オスカー・サザーランド
その人となりを一番簡潔に言えば「骨身を惜しまず働く勤勉な男」といえるだろう。
ただし。
その「仕事」の内容は、マトモな神経の持ち主なら唾棄すべきものばかりであるが。
その人となりを一番簡潔に言えば「骨身を惜しまず働く勤勉な男」といえるだろう。
ただし。
その「仕事」の内容は、マトモな神経の持ち主なら唾棄すべきものばかりであるが。
「正気かね?」
オスカーが持ってきた命令書を見るなり、担当官が呟いた。
「あ、お疑いですか?」
そう言ってオスカーはにこやかな(ただし、見た者に不快感を与えるであろう)笑顔で応じた。
「僕のような若造の言う事が信用できないと仰るなら」
くるり、と背中を向け、充分にタメを作ってから向き直り、下から媚びるような、ソレで居て嘲笑を含むような表情で後を続ける。
「直接、長官に確認を取って頂いて結構ですよ?あの方も、仕事をつまらない事で中断されたくらいでお怒りになる程狭量な方では無いと思いますし」
「誰も君の事を疑ってはおらん!」
オスカーの一々芝居掛かった態度に不快感を憶えはするが、この男は誰に対しても(見たことはないが、恐らくはライヒ長官に対しても)こんな態度なのを知っているから腹は立たなかった。
「この命令の内容の事を言っている。コレではまるで・・・」
「『任意のレジスタンスを優遇してる』?イイじゃないですか。捕まえても戴してメリット無い連中ですし」
オスカーが持ってきた命令書を見るなり、担当官が呟いた。
「あ、お疑いですか?」
そう言ってオスカーはにこやかな(ただし、見た者に不快感を与えるであろう)笑顔で応じた。
「僕のような若造の言う事が信用できないと仰るなら」
くるり、と背中を向け、充分にタメを作ってから向き直り、下から媚びるような、ソレで居て嘲笑を含むような表情で後を続ける。
「直接、長官に確認を取って頂いて結構ですよ?あの方も、仕事をつまらない事で中断されたくらいでお怒りになる程狭量な方では無いと思いますし」
「誰も君の事を疑ってはおらん!」
オスカーの一々芝居掛かった態度に不快感を憶えはするが、この男は誰に対しても(見たことはないが、恐らくはライヒ長官に対しても)こんな態度なのを知っているから腹は立たなかった。
「この命令の内容の事を言っている。コレではまるで・・・」
「『任意のレジスタンスを優遇してる』?イイじゃないですか。捕まえても戴してメリット無い連中ですし」
命令書の内容は、先日逮捕した幾つかの地下組織を「証拠不充分」を理由に釈放せよ。と言うものだった。
物証は腐るほどあり、更に言えば、もっと物証の少なかった組織が逮捕、送検されているのにもかかわらず、だ。
物証は腐るほどあり、更に言えば、もっと物証の少なかった組織が逮捕、送検されているのにもかかわらず、だ。
「君は・・・何を考えている?いや、何を『狙って』いる?」
「いやだなぁ、僕はしがない使い走りですよ?長官の意図なんて計りかねますって」
「いやだなぁ、僕はしがない使い走りですよ?長官の意図なんて計りかねますって」
嘘だ。即座にそう思う。この男がそんな用事だけで来る訳が無い。
「まあ、とにかく命令の実行、よろしくお願いしますね」
翌日、私服のオスカー・サザーランドは治安警察庁舎近くのカフェで新聞片手に紅茶を愉しんでいた。
「ああ、嫌な記事ばかりだよ・・・」
と、口をついてそんな言葉が漏れ出す。
「どうしました?」
「いえね、この記事ですよ」
隣の席の男性が気になったのか声を掛けて来たのに対し、手にした新聞を見せる。
その新聞の1面ブチ抜きには、前日釈放したレジスタンスが他の組織に「制裁」され、無関係な市民を巻き込んだ上で多数の死傷者を出した事が掲載されていた。
「レジスタンスだからテロリストだか知りませんけどね。身内の喧嘩で私達みたいに市民に迷惑掛けてちゃあ・・・」
「まったくですな。そもそも・・・」
その男性と他愛ない井戸端政治談義を交わしている心中、オスカーはほくそえんでいた。
(まったく・・・一緒に捕まえた馬鹿共の一部を逃がしてあげただけで、疑心暗鬼で自滅してくれるんだから・・・確かに、内部に潜り込んだ工作員が煽ったのも事実だがね)
「ああ、嫌な記事ばかりだよ・・・」
と、口をついてそんな言葉が漏れ出す。
「どうしました?」
「いえね、この記事ですよ」
隣の席の男性が気になったのか声を掛けて来たのに対し、手にした新聞を見せる。
その新聞の1面ブチ抜きには、前日釈放したレジスタンスが他の組織に「制裁」され、無関係な市民を巻き込んだ上で多数の死傷者を出した事が掲載されていた。
「レジスタンスだからテロリストだか知りませんけどね。身内の喧嘩で私達みたいに市民に迷惑掛けてちゃあ・・・」
「まったくですな。そもそも・・・」
その男性と他愛ない井戸端政治談義を交わしている心中、オスカーはほくそえんでいた。
(まったく・・・一緒に捕まえた馬鹿共の一部を逃がしてあげただけで、疑心暗鬼で自滅してくれるんだから・・・確かに、内部に潜り込んだ工作員が煽ったのも事実だがね)