【名前】ルルーシュ・ランペルージ
【出典】コードギアス 反逆のルルーシュ
【性別】男


【本ロワでの動向】
参戦時期は魔眼ロワにおける死亡後。魔眼ロワ読者には戦犯として記憶に新しい彼であったが、今回はと言えば……

ルルーシュ「柱間は危険だ」
キラ「なんだって!それは本当かい?」

ご覧の有様である。
前回、柱間=ロワの黒幕であるという盛大な勘違いをしたまま死亡してしまった彼は当然のように死後そのまま直行参戦であったため考えを改める余裕や暇すらもなく、もはや一種の固定観念化してしまった状態となっていたのだ。
因みに、

ルルーシュ「要注意人物はうちはマダラと千手柱間……特に後者は裏から事を操る黒幕だ、気をつけろ」
柱間「うちはマダラとルルーシュ・ランペルージを探している。マダラは誤解されやすいが根はいい奴でな。ルルーシュはとても頭の良い最も信頼できる男ぞ」

これが各自登場話でのそれぞれの視点からの人物評である。げに恐ろしきは出典の違いとまさに言えるだろう。
※ルルーシュはオールジャンルロワにも参戦しており、そちらでは柱間と互いを無二の相棒と認め組んでいた。詳しくはオールジャンルロワを参照のこと。

そんなこんなで盛大に誤解を続行中のルルーシュではあるのだが、しかしフォローを一応入れるならばそれは無理からぬことという経緯もある。
自分が再び殺し合いに参加させられたと知ったルルーシュは開始早々にまるで基本のように名簿確認を行っている。
幸か不幸か名簿には前ロワで最も縁深かった仲間である古明地さとりと神峰翔太の名前はなかったものの、逆に関わりがあり知っていた名前はブラッドレイとメアリ、そして危険人物として自らの脳裏に恐怖も新しいうちはマダラくらいである。
※前ロワで自分を直接殺害した下手人である菊田もいたがルルーシュは彼の顔は憶えていても名前は知らなかった。
加えてトドメが前回あれ程に疑心暗鬼の末に警戒しまくっていた千手柱間の名前まで載っていたのだ。これでは再びテンパってしまっても仕方がないという部分もあっただろう。

前回の無様な敗退を思い返し二度と足元を掬われまいと誓ったルルーシュは、今度こそマダラと柱間の手によって犠牲者が生まれることを阻止するために精力的に他参加者に彼らの危険性を呼びかけて回る。
……尤も、結果はあまり芳しいものではなかった。柱間の危険性を訴えて回るものの殆どの参加者から戯言としてまるで相手にされなかったためでもある。
オールジャンルロワ出典の柱間は前回のロワにおいて大々的に対主催活動を行っていた組織の一つのリーダーでもあり人望も厚かったのだ。そして皮肉にもそれを大々的に喧伝しながら活動する策を取っていたのは他ならぬそのロワのルルーシュでもあった。
そうとは知らずまるで誰も信じないという事態にみんな騙されているんだと増々柱間への疑惑の念を抱いていくルルーシュ。

柱間の後進の世代であるうずまきナルトに至っては「火影になった者がそんなやつなわけねえ」と突っぱねられ、むしろお前こそ柱間の手先だろうなどと疑う始末であった。
もはや誰を信じていいのかも分からぬまま、風の噂で柱間の方までもが逆に自分を探していると聞きつけ「俺を直接始末する気か!」と警戒し、見つかって堪るかと雲隠れする始末であった。
……柱間は柱間で出典違いに気づかぬままも例え悪評を流されようが関係ないとルルーシュを保護しようと必死に探していただけだったので、これはあまりにも皮肉な構図と言えただろう。


因みに会場にはゼロを名乗り同様の格好をしたレイプ魔がいるという噂も流れており、ゼロを特別な象徴としていたルルーシュはこれにも激怒したりして色々と精神的に大変だった。

ルルーシュ「(まさか…スザクのことか?いや、確かにあいつは鍛えた身体だがマッチョという程では……クソッ、何がどうなってる!?)」

余談だがこのゼロ自体の元々はマッチョな魔王の出典の方のものであり、ゼロという存在も大半の参加者からは専らこちらのイメージで語られていたので増々彼の混乱は深まることとなった。誰かルルーシュの胃を労わって差し上げろ


この頃のルルーシュはメタ的に見ても完全に道化の立ち回りと化していたため、道化のルルーシュなどと揶揄されることもあったとかなかったとか……
そんな彼が疑心暗鬼の放浪の末に出会ったのがフェイスレスだったというのはまさに皮肉すらも通り越した運命の悪戯とでも言えただろう。
今回も色々と暗躍する目論見だったフェイスレスは、何やら奇天烈な勘違いをしてテンパっているルルーシュを利用できる駒と見なしさぞ彼の言うことを自分だけは信じているというような態度をとる。
誰も信じられず、そして信じてももらえなかったルルーシュから見ればフェイスレスは初めてこのロワで見つかった理解者と見えたのだ。
内心で操り人形程度にしか見られていないことに気づかぬまま、ルルーシュはフェイスレスに勧められるままにこれまで以上に柱間の悪評流しへと精を出す。
丁度ひでから悟空の悪評を流され信じ込み彼の討伐へと向かうために行動していたスカーレットバロンや八頭身のコンビなどは後々にこの時流した悪評を信じてしまう展開へと繋がってもいく。


進行していくロワ。打倒の目論見も立たぬままに増え続けていく犠牲者。信じてもらえない自分の話。
逆に風の噂では自分が危険人物だと触れ回っている柱間の方が賢明にロワに抗うために活動していると聞こえてくる始末だ。
ルルーシュは思い悩む。本当に自分は正しいのか、何かとんでもない思い違いを自分はしているのではないだろうか……
一度とならず共に行動していたフェイスレスにその疑念を打ち明けるも「自分の考えにもっと自信を持とうぜ」などとはぐらかされてばかりで同じことの繰り返し。
それどころか口では殺し合いの打倒をルルーシュへと説きながらも、肝心のフェイスレスの言動は節々においてどこか疑わしいところが多くもあった。
少し危険性を感じるキノピオなどを重宝し、彼を中核とした自動人形軍団を形成する。戦力の拡充と確保は確かに戦略の基本であり異を唱えるものではないと思えはしたが、それよりも今はより命の危険がある参加者たちを救い出し協力を求める方が先ではないのか?
柱間への疑惑以上にいつの間にかルルーシュの中ではフェイスレスに対する疑惑の方が深まりかけていた。
そんな時のことである。ルルーシュが自身が辿った恐れのある運命を大きく変えることになっただろう彼女と出会ったのは……


その少女はたった一人であった。たった一人だけで立ち向かってきた。
その行為は傍から見れば勇敢を通り越したもはや無謀。奇襲を成功させたとは言えどうしてたった一人だけでこうも向かってこれるのかルルーシュにはまるで分からなかった。
勝算などまるで皆無。事実、成功させたのは最初の奇襲だけでその後はまるで嬲り殺しにされたと言って良いような一方的で酷い戦いだった。
それでもその少女は逃げずに戦った。たった一人だけで、決して諦めることもなく、フェイスレスだけを狙うように。
仲間としてフェイスレスを助けるべき立場だった。いいや、それ以上に戦いとも言えない一方的な嬲り殺しこそを良しと認めずに止めるべきだったのだ。
けれどその時のルルーシュは動けなかった。単純に状況に理解が追い付けず場の雰囲気に呑まれていたし、そしてそれ以上に無謀であるはずなのにどこか反逆の勇姿と見えるその少女の姿に目を奪われていたのだ。
結果として、フェイスレスが少女に勝利を収めた時には、既に少女の姿は直視も憚られるかのような無残なものだった。
それでもルルーシュはそんな少女へと近づき、まだ息があることを確信し呼びかけていた。

ルルーシュ「何故逃げなかった?お前一人で勝てるとでも思ったのか?」
ハク「……人間はね、嫌な、時、にワケなんて……ゴホッ、言わなくって、いいんだ、って……」
ルルーシュ「なっ!?」
ハク「受け売りの、受け売り。私に、大切な事を教えてくれた、人、の……」

最期に何かを逃げずにやり遂げたかのような表情を浮かべ、少女は息を引き取った。
交わした言葉はそれだけであり、ルルーシュは少女の名前すら知りえない。
彼女が何を考え、何を思い、何を信じて戦ったのか……ルルーシュはそれすら分からない。
どんな人生を歩んで来たのかさえ分からない様なまったくの赤の他人。
それでもルルーシュは少女の最期の言葉とその表情を自分には無関係なものとして振り払うことが出来なかった。


その後も、ルルーシュはフェイスレスとやはり行動を共にした。
襲い掛かってきたあの少女はいったい何者だったのかとフェイスレスに尋ねるも、返ってきた答えは「ただの気が狂った危険人物だろうさ」と興味もなく切り捨てるかのようなものでしかなかった。

フェイスレス「それよりも僕らはこんな所で立ち止まっていられない。
       この殺し合いを一刻も早く打倒するためにも今まで以上に頑張ろうじゃないか。
       大丈夫、諦めなければ夢はいつか必ず叶うんだから」

力強い言葉と満面の笑み。フェイスレスは決して揺らぎも変わりもしていない。
しかしルルーシュには、もうフェイスレスの笑みも言葉もどこかおぞましいものにしか見えなかった。
そう、まるで己のためになら他のものを全て構わず燃やし尽くしてでも輝き続けるような、ドス黒い太陽のように……


完全にフェイスレスを信用できなくなったルルーシュは、遂に彼へと本当の目的を問い詰める。
お前はいったい何を考え、本当は何をしようとしているのか、と……
なんとか隙を突きギアスをかける機会を狙っていたルルーシュだったが、フェイスレスはあっさりとここらが潮時かというようにルルーシュを切り捨てる。
今まで用意して温存していた自動人形軍団を使いルルーシュの始末へと掛かったのだ。
追い詰められたルルーシュはそれでもただでは死なんと破れかぶれの反撃を決意するも、そんな彼を助けるかのように割って入ってきたのは白銀の影が一つ。
その銀髪はまるで先の名前も知らぬ少女の白き髪をどこか思い起こさせ、剣を構え侍という出で立ちで多勢へと立ち向かうその姿にルルーシュは一瞬目を奪われていた。
彼が何者なのかは分からない。だが少なくとも自分を守りながらフェイスレスに立ち向かう姿を見れば、敵か味方かどちらかなどと迷う必要とてない。
ルルーシュはその白銀の侍――緋村剣心へと自分も協力させてくれと呼びかける。剣心もまた最初はルルーシュを下がらせようとしたものの的確な指示を出し自分を迎撃に動かすルルーシュの手腕を理解して直ぐに応える。
多勢に無勢の戦いながらも二人は獅子奮迅と呼ぶに相応しき働きを見せ善戦する。
……尤も、圧倒的物量の差というのはそれだけで容易に絶望というものを演出してくれたが。

フェイスレス「ご覧よルルーシュ君、君とその侍君だけで勝ち目があると思うかい? 合理的な君らしくないじゃないか、なんで今更裏切るのさ」
ルルーシュ「人間は嫌な時はワケなんていらないそうだ、受け売りの受け売りの、そのまた受け売りだがな」

それでもやはり多勢に無勢。追い詰め余裕の勝利を確信しながら見下してくるフェイスレスに、しかしルルーシュは毅然とそんな言葉を言い返していた。
受け売りの受け売りの、そのまた受け売り。
それはルルーシュが名前すらも知らなかったその少女――弱音ハクが抱いていたその想いを継承した瞬間でもあった。
そしてその言葉を口にした以上、この男にだけは絶対に負けるわけにはいかない。
散って逝った彼女が託してくれた想いを今度こそ勝利へと届けてやるために。

ルルーシュ「憶えておけ、フェイスレス。俺たちは貴様にだけは絶対に負けん」

ルルーシュと剣心。ハクの想いと命を受け継いだ二人は必ずの勝利を誓い、今はこの場から撤退した。


フェイスレスの元から命からがら何とか撤退したルルーシュは改めて剣心と協力関係を結び直しながら対フェイスレス戦へ態勢を立て直していく。
他参加者にフェイスレスへの危険性を呼びかけ、軍備を拡張する彼の勢力を壊滅させるために協力者を各地で募っていく。
途中、「動くロボットは危険」「青いロボットは奇怪な音を出す」「どら焼き持ってると青ダヌキに襲われる」等の数々の錯綜する情報で誤解フラグが積み立てられ包囲網と化していたドラえもんの誤解を解くために精力的に活動している。
フェイスレス戦での撤退直後に剣心から聞いた柱間という男の人物評から、自分がしてしまったことを省みての行動であったと思われる。


ルルーシュは各地を巡り仲間を募り、並行してフェイスレス一派打倒のための策を練り続ける。
失敗も敗北も許されない。これ以上の奴の跳梁を許せば数え切れない多くの犠牲者が出てしまう。
そして何より借りがある。自分だけではない、それは志半ばでルルーシュの目の前で散ったハクの分も合わせて二人分だ。
あの”夢”を騙り、人形の繰り手のごとく他者を利用する魔人に特大の「銀の弾丸」を叩き込めるのは自分を置いて他にはいない。
そう、他の誰でもなく俺がやらなければならないんだ――その決意の下、遂にルルーシュはその決戦へと赴いた。

凡そ会場にて現状生き残っていた参加者の多くを巻き込んで行われた大規模戦となる対フェイスレス最終戦。
自動人形たちの操る要塞と化した改造煉獄へとルルーシュは相棒である剣心や仲間たちと共に決着をつけるために乗り込む。
圧倒的物量で応戦してくる自動人形軍団。その自動人形軍団の中核をなすピノキオとチャッキー。
難戦を乗り越えながら煉獄を破壊するために動力炉にまで辿り着いたルルーシュたちは剣心の決死の特攻によって遂に煉獄の動力炉を破壊する。
残るはフェイスレスの打倒のみ。そう士気の高揚に努めるルルーシュは、しかしそこで既に剣心が事切れていることを知る。
対自動人形用刀「雷迅」「虚空」の二振りを煉獄の動力部へと深々と突き立てたその体勢のまま、白銀の剣客はその生涯に幕を下ろしていた。
生命の水の治癒力すら追いつかぬほどに傷だらけの体。その傷の殆どはルルーシュや藤原妹紅や渋谷凛……彼が守るべき仲間たちの盾となるように代わりに受けたものばかりだ。
生きようとする意志は誰よりも強い……親友スザクが「生きろ」というギアスを完全に制御下においた状態以上の戦いぶりを見せながらもそれが決して偽りなどではないと感じさせるものが確かにあった。
帰るべき場所と待っているはずの人。それが確かにあったはずの男だったのに、最期は他人の為に命を使ってしまった侍。
ルルーシュは相棒と呼べるほどの時間を共に過ごした男へと、なんと言葉をかければいいのかも分からぬまま悲しみだけを必死に抑え込む。
涙は後だ。剣心は為すべきことを成し遂げたのだ。ならば彼に命を救われた自分は彼が残した憂いを断たねばならない。
即ち、フェイスレスの打倒。そして何よりこのふざけた殺し合いを完全に破壊して、彼が守った命を元の世界へと還すのだ。
他の誰でもなく、それだけはルルーシュ・ランペルージが引き継ぐべきものだ。
あの弱音ハクという少女の想いを引き継いだ時と同じように……
剣心の支給品であった白梅香をそっと彼の亡骸の傍らへと置いてやりながら、ルルーシュは胸中で剣心へと最後の別れを告げた。
すまない、緋村。そして今まで守ってくれてありがとう。お前の遺志は俺が引き継ぐ。だから……今はもうゆっくりと休んでくれ。

――かつて人斬り抜刀斎と呼ばれた志士がいた。修羅さながらに人を斬ったその男は、やがて動乱の終結と共に姿を消した。

――かつて悪逆皇帝と恐れられた少年がいた。暴君の振る舞いの限りを尽くし世界を征服したその男は、やがて黒衣の仮面が振るう刃の前に斃れた。

願いはどちらも等しく似ていた。旧時代を破壊して新時代を創る。世界の理不尽に泣く者がいなくなることを願い、誰もが笑い、救われる優しい世界を望んでいた。
その為には、後の世界に汚名が残ることすら甘んじてその手を血で染める修羅道を突き進んだ。
残った罪の重さに必死に耐えながら、それでも新時代で人を護るために生きぬいた一人の剣客のことを、友として、相棒として、ルルーシュ・ランペルージは心から尊敬し、忘れることはないだろう……


数多の犠牲の果て、そして散って逝った者たちから引き継いだ想いを伴って、ルルーシュは遂にフェイスレスと再び対峙する。
体力差の問題から先行していた妹紅や斎藤たちの奮闘。そして予想外ではあったが追い風となったワムウの助太刀。それによって追い詰められたフェイスレス。
妹紅が放ち引火した炎に周囲を囲まれながら、両者に決着の時が訪れる。

フェイスレス「……分からないなぁ、ルルーシュ君。どうしてここまでしつこく君は僕の邪魔をしてくれるのさ?
       偽善ぶりやがって気持ち悪いぜ、同じ穴のムジナのくせしてカッコつけるなよ」
ルルーシュ「一緒にするなと言ってやりたいところだが……否定はしない。俺もおまえも所詮は同類だ。
      この理不尽で思い通りにならない世界が憎くて壊したくてたまらなかった……どうしようもない大馬鹿者だ」

間違っているのは自分ではない。間違っているのはこんな理不尽を自分たちへと強いてくる世界の方だ。
そう、結局の所、自分たちの源泉とはそれに尽きる。
故にルルーシュ・ランペルージは不死の魔女と契約し、世界を壊す魔王となり。
故に白金=フェイスレスは200年もの間、歪んだ愛へと狂った地獄の機械と成り果てた。

ルルーシュ「俺が世界をチェス盤に見立てた指し手気取りならば、お前は世界を人形劇に見立てた操り手気取りだった。
      そんなどうしようもない馬鹿共が世界を自分の勝手な都合で巻き込んできた」

同じ穴のムジナ……その言葉通りだ。罪の軽重などというものは両者の間で大差ないものでしかない。
ルルーシュ・ランペルージは最初からフェイスレスに対して正義を謳い糾弾できるような立派な立場などではない。

フェイスレス「それで僕を殺して贖罪でも気取ろうってわけかい」
ルルーシュ「お前を殺したところで俺の罪の重さなど変わりはしない。……だが、お前はやり過ぎた。報いを受ける必要がある」
フェイスレス「冗談じゃないね。僕は”夢”を叶えなきゃならないんだ。どうでもいい他人が何人死のうが知ったことじゃないし、そもそも僕に操られて当然の人形共が、僕に反旗を翻すこと自体がおかしいだろ」

あくまでもフェイスレスにとって自分以外の他者とは操り人形に過ぎず。その徹底した価値観は操り手である自分に人形風情が害を及ぼすことなどありえないし許さない、そう信じて疑いすらもしない。
やはりなとフェイスレスのその価値観に予想通りと納得しながら、故にこそ致命的に相容れず許すわけにはいかない一つの理由がルルーシュの中にはある。

ルルーシュ「違うな、間違っている。間違っているぞ、フェイスレス。――撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ!
      自分だけが安全な高みから特別だと見下しているお前には人を操る資格などありはしない!」

ご都合主義の化身、機械仕掛けの神。自らをそのように誇る魔人の幻想を打ち砕くために、ルルーシュは報いとなるべき「銀の弾丸」をフェイスレスへと撃ち込む。
全ての歪みの原因。ドス黒く燃え続ける太陽の輝き。地獄の機械を回し続ける原動力。

ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! その夢を捨てよ、フェイスレス!」

王の力が示す絶対遵守の命令が彼からそれを奪い取る。


それがフェイスレスにとってどれ程に致命的となる「銀の弾丸」であったのかは、ギアスを受けたフェイスレスの姿を見れば明らかであった。
自らの身を囲み包み込もうとしている炎に抗うどころか反応すらも見せることなく、呆然自失と化し夢を失った夢追い人の姿がそこにはあるだけだった。
その姿を見ても尚、ルルーシュにはフェイスレスに対しての同情も憐みもなかった。
報いを受ける覚悟もなく悪戯に他者を踏み躙り犠牲としてきた男の末路。
それはもしかしたならありえたかもしれない自分自身の一つの姿のようにルルーシュには思えた。
C.C.やスザクといった一度目の人生で自分を支えて己の罪と罰にも最後まで付き合ってくれたくれた仲間たち。
さとりや神峰といった二度目の人生で魔王ではなく人間として自分を踏み留めてくれた仲間たち。
ハクや剣心といった三度目の人生で自分に歩むべき道を示しその想いを託して散って逝った仲間たち。
彼らのような存在がもしいなければ、きっと自分はああなっていたのかも知れない。
使い捨ての駒や操り人形ではなく、仲間がいたのだというその事実だけがルルーシュとフェイスレスのこの結末の差なのだろう。
地獄の機械は燃え落ちていく。最期まで己の敗北が何故に生まれたのかも分からぬまま。
いずれ俺自身が報いを受けて三度目の生を終えたその時に、地獄で再会したならばその理由を教えてやる。
胸中でのみ静かにそう告げて、ルルーシュはフェイスレスへと振り返ることなくその場を後にした。



巡り巡った因縁に決着はついた。ならば次に為すべきことはこの殺し合いそのものの打破。
生き残った対主催達をまとめ上げながら決意も新たにルルーシュは他の参加者たちとの合流を目指す。
自分たちがフェイスレスとの決着を迎えていた同時期、奇しくも彼にとってのもう一つの因縁ある人物たちもまた一つの決着を迎えていた。
千手柱間、うちはマダラ。自分があれ程までに打倒の為に執心していた危険人物たちがこの舞台より退場していたのだ。
宇宙最強の帝王フリーザから仲間たちを守るために命懸けで奮戦した果てでの落命。長く噛み合わぬ誤解を続けていたルルーシュにとってその話が衝撃的だったのは言うまでもない。
……やはり俺は大きな誤解をしていたのかもしれない。ルルーシュの内でそんな疑念と罪悪感が強まる。
最後まで一度として出会うことすらなく、どのような人物かも分からぬままに死んでいった男。危険人物という決めつけが先行しすぎて正体を見極めることが出来なかった。
自分はあの男から逃げ回るのではなく向かい合わねばならなかったのではないだろうか……今更ながらにそんな後悔をルルーシュは胸中にて抱いていた。

柱間とは何者だったのか? そんな疑問を解決するために直接に柱間を知る者――孫悟空にそれを訊ねようとしていたルルーシュだったが思わぬ事態が訪れる。
残存する対主催達の多くが集ったその時に、フェイスレス戦にて協力をしてくれていた柱の男・ワムウが突如として対主催達に戦いを挑んできたのだ。
対主催という立場よりも、何よりも確たる戦士としての己を選んだワムウの決断。それはルルーシュにとって思いもしなかったことだっただけに彼に対処する術を見い出せず結果として悟空をはじめ多くの犠牲を再び生むことになってしまった。

悟空亡き後、ワムウを討ち取ったエスデスが一時期柱間と同行していたことを知りルルーシュは彼女へと柱間という男がどんな人物だったのかを直接訊ねてみたものの返答は「早死にするタイプのお人好しだ」という素っ気ない一言だった。かつて自分を倒したハルユキという人物のことに関しては何やら熱心に語ろうとしてきたが……マダラにやられたことを思い出し丁重に断った。
根っからの狩猟民族気質にして感性派のエスデスにとって知らない人間に多くを語るより本質を一言で言い表した方がまだ分かるだろうという判断だったのだが……残念ながら情報を多面的に見て考察するタイプのルルーシュにとってはますます分からなくなるだけの一方であった。
一応その後、同じ考察仲間であり柱間と直接話したことがあるギーや小鉄などからは「他者のために躊躇なく頭を下げられる人」や「よく食べる面白いおっちゃん」などという評を聞きはしたものの分かったのは精々悪人ではなさそうだという人柄程度であった。
彼がどうして自分を探していたのか……もはや今となっては答を得られない永遠の謎を抱えながらも、せめて柱間が託そうとした想いもまた自分が継ぐことだけが罪滅ぼしになるはずだとルルーシュは決意も新たにした。


対主催が集結しマーダーが駆逐された終盤、ルルーシュは司波達也やギーたちとの考察を基に来たるべき主催戦に向けて作戦の煮詰めに入っていた。
現象数式、黄金瞳、IS技術、帝具、ソウルジェム……科学と魔法の両面において出揃った多様な要素。
そして自分たち全員が最低一度は今回と同じような殺し合いに参加させられていたという事実。
会場にて発見したうちはの石碑に刻まれた情報。
前回の誤情報や勘違いに踊らされた失敗を二度と犯さぬよう注意深く戒めながらルルーシュは自らが取るべき役割をもう一度慎重に吟味する。
恐らくそれは主催者の真の目論見とも重なっているであろうことをルルーシュ自身も察していた。最悪、自身の失敗は仲間たち全員の敗北にも繋がることになる。
責任は重大。だがそれは元より覚悟の上。
何より仲間たちはそれを承知の上で自分を信じて託してくれた。ならばそれに応えてみせるのが自分の役割だ。



ルルーシュ「条件は全て整った。後は……俺がこの階段を昇り切れるかどうかだ」

見上げるは天にも届かんばかりに果てしなく続く黄金螺旋階段。
その前に立つのはルルーシュただ一人。仲間たちは主催戦が始まると同時に分断され、個々に自らの内にある心の闇と対峙し今もそれと戦っているはずだ。
ルルーシュだけがこの階段の前に立たされているのは主催者の意図によるもの。ここを昇りCの世界へと至ることが主催者の……そして自分たちの目的だ。
かつてCの世界へと踏み込み、ギアスをもって干渉したことのある経験を持つのはルルーシュだけだった。仲間たちは故に敢えて主催者の目的に沿う危険を承知でギアスを持つルルーシュへと託したのだ。主催者の意図すら乗り越えこのバトルロワイアルという機構そのものを打ち壊すために。
失敗も敗北も許されぬ最後の大仕事。気後れしそうになる気持ちを反逆の信念で捻じ伏せて、ルルーシュは階段を駆け上がる。
今度こそ本当にこのバトルロワイアルを打ち壊すために。そして自分と共に戦った仲間たちを『明日』へと帰すために……


記憶にない男の高らかに謳う声が聞こえてくる。
――喝采せよ! 喝采せよ!

視界の端に映る道化師の幻が囁きかけてくる。
――こんにちは、ルルーシュ。諦める時だ。

それらがいつから聞こえ出したのか。意識し始めたのは体力が底を尽き、気力だけを支えに昇り始めた頃からだろうか。
実際、ルルーシュにとってこの階段登りは困難を極めた。元より体力不足という要因も大きいことながら、昇れど昇れど果てなく続く闇というのは精神的に堪えるものがあった。
本当に果てはあるのか。闇の向こうには光があるのか。自分は本当にそこに辿り着けるのか。
不安はそのまま恐怖となり、恐怖は自らに課せられた重責となって身を蝕む。
知らない男の声が煩わしかった。視界の端で踊る道化師の幻が鬱陶しかった。何もかもをいっそのこと投げ出したいとすら思った。
しかしそれでもルルーシュは昇り続ける。足を止めず、一歩一歩、一段一段、自らの歩みを踏みしめながら、道を踏み外さぬように。
諦めるわけにはいかなかった。負けるわけにはいかなかった。屈するわけにはいかなかった。投げ出すわけにはいかなかった。
この胸には仲間に託された想いがある。かつて結んだかけがえのない絆が今も繋がれている。
神峰翔太なら決して諦めないだろう。
古明地さとりなら決して諦めないだろう。
弱音ハクなら決して諦めないだろう。
緋村剣心なら決して諦めないだろう。
ならば――ルルーシュ・ランペルージもまた決して諦めるわけにはいかない。
かつて悪逆と呼ばれた少年王は天を目指す。昇れど昇れど果てなき闇を。光を目指してただ駆け抜け続ける。
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最終更新:2024年07月13日 23:03