一本の木のそばでたたずむ黒髪の青年。目立つ赤い瞳を隠すサングラスの下、眉がゆがむ。
青年は知っている。 その木の根元に、桃色の携帯電話が埋まっていることを。
前回彼がここを訪れたとき、木は赤い葉をつけていた。
青年の記憶の中で、今も変わらずはじけるように笑う妹の、その肩に降っていた落葉の色。
今は青い葉をつけるその木の根元に、青年はしゃがみこむ。
黒く柔らかな土をその傷だらけの手で堀りだす。
肘のところまで埋まるまで掘りぬいた穴のそこに見つかった、金属の箱。
青年はその箱を開け、変わらず存在している携帯電話のよこに、小さな金属片をそっと添えた。
「LHM-BB01 MINERVA」 鏃を思わせるシルエットのフネと、その名を記したペナント。
蓋を閉め、青年は箱をそっと穴のそこに戻す。
青年は知っている。 その木の根元に、桃色の携帯電話が埋まっていることを。
前回彼がここを訪れたとき、木は赤い葉をつけていた。
青年の記憶の中で、今も変わらずはじけるように笑う妹の、その肩に降っていた落葉の色。
今は青い葉をつけるその木の根元に、青年はしゃがみこむ。
黒く柔らかな土をその傷だらけの手で堀りだす。
肘のところまで埋まるまで掘りぬいた穴のそこに見つかった、金属の箱。
青年はその箱を開け、変わらず存在している携帯電話のよこに、小さな金属片をそっと添えた。
「LHM-BB01 MINERVA」 鏃を思わせるシルエットのフネと、その名を記したペナント。
蓋を閉め、青年は箱をそっと穴のそこに戻す。
埋め戻された跡とわからぬよう、青年は腐りかけの落ち葉を撒きなおした。
サングラスをはずし、幹に手を触れ、小さな声で呟きだす。
サングラスをはずし、幹に手を触れ、小さな声で呟きだす。
「父さん、母さん、おひさしぶりです。
ごめんな、マユ……俺はまだおまえのところには行ってやれない。
でもな、今日はかわりに俺の仲間を連れてきたんだ。
みんな、これが俺の妹のマユさ。仲良くしてやってくれ。
マユ、こいつがレイ。 俺を最後まで信じてくれた、一番の親友だ。
こいつがルナ。口うるさい奴だったけど、……俺の大事なひと、だった。
こいつはヨウランとヴィーノ、カルい奴らだけど親切で気のいい奴らだ。
このひとが俺の上司のタリア艦長、怒らすと怖いけどこれでけっこうやさしいとこもあるんだぜ?
で、隣がアーサー副長、そんでブリッジクルーのアビー、バート、マリク、チェン、
みんなほんとにいい奴らだったんだ、だから、俺が行くまで大人しくしてんだぞ、マユ……」
ごめんな、マユ……俺はまだおまえのところには行ってやれない。
でもな、今日はかわりに俺の仲間を連れてきたんだ。
みんな、これが俺の妹のマユさ。仲良くしてやってくれ。
マユ、こいつがレイ。 俺を最後まで信じてくれた、一番の親友だ。
こいつがルナ。口うるさい奴だったけど、……俺の大事なひと、だった。
こいつはヨウランとヴィーノ、カルい奴らだけど親切で気のいい奴らだ。
このひとが俺の上司のタリア艦長、怒らすと怖いけどこれでけっこうやさしいとこもあるんだぜ?
で、隣がアーサー副長、そんでブリッジクルーのアビー、バート、マリク、チェン、
みんなほんとにいい奴らだったんだ、だから、俺が行くまで大人しくしてんだぞ、マユ……」
途中から歪みだした青年の声は、もはや涙声としか呼べぬものに変わってしまっている。
そのまま言葉は途切れ、静かな森に響くのは青年の嗚咽。
そのまま言葉は途切れ、静かな森に響くのは青年の嗚咽。
しばし後。
青年は目元の赤みを隠すように、サングラスを深くかけなおす。
そして木に背を向け、歩き出した。
彼の大切な人々すべてを奪い去った者たちへの復讐の念を、ふたたび心に刻みつけながら。
青年は目元の赤みを隠すように、サングラスを深くかけなおす。
そして木に背を向け、歩き出した。
彼の大切な人々すべてを奪い去った者たちへの復讐の念を、ふたたび心に刻みつけながら。