炊き出し当日 平 祥子の場合
大勢の人でにぎわう中、米袋を運んでいく。もう何度目になるかわからないくらい往復している。人員が足りていないのでスタッフはみんな大忙しである。
本当ならばもう少し時間に余裕を持った炊き出しだったのだがこんなに急ピッチで勧められているにはわけがあった。
「先日の核攻撃の影響で食糧事情は極端に悪くなっています。特にわんわん帝国では武力制圧こそ回避したものの残り食料はほとんど尽きていると聞きます。所属こそ違えど私たちは同じ世界に生きる仲間です。お互いに助け合いましょう。」
藩王様の言葉を聞き、国民のみんなが動き始めたのは数日前。急な依頼にもかかわらず他藩国から応援に来てくれた人の協力もあり、何とか炊き出しは形になってきている。
いくつかに区分けされているコーナーの中で、かなりの人が集まっているのはダースさんの指揮による食材運びや料理をしているコーナー。かなりの人数が集まって仕事にかかってくれている。頼もしい限りだ。人数が多い分ダースさんの負担は多そうだけどがんばってもらおう。
なっこちゃんが働いているのはその名もまんまな「なっこちゃん食堂」。ここも大人気だ。何人か倒れている人がいるような気もするけどみんな楽しそうなのでそこはスルー。さっき行ってみたけどなかなかおいしいサンドイッチをもらった。少し変な匂いがした気もするけど、気にしなければきっと大丈夫。
おや?なんか薊さんの悲鳴が聞こえたような…。まぁ気のせいかな、先を急ごう。
目当ての場所に到着し、係りの人に呼びかける。
「追加のお米持って来ましたー」
「ありがとうございます。あ、また追加でお米100kgお願いしますね。」
「えっ…さっき持ってきたのもうなくなったんですか…」
「追加のお米持って来ましたー」
「ありがとうございます。あ、また追加でお米100kgお願いしますね。」
「えっ…さっき持ってきたのもうなくなったんですか…」
見ると確かに残りのお米はわずかしかない。このペースでは今運んだ分もきっとすぐになくなってしまうだろう。どこも人手が足りていないので他の人に頼むわけにもいかないし。
「いってきます…」
人助けは戦争より大変だ。まぁがんばった分だけ人が喜ぶならそれでもいいか。
まだやれることはある。さて、もうひとがんばりしますか。
まだやれることはある。さて、もうひとがんばりしますか。