頂上に着くと、スモーキーさんが立っていた。
ブ「ようやくご到着か。まったく、待ち草臥れたぜ。」
佐紀は何処に居るのだろう…。
辺りを見回したが、佐紀は見当たらなかった。
ブ「お探しのモノはこれかな?」
佐紀を探しているのに気づいたのか、スモーキーさんは横に動いた。
すると、赤い塊が見えた。
それは、血まみれになった佐紀だった。
さっきヒロが抱えていた時には、目立った外傷は無かった筈なのに…。
沙「スモーキーさん、佐紀に何かしたんですか?」
ブ「知ったところでどうする気だ?
それに、さっきから誰に向かって言ってるつもりだ?
俺は魔物を統べる者、ブルーヘクサだぞ。」
沙「答えないのなら…、貴方を倒すだけですッ!」
私がルグナザドを構えると、スモーキーさんもフェンリルを構えた。
ブ「この俺を倒す…か、やれるもんならやってみろ!」
数合斬り合ったが、私とスモーキーさんの力はほぼ互角の様だ。
沙「切り裂け!エクステンブレイドッ!!」
ブ「…ッ!」
エクステンブレイドを紙一重で避けると、スモーキーさんは私と距離をとった。
ブ「少しは成長したようだな。だが、その程度でこの俺は倒せんぞ?」
互角に戦っているといっても、スモーキーさんはまだ本気を出していない。
エフリシアの力を借りて、ようやく通常時のスモーキーさんと互角か…。
ブ「解ってるじゃねえか。」
まるで私の考えていることが解るかのように、スモーキーさんは言った。
そして、何時の間にか目が野獣の様な目になっていた。
沙「確かに、私はスモーキーさんに勝てないかもしれない。
それでも、私は戦わなければいけないんです!」
言い終わると同時に、スモーキーさんに斬りかかった。
スモーキーさんは避けようとはせず、ただその場に立っていた。
一瞬空蝉かと思ったが、どうやら違うようだった。
スモーキーさんの体に当たる寸前で、私はルグナザドを止めた。
それを見ると、スモーキーさんは溜め息をついた。
ブ「相変わらずの甘ちゃんだな。」
沙「……何故避けなかったんですか?」
私の質問に対し、スモーキーさんは笑った。
ブ「何故だと?簡単な事だ、避ける必要が無かったからだ。」
あのまま斬られていたら、たとえスモーキーさんでもかなりのダメージを受けたはずだ。
それなのに、避ける必要が無かった?
ブ「俺はお前を殺す動機なんて幾らでもある。
しかしお前の剣からは、俺を殺そうという殺気が感じられない。
それでは俺は倒せない。」
私はスモーキーさんを殺そうというのではなく、倒そうとしている。
しかしスモーキーさんは私を殺す気でいる。
ユグドラさんが言ったことの意味が、今なら解る。
ブ「そうそう、お前に一つ良い事を教えてやろう。
その佐紀って娘は、お前がここに来る少し前までは生きていた。
あまりにもお前が来るのが遅かったんでな、つい手が出ちまったぜ。」
スモーキーさんが佐紀を殺した?!
沙「そんな……。」
ブ「疑うのなら、確認すれば良い。」
スモーキーさんが佐紀を……。
佐紀に近づいてみると、体中傷だらけだった。
佐紀の顔を見ると、今までの佐紀との思い出が脳裏を過ぎった。
そして私の頭の中で、何かが切れた様な音がした。
沙「よくも佐紀を……。
スモーキーさん……いや、魔物を統べる者ブルーヘクサ!
私はお前を絶対に許さないッ!」
ブ「上等だ、すぐにお前もその娘と同じ所に送ってやるぜッ!」
言い終わると同時に、お互いに武器を構えた。
そして、じりじりと近づいていった。
先に動いたのはスモーキーさんだった。
ブ「弾け飛べ、ドラゴンテイルッ!!」
沙「食らえ、ソードランページッ!!」
ルグナザドとフェンリルがぶつかった瞬間、物凄い音と衝撃波が起きた。
その衝撃により、二人とも弾け飛んだ。
沙・ブ「「まだまだッ!!」」
着地すると同時に、二人とも相手に突進した。
ブ「ヘビースマッシュッ!」
沙「エクステンブレイドッ!」
先ほどよりも強い衝撃波が起きたが、二人とも弾かれなかった。
そしてそのまま鍔迫り合いになった。
ブ「さっきまでとは違って、良い目をしているな。
この俺を殺したくてしょうがないって目だ。」
沙「殺したいですって?当たり前よ!
佐紀を…、私の大事な妹を殺したお前だけは、絶対に許さないッ!」
言い終わると同時に、二人とも後ろにさがった。
そしてまた、相手に対して突進した。
それから、どれくらいの間戦っただろうか。
気がつけば日は沈み、空には月が昇っていた。
ブ「日は沈み、世界は夜の闇に覆われた。
これからのメルファリアを象徴する状態だ。」
沙「確かに日は沈み、辺りは暗くなった。
しかしまだ、満月がメルファリアを照らしている!」
ブ「ほざけッ!」
スモーキーさんが私に斬りかかろうとした瞬間、突然片膝をついた。
よく見ると、胸の辺りを押さえている。
顔には苦悶の色を浮かべている。
ブ「ちぃ、…こんな時にッ!」
よく解らないけど、今の状況はスモーキーさんを倒す千載一隅のチャンス。
私はルグナザドを構えて、エクステンブレイドを撃とうとした。
ダメデス!
しかしエクステンブレイドを撃つ寸前で、エフリシアに止められた。
どうして?!
コノヒトハモウ……ウゴクコトスラデキナイハズデス。
動く事ができない?
スモーキーさんを見ると、既に立ち上がっていた。
しかし、顔にはまだ苦悶の色が見える。
フェンリルを杖代わりにして、立っているのがやっとの様だ。
ブ「…どうした、何故攻撃してこない?
俺のこの状態が、罠だと思ったのか?
今のはこの俺を殺す、千載一隅のチャンスだったんだがな。」
言う言葉こそ変わっていないが、声色は苦しそうに感じた。
沙「胸の辺りを患ってるの?」
私の言葉に、スモーキーさんは舌打ちした。
ブ「俺を殺したいんじゃなかったのか?」
まるで早く自分を殺せと言っているみたいだ。
視界の中に、微かに動くものを感じた。
モンスターか何かかと思ったら、それは佐紀だった。
よく見ると、さっき見たときより手や足が動いていた。
アノコハマダイキテイマス。
佐紀が生きてる?!
沙「…正直に言ってください。
本当に佐紀を殺したんですか?」
ブ「……殺してはいない。
だが、死にそうだったのは間違いない。
だから俺の血をその娘に浴びせた。
助かる確率は五分五分だったが、どうやら回復し始めたみたいだな。」
だからあんなに血だらけだったのか。
でも何で嘘を…。
沙「何で佐紀を殺したなんて嘘を言ったんですか?!」
私の言葉に対して、スモーキーさんは顔を伏せた。
ブ「そうでも言わないと、お前は俺を殺す気にならなかったはずだ。」
沙「…確かに。でも、何故そこまでして死を選ぶんですか?」
ブ「俺は自分の役目を十分に果たしたと思っている。
だから今度は、お前が自分の役目を果たす番だ!」
沙「私の……役目?」
ブ「お前の役目は、この俺を斬って世界に光を齎す事だ。
それに、光と闇……これらは共に存在してはならぬものだ。」
スモーキーさんはそう言うと、フェンリルを捨てた。
そして、両手を広げた。
まるで自分を斬れとでも言わんばかりの様子だ。
闇を齎す者であるスモーキーさんを斬って、世界に光を齎すのが私の役目?
ユ「その通りよ。」
何時の間にか、ユグドラさんがスモーキーさんの横に立っていた。
ユ「闇に覆われた世界に光を齎す。
その為には、闇の根源たるブルーを斬らなければいけない。」
沙「ユグドラさんは、私にスモーキーさんは斬れないって言ったじゃないですか!」
ユ「ええ……確かに言ったわ。
でも此処に居るのは、貴女の命を救ったスモーキーではなく、ブルーヘクサなのよ。」
沙「違う!此処に居るのはブルーヘクサじゃない。
私の命を救い、今また佐紀の命を救った恩人。
カセドリア連合王国軍所属部隊
アマテラスの副隊長、スモーキーさんですッ!」
ブ「元……な。」
微かにスモーキーさんが笑った。
ユ「時間が無いわ。貴女にできないと言うのなら、私がしてあげるわ。」
ユグドラさんが手を動かすのと同時に、私の体が勝手に動き始めた。
……何で?!
ブ「恩に着るぜ、ユグドラ。
といっても、返せそうに無いがな。」
ユ「そうね。死んだら返してもらうとするわ。」
どんなに力を込めても、私の体は言うことを聞かなかった。
沙「…ッ!」
今の私の体勢は、ルグナザドの切先を前に向けて立っているだけ。
目の前には両手を広げたスモーキーさんが居る。
このまま前に進めば、スモーキーさんを突き刺してしまう。
体勢を変えようとするが、ビクともしなかった。
ユ「抵抗しても無駄よ。今の貴女に、私の魔法から逃れる術は無いわ。」
ユグドラさんの指が動いたかと思うと、私の体が前に進み始めた。
足に力を入れているはずなのに、歩みは止まらなかった。
このままでは、確実にスモーキーさんを突き刺してしまう。
ソンナコトハサセナイ!
エフリシアの声が聞こえたかと思うと、私の歩みが止まった。
ユ「私の魔法を解いた?!いや、エフリシアの力ね。
何処までも邪魔するつもりなのね。」
沙「ユグドラさん、こんなの間違ってます!
他に何か方法があるはずです。」
私の言葉に対し、ユグドラさんは両手を広げて肩をすくめた。
そしてスモーキーさんの方へと目線を移した。
ユ「ブルー。」
ブ「やっぱりな。……この、甘ちゃんがッ!」
そう言うと、スモーキーさんは私に向かって襲い掛かってきた。
私は咄嗟にルグナザドを構えた。
次の瞬間、ルグナザドの切先がスモーキーさんの胸に沈んでいった。
ブ「…ッ!」
刀身を伝って赤い血が滴り始める。
私はなす術も無くそのままの体勢で立っていた。
すると、スモーキーさんが左手をゆっくりと上げた。
私の頭に手を置き、くしゃくしゃと頭を撫でた。
力強い手が温かくて、何故か涙が零れた。
ブ「やれば……できるじゃねえか。」
言い終わるのと同時に、スモーキーさんは勢いよく後退した。
後退したことにより、胸に刺さっていたルグナザドが抜けた。
そして、そのままよろよろと後退し続けた。
ブ「沙羅、世界に……光を。」
次の瞬間、大きな叫び声と共に、スモーキーさんは頂上部分から転げ落ちていった。
沙「スモーキーさんッ!」
慌てて私はスモーキーさんの行方を目で追った。
しかし麓は夜の闇に覆われていて、見つける事はできなかった。
その後、魔物達は先を争うかのようにして、
始まりの大地から逃げていった。
魔物達の敗走により、人と魔物との壮絶な闘いは、私達の勝利で幕を閉じた。
間に合ったbyスモーキー
最終更新:2010年09月30日 21:24