎えに来たよお兄ちゃん!・・・・・・って誰もいないね。 まだ校舎の中にいるのかな?」
「せっかくイチゴウ発見の地下通路を通って来たんだ。 無駄足で終わらせるわけにはいかない」
「そうだね、早くお兄ちゃんに傘を届けなきゃ」
「ということで校舎に直行だ。 行くぞイチゴウ!」
「押!」


『私は桂馬というものです』

「「え?」」

その後、二人が警備員に足止めされ、説明後ようやく校舎内に入ったものの、
結局見つからず、村雨教員によって送還されたのは3時間後のことである。

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