「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

星空の誓い

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 (星空の誓い)

 満天の星空の下・・・


 ラクスは、バルコニーのテラスに腰掛けるように寄りかかり、星空を満喫していた。
 「空は、こんなに美しいのに・・・。」
 (・・・人は、そこで欲望にまみれ、苦しもうとする・・・。)
 それは、ラクスにとって悲しい事である。
 (どうして人は、争う事を止めようとしないの・・・。)
 ラクスには「争う」という行為がどうしても肯定出来ない。かつて二度、ラクスは
自ら軍を率い戦った。が、それは「そうしなければ戦争は止められない」と判断した
故の事だった。
 (パトリック=ザラ・・・デュランダル・・・。私は、貴方達の様に自らのために
戦ったのではありません・・・。私は、権力のために戦ったんじゃない。自らの野心
のために人を傷つけ、苦しめる・・・そのような事は、私は肯定出来ない。)
 ラクスにとって、権力とは何ら魅力的なものでは無い。世捨て人となり、キラと共
に孤児達と暮らしていた時、間違いなくラクスは幸せだった。正直、今のように毎夜
のパーティで人々の欲望に晒され続ける方が余程苦痛なのだ。
 (・・・考えてみると、私は『欲望』というものに疎いのですね・・・。)
 政治の上で、やらなければならない事は常に考えてしまう。何かがあった時、必ず
どうにか出来るよう考えてしまう。・・・でも、それはラクスが望んでやっている事
では無い。そうしなければ、『自分の守るべきもの』は守れなかったから。
 (でも、今は・・・?)
 今、ラクスは「ピースガーディアン」という私兵軍団を創り、治安維持に当たらせ
ている。当然、その度に血が流れていく。それの意味を、ラクスはよく知っていた。
 (圧制者・・・ですね、私は・・・。)
 かつて、パトリックがそうであったように・・・デュランダルが恐れた予想通り、
今ラクスは世界の指導者という立場に居る。『ラクス・クライン』というカリスマ
は世界の頂点に立つ者として、もっとも理想的なものであり、レクイエム騒動後の
混乱した世界を収縮する立場の者としてもっとも理想的だったからだ。
 しかし・・・。
 「結局、私は意気地無しで・・・今も意気地無しなままで・・・。」
 政治とは、100人の人々を全員幸せに出来れば良い。だが・・・80人と20人
のどちらかしか幸せに出来ないのなら、80人を選ばなければならない。後の20人
は、見捨てるのが政治家の役目なのだ。
 今、ラクスは20人を見捨てる仕事をしなければならない。80人を幸せにするた
めに。・・・しかし、それは辛い事なのだ。

 「ラクス。・・・ここに居たんだ。」
 「・・・キラ。」
 キラ・ヤマト。過去二回の大戦に名だたるトップエース。最強のコーディネイター。
しかし、ラクスにとっては最良の理解者であり、伴侶でしかない。
 「今日は冷えるね・・・。寒くない?」
 キラは、何時も優しい。今も自分の風除けになってくれている。そんな彼に、『暴徒
鎮圧』等という過酷な、残酷な仕事をやらせている・・・それは、ラクスにとっても
辛い事である。
 「・・・ありがとう、キラ・・・。」
 万感の思い。・・・そして、尽きる事のない悔恨。
 何となく、二人で空を見上げる。・・・ふと、ラクスが口を開いた。
 「覚えてます?キラ。・・・私が本当は、農作業をしたかったって。」
 「覚えてるよ。ラクスが『ニンジンは木の上に生る』っていう謎知識を披露した時の
ことでしょ?」
 「・・・そんな事は覚えなくて良いんです。」
 それは、誰も見た事の無い『本当の』ラクスの笑顔。年相応の、心からの笑顔。
 それを作り出せるから   ラクスとキラは『伴侶』なのだろう。
 「いつか、二人で創ろうよ。小さな、白い家が良い。山羊を飼って、畑を作って・・・
のんびりと、静かに・・・。」
 「そうですね・・・。」
 どんなにか、そうなる事を望んだのだろう。権力なんか要らない。ただ、家族が居て、
静かに暮らせたら   。しかし、それはもう永久に叶う事はないのだろう。ラクスも、
キラもそう思う。
 それでも、そう言ってくれるキラ。それは、ラクスに対する底無しの愛情である。
 (   何時までも、何処までも・・・君と共に。君が地獄に落ちるのなら、それも
良いよ。一緒に行こう・・・。)
 キラは、ラクスの手を取った。
 「・・・そろそろ戻ろう。主役不在じゃ、パーティが白けてしまうよ。」
 「そうですわね・・・。」
 ラクスはキラに寄り添うように、キラはラクスから離れないように   


 ふと、ラクスはもう一度星空を見上げた。
 (・・・何時か、私達は否定されるでしょう。でも、それで良いの・・・。本当に
必要なのは、『誰かが幸せにしてくれる』『誰かが世界を救ってくれる』・・・そう
思う事じゃない。『誰もが世界を救おうとしなければ生らない。』そのために私は、
・・・ここに居るのだから・・・。)

    何時か、否定される時。私は恐らく死ぬのでしょう。
 でも、思うのです   その時、本当の意味での平和が始まってくれると。
 その時まで、私は   私のままで   

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