「陛下、リワマヒ国からこのような親書が回って参りました」
「にゅ?」
「にゅ?」
ここは羅幻王国の新羅現城内にある国王執務室。頭を掻きながら涙目で執務をこなす羅幻雅貴女王陛下の元に、ルクス宰相が巻物を一本携えて入ってきた。
「うわ、流石は室賀兼一王ね……達筆……」
「そうですね、王たる者はこうでないと。陛下もいい加減丸文字を卒業する為にも、習字を……」
「祭!? うわ、面白そう! 早速みんなに知らせないと!!」
「幸い私の既知に良い先生がって、陛下~~~!!」
「そうですね、王たる者はこうでないと。陛下もいい加減丸文字を卒業する為にも、習字を……」
「祭!? うわ、面白そう! 早速みんなに知らせないと!!」
「幸い私の既知に良い先生がって、陛下~~~!!」
『食の万国博覧会!! ~羅幻王国の対策』
「さて、みんなに集まってもらったのは他でもにゃい!」
謁見の間の玉座に腰を落ち着けることもなく、集まった羅幻王国首脳の面々に頬を紅潮させて説明を始める羅幻である。
「この食料危機にかの漢の中の漢の国、リワマヒ国が食料供与の為に『食の万国博覧会』をするそうにゃ!」
ばばん、とみんなに先程の巻物を広げて見せる……まあ、相手が羅幻首脳だからいいものの、国家機密レベルの親書をこうもぞんざいに扱っていいものかどうか。
「ほほう」
「!」
「!」
そして、その説明にいち早く反応を見せるのは、当然この三人である。
「陛下、勅命を。私の腕を役立てる絶好の機会だ」
羅幻王国総料理長、凄爆嵐。
「あ、もしもし、国立養鶏場ですか? グレイです。ありったけの余剰食材を用意して欲しいんだけど」
国立養鶏場顧問、グレイ。
「現状で嫁入りできるのは……菜の花、セロリ、そら豆、春キャベツ、後は……」
国立植物園総責任者、寛。
「うんうん。流石は我が精鋭達ね。蓮田屋さん、これは第一級作戦行動として指揮をお願い」
「判りました……その文面では、どうも先陣として『なるはや』で食材を持って行かないといけないようですね」
「判りました……その文面では、どうも先陣として『なるはや』で食材を持って行かないといけないようですね」
眼鏡を軽くかけ直して、羅幻軍師・蓮田屋藤乃はその頭脳をフル稼働させる。
「グレイさん、とりあえず先陣として用意をお願いします。軍団員と連絡を取って下さい」
「ヤー・ボール!」
「寛さんもすぐに出荷できるものの用意を。ぱんくす工房の皆様と共に。ぱんくすさん、お願いします」
「「ヤー・ボール」」
「針千本さんは、グレイさん・寛さんと連絡を取り合いながら物資を収集。運用計画書とタイムスケジュールを早急にお願いします」
「まかいとき!」
「羅須侘さんは針千本さんに従って。人員リストを作成しますから、戦隊全員で人員輸送の方を。」
「御意」
「凄爆嵐卿は稼働可能なスタッフのピックアップと、調理機材の準備をお願いします」
「任せるがいい」
「ヤー・ボール!」
「寛さんもすぐに出荷できるものの用意を。ぱんくす工房の皆様と共に。ぱんくすさん、お願いします」
「「ヤー・ボール」」
「針千本さんは、グレイさん・寛さんと連絡を取り合いながら物資を収集。運用計画書とタイムスケジュールを早急にお願いします」
「まかいとき!」
「羅須侘さんは針千本さんに従って。人員リストを作成しますから、戦隊全員で人員輸送の方を。」
「御意」
「凄爆嵐卿は稼働可能なスタッフのピックアップと、調理機材の準備をお願いします」
「任せるがいい」
テキパキと指示を出す蓮田屋であったが……
「待つがよい!」
ばばーん、と効果音が流れそうな叫びと共に、羅幻王国きっての天才科学者(自称)である四方無畏が姿を現した。
「ドクター、あなたは宰相閣下とお留守番にゃ」
「うむ、さもあらん」
「うむ、さもあらん」
すかさず突っ込む羅幻に、鷹揚に頷いて返す四方である。
「いや、こんなこともあろうかと、我が国の吏族の知識ネットワークとこの前構築した新しい情報網を利用して……」
『………』
『………』
なにやら持参した手提げ袋をごそごそやる四方であるが、それを見守るメンツの表情は渋い。なぜなら、彼の発明品は『ほぼ』使い物にならない珍品ばかりなのだから。
「ほれ、これじゃ。国内ならどこにいようタイムラグも雑音も無しで繋がる小型通信機『話そう君』じゃ!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
そのフォルムは片耳にかける形のイヤホンのようで、数も丁度ここにいる人数分があった。珍しくも有用なもの、しかも『極めて』有能なものを発明した四方に、周りからは驚嘆と賞賛の声があがる。
「ちゃんとテストも済んでおる。宰相閣下もお墨付きじゃ、安心して使うがよい」
「……ドクター! すごいにゃ!」
「……ドクター! すごいにゃ!」
羅幻も手放しで大喜びである。
「じゃあ、さくっと行くわよ、みんな!」
§ § §
『さて。今回はお隣のリワマヒさんか……とは言え気を抜かず、出前迅速・交通安全だな。うし。タクロー、行くぞ! 皆さん、お願いします!!』
「ふむ、無事にグレイ殿が出発したようじゃの」
「ふむ、無事にグレイ殿が出発したようじゃの」
一時間後。国王執務室では一仕事終えて、留守番役の四方とルクス、そして羅幻が一服していた。それぞれが耳に付けた『話そう君』から、グレイの出発の声が流れる。
「ドクターの発明のお陰にゃ。準備の時間が半分で済んだんだから」
「………」
「どうした、ルクス殿。何か心配事でも?」
「………」
「どうした、ルクス殿。何か心配事でも?」
一人、ルクスは訝しげな表情で腕組みをしていた。
「ルクスさん、どうかしたー?」
「いえ、何か忘れてる事があったような……」
「いえ、何か忘れてる事があったような……」
と、ルクスが呟いた瞬間。
『ぼん』
と、『話そう君』から何かが爆発したような音が聞こえてきた。
「ああ! ドクター! そう言えば!!」
「うむ、今思い出した」
「え? 何、一体どうしたの!?」
「この『話そう君』、一歩でも国外に出たら!!」
「うむ。技術漏洩を防ぐ為に、自爆するようになっておる」
「ちょ、ちょっと!?」
「うむ、今思い出した」
「え? 何、一体どうしたの!?」
「この『話そう君』、一歩でも国外に出たら!!」
「うむ。技術漏洩を防ぐ為に、自爆するようになっておる」
「ちょ、ちょっと!?」
そして、開催地であるリワマヒ国では、不自然に頭に包帯を巻いたグレイの姿が目撃されていた……。