「機動戦士GUNDAM SEED―Revival―」@Wiki

第1話「王を自負したものの没落」

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「オペレーション・リヴァイアサン」

これはオーブ・大西洋連邦戦争において南太平洋海戦・ハワイ沖海戦と連続で大敗した大西洋連邦が打ち出した対オーブ戦略である。

オーブは地球圏のほかの勢力と比べて非常に高い技術力を有している。
また、兵士の練度・士気の高さでも有名である。その一方で資源や食料の多くを他国からの輸入によってまかなっている貿易国家でもある。

この作戦はオーブ軍と直接ぶつかり合わず、自国でまかなえる物資が少ないオーブの兵站・貿易等を阻害することによってオーブを物理的に孤立させ、枯渇させるいわゆる兵糧攻めである。

この作戦の効果は絶大であり、この作戦によってえ、オーブの主な貿易路である海路からの貿易が一時期は戦争前のおよそ6分の1にまで減少し、オーブ経済、特に食料関係に深刻なダメージを与える寸前のところにまでいった。

この作戦がここまで大きな効果をもたらした背景にはオーブ軍が他国の軍隊と違って水中戦力をほとんど持っていないことにあった。

島国であるオーブには本来水中戦力は必要不可欠なものである。

しかし、オーブが持つ「他国を侵略せず」という理念において水中戦力の拡充は諸外国、特に島国に侵略する意思があるのではないのかという疑念を持たせるきっかけとなり、余計な争いを引き起こす恐れがあるという意向から積極的に行われることは無かった。

そのため、潜水艦や水中MSが主力となっていたこの作戦を防ぐことができなかったのである。つまり、上記のような大損害はそのツケがまわってきた結果である。

主な貿易路を失ったオーブは物資の供給のためにプラントやアメノミハシラといった宇宙の貿易路の構築を積極的に行っていくことを決定した。

これに対し、大西洋連邦はオーブを宇宙においても孤立させるために宇宙軍にも妨害を命じた。
これを受けて宇宙軍は当時宇宙において最も生産規模の大きいプラントを攻撃・占領することを決定、アガメムノン級空母『アレクサンダー』を旗艦として9月19日に行われた。



ネルソン級宇宙戦艦『ヘファイスティオン』の格納庫で黒髪と金髪、2人の男が作戦について話していた。


「今回の作戦だけどよう、ようするに、プラントをぶっ壊してでもオーブに物資を送らせるなっつう事だろ。」


「発言に気をつけろ、コロナ。会話は記録されているんだぞ」


部下であるコロナ少尉の発言に部隊長であるニール大尉は諫言した。

それに対しコロナは言った。


「ん?いいんだよ。上の連中にはまだブルコスの連中が多いんだからよ。むしろぶっ壊したほうが好都合と考えてんじゃねえの?」


けだるげに言っている黒髪の青年の名はコロナ・ファランクス。彼はパイロットとしては優秀でけっして悪い奴ではないのだが口が悪く、物事を考えずに思ったことを発言・行動する、人間としてはよくできているとはいえないタイプである。

そのため、根が真面目だった金髪の青年、ニール・アスカロンとは同期でありながら階級に差ができてしまった。

今回のコロナの発言も人によっては即刻営倉送りにしているだろう。しかし、ジェームズはそれを聞き流して話を続けた。

「いいか、今回の作戦において望ましいのはプラントの占領であって破壊ではない。破壊すれば反対派に批判材料を与えることになる。」


「そういうやつらは何やっても批判すんだろが。」


「無駄に増やすなということだ。そろそろ時間だ、行くぞ。」


「へいへい。分かりましたよっと。」


話を切り上げると2人はそれぞれ自分の機体に乗り込んだ。


「ニール・アスカロン、エールストライク、発進する。」


「ファランクス機、行くぜ!」

ヘファイスティオンからエールストライクEとエールストライカー装備のウィンダムが発進する。

横を見ると他の艦隊からも次々とMSが発進してきている。

その規模を見てニールは溜息をつきながら思った。

(オーブに併合されてザフトが解体されたプラントを攻めるには規模が大きすぎる。ひょっとしたら、いや、ひょっとしなくても上層部はこれを機にプラントを滅ぼすつもりなのだろう。占領して自分たちのために使うという考えは奴らの頭の中には無いのか。全く、特定思想にのめりこんでいる奴らの考えは理解できん。)

ニールが物思いにふけっているとコロナから通信が入った。


『やっぱよう、上の連中はプラントをぶっ壊したくて堪んないんだろうな。がら空きのプラントにこんだけの規模で攻め込んでくんだからよう。』


普段ならば注意するところだが今回は自分も先ほどまでそう思っていた以上そうはいかなかった。

注意を促そうとした時、突然コロナが口を挟んできた。


『おい、あれ見ろよ。乱れ桜の部隊だぜ!良いなあ、全部ストライクEかよ。俺もあれに乗りてえ!ところで、なんか言ったか?』


こいつはとことん人を苛つかせる才能があるようだなとニールは思いながら何でもないと答えた。

時機にプラントに到達する。

いくら「ザフト」という組織は消え、軍は解体されたといってもそれにしたがっていない奴は多数いるだろう。

ここは戦場だ、気持ちを切り替えないとデブリに一つへと成り果てる。

そう思った矢先に突然ドレイク級宇宙護衛艦数隻のミサイルランチャーが爆散する。


『ヘファイスティオン、一体何が起こった!』


ニールの呼びかけに対し、オペレーターは答えた。


『敵襲です!データ照合……!これは、フリーダムです!』


そう言われてモニターを注視するとはるか遠くにその存在を確認できた。しかもミーティア装備ときている。

(フリーダム……今までの2度の大戦、そして今回の戦争における南太平洋海戦で大西洋連邦に猛威を振るった青き翼がなぜこんなところにいる!諜報部は一体何をしていたんだ!)

そう思っている間にもフリーダムは一斉掃射で次々と戦艦を、MSを落としていく。

現にこちらの部隊にも何発も砲撃が降り注いでくる。その砲撃をなんとかかわしながらニールは指示を出した。


「まずいぞ、早くあれを何とかしないとこちらに甚大な被害が出る。各機、奴を包囲するぞ!あれだけ大規模な装備だ、近づけばこちらに利がある!」


しかし、呼びかけに答えたのはコロナ以外にはおらず、他は浮足立っていた。

(くそ、いくら相手が伝説になっているとはいえこうも浮足立っていては勝てる戦いだとしても勝てないぞ。いったいどうすれば、……)

部下をまとめあげる策を考えていると突然コロナが怒鳴った。


『てめえら、なに浮足立ってんだ!!考えても見ろ、あいつさえたおしゃ作戦は成功すんだぞ!たった1機倒すだけで英雄になれる、そんな上手い話が早々あるか!てめえらは怖えからってせっかくのチャンスを無駄にするつもりなのかよ!俺は突っ込むぜ、怖え奴はとっとと引っ込んでケツの穴にでも顔突っ込んで震えてろ!!』


そう言われて一人が、


『ふざけるな、お前だけにいいかっこさせるかよ。』


と言って誘いに乗った。それからなし崩し的に誘いに乗り、最終的には誘いに乗らないものは極小数になった。

それを見ていたニールは思った。

(こういうときだけあいつはすごいな。俺には真似できん。)

他の部隊でも同じ考えを持ったの者がいたらしく、ストライクフリーダムに向かっていく機体が見受けられた。

それを見て、他の部隊と同様に向かっていった。



戦場はストライクフリーダムの独壇場となっていた。

ニールがフリーダムを有効射程範囲に捉える頃には、アガメムノン級1隻・ネルソン級9隻・ドレイク級20席、計30隻在った艦はおよそ半数が撃沈ないし航行不能に陥っていり、ストライクフリーダムに向かった百機近いMSも、戦闘可能な機体は十数機にまでその数を失っていた。

その中には自分の部隊のものも含まれていた。


「くそ、まさかここまでやられるとはな。だがこれ以上はやらせん!」


ニールはそう言ってストライクフリーダムにビームライフルを撃ち掛けた。

他の機体も同様にあらゆる方向から攻撃を仕掛ける。

しかしストライクフリーダムは、ミーティアと言う圧倒的なデットウェイトがあるにもかかわらず、その攻撃を驚異的な動きでかわし、はじき、打ち落として全て無力化した。

(そんな、あれだけの一斉攻撃を全て防ぎきったというのか。たしか古代ヨーロッパ人は東方の騎馬民族を「病気」と呼んでいたらしいが、こいつはまさに大西洋にとっての病原菌じゃないか。)

ニールがそう思っている間にも一機、また一機撃たれ、無力化されていく。

戦艦ももはや戦えるのは一桁しか残っていない。状況は最悪だった。悪夢と言っても良い。

ニールとコロナは攻撃を何とかかわしていたがそれにも限界が訪れる。

ミーティアのミサイルがニール機のエールストライカーに命中し、大破した。

幸い本体はPS装甲が働いていたのでそのまま破壊されることはなかったが仮にも対艦ミサイルである。

相当な衝撃が機体を・ニールを襲う。

コロナ機はビームサーベルで本体に斬りかかろうとしたが、振り下ろす前に圧倒的な速度で抜刀したストライクフリーダムのビームサーベルによって両腕を切断されていた。

ニールは意識が飛びそうになる中でどうにか機体を立て直そうとする。

しかし機体はそれに反して反応がぎこちない。どうやら先ほどの衝撃で駆動系になんらかの異常を引き起こしたようだ。

こちらが方向転換した時にはストライクフリーダムは、こちらを無視して戦艦にへと向かおうとしていた。

(まずい!艦がやられる!)

しかしそう思っていられたのは一瞬だった。

なぜなら旗艦であるアレクサンダーからベルリンを焦土に変えた大型MSデストロイが現れ、攻撃を開始したからだ。


『あんなもんまで積んでたのかよ。プラントをぶっ壊そうとしたのはマジだったのか。っつうかあれに巻き込まれたら塵も残らねえぞ!早くあいつらから離れんぞ!』


コロナの言葉も空しくデストロイはストライクフリーダムの周囲にいる友軍をも薙ぎ払う。

デストロイのアウフプラール・ドライツェーンがMSを、艦を、ストライクフリーダムの近くにある全てを巻き込んで、破壊の奔流を生み出す。

その奔流の射線にはニールも含まれていた。

(よりにもよってこんな形で死ぬのか、俺は。敵に情けをかけられて、味方の攻撃に巻き込まれて。俺は、俺は!)

しかし、ニールに訪れたのは死をもたらす破壊の奔流ではなく衝撃だった。コロナ機がニール機に体当たりして無理矢理軌道から外したのである。自分が射線に入ることを分かった上で…。破壊の奔流に飲み込まれコロナと言う存在は、消えた・・・。


「コロナ-!!!!!」


ニールの絶叫が宇宙に空しく響き渡る。その後、ニール機はデブリとなった艦に衝突し、その衝撃によってニールの意識は途絶えた。



ニールが意識を取り戻した場所は、暗い宇宙ではなく、明るい部屋だった。状況をつかめず困惑していると、白衣を着た見知らぬ男がいた。


「お、目が覚めたか。ここは(ネルソン級)ペルセウスの医療室だ。お前は運がよかったぞ。なんたってはたから見たらジャンクにしか見えない機体の中にいたんだからな。レナ大尉が気づかなかったらそのまま流されてデブリの仲間入りをしてたぞ。」


軍医の話を聞いてニールの意識は一気に鮮明になり、軍医に聞いた。


「おい、戦いはどうなったんだ。フリーダムは、デストロイは、俺の部下たちは!」


軍医はそれを聞くと、声の調子を下げて言った。


「戦いは・・・、残念だが俺らの負け、それも完敗だ。デストロイがフリーダムに攻撃した際に仲間の多くが巻き込まれた。デストロイはそのあと、ミーティアのビームソードでアレクサンダーごと真っ二つだ。レナ大尉が残った艦を束ねて撤退させてなきゃ今頃俺たちはみんなお陀仏だ。実際、今の段階でドレイク級が二つ脱落している。お前の部下に関しては、正直なところ分からない。ひょっとしたら別の艦にいるかもしれんが、お前と同じところにいたとするとあまり期待はしないほうが良い。」


それを聞いたニールは肩を落して俯いて泣くことしかできなかった。



この戦いにおいて出撃した艦30隻のうち、アガメムノン級1隻、ネルソン級5隻、ドレイク級14隻、計20隻が撃沈され、そして、基地に戻ることができた艦は残った10隻のうち、ネルソン級1隻、ドレイク級3隻、計4隻のみであった。

ニールの部隊の他の生き残りはコロナの言葉にも乗らなかった者の中の一部のみで、共にストライクフリーダムに向かっていった者達は全滅だった。

ストライクフリーダムに討たれたのか、デストロイの砲撃に巻き込まれたのか、それとも帰還途中に爆散した艦と運命を共にしたのかは分からなかったがその事実は後の彼の思想に大きな影響を与えることとなる。


その後、この戦いがきっかけとなってカーペンタリア基地のザフト兵は反オーブから親オーブへと反転し、オーブ軍に全面協力、その結果、10月2日にはオペレーション・リヴァイアサンの中核を担っていた戦艦『ゲオルギウス』は撃沈され、計画は頓挫することとなる。

それ以降、大西洋連邦の勢力は急激に後退していくこととなり、10月25日、クーデターによって新政権が樹立、11月5日、オーブと講和条約を結ぶこととなった。

それは、かつて世界の王を自負していた大国がその座から引きずり落されたことを意味していた。

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