「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

風に舞うポスター

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
その日は風の強い日だった。
ソラは時折吹き付けてくる強風に目を細めつつ、先生に頼まれたものを買うために目的の店へと歩を進めた。
街にはいたるところに同じポスターが張られている。
世界を平和へと導いたラクス・クラインとキラ・ヤマト。この二人の笑顔が、そのポスターに広がっていた。
この街、いや、この世界では、この二人は絶対だ。敬わない人間などいるはずもない。
その瞬間まで、ソラはそう信じて疑わなかった。しかし、例外が目の前に――いた。

そこは大通りからのびる路地裏だった。そんなところにも、例のポスターは張り巡らされている。
その中の一枚が、おりからの強風にあおられてひらりと舞い落ちた。
ちょうど、路地の奥からこちらに歩いてくる青年の足元だ。
長い黒髪を後ろで無造作に束ね、サングラスをかけている。隙のない、妙な雰囲気をまとった青年だった。
当然その青年はポスターを拾い、汚れを払って元に戻すだろうと、ソラは思っていた。
それが当たり前、というより、義務に近い。
しかし、ソラのその常識はその青年の常識ではなかった。
あろうことかその青年は何のためらいもなく、無造作に、自然に、まるでそれが当然であるかのように、
足元のポスターを踏みつけたのだ。

――……え?

呆然として路地の入り口で立ち尽くしているソラに、その青年はまったく注意を向けなかった。
動けないでいるソラに青年がゆっくりと近づき――まるで誰もいないかのように、彼女の脇を通り過ぎた。
はっとして、ソラは振り返った。彼女の脇をすり抜けざま、青年がかすかに聞こえる声で呟いたのが聞こえたからだ。
しかし、大通りを見渡しても、先ほどの青年の姿は見つけられなかった。
もう一度路地を見る。
そこには、くっきりと靴跡がついたキラとラクスの笑顔が落ちていた。


青年はこう言ったのだ。

気にするな……塵を、踏んだだけだ――

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー