『今回仕入れた分の林檎は先ほど発送しました。明後日にはそちらに到着するかと』
「ご苦労だったな、フェダーライン」
「ご苦労だったな、フェダーライン」
治安警察庁、その最高責任者の部屋で、その部屋の主は何処かから報告を受けていた。
「で、林檎の質はどうだ?君の見立てで構わん」
『正直な所…些か拍子抜けしました』
「ふむ?」
『苗もそこそこでしたし、畑は悪く無いとは思うのですが、いかんせん世話をする者が…』
「あまり良い腕は持っていないようだな。過剰に手を加えすぎると報告を受けている」
『畑に肥料を撒くにしても、もう少しやりようが有ると思うのですがね。確かに我々が増産を指示はしましたが…』
「そろそろ業者を替える頃合いか」
『はい。馴れ合いはコストの高騰を招くかと』
「判った。君も残務整理が終わったら一度戻り給え。次の業者を選定せねばならん」
『心得ました』
『正直な所…些か拍子抜けしました』
「ふむ?」
『苗もそこそこでしたし、畑は悪く無いとは思うのですが、いかんせん世話をする者が…』
「あまり良い腕は持っていないようだな。過剰に手を加えすぎると報告を受けている」
『畑に肥料を撒くにしても、もう少しやりようが有ると思うのですがね。確かに我々が増産を指示はしましたが…』
「そろそろ業者を替える頃合いか」
『はい。馴れ合いはコストの高騰を招くかと』
「判った。君も残務整理が終わったら一度戻り給え。次の業者を選定せねばならん」
『心得ました』
自室から直属の上司に報告をしていたフェダーラインは、受話器をそっと置くと思いきり延びをした。
手元のデータチップを弄びながら、この研究所から撤収する際に残して良い物とそうで無い物を脳内で整理すると、テキパキと資料の仕分けを始める。
同時に、秘匿回線に短くメールを送信。
粉砕機に残せない資料を次々と放り込んで行くと、秘匿回線からメールの返信が帰って来た。
その内容を一瞥すると軽く頷き、粉砕機にあらかた資料を食わせると、最後に秘匿回線用のインターフェイスを放り込み、粉々に砕けたのを確認すると自室を後にした。
手元のデータチップを弄びながら、この研究所から撤収する際に残して良い物とそうで無い物を脳内で整理すると、テキパキと資料の仕分けを始める。
同時に、秘匿回線に短くメールを送信。
粉砕機に残せない資料を次々と放り込んで行くと、秘匿回線からメールの返信が帰って来た。
その内容を一瞥すると軽く頷き、粉砕機にあらかた資料を食わせると、最後に秘匿回線用のインターフェイスを放り込み、粉々に砕けたのを確認すると自室を後にした。
そのまま、フェダーラインは研究所の事務区画の一番奥の部屋に向かう。
『所長室』
そう金文字で書かれたドアの前に立つと、ドアを2度ノック。
「入り給え」
部屋の主の声に応じ、フェダーラインが入室すると、所長は驚いた表情を見せた。
「ああ、ちょうど君を呼ぼうと思っていたところだよ」
好々爺然とした所長は顔を綻ばせ、フェダーラインにソファーを薦めると、ひよいひょいとお茶の支度を始める。
フェダーラインはその行動には特に反応はしない。農学博士と言うより農夫といった雰囲気を持つ所長だが、秘書も呼ばずに来訪者に自分で茶を淹れるのはこの研究所の人間ならだけでも知っている事た。
フェダーラインもこの研究所に来た当初こそ、所長が席を立って茶の支度を始めるたびに腰を浮かせたり落ち付かない気分になったものだが、今ではこの行為は所長なりの気分転換なのだと解釈していた。
「で、お話とは?」
緑茶を啜りながら問うフェダーライン。
この緑茶も、お茶請けに出された漬物の大根も、全てこの研究所の表側の顔の成果である。
「いや、君も私に用事が有って来たのだろう?」
柔和な笑みを浮かべてそう言う所長に対し、フェダーーラインは、
「いえ。急ぐ用件でも有りませんので」
「実はね。この研究所を今月を目処に閉鎖して、本社の生物研究プラントと合併する事が決まってね」
「それはまた…急ですね」
「うーん。まあ、話自体は前々から有ったんだよ。ここも大分治安が悪くなったし。それでも、実際に畑で植える人達の声とか聞きたかったからね。今まで我侭を言わせてもらってたんだよ」
「それで私は?」
「ああ、閉鎖までの陣頭指揮を頼みたくてね。とはいえ、重要なデータは全て本社に転送してきたから、殆どが雑務になると思うけど」
「申し訳ありませんが…お受けできかねます」
「…何故?」
流石に断わられるとは考えつかなかったのだろう。
「実は、本社から至急帰還せよとの指示がありまして。今日はその件でお伺いした訳です」
「なるほど…」
『所長室』
そう金文字で書かれたドアの前に立つと、ドアを2度ノック。
「入り給え」
部屋の主の声に応じ、フェダーラインが入室すると、所長は驚いた表情を見せた。
「ああ、ちょうど君を呼ぼうと思っていたところだよ」
好々爺然とした所長は顔を綻ばせ、フェダーラインにソファーを薦めると、ひよいひょいとお茶の支度を始める。
フェダーラインはその行動には特に反応はしない。農学博士と言うより農夫といった雰囲気を持つ所長だが、秘書も呼ばずに来訪者に自分で茶を淹れるのはこの研究所の人間ならだけでも知っている事た。
フェダーラインもこの研究所に来た当初こそ、所長が席を立って茶の支度を始めるたびに腰を浮かせたり落ち付かない気分になったものだが、今ではこの行為は所長なりの気分転換なのだと解釈していた。
「で、お話とは?」
緑茶を啜りながら問うフェダーライン。
この緑茶も、お茶請けに出された漬物の大根も、全てこの研究所の表側の顔の成果である。
「いや、君も私に用事が有って来たのだろう?」
柔和な笑みを浮かべてそう言う所長に対し、フェダーーラインは、
「いえ。急ぐ用件でも有りませんので」
「実はね。この研究所を今月を目処に閉鎖して、本社の生物研究プラントと合併する事が決まってね」
「それはまた…急ですね」
「うーん。まあ、話自体は前々から有ったんだよ。ここも大分治安が悪くなったし。それでも、実際に畑で植える人達の声とか聞きたかったからね。今まで我侭を言わせてもらってたんだよ」
「それで私は?」
「ああ、閉鎖までの陣頭指揮を頼みたくてね。とはいえ、重要なデータは全て本社に転送してきたから、殆どが雑務になると思うけど」
「申し訳ありませんが…お受けできかねます」
「…何故?」
流石に断わられるとは考えつかなかったのだろう。
「実は、本社から至急帰還せよとの指示がありまして。今日はその件でお伺いした訳です」
「なるほど…」
流石に快く、とはいかなかったが、それでも所長は納得してくれた。
自室の整理は既に済んでいる旨告げると、フェダーラインは所長室を後にした。
そして、そのまま玄関の迎えの車に乗り込む。
「ユーラシアか…」
自室の整理は既に済んでいる旨告げると、フェダーラインは所長室を後にした。
そして、そのまま玄関の迎えの車に乗り込む。
「ユーラシアか…」
3日後、フェダーラインは治安警察のオフィスに居た。
「ただいま戻りました、長官」
「ご苦労だったな。引き続き頼んだぞ」
ライヒのその言葉に頷くと、足早にオフィスを後にする。
「ただいま戻りました、長官」
「ご苦労だったな。引き続き頼んだぞ」
ライヒのその言葉に頷くと、足早にオフィスを後にする。
そして、その向かった先は。
まるで装飾のない、金属のドア。
フェダーラインがその前に立つと、音も無く開き、そして、フェダーラインが潜ると、音も無く閉じた。
フェダーラインがその前に立つと、音も無く開き、そして、フェダーラインが潜ると、音も無く閉じた。
その扉にはただ一文。
「最重要機密区画・許可なく立ち入った者は警告無く射殺する・ゲルハルト=ライヒ」
「最重要機密区画・許可なく立ち入った者は警告無く射殺する・ゲルハルト=ライヒ」