中華街
(ビイジイエムは横山剣の中華街で)
石川町駅から徒歩5分ほどでしょうか。中華街があります。三連休のせいでもあるか、とにかく人が多かった。女性用のチャイナ服があったので、男性用のはないかと探してみたら、あった。
自分は買わなかった。良いと思ったけれども、あんまり荷物の量が多くなってしまうと、どうもいけなかったからだった。
女性用のチャイナスーツは、スカートが横に切れているので、足を曲げて蟹股にすると、それはふんどしのように飛び出てしまうのだ。(普通こんな風にはしない!)着ている方を見ていると歩くときに足と接触する。それがヒラヒラと動くので綺麗でエロチックだった。特に肩から腰の当たりにかけて、服が肌にピタリと密着するせいなのか、体のラインがうっすらと作られる。これが恥ずかしいと言われる女性の方が多いようだ。外ではチャイナスーツを着て歩いている方はどうも少なかったけれども、それは寒かったからだったと僕は思った。その日僕は上着を四枚、股引を一枚着込んでいた。
らなもさんが小龍包を頼んで頂いてみると、「うむむ」と唸った。小龍包は、少しだけ大きな焼売のようだけれども、包まれた皮の中に美味しいスープがだくだくに入っているもので、これがおかしな事に口に運ぶといくらでも食べれてしまうと言うものだった。僕はその時緊張のせいもあるし、ラーメン博物館でラーメンを食べてから喫茶店で茶菓子を頼んでいたので、もうお腹もいっぱいで食べれないと思っていた。しかしそんなことはなくて、あっという間に頂いてしまって、僕以外のみんなも美味しいと評判なので、それから小龍包屋に並ぶお客さんが少ないところを見つけては小龍包や、ゴマ団子から餃子まで頼んで食べていました。
中華街は建物が美しく、観光客がこぞってデジカメを構えて写真を撮っていた。じゃあ僕も一応写真を撮ってもらおうと思って、ポオズを作っては撮ってもらいました。相撲のポオズで。
夜の中華街はネオンが強く、また人も活気に溢れているので、浮世離れ癖が出始めていた。
中華街のショッピング施設で、らなもさんはお土産を買っていた。僕は妙にゼンマイ式の小さなパンダのおもちゃが気になっていた。包装されて、買わなければ遊べないようになっている。僕はどうも気になって仕方ないので、皆に言って回ることにしていたようだ。
「かろひさんこれ、見てくださいよ…パンダのおもちゃですよ、いいでしょう?」
「それバジ君、買うのかい?」
とかろひさんが言うので、僕は少し考えるフリをして、「もしかしたら、欲しいかもしれない」と言った。らなもさんにも聞いてみようと思って、何を買おうか迷っているらなもさんを捕まえてきてパンダのおもちゃの前にたたせた。
「らなもさんこれ、見てくださいよ…パンダのおもちゃですよ、いいでしょう?」
「あ、これ遊園地の奴?」
確かにパンダのおもちゃは遊園地の施設にある動物の乗り物にソックリであった。
その後ニコフさんがこちらに来るということだったのだが、上手く時間の都合がつかず、ニコフさんとはこれから町田で合流することになった。とにかく時間の都合が許すまで、かろひさんが紹介してくれたトリックアートミュージアムという場所に移ることになった。場所は横浜大世界。
中に入って見ると、お土産屋さんとか、ゲージュツコーナーや体感施設。それにドクター・キッスフィッシュという施設があった。当初トリックアートミュージアムに行く予定のはずだったが、入口前の入場料の値段を見て、行きたい人いるかと相談をしていたが、僕らはやめてしまった。入場料については、映画館のナイトショーで一つ見る程度であった。似たような施設で、高尾山の前にも存在しているので、近くの方興味のある方は是非行くといいです。
それで結局はいかなかったのだけれども、ドクター・キッスフィッシュの体験コーナーには女子高生ぐらいの女の子達が足をドクター・キッスフィッシュの湯の中に突っ込んでいて、日頃のたまった疲れを解消しているのか、「カクシツー」「キャワハハ」と黄色い声をあげていた。どうやら魚につつかれてくすぐったいのであろう。その時彼女達がスカートを濡らさぬようにと捲っていて、どうも中のスパッツが丸見えになっていた。それらの視覚情報に僕の官能性がどっこいしょおどっこいしょおと波をうつように揺さぶられてしまったが、彼女達を見ると目頭が熱くなって辛いので、僕は後ろを振り向き、テーブルの上のスタンプラリー用の判子を手に取り、それを手で弄んだ。だから僕は、ほとんど見なかった。
そうやって悶々とする中横浜大世界を抜け出して、それからAさんが面白そうなお店があると、眉のお菓子を作る店に足を運んだ。僕もそれについていった。
「いらっしゃぁぁぁぁぁいッ、お兄さん、見ていかない?見る?」
元気そうなお兄さんがレジの前に構えて、横には何か小麦粉のようなものが引いてあった。それをどうするのだろうかと聞くと、お兄さんは「見るのね!」と言った。
元気なお兄さんだなあと関心をしていると、「ウォケイ、始まりますからね、よく見ていてください」と声を上げて、すぐ目の前で眉のお菓子を作り始めた。
「これは昔古い宮廷のお菓子で、奉納されていた貴重なお菓子でごじゃいます。この熟成されて固まった蜂蜜を、ほら見てください、まるで石のようにカッチコチになります、これをこの槍のような道具で、…ほらあ、穴が空きました!」
それからお菓子を作るお兄さんはその穴が空いた濃い黄色の蜂蜜に手を突っ込んで、ぎゅうぎゅうと力を込めて広げていった。
「これを畳んでいきますと、どんどん繊維に変わっていきます、ほら、いきますよ、1、2、4、8、ほら見てください!」
蜂蜜はあっという間に濃い黄色から、本当に麺のように姿を変えていった。
「そうです、これは掛け算です、つまり倍になっていくわけです、今これは8本の糸になっているので、これを畳むとつまり」
それを聞いた僕はあっという間に閃いて、「32本ですね!」と店員さんに伝えると、彼は一瞬表情をにごませて「それは違いまーす」と苦笑いをしつつ、歌を続けた。時々奥から「1024本にナリマーシュ」と掛け声が飛んでくる。
そしてその熟成されて、ほとんど石のように固まっていた蜂蜜があっという間に16000本の糸となり、それの上のレジの前にある具をスプーンで救い、くるりと糸を巻くと、まゆ玉のお菓子が出来上がった。
「お兄さん、おまけするよ、こちらを二つ買うならば、スペシャルプライス2000円でイイヨー」
と言うので、「是非買います、良いもの見させていただきました」と感謝をしてレジの前にある箱の中に五千円を入れて、三枚千円札を引いた。この会計部分はセルフサービスとなっていた。それから続くように店員さんたちは「ありがとうごじゃいまあああああぁぁーーす!」と元気に挨拶をした。これは非常に愉快であって、どうにも世の中には潤いが必要であると僕は思った。
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