「さあ――お嬢ちゃん、どうぞ。
最高級の豆だ、君ら庶民には、めったに飲めないぜ」
最高級の豆だ、君ら庶民には、めったに飲めないぜ」
それは、とても尋問という雰囲気ではありませんでした。
むしろ、敵だというのに何だか楽しい、知り合いのお茶会に呼ばれたような…tね
むしろ、敵だというのに何だか楽しい、知り合いのお茶会に呼ばれたような…tね
「僕には少し、分からんのだよなァ。なんで彼らがあんなに必死なのか。
君は知っているかね? 例の、シンとか言う青年のことを」
君は知っているかね? 例の、シンとか言う青年のことを」
それは――たぶん、大切な人を失ったから。あなたたちに奪われたから。
断片的に聞いたシンさんの言葉と、その態度から、私はそう確信していました。
バルドフェルドさんに、私がそう言うと――
断片的に聞いたシンさんの言葉と、その態度から、私はそう確信していました。
バルドフェルドさんに、私がそう言うと――
「――やっぱり、分からんねェ。
復讐なんぞしたところで、死人が帰ってくるわけでもあるまい?」
復讐なんぞしたところで、死人が帰ってくるわけでもあるまい?」
それは、どこか投げやりで、でも少し寂しげで。
彼の目線の先には――1枚の写真。
黒髪の色っぽい女の人が、微笑んでいました。
彼の目線の先には――1枚の写真。
黒髪の色っぽい女の人が、微笑んでいました。
「ひょっとして、その女の人って――」
「ああ、7年前の、最初の大戦でな。殺されたよ。
他ならぬ、キラ『様』にな――。
この手も、この足も、この目も。その時の傷だ」
「ああ、7年前の、最初の大戦でな。殺されたよ。
他ならぬ、キラ『様』にな――。
この手も、この足も、この目も。その時の傷だ」
本当にどうでもいいことのように軽く言ってしまうバルドフェルドさん。
私は――本当に、彼の考えが分からなくて――
私は――本当に、彼の考えが分からなくて――
「そんな、それで何であの人の下に居られるんですか!? なんで平気なんですか!?」
「言ったろう、復讐なんぞしたところで、帰ってくるものでもないと。
それに――」
「言ったろう、復讐なんぞしたところで、帰ってくるものでもないと。
それに――」
――私は、その時のバルドフェルドさんの冥い、奈落のような目を忘れられません。
全く同じような、軽い口調で、彼は彼の真実を口にしました。
全く同じような、軽い口調で、彼は彼の真実を口にしました。
「それに――復讐なら、既に済んでいる。
人間1人殺して気が晴れるような、そんな軽い恨みでもないんでね。
見たまえ、今の世界を――既に滅びているも、同然じゃないか。
この世界への俺の最大級の復讐は、既に終わってるんだよ」
人間1人殺して気が晴れるような、そんな軽い恨みでもないんでね。
見たまえ、今の世界を――既に滅びているも、同然じゃないか。
この世界への俺の最大級の復讐は、既に終わってるんだよ」
私は、このお茶の席に招かれた理由を、ようやく理解しました。
彼は――バルドフェルドさんは、誰かに討たれることを望んでいる、と。
7年前に既に心は死んでいて、誰かに止めてもらいたがっているんだ、と――
彼は――バルドフェルドさんは、誰かに討たれることを望んでいる、と。
7年前に既に心は死んでいて、誰かに止めてもらいたがっているんだ、と――