「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

宝箱

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一本の木のそばでたたずむ黒髪の青年。目立つ赤い瞳を隠すサングラスの下、眉がゆがむ。
青年は知っている。 その木の根元に、桃色の携帯電話が埋まっていることを。
前回彼がここを訪れたとき、木は赤い葉をつけていた。
青年の記憶の中で、今も変わらずはじけるように笑う妹の、その肩に降っていた落葉の色。
今は青い葉をつけるその木の根元に、青年はしゃがみこむ。
黒く柔らかな土をその傷だらけの手で堀りだす。
肘のところまで埋まるまで掘りぬいた穴のそこに見つかった、金属の箱。
青年はその箱を開け、変わらず存在している携帯電話のよこに、小さな金属片をそっと添えた。
「LHM-BB01 MINERVA」 鏃を思わせるシルエットのフネと、その名を記したペナント。
蓋を閉め、青年は箱をそっと穴のそこに戻す。

埋め戻された跡とわからぬよう、青年は腐りかけの落ち葉を撒きなおした。
サングラスをはずし、幹に手を触れ、小さな声で呟きだす。

「父さん、母さん、おひさしぶりです。
 ごめんな、マユ……俺はまだおまえのところには行ってやれない。
 でもな、今日はかわりに俺の仲間を連れてきたんだ。
 みんな、これが俺の妹のマユさ。仲良くしてやってくれ。
 マユ、こいつがレイ。 俺を最後まで信じてくれた、一番の親友だ。
 こいつがルナ。口うるさい奴だったけど、……俺の大事なひと、だった。
 こいつはヨウランとヴィーノ、カルい奴らだけど親切で気のいい奴らだ。
 このひとが俺の上司のタリア艦長、怒らすと怖いけどこれでけっこうやさしいとこもあるんだぜ?
 で、隣がアーサー副長、そんでブリッジクルーのアビー、バート、マリク、チェン、
 みんなほんとにいい奴らだったんだ、だから、俺が行くまで大人しくしてんだぞ、マユ……」

途中から歪みだした青年の声は、もはや涙声としか呼べぬものに変わってしまっている。
そのまま言葉は途切れ、静かな森に響くのは青年の嗚咽。

しばし後。
青年は目元の赤みを隠すように、サングラスを深くかけなおす。
そして木に背を向け、歩き出した。
彼の大切な人々すべてを奪い去った者たちへの復讐の念を、ふたたび心に刻みつけながら。

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