347 七人と一匹のサムライ 青井凛吾ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号葛城恭介音恋千聖
最後に残った七人と一匹は殺し合いに乗る者は誰一人としてなく、あるのは失った仲間達への悲しみと主催への怒りのみ。
彼らを縛る首輪も解除され、ゲームは実質的な崩壊を迎えたのである。
脱出はいつでもできるが、ニューソンの考察では“黒幕”を打倒しない限り、真の意味で殺し合いは終わらない。
そして七人と一匹は最後の戦いに臨むべく、それぞれが戦える準備を整える。
夢無は拳を温め、恭介と古畑は銃火器を分解整備し、ころび3号と千聖は己のボディとパワードスーツに不具合が出ないように入念に整備し、芦塚は柱を折る異能力を最大限に扱うために精神を集中する。
戦闘力を持たない凜吾も護身のために、グソクムシから脱皮した時に剥けた殻を渡され盾の代わりに装備する。
七人と一匹はこの残酷なゲームから解放されるために、そして百人以上の参加者の犠牲を無駄にしないために最善の準備をするのであった。
そして準備を整えた一行は拠点としていた温泉宿を発つ。
行き先はニューソンが遺した魂を追跡する発信機により辿れる。
その先には自分たちが討ち倒すべき巨悪が待っていることを一行は予感していた。

霊媒体質高校生、青井凛吾。傍若無人不良高校生、荒木夢無。
『柱』を折る何でも屋、芦塚陽菜。警視庁第零課強行班所属の刑事、葛城恭介。
くらげ狩りのサイボーグ、ころび3号。半身不随の天才メカニック 、音恋千聖。
IQ180の名探偵先生、古畑六星。一億年後の地球より、ヒトガタグソクムシ

仲間との出会いと別れ、もしくは裏切り。殺し合いに乗った殺戮者との熾烈なる戦い。
エグザイルウィルス。血染の蝙蝠。城騒動。人類最終試練・ラストエンブリオ。
全ての試練を乗り越えてきた七人と一匹の最後の決戦が始まる……


 ――オリロワ4、最終章開幕――


芦塚「あれ? あの馬はどこにいったの?」
夢無「知らねえよ……って、さっきの料理に出てた馬刺しってまさか……」

グリンガレッドはグソクムシが料理を振舞った時と前後して対主催御一行の前から姿を消していた。
348 暴け! 悪の城 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、????、???
発信機に従い、禁止エリアに入っていく一行。首輪がなくなった彼らには禁止エリアもなんのそのである。

そして禁止エリアを抜けて一行が向かった先には……何もない平原だった。

これはどういうことだ?
敵が待ち構えているかと思いきや、何もなかったという異常事態にニューソンが作った発信機の故障か未完成を疑う一行だったが。

芦塚「……いいや、違うね!」

芦塚だけは直感で何かに気づいていた。
そうして柱を折る力を目の前の『何もない』空間に向けて放った。
するとどうだろうか? 途端に何かがガラガラと崩れる音がした。
そして一部が崩れた大きな建造物が一行の前に現れたのである。
なんらかの魔術的な力で姿を消していた伏魔殿が、芦塚の異能によって術式を壊されて一行の目の前に引きずり出されたのである。
カラクリが溶けた悪の要塞に、一行は入っていく。
その中で待ち構えていたのは――

???「京でも、現世でも、先の屠り合いでも、人間という物を視てきたが存外進歩のないものよのお」
恭介「貴様、その姿は…ッ」
???「ああ、貴様は見覚えがあるはずよ。儂の魂を得たあの小僧の傍らで戦っていたのだからな。我が獄羅童子の姿をの」

今は亡き恭介の協力者であった成瀬由希、彼の半身であったハズの鬼――獄羅童子。そして。

ノヴァ「夢無くん、凜吾くん、芦塚ちゃん、ころびさん、千聖ちゃん、古畑先生、恭介さん、グソクムシちゃん。
ここまでの生存おめでと~う。ぱちぱち。……で・も、無駄な抗いもここまでだよ」
古畑「馬鹿な!? あなたはあの城で死んだ……その瞬間もこの眼で見た、だのにどうして!?」

かつての城騒動の中で死亡したハズの男、全てを『奪う』者・ノヴァであった。
349 昏き真実 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、獄羅童子、ノヴァ(真)
この殺し合いを影から牛耳っていたのは悪鬼・獄羅童子と異能者・ノヴァの二人であった。
二人の口からこのバトルロワイアルの多くの真相が告げられる。
死んだはずのノヴァがここにいる理由、それは参加者として会場にいたノヴァは平行世界より呼び出した替玉であり偽物だったのである。他参加者との言動や認識の齟齬や死に様での謎の豹変はこれが理由であった。
そして、今この場にいるノヴァこそ、本物であり会場にいた偽物より何倍もの実力を持つ真のノヴァと言える存在であるとも。
由希の半身であったハズの獄羅童子がここにいる理由ついては

恭介「どういうことだ・・・貴様は死した後転生して由希に生まれ変わったはずでは・・・」
獄羅童子「ふん。あれは所詮儂の魂のほんの一欠片が赤子に変化しただけにすぎぬことよ」
青井「なっ・・・」
獄羅童子「しかしあのノヴァという奴も面白き催しを思いつくものよ。おかげで儂も
この宴で死んだ怨霊どもを喰うことで、さらなる力を得た。礼を言おうぞ」

由希の中に眠っていたと思われた獄羅童子の魂はあくまで一部分に過ぎなかったのだ。
さらに恐ろしいことに殺し合いで死んだ死者の魂は獄羅童子の胃に直行するカラクリが会場になされていたのだ。
会場に霊体が残れない理由はこれであり、百人以上の死者の魂が獄羅童子の腹に収まっていた。

獄羅童子「儂がくたばった後地獄で彷徨うとるときにノヴァにこの催しを開くことを聞いて協力することにしたわけよ。
しかし、我が鬼の一族の惑う様もまたげに愉しきものよ。所詮儂の歯にも立たぬあの小僧に一族の命運を賭ける
忌影丸も莫迦よのう。由希とかいう小僧が狂ったせいで友を喪ってしまった模様は貴様らにも見せたかったものだ」

獄羅童子は己の愉悦のためにノヴァに協力し、同族すら売った、まさに悪鬼であった。
そうして絶大な魔力を持つノヴァと獄羅童子が手を組むことでバトルロワイアルは成り立っていたのである。
数年前に開催されたロワ――月ノ輪と雛が参加させられた殺し合いを開き、影から糸を引いていたのも彼らであり、トリスメギストスは表の主催に過ぎなかった。
そのトリスメギストスの正体もノヴァが暇つぶしに作り上げた人形であり、人格や過去の記憶に至るまで全てが作り物であった。言わばロワを面白くかき乱すための駒と言えた。
ちなみに平行世界や未来に至るまで百人以上もの参加者を拉致し、トリスメギストス・ブギーファントム・己の偽物などの駒を用意し、獄羅童子と手を組んでまで殺し合いを開いたノヴァの目的とは――

ノヴァ「ロワを開いた理由? そんなの決まってるじゃないか、面白いからだよ。それ以外になんか理由ある? あるんだったら数日で論文にまとめて三十分以内に返答してよ?」
ころび「外道めが」
夢無「くたばりやがれッ!」
恭介「そんな軽々しい理由で琴音達は死んだというのか?!」

全ての謎は解けた。殺し合いの真相を知ったからこそ、対主催達の怒りは更に燃え上がり、いつ戦いが始まってもおかしくない一触即発の状態に陥った。
とうとう最後の戦いが始まる……その前にノヴァは対主催の一人、千聖に妖しい笑みと目線を向けて語りかけた。

ノヴァ「そういえば、君たちにはまだひとつだけ明かしてない謎があったね。みんなはモーソローダーって知ってるかな?」
千聖「モーソローダー? それがどうしたというの?」
ノヴァ「未来の殺戮兵器モーソローダー。その起源は……千聖ちゃん、君が開発したパワードスーツなんだよ」
千聖「なッ、なんですって!?」

ノヴァの顔が愉悦に歪み、対照的に千聖の表情は絶望で歪み出した。
350 創り出す者/悲しき再開 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、獄羅童子、ノヴァ(真)
未来を知るノヴァ曰く、千聖が世界の人々のために作り上げたパワードスーツは、後に起きる星間戦争にて本来の用途を外れ、戦闘のためだけの兵器モーソローダーと化し、銀河に多くの流血と殺戮を振りまくというのだ。
「あ~あ、せっかく人々のために頑張って作っていたのに、工事用のダイナマイトを勝手に戦争の武器に使われたノーベル並に滑稽だよね~、ギャハハハハハ」と嘲笑うノヴァ。
マリスや笛吹の乗っていたモーソローダーに自分の作ったパワードスーツと同じ技術が使われている点から、因果関係には薄々気づいていたものの、まさか未来に殺戮の道具に使われているとは千聖は想像だにできていなかった。
亡くなった者たちの遺志を継いで未来を創ろうと決心した矢先、知らされたのは残酷な未来であった。
更に突き詰めれば、千聖がパワードスーツさえ作らなければモーソローダーが生れてこなかったのだから、統香を始めとした多くの参加者の命を奪ったのが千聖も同然であると。その事実をノヴァに突きつけられて千聖は未来と自分自身に失望する。
ノヴァとしては千聖がこのまま発狂でもして自殺したり味方に牙を剥く展開を望んでいたのだが、そんな千聖が自分を責めて動けなくなりかけたところを、「変えるために戦えばいい」と、ころびや青井に諭される。

千聖「……そうだ、残酷な未来が待っているなら、その残酷な未来を変えるために戦えばいい。
   優しい未来を創り出すために私はパワードスーツを、未来をこの手で作り続ける!!
   そのためにも、ノヴァ! あなたを必ず倒して元の世界に帰る!」

仲間の言葉により立ち直った千聖は銃口をノヴァに向けた。その銃は阪口の遺した銃である。
千聖が正気を取り戻したことが面白くなさそうなノヴァ。
それどころか未来の真実を告げてしまったことによって結果的に対主催一行の間にある連帯感を強くさせてしまったようだ。

そして、今度こそ主催二人と対主催達と決戦が始まる。
数の上では対主催サイドが有利であったが、そこでノヴァが何かの魔術を使い始める。

ノヴァ「折角だからフェアな人数同士で戦おうよ!」

……なんと、ノヴァは死亡者を蘇らせた挙句、傀儡にして対主催と戦わせようとする!
蘇る摩耶香、統香、瞠、ルーク、クロスフォード、ブギーファントムやデッドエンドまで、蘇らせた者の多くが生き残った対主催達と縁のある者達であった。
更に言えば、彼らの肉体はともかく精神と意識は元のままであった。その理由も「ソッチのほうが面白いじゃん?」。
すなわち、(デッドエンドを除くと)かつて仲間だった者達と戦わせて、対主催が苦しむ様を楽しもうというのだ。
そのノヴァの悪辣さ邪悪さに対主催達は憤慨し激怒する。
特に守りたかった仲間を駒にされたころび3号の怒りは頂点に達し、怒りで目から血の涙のようなオイルを流していた。

ころび「よくも統香と瞠の魂を弄んだな!? 貴様だけは絶対に許さん!」

そのような鬼気迫るころびの怒気も、ノヴァにとってはショーを盛り上げるスパイスに過ぎなかった。
しかし、ノヴァの行いに対して怒りを覚えたのはころびら対主催だけではなく、ここで予想外の事態が起こる。

デッドエンド「よくも至高の終幕を迎えられたのに水を指したな!?
       ノヴァよ、魂まで貴様に渡したわけではないぞ」

デッドエンドがノヴァの支配を離れて反旗を翻し、対主催達の味方についたのである!
351 死闘開幕 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、獄羅童子、ノヴァ(真)
デッドエンドは強い精神力と吸血鬼故の魔術への耐性によってノヴァの術に唯一対抗することができた。
ノヴァとは認めていた友人でこそあったが、死者まで侮辱した今回の件で完全に見限り、対主催側についた。
多くの仲間を屠ったマーダーが味方についたことは対主催達にとっても想定外にして複雑な心境であったが、今は共通の敵と戦う同志として対主催達は受け入れた。
デッドエンドの加入により戦力が概ね拮抗したところで恭介が「・・・皆はノヴァの方を頼む。奴は、獄羅童子は俺が片を付けてやる・・・いや、俺の手で付けなければならない!」と獄羅童子と一人戦うことを決意。
しかし、やや頭に血が昇っている恭介一人で戦うには危険だとして夢無と凜吾も共闘することに。
そして獄羅童子の咆哮と銃声を皮切りに決戦は始まった。

ノヴァ「…ありゃ、獄羅っち勝手にバトっちゃったよ。まあいいや」
摩耶香「ノヴァ…お前はどこまで人を侮辱すれば気が済むんだ!!」
ノヴァ「ボクが楽しめるまでに決まってるじゃないか、て言うか君たち今ボクのお人形なんだから勝手な真似はしないでくれる?」
摩耶香「……くそっ! …みんな、すまない……本当にすまないッ!!」

摩耶香達もノヴァの支配から必死に抗うがデットエンドほど術の抵抗力がないためか、他は誰ひとり抗えなかった。
なまじ精神は操られていない分、対主催達も傀儡にされた者達も辛い心境であった。
しかし、ノヴァが存在する以上戦いは避けられない。


恭介・夢無・凜吾VS獄羅童子。 ここで暴れるには狭すぎるということから獄羅童子はノヴァ達とはやや離れたへと移動する。それを三人も追いかけ、場所を移動する。

デッドエンドVS摩耶香。 何度か衝突した相手でありデッドエンドとしては摩耶香には一定の敬意を払っていたが、だからこそ「ノヴァに操られてなければ最高の戦いができた筈だ」と悔み、摩耶香の肉体は意思に反してデッドエンドを攻撃するタロットを次々と引いていくのだった。

芦塚VSルーク。 柱を折る異能と光を操る力がぶつかり合う。両者共に異能の力をフルに使用しているため周囲には柱を折られた瓦礫とまばゆい光が飛び散る、まさに超能力者同士の戦いであった。一方で芦塚はかつて仲間だったルークを傷つけられないでいた……以前のサイコパス紛いだった自分ならば容易く相手を傷つけられたというのに。

千聖VS瞠。 コンコルド型パワードスーツに搭乗した瞠が泣いて謝りながら千聖を空襲する。しかし瞠のパワードスーツの製作者は千聖であり、パワードスーツの性能的弱点も知っている千聖は瞠のミサイル攻撃を躱し、機銃を装甲で耐えていく。戦闘技術を何ら持ち合わせてない千聖だったが、それでも時間稼ぎはできた。

グソクムシVSクロスフォード。 本人の意志に反して卑劣に非戦闘要員のグソクムシを襲うクロスフォード。しかしグソクムシはこれに対して脱皮回数を自分の意思で調整して脱皮しまくるという荒業で対抗。多くの殻を並べてデコイ代りとし、見事にクロスフォードを混乱させていた。

ころびVS統香。 異人骨食とハンマーを鍔迫り合う両者。その最中に小声で「待っていろ、統香。もうすぐお前たちを解放してやるからな」と耳打ちし、内部のエネルギーを密かにチャージするころび。どうやら彼にはこの状況を打破する秘策があるらしい。

そして、古畑VSブギーファントム。

六星「歌月くん、……君は」
歌月「せんせー、助けにきたよ」
352 鬼人演舞 青井凛吾、荒木夢無、葛城恭介、獄羅童子、犬、雉、猿
ノヴァ達とは離れた位置で繰り広げられる獄羅童子と三人の男達の激闘!
まずは余興として獄羅童子は三匹の獣を繰り出す。それはロワで参加者として連れてこられたイチモツを武器に戦う「桃太郎」の世界の犬・雉・猿であった。
どうやらこの桃太郎の手下達は、桃太郎が成敗した鬼姫の「おこぼれ」をもらっていたようなゲスい奴ららしい。
ちなみに本来の敵である鬼に、なぜ桃太郎の手下達が従っているのかと言うと……「「「こんな強そうな鬼倒すのに、キビダンゴじゃ割に合わねぇんだよ!!」」」 ……正義もプライドもない畜生の中の畜生共である。
三匹は獄羅童子に力を授かったらしく、犬猿雉は全員変身して三人に襲いかかるが、変身時の姿が
犬→ケルベロス 猿→キングコング 雉→フェニックスであり、お前らなんで全員西洋風なんだと激しいツッコミを恭介達から受ける事になる。
何はともあれ戦闘になるが、巨大化は負けフラグというべきか。それともロワで幾多の死線をかいくぐってきた恭介と夢無では相手が悪かったのか。
変身した犬猿雉だが、もみじから受け取ったカードと摩耶香のタロットカードを同時発動した恭介と夢無の攻撃で一発KOという前哨戦にもなってない結果となった。

犬「これじゃあ俺たち」
猿「完全に噛ませポジっつーか」
雉「完全に出落ちじゃないですかやだー!!」

三匹「アベヴァアアアアアアアッッ!!!」

こうして三匹の畜生は成敗されたとさ。何しに来たのこいつら。


……本題はここからである。
多くの魂を喰らったが故に先の三匹とは桁違いの実力を獄羅童子は持っていた。
余興が終わると、獄羅童子は三人に襲い掛かり、恭介と夢無が応戦する。しかし、スピードもパワーも圧倒的である獄羅童子の前には二人の実力者も押され気味であり、一瞬でも気を抜いたりすれば即・死に繋がる戦いを強要されていた。
そこへ相手のペースを崩すべく、獄羅童子が恭介に向けて煽り言葉を放つ。それは妻と仲間を侮辱した言葉であった。
この言葉により、恭介は完全に頭に血が上り、普段の冷静さも失って一人で突っ込んでしまう。
その無謀な突撃が祟り、獄羅童子に一方的に叩きのめされたが、危うく殺される一歩手前で夢無に救出される。
そして夢無に一発ぶん殴られた後に凜吾と夢無に諭される。

凜吾「あいつに怒っているのは恭介さんだけじゃないんだ。
   由希や荒谷、有村、皆を馬鹿にされて僕も腹が煮えくり返っているんだ」
夢無「お前よおー、一人で突っ走ってんじゃねえぞ!お前は一人じゃねえ、俺たちがいるだろ。
   俺らみんなの力であの腐れ鬼の野郎をぶちのめすんだよ」
凜吾「・・・一緒に戦おう。恭介さん」
仲間の言葉を受け、恭介は冷静さを取り戻す。そして気恥ずかしそうに凜吾と夢無に笑いながら
恭介「・・・夢無、お前に殴られて頭から血が抜けて冷静になれたよ。
   青井、お前の言葉のおかげでいつもの自分を取り戻せた。・・・ありがとう。
   行こう、『皆』の力で奴と戦おう」

獄羅童子に勝つには三人の連携が必要だ。そう自覚する恭介・夢無・凜吾。
そうして第二ラウンドの幕が上がる。
先に恭介をかき乱した通り、仲間を侮辱する煽り言葉をぶつける獄羅童子。しかし、三人がそれに動じることはもうなかった。
逆に夢無が獄羅童子に向けて啖呵を切る。

夢無「はっ。お前、本当に鬼かよ。
   ――俺の知ってる鬼はどこまでも素直にてめぇの筋を通すバカばかりだったぜ」

椿や忌影丸と出会って鬼を知った夢無にとっては、裏でコソコソしていながら強者を気取りふんぞり返っている獄羅童子など、小物以外の何者にも映らなかった。
煽るつもりが逆に煽られ、獄羅童子は激怒する。
だが、先に冷静さを失った恭介と同じように、怒りに囚われた攻撃は恭介と夢無は難なく躱し、僅かずつでも打撃を与えていく。当たらない攻撃と蓄積するダメージを前に、いつの間にやら獄羅童子の心の中に焦りが生まれていた。
一方、二人の後方にいた凜吾は自分の霊感能力をフルに活用して弱点を探っていた。獄羅童子は死んだ参加者の魂喰ってて力を得ている、ならば逆に魂を貯めてた場所が弱点にもなっているのではないかと思い至ったのである。
精神を研ぎ澄まし、眼に穴が空きそうなほど獄羅童子を見つめていると、その場所は次第に見えてきた――心臓だ!
弱点を発見した凜吾はすぐさま、二人に伝える。

獄羅童子「莫迦な、なんで人間風情に、人間風情にぃいいいいい!!!!?」
凜吾「そこだ、奴の心臓を射抜くんだ!そこにみんなの魂が封じられている!」
夢無「攻撃は俺が抑える、ぶち抜いてやれ!」
恭介「青井、夢無・・・有難う」

ここで夢無が純粋に身体能力を上げる「力」のタロットを使って、獄羅童子を押さえに入る。
身体能力が上がっているとはいえ怪力の獄羅童子を捕まえられるのは、ほんの一瞬。
だが、その一瞬さえあれば、恭介には十分であった。
恭介の脳裏に琴音やルーク、由希に恭二、オリヴィアやSF組、そして今一緒に戦っている仲間の姿が浮かぶ。
死した彼らを救うために、そして共に生きている仲間のために思いを込めて引き金を引いた。

銃弾は獄羅童子の心臓を正確に射抜き、獄羅童子は巨体を地に崩れ落ちるように倒れさせ、再び地獄へと堕ちた。
そして獄羅童子に喰われてた魂が最後には解放されて昇天していく光景が三人の目に映る。
煌びやかな百以上の魂魄が天に還る光景は、それはそれはとても幻想的であった。

しかし、戦いはこれで終わりではない。
まだひとり、討つべき巨悪であるノヴァが残っているのだから。
三人は他の仲間達の下へと急行する。
353 最後に笑うのは 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、ノヴァ(真)
場面はクロスフォードに追い詰められるヒトガタグソクムシから始まる。
脱皮で作った殻で大量のデコイを生産していたグソクムシだが、無理な連続脱皮で大きく消耗しすぎてしまったのだ。
いざ、騎士にトドメを刺されそうになり、飛び交う仲間の悲鳴、グソクムシ万事休す。
ところが、クロスフォードはトドメの瞬間にいきなりノヴァの方に振り返って槍をぶん投げて尻に突き刺して見事な奇襲をしかけた。

ノヴァ「……もっとケツにぶっさしてぇぇぇ~」

これには対主催の皆さんも苦笑い……が、これはノヴァの悪ふざけによるただの茶番である。
気を取り直して槍を構えなおすクロスフォード、飛び交う仲間の悲鳴、今度こそグソクムシ万事休す。
しかし、クロスフォードの眼前にブギーファントムが瞬間移動、グソクムシに振り落とされた槍をナイフで阻止した。
これはどういうことだと疑う対主催とノヴァ。
ノヴァは戦いを更に悲惨/面白くするためにブギーファントムの体はそのままに、中盤で一度は消した歌月の人格で古畑と対峙させた。だがこれが誤算を生む。
体はブギーファントム、心は歌月の状態にした結果、歌月がブギーファントムの肉体を掌握した。厳密には参加者ではなくジョーカー権限のある歌月にはノヴァの術による支配は受け付けず、後からノヴァが術による再支配や歌月の人格を消そうとするも『制限』を操る力によって二度とノヴァに支配されることはなく、デッドエンド同様に対主催の味方となったのである。
奇蹟はそれで終わらず、操られていた死者達も解放される瞬間がきた。
エネルギーのチャージが完了したころび3号が詠唱を始める。
「イテエヤウ イテエヤウト マレビトキタリテ ホネヲハム…」
それは、不可視の存在や斬れないものを斬る刃・異人骨食の出力を最大限に引き出すためのコード。
その詠唱とともに異人骨食で、通常は斬ることができない死者を操作するの術のコードを斬断していき、隷属させられてた魂たちを介錯していく。
そして、ころびの秘策により摩耶香、統香、瞠、ルーク、クロスフォードの魂が解放された。
各々が対主催達に礼を言いながら消えていく。特に瞠は千聖を励まし、自分の願いのためにパワードスーツを作ってくれた事に礼を言いながら消滅した。「あの子は兵器を人を助けるために使おうとしただろう」ところびが呟き、千聖はあの子のためにも最後まで折れてはいけないと心を強く持つのであった。

ノヴァの傀儡と化していた死者達は消えた。また死者を呼び出したところでころびの異人骨食によって阻止されるだろう。
さらに獄羅童子を討った三人もこの場に戻り、デッドエンド・歌月を加えた対主催陣営は10人となった。
形成は完全に対主催に傾いていた。
このまま一気に畳み掛けるぞ、と言わんばかりに対主催陣営のノヴァへの一斉攻撃が始まる! これで全てが決まる――

ノヴァ「我は無――。

万象あまねくを呑み込み、喰らい尽くす底無の深淵。

我は限――。

遠く届かぬ果て無き夢を汚す、至高よりの嘲笑。

その苛烈なる、命の慟哭を肴に―――

我が愉悦と欲望に誓って――――

我は世界を略奪する者也。

例外絶技(WILD TRICK)――――「世界は我が手中に在り(ALL IN ONE)」 」

――だがしかし、ノヴァがここにきて奥の手を発動。
それは『奪う』力を最大限に引き出す、ノヴァの最終奥義であった。
その絶技が発動した瞬間、すべてがノヴァに奪われた。

突然、糸が切れたマリオネットのようにバタバタと倒れ出す対主催達。体の力が奪われ、麻痺したように動けなくなったのだ。
力だけではない、あれだけノヴァには憎しみや怒り、そして生き延びるために戦っていたというのに、戦う意思すら徐々に奪われていった。
制限を操る力を持つ歌月の力すら通用せず、むしろその力すら奪われてしまった。
地面に倒れ伏した10人にノヴァが嘲笑いながら語りかける。

ノヴァ「残念だったねぇ。僕が本気を出せばこの世に奪えないものなんてないんだよ。
    それがどういう意味か、わかるかい?
    この殺し合いに連れてこられた時点で、君たちの勝利はとっくに僕が『奪い取っていた』のさ!!」

このままでは全員なぶり殺しにされて全滅するのは目に見えている。
そしてノヴァはまた参加者をかき集めて『命の奪い合い』という最悪の催しを繰り返すのだ。
それを阻止するためにも戦わなくては…それはわかっているのだが、抗おうにも戦う力も戦意も奪われ、この力に全員が屈しようとしていた。

全てを奪い取る力――この力がある限り、ノヴァは対主催達の反抗など最初から恐るるに足りなかったのだ。
デッドエンドや歌月が反旗を翻したのは想定外でこそあれ、なんら問題ではなかったのである。
なぜなら、ノヴァは問答無用で仇なすものの何もかもを奪い取れるからだ。
そうして、神の如き力を持つこの男に無謀にも挑んだ対主催達は一瞬の内に力も戦意も根こそぎ奪われてしまった……
ノヴァの言うとおり、対主催達の勝利は最初から奪わていたのだ。



――本当にそうだろうか?
いいや、彼らにはまだ一つだけ、残っているものがあった。
全員が勝利を諦めかけたその時、「絆」のタロットが突然光りだし……
354 ウバエヌモノ 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖、ノヴァ(真)
突如、夢無のポケットの中で輝きだした『絆』のタロット。その輝きにノヴァは気づいていない。
仮に気づいたとしても絶対たる『奪う』力で奇跡も何もかも奪ってしまえば良いとタカをくくり、さして驚異ではないと判断するだろう。
そして、ノヴァは手始めに凜吾を嬲り殺しにすることを決める。仲間を殺されて絶望する対主催達の顔を拝みたくなったからだ。
懐から銃を取り出し、凜吾に迫るノヴァ。
しかし、凜吾は気づいていた。絆のタロットの光と、デイパックの中で蠢きだした『モノ』を。
凜吾は近づくノヴァに向けて、なけなしの力を使って『モノ』……蠢く肉塊を投げつけた。

凛吾「こいつをくらえ!」
ノヴァ「なんだい?そんなの僕にぶつけたとこ…」
肉塊「そんな設定のキャラなんてゲームや小説ぐらいだろJK」
ノヴァ「な、能力がかき…いや抹消されて…まさかこれは!!!」

それは温泉宿において、凜吾が古畑から渡された誰かの舌であった。
凜吾によるとなんらかの強力な霊的な力を持っているらしく、霊能力を持っていない古畑には扱えないものとして凜吾に譲渡したものだが、扱い方がわからず持て余していた……が、ここにきて『奇跡』が起き、再び動き出したのだ。

『絆』のタロットの効果。それは使用者達に奇跡を起こすカード。
舌の持ち主の正体は言霊であらゆる怪奇・幻想・異能を打ち消す男『但野現実』。
持ち主の死で効力を失っていた肉塊が、絆のタロットで現実の力を取り戻し、再び喋りだしたのだ!
そして、その対象はノヴァの『奪う』力――ノヴァを絶対足らしめる力であった『奪う』力が、『奪われた』のだ。
それを知った時、ノヴァの表情から初めて余裕が消え、ノヴァの力が消えたことを理解した対主催は反撃のチャンスを手に入れた。

凜吾「ノヴァーーーーーッ!!!」

ノヴァの奪う力の効力が消え、戦う力と戦う意思を取り戻した凜吾は咆哮と共に起き上がり、予想外の出来事から力を奪われて呆然としていたノヴァの顔面に殻の盾による一撃――シールドバッシュをお見舞いした。ノヴァの顔面から飛び散る鼻血と折れた歯。
そして凜吾の叫びに呼応するように次々と立ち上がる対主催達。
ノヴァは敵の体勢が完全整う前に慌てて銃で一人でも多く殺害しようとするが、その前に芦塚によって銃内部の『柱』を折られて銃が暴発、戦うための腕と武器をいっぺんに失う。

芦塚「諦めな。アンタの『柱』はとっくに折れてんのさ!」

ならば、一目散に逃げようとするノヴァ。

グソクムシ「逃がすもんかあ! シャアアアアアッ!!」

しかし、今度はグソクムシに回り込まれ、その鋭い牙で足の肉を腱ごと噛みちぎられた。
『奪う』男が、戦う力も逃げる足も奪われてしまう。

凜吾「荒木、そのタロット……」
夢無「ああ。この”絆”が断ち切れない限り、まだ諦めるワケにはいかねえな」

全てを奪い取れると傲り高ぶったノヴァにも奪えなかった唯一のもの――それは『絆』。
この命の奪い合いの中で、仲間と手を取り合い、紡ぎあってきたものである。
それが簡単に切れてしまう生ぬるいものや安っぽいものならば、こうしてノヴァへの反撃には繋がらなかった。
その絆は死ですら断ち切ることのできない仲間達との確固たる繋がりであった。
強い絆があるからこそ、その結晶である絆のタロットが生まれ、奇跡を呼び起こしたのである。
そして絆が起こした奇跡の前に本当の本当に形成を逆転され、対主催に囲まれるノヴァ。その表情には死刑台に送られる罪人のごとく焦燥だけが浮かんでいた。

凜吾「見届けてやるからばっちり決めてこい!」
夢無「任せろ」

全ての元凶である外道・ノヴァへの容赦なし、手加減なしの制裁が始まる。

恭介「みんな…悲劇を終わらせるぞ」
古畑「一探偵として犯人は見過ごすわけにはいきませんね!」
千聖「墜ちろォーーーッ!! ノヴァーーーッ!!」

恭介は拳銃を、古畑はショットガンを、千聖は阪口の銃を構える。

歌月「あなたから魂の自由を勝ち取る。私はもうお人形なんかじゃない!」
夢無「死んで俺のダチ公達に詫びるんだな!」
ころび「今こそ、統香との約束を果たすべきとき……!」
デッドエンド「ここらでデッドエンド(幕切れ)にしよう。サラバだ、ノヴァ」

夢無とデッドエンドは拳を、ころびと歌月はそれぞれの刃を構えて、ノヴァに向けて突撃する。
対主催の一斉攻撃が、今、ノヴァに炸裂する!!



ノヴァ「そんな! ボクの…ボクだけのワンダフル・ワールドがああっ!!」



まず恭介・古畑・千聖の放った弾丸が体を貫き、その直後に夢無の拳が顔面に直撃、歌月のナイフが急所を突き、デッドエンドの貫手が腹を抉り、ころびの異人骨食で袈裟斬りにされるノヴァ。
果たして誰の一撃がノヴァの命を奪ったのかは定かではないが、ただ一つ言えることはノヴァの体がこれだけの攻撃を耐えれるハズがなく、攻撃が終わった頃には物言わぬ肉塊となっていた。
全てを『奪う』男は、壮絶な勝利の奪い合いの末に敗れ、最期は命を『奪われた』のであった。
そして対主催は主催者から勝利を奪い取ったことで、悲しき命の奪い合いは終わりを迎えた……

355 天へと還る魂の輝き達 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖
ノヴァの死により遂にバトルロワイヤルは終焉を迎えた
激闘の末、疲労困憊となった彼らの前に無数の光が集まった
新手かと一瞬身構えるが、その光の姿を見て、思わず笑みがこぼれた。
光の正体は獄羅童子に捕らえられ、解放された魂たちであった
天に昇る前に、自分たちを開放してくれた礼と最後の別れをしに来たのだ
クラスメイト一人一人に別れを告げる青井と夢無。
青井は魂の中に一人、小さな霊を見つけた。
青井「君を見つけてやれなくてすまない」
花子「いいよ、やっと今見つけてもらったから」
化物の中に囚われてずっと孤独に彷徨っていた地縛霊も今救われたのだ。
古畑はブギーファントム、否歌月が天に昇るのを見た
作り物の命でも、先生と会えて生きる輝きに触れることが出来てよかったと礼を告げて消えた少女に、
古畑もようやく涙を取り戻すことが出来た
一方では摩耶香のパートナーは自分だとイルファリーと菜乃が争い、また一方もみじとマルハドールが仲良く喧嘩をし、
他方ではシルフィードが瞠に美少女騎士の仲間だと今更告げていた。
ルークが、摩耶香が、ニューソンが、ハエトリグサが。
鬼が、蝙蝠が、クラスメイトが、吸血鬼が、先生が、恋人が。
皆、笑顔を見せていた。
笑いながら成仏する魂たちを見届けて、彼らは思った
確かにこの殺し合いでたくさん奪われた。
それでも、決して奪わせないものも手に入れたと。
デッドエンドはその輝きに、人間の素晴らしさを感じながら消滅した

クロスフォード「ではそろそろ私も逝かせてもらうよ、どうやら我が愛馬グリンガレッドも先に逝って待っているようだからね
          諸君らの未来に幸あれ! 御然らば!」

最期にクロスフォードが彼らの未来を祝福して天に還った。
魂たちを見送った彼らの瞳には、青い空が映っていた。

356 全ての終焉の中で 青井凛吾、ヒトガタグソクムシ、古畑六星、芦塚陽菜、荒木夢無、ころび3号、葛城恭介、音恋千聖
成仏し魂を見届けた対主催達。
しかしノヴァと獄羅童子が死んだことにより、会場を管理する者がいなくなり、崩壊が始まった。
さらに、ノヴァは自分が死んだときに会場全土を喰らうゲル状の怪物「空間喰らい」を呼び出すよう仕掛けていた
周囲がゲルに呑まれ始め、脱出する時間がもはやないと思われたその時、一頭の馬が。

青井「あれ、この馬ってもしかして…」
夢無「馬刺しになったんじゃねえのかよお前!?」

クロスフォードさんの愛馬、グリンガレッドまさかの再登場である。
負傷で動けない彼らを背に乗せ、ブルースの情報から在りかを見つけた脱出先へと向かう
伏魔殿の最下層へとグリンガレッドが駆ける
伏魔殿の最下層には会場維持のためのエネルギーが貯蔵されていた
そのエネルギーを使い脱出のためのゲートを生成しようというニューソンの策であった
最下層にたどり着き、千聖がニューソンから預かっていた装置を使いゲートを生成する
グリンガレッドが跳ね、ゲートに飛び込もうとする
しかし天井が崩れ、「空間喰らい」がゲートごと飲み込もうとした

ころび3号「異人骨食(マレビトホネハミ)!!」

一人しんがりとして離れていたころび3号が最後の力を放ち大半の「空間喰らい」を崩落する瓦礫ごと切り裂いた
ゲートに既に飛び込んだ千聖がころびの声に反応して振り返り、そして見てしまった
ころびが斬り損ねたゲルに、半身を削り喰われた瞬間を
千聖はころびを助けようと戻ろうとしたが、ころびの眼を見て立ち止まった
自分はこうなってしまっては助からない。こちらに戻ってはいけないと
千聖は涙をこらえてゲートの向こう側へと走って行った

全ての魂が解放され、崩壊する会場。
ゲートの向こう側へと対主催達を送り届けたグリンガレッドが再び会場へと戻ってきた
忠義なる馬は二君を得ず。
最期にころび3号に鼻先を寄せた後、何処へかと走り去っていった

誰もいない会場、黒いゲルが散らかる中でサイボーグが孤独に横たわる

どこかで虚空の波音が聞こえた
崩れる景色を、霧が包む


(誰も居ない……霧の中にまた一人、か…)
(ようやく出会えた……かつての知己かもしれん仲間や、幼い子供さえ……守り得なかった者には、似合いの…)
(ああ、波音が……あの恐ろしい、霧をさ迷う、乗り手のない連絡船の汽笛が……また……)

彼の脳に灰色がかった霧がかかる
色彩が失われ、静かに世界が暗転する

バトルロワイヤルが終わり、霧の世界で動くものは…なかった

【犬死亡】
【猿 死亡】
【雉 死亡】
【獄羅童子 死亡】
【ノヴァ 死亡】
【ころび3号 死亡】

【参加者たちの魂 解放】

【青井凛吾 生還】
【荒木夢無 生還】
【音恋千聖 生還】
【古畑六星 生還】
【芦塚陽菜 生還】
【葛城恭介 生還】
【ヒトガタグソクムシ 生還】

ゲーム、終了 7/139名

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最終更新:2015年11月26日 04:00