オセアニア、カーペンタリア基地。
戦線の後退に伴い、ここにラクス陣営の根拠地が移されたのはつい先日のことである。
「大本営をカーペンタリアにまで下げたという事実は、最悪の事態をも覚悟しなければなりませんね。」
壮麗な玉座に腰をすえる女帝ラクス・クラインはそう言った。
「何も心配をなさる必要はございません、ラクス・クライン。」
いまや軍事の全てを司る地位をその手に入れたゲルハルト・ライヒ長官が答える。
「ライヒ長官、わたくしとてクライン派の長。軍略は知っております、現在の我が軍がどれ程の苦境に立たされているのかも分かっているつもりです。」
「まずは、これをご覧下さい。」
ライヒはパネルに投影された前線の地図を指し示した。
「我々南部統一連合軍に対し、アメノミハシラを中心とした北部反乱同盟軍はユーラシア大陸とミハシラ上空の2方面から進軍してきます。これに対し正規軍とPG部隊による迎撃を行い敵軍の動きを封じ、その隙に核装備の新生宇宙軍で衛星軌道上のミハシラを奇襲、一気に陥落させます。」
「核を使うというのですか!?」
「EPの部隊を実戦投入することにご承認頂けなければ、核に頼らざるをえませんな。」
「しかしわたしは・・・わたくしは・・・・・・。」
呟くラクスの顔がみるみる蒼白となっていく。
「各防衛線の指揮官達、イザーク・ジュールの旧ザフト隊もメイリン・ザラの治安警察隊も良く前線を支えてくれております。彼らの働きに答えるためにもEPの投入をご承認下さいますな歌姫?」
「わたくしはクライン派の宿願たる世界共栄を実現させるために統一連合を起こしました。カガリ主席やフラガ将軍の離反によりオーブ軍の支援を失い連合瓦解の危機に陥ったとき、ライヒ長官あなたは世界が統一連合発足以前に戻れば貧窮国に逆戻りする国々の協力を取り付け、南部統一連合を再編成してくれました。」
「レジスタンスの主力はかつての富裕国が中心です、彼らに以前の繁栄を取り戻されては困る国々もあるということです。」
「ですが、わたくしは再び世界戦争を引き起こすつもりは毛頭ありません!」
玉座を立ち上がり、毅然とした表情でラクスは言い放った。
「何を今更。」
しかしライヒはまるで駄々っ子を見る様な視線で応じる。
「既にサイは投げられました、後は勝つか負けるかしかないのです。」
「わたくしにはまだキラがおります、彼ならば速やかなる和平の道を開けるかもしれません。」
「無理ですな、いかに軍神といえどもここまで反乱軍が肥大化した今となっては戦いを止める手段などありますまい、違いますか?」
「・・・・・・・。」
ラクスは肩を落として、無言でうな垂れるしかない。
「ご安心を、我が軍の確実なる勝利をお約束します。この地球に溢れかえる愚かな大衆を統制し、地球圏に永劫の安定をもたらす為に統一連合の存在は不可欠です。そうしなければいずれこの地球はおのずと人類の重みで沈む運命を辿るでしょう。つまり我々は歴史に必要とされている存在なのですよ、我らの勝利を歴史が求めているのです。」
ライヒは立ちあがったままのラクスの肩にポンと手を置いて微笑む。
それに対し、ラクスは不安げにじっとライヒの顔をみつめていたが、やがてこう呟いた。
「ライヒ長官・・・・・・信じて良いのですね?」
戦線の後退に伴い、ここにラクス陣営の根拠地が移されたのはつい先日のことである。
「大本営をカーペンタリアにまで下げたという事実は、最悪の事態をも覚悟しなければなりませんね。」
壮麗な玉座に腰をすえる女帝ラクス・クラインはそう言った。
「何も心配をなさる必要はございません、ラクス・クライン。」
いまや軍事の全てを司る地位をその手に入れたゲルハルト・ライヒ長官が答える。
「ライヒ長官、わたくしとてクライン派の長。軍略は知っております、現在の我が軍がどれ程の苦境に立たされているのかも分かっているつもりです。」
「まずは、これをご覧下さい。」
ライヒはパネルに投影された前線の地図を指し示した。
「我々南部統一連合軍に対し、アメノミハシラを中心とした北部反乱同盟軍はユーラシア大陸とミハシラ上空の2方面から進軍してきます。これに対し正規軍とPG部隊による迎撃を行い敵軍の動きを封じ、その隙に核装備の新生宇宙軍で衛星軌道上のミハシラを奇襲、一気に陥落させます。」
「核を使うというのですか!?」
「EPの部隊を実戦投入することにご承認頂けなければ、核に頼らざるをえませんな。」
「しかしわたしは・・・わたくしは・・・・・・。」
呟くラクスの顔がみるみる蒼白となっていく。
「各防衛線の指揮官達、イザーク・ジュールの旧ザフト隊もメイリン・ザラの治安警察隊も良く前線を支えてくれております。彼らの働きに答えるためにもEPの投入をご承認下さいますな歌姫?」
「わたくしはクライン派の宿願たる世界共栄を実現させるために統一連合を起こしました。カガリ主席やフラガ将軍の離反によりオーブ軍の支援を失い連合瓦解の危機に陥ったとき、ライヒ長官あなたは世界が統一連合発足以前に戻れば貧窮国に逆戻りする国々の協力を取り付け、南部統一連合を再編成してくれました。」
「レジスタンスの主力はかつての富裕国が中心です、彼らに以前の繁栄を取り戻されては困る国々もあるということです。」
「ですが、わたくしは再び世界戦争を引き起こすつもりは毛頭ありません!」
玉座を立ち上がり、毅然とした表情でラクスは言い放った。
「何を今更。」
しかしライヒはまるで駄々っ子を見る様な視線で応じる。
「既にサイは投げられました、後は勝つか負けるかしかないのです。」
「わたくしにはまだキラがおります、彼ならば速やかなる和平の道を開けるかもしれません。」
「無理ですな、いかに軍神といえどもここまで反乱軍が肥大化した今となっては戦いを止める手段などありますまい、違いますか?」
「・・・・・・・。」
ラクスは肩を落として、無言でうな垂れるしかない。
「ご安心を、我が軍の確実なる勝利をお約束します。この地球に溢れかえる愚かな大衆を統制し、地球圏に永劫の安定をもたらす為に統一連合の存在は不可欠です。そうしなければいずれこの地球はおのずと人類の重みで沈む運命を辿るでしょう。つまり我々は歴史に必要とされている存在なのですよ、我らの勝利を歴史が求めているのです。」
ライヒは立ちあがったままのラクスの肩にポンと手を置いて微笑む。
それに対し、ラクスは不安げにじっとライヒの顔をみつめていたが、やがてこう呟いた。
「ライヒ長官・・・・・・信じて良いのですね?」