423 事態急変! 決戦の音楽隊 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッドヒューマンスレイヤージョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、千太郎、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、リエル・リュシエール、魔人ウロボロス、真崎洸、魔神マキシム
スエボシからの声明に衝撃を受けるネオ・ブレーメンズ。
事態はもはや参加者どころか世界的危機に直面していた。
リエルが持っていたノートパソコンで外部への救援を願おうとも、主催基地からのジャミングでできなくなり、基地を制圧しない限り応援は呼べそうにない。
むざむざ弾道ミサイルを撃たせるわけにもいかない以上、脱出を後回しにして主催に戦いを挑むしかなかった。
奇跡でも起きない限り、生還が非常に困難な戦いになるだろう。
夕露は戦闘力が低い・皆無である未色と沙織と朔郎だけでも生き延びられるように、他の者が戦っている内に未色の飛行型ロボディに乗っての脱出を進言するが、三人は自分たちでも何かの役に立つかもしれないことや、これまで散っていった者のためにも戦いを最後まで見届けたいと言い、連れて行くしかなかった。

まず、作戦では夕露、信長、ミーティアのグループに別れることにする。
夕露、ヒグマーマン、由奈、真道、九曜、レイ、ヒューマンスレイヤー、ゲイシー、はるか、ブレイン、ファックマンは主催基地に潜入しての制圧。
その夕露グループを支援するのが信長率いる、ロックス、ロボロン、未色、舞菜、千太郎のロボディ部隊である。
後方支援にはミーティアを軸に沙織、立華、勅使峰、朔郎、リエルが担当し、その護衛もしくは予備戦力として魔人のウロボロスと洸がつく。

作戦の決まった対主催連合軍ネオ・ブレーメンズは主催基地へ向かう。
全ての決着をつけるために。

そして、待ち受けていたのはロボディに乗った須原とスエボシ。

マキシムは現状高みの見物らしいが何を企んでるのか……?
424 夢幻 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、千太郎、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、リエル・リュシエール、魔人ウロボロス、真崎洸、魔神マキシム








戦いは終わった。
熾烈な戦いではあったが、見事に基地は制圧され、奇跡的に死者は0であった。
互いの生還を喜び合い、それぞれの健闘を称える対主催たち。
特に立華は須原、マキシム、スエボシといった主催陣全員を絞め落とす五臓六腑の活躍であった。
さあ、あとは家に帰るだけだ。
世界を救った英雄たちの凱旋に街ゆく人皆が黄色い悲鳴を


『危ない』『気づいて』『サクロウ』


何やら、セータームーンの形見であるぬいぐるみがうるさく警告を発していた。
今まで自分に危険を伝えて助けてくれた魔法のぬいぐるみの言葉に、何か嫌な予感を感じた朔郎は眼鏡を外して魔眼『真実の眼』を発動させる。

すると、自分たちが主催に勝った『嘘』は消え失せ、空を見上げると浮かれていたブレーメンズに向けて雨のように放たれたミサイルや榴弾が迫っていた。

マキシムは最初にブレーメンズの力を試すべく、勝利の幻覚を見せたのだ。
突破できれば戦いに値する者たちであり、これで全滅するようならそこまで連中だったということになるが……
425 遙かなる戦い、開幕(オンステージ) 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、千太郎、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、リエル・リュシエール、魔人ウロボロス、真崎洸
朔郎の活躍により飛んできたミサイル・榴弾は迎撃がギリギリで間に合い、犠牲者を出すことはなかった。
朔郎の真実の眼がなかったら危うく全滅していたであろう。
掴んだ勝利が幻だったことに一度は落胆したブレーメンズであったが、そこへ誰ともなく言い出した。
「この光景を本物にするんだ!」と。
その言葉を聞いて奮い立たされたブレーメンズに主催によるロボディ部隊が迫る。

夕露「私たちネオ・ブレーメンズは貴様らには決して屈しない!
   総員戦闘開始! 歯磨きをろくにできなさそうな歯クソどものケツに鉛玉をぶち込め!」
「「「ウーラー!!」」」

今度こそ本物の勝利を掴むために、ネオ・ブレーメンズの真の戦いが始まる。
426 FRONT MISSION 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、千太郎、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、リエル・リュシエール、魔人ウロボロス、真崎洸
まず前哨戦として現れたのはミルドレッドの部隊であるロボディ軍団。
ミルドレッドの部隊は紛争において、江洲衛府島学園の生徒を中心に虐殺を行っているので高校生組にとっては怨敵であった。
ミルドレッドの部隊は主催が浄化杜の繋がりを示すことを意味しており、ネオ・ブレーメンズは江洲衛府島で死んでいった者の無念を晴らすためにも戦いを挑む。
先陣を切るのは6機のロボディであった。

ロックス「一番機、回縞ロックス、出るぜ!」
ロボロン「二番機、ロボロン、ロールアウト(出撃)」
信長「三番機、織田信長、出陣する!」
未色「四番機、時軸未色、いきます!」
舞菜「五番機、大海舞菜、出るわよ!」
千太郎「六番機、千太郎、行きまーす!」

敵はサクマが操っていたものと違い、有人機。そしてこちらを圧倒的に上回る数を揃えていたので正面からの戦いは不利だと思い、まずは森へ逃げ込む。
信長は騎馬兵は森のような遮蔽物が多い場所では機動力を生かせなくなることを兵法として知っており、巨体を持つロボディもまた木々に挟まれて身動きが取れなくなっていた。
夕露たちはともかく、同じロボディに乗る信長たちも条件は同じハズだったが、飛行できる未色の機体に味方を牽引させることで空から攻撃できるアドバンテージによって森に迷い込んだロボディを全滅に追い込む。
戦国時代に培った戦いの記憶が活きたのだ。

ならばと外にいた敵ロボディ部隊は火炎放射器やバズーカなどの戦国時代にはなかった破壊兵器で森ごとブレーメンズを焼き払おうとしたが、ここではゲリラ戦に慣れている夕露の指揮によって阻止される。
重火器を放つ前に由奈のダン譲りの狙撃によって燃料や砲弾をうち貫いて暴発させ、ひるんだところを異能に頼らない肉弾戦に優れたグループが突撃する。
その際、対魔法戦用に魔法無効化の処理をしてるロボディ部隊もいたのだが、ブレインは筋肉による力技で問題なく潰していき「我が魔法はその程度では封じられない」と見栄をを切った。
ちなみに敵味方からそれ魔法じゃないし、と心の中でツッコミを受けたのは言うまでもない。

前哨戦として出てきた敵ロボディ部隊を殲滅させたブレーメンズ。
さっそく基地内の情報を探るためにロボディからパイロットを引きずり出して捕虜にしようとする。
ところがいくら脅しかけてもパイロットがコクピットから出てくる様子がない。
確かに有人機のハズだが……不振に思ったロボロンはスキャンを行った。

ロボロン「生体反応はあるのにやたら動体反応が無い……まさか!?」
敵ロボディのコクピットをこじ開ける
ロボロン「……ガッデム!!」

コクピットの中から現れたのは人間の脳髄であった。
有人は有人でも、死んだ人間の脳髄を制御デバイスとして利用した部品だったのである。
その事実と浄化杜の狂気性にブレーメンズは戦慄した。
さらにロボロンが詳細なスキャンを行うとデバイスとして使われた脳髄には死亡した江洲衛府島防衛軍メンバー、義勇兵としてのブレーメンズメンバー、テロでなくなった江洲衛府島学園生徒、さらには同じ浄化杜メンバーの死体を利用してロボディに組み込まれていたことが判明する。

真道「学園が浄化杜の虐殺にあった後、死体は全部首が無くなっていたが、クズが!悪趣味な真似しやがって!!」
九曜「この中に死んだ後輩たちの脳髄が入ってるですって……うわああああああああああああ!!」

人間を兵器として扱う……主催ひいては浄化杜の同じ人間とは思えぬ所業にネオ・ブレーメンズの怒りが爆発する。
絶対に報いを受けさせてやる――ほとんどの面子が主催に対して思ったことであった。

行軍し敵基地が見えてきたところで、主力メンバーは手はず通りに非戦闘員組であるミーティアらと別れて基地へと向かう。
その中でロックスはラップスが死亡した日、死体が回収できなかったことを思い出し、弟がロボディの部品として組み込まれていないことを祈った。
だがその祈りは裏切られることになる……
427 武器人間 ディスメラ・スイート、ブッチャー
ネオ・ブレーメンズが戦闘を始めたと同時に会場から脱出しようとするディスメラとブッチャー。
そこへ主催によるロボディ部隊が襲撃を仕掛けてきた。
幸い数は少なく、劣化「Q」であるブッチャーの敵ではなかったので程なく無力化されたが、中破した機体の中に死んだハズのラップスの識別反応があり、まさか本当にラップスがいるのかと思ってディスメラがコクピットをこじ開けると、生首をロボディに接続されたラップス“だったもの”がそこにはあった。
恋人が兵器にされていたことに衝撃を受けるディスメラ。
自分はまだいい。兄想いで女好きで、こんな汚れた私を受け入れてくれた優しい少年が何をしたというのか?
ラップスへの死すら蹂躙された仕打ちには納得できず、泣き崩れるしかなかった。
ラップス側はディスメラのことがわからないのか、ダメージでろくに動けないにも関わらず、ディスメラを殺そうとして無駄に足掻く。
哀れな殺人マシンになってしまったラップスを見ていられないディスメラだったが、彼への想いにより介錯もできなかった。
ブッチャーは自分と同じく争いの狂気による産物を目にして、ディスメラの傍で立ち尽くしていた。
脱出のことすら既に頭から離れ、ただただ二人と一機の時間だけが過ぎていく……
428 冥き黎明のスパルタン 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、千太郎、須原毅
基地の前ではミルドレッドの息がかかった浄化杜兵と「Q」搭載型ロボディに乗った須原毅が待ち受けていた。
ブレーメンズに向けて己の思想であるイジメ人間の可能性の可能性と、毒にしかならないヒューマニズムの破棄を説く。
かのスパルタ人もそうやって強くなっていったのだ。その思想を人類の祖先とも言えるスエボシも認めており、イジメは人を育てるのに必要なのだ、と。
賛同して仲間に牙を向けたら配下にしてやろうとも考えたが、須原の弱者を食い物にする思想に同調する者は誰ひとりおらず、戦いが開始される。
しかし敵ロボディや兵士はまだしも大国の艦隊すら皆殺しにした「Q」の戦闘力は圧倒的で苦戦するブレーメンズ。
そこで信長は夕露のグループの突入のためにロボディ部隊が須原の囮になると言い、夕露グループを基地に侵入させた。
闇鴉やシルキーすら大きく上回る力を持つ「Q」に6機は果たして勝てるのだろうか……?
429 ダブルキャスト 魔人ウロボロス、真崎洸、リエル・リュシエール、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、魔神マキシム
ウロボロス「キサマら全員、場外ホームランだ! 喰らえい!!」
カキーンカキーンカキーンカキーン

「「うわあああああああああああああ!」」

やはり非戦闘員組にも容赦のない攻撃を仕掛けてきたミルドレッドの部隊。
しかしウロボロスのバットによって次々と星になり、洸による高熱と冷気攻撃で撃破されていく。
このままではまずいと思った敵部隊は『異能装備型ロボディ』と言われた機体を前面に押し出す。
するとウロボロスの投球も洸の温度差攻撃も全てかき消され、敵の進軍を押しとどめられなくなってしまう。
まるで自分の皆無性能力のようだと、リエルは嫌な胸騒ぎを抑えられなかった。
普通のロボディと違い、対異能バリアを張っていないところに気づいて、ウロボロスが本来の暗黒物質による攻撃で件のロボディのコクピットハッチを吹き飛ばすと、そこから現れたのはリエルそっくりな……否、胸像のようにロボディに接続されたリエルそのものであった。

実は本物のリエルの事故死の裏には浄化杜が絡んでおり、この双子の姉妹に皆無性の素質があると見て、能力だけを欲しがった浄化杜が事故死に見せかけて本物のリエルを殺害し、ミルドレッドの手によってロボディの部品となったのだ。
リエルとミエルは双子の姉妹であり、血統上で同じ異能力が使えても何らおかしくない。
死んだ者は心がないので皆無性を能力として形成できないが、エネルギーだけを抽出して単純な破壊兵器に転用することは可能だ。
それが立華と勅使峰の考察であったが、リエル(ミエル)の耳には届いていない。
自分がリエルではなくミエルであったことや、殺人兵器にされた真実を受け入れられずミエルは発狂。
さらに皆無性能力の暴走により、敵味方関係ない能力による無差別攻撃を始めてしまう。
幸い肉体を半分にされたのは敵の兵隊ぐらいでミーティアらは無事であったが、ウロボロスと洸がはぐれてしまい、手元にロボディもないのでミエルの暴走を止めることもできず、やむなく放置するしかなかった。

ミーティアとはぐれた洸は魔神の存在を感知してから自分の魔人としての力が強まっていくのを感じ不安に思い、同時にだんだん強くなっていることからマキシムの接近を感じていた。
そして……二人の魔人の前に災厄の存在、恐るべき魔神マキシムが現れた。
430 最終兵士 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、スエボシ、ミルドレッド・イズベルス
基地に侵入した夕露たちは敵兵士たちを倒しながら基地の中枢へと向かう。
その途中でロボディと化したクライヴに遭遇する。なんの因果か兄弟であるアスティオと同じロボディとしての対主催である。
浄化杜のエースパイロットであるクライヴは「Q」にこそ及ばないものの高い戦闘力を誇り、ブレーメンズの猛者の進行を押しとどめる。
そこでヒグマーマンは奥の手であり、本来は肉体に負担がかかりすぎて寿命を大幅に縮めるために多用できない裏ワザを使う。
それは北海道特産品をすべて食べることで北海道すべての恵みを得た事で発言する究極モード、ヒグマーマン・北海道・極モードである。
最強の北海道的ヒーローになったヒグマーマンがクライヴに挑む!

タラバシザー:タラバガニの力を持つすごいはさみ。どんなものでも切っちゃうよ!
サーモンジャンプ:産卵期の鮭よろしく目茶苦茶はねるよ!
夕張メロンボンバー:夕張メロンと同じ色(橙)のエナジーボールを放つよ!
牛乳レーザー:北海道の牛乳と同じ純白の光線を放つよ!
スープカレーファイア:スープカレーの辛さをイメージした火炎放射だよ!

この内、上二つは異能に含まれない物理判定のためかクライヴのロボディにも有効であり大打撃を与えて大破させた。
好敵手だったクライヴほどの男が死を弄ばれてこんな最期を遂げるとは……夕露は嘆きに似た感情を覚える。

クライヴを撃破していよいよ中枢に進軍した夕露たちを待ち受けていたのは、この殺し合いの黒幕である古の巫女・スエボシと浄化杜幹部であるミルドレッドであった。
悠々と玉座に座っているスエボシはともかく、ミルドレッドはモニターの通信画像でしか姿を見せていない。
ブレーメンズは先ほどの「有人」ロボディの件もあって怒り心頭であったため、ミルドレッドはどこかと問う。
そして現れたのはミルドレッド・イズベルス……の脳髄の入ったポッドであった。
431 河童大奮闘 千太郎、織田信長(織田信長)、回縞ロックス、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、須原毅
相変わらず苦戦を強いられ、ダメージを重ねていく信長のロボディ部隊。
「Q」は無限に学習する兵器であり、学習に応じてパワーアップしていく。
底知れなさはモリアーティや田山以上であり、ロックスやロボロンの技術や、信長の兵法が全く通じなかった。
弱い者いじめをしている時と同じ興奮を覚えながら、須原は対主催たちを更に絶望させるためにミーティアらがいる方角に向けてエネルギーキャノンを発射しようとする。
そこには勅使峰もおり、撃たせれば彼女は死ぬことになる。
そんなことは許せないと千太郎は死を覚悟で須原機に突貫する。
意外にも須原が油断していたことも相まって、千太郎の決死のタックルは功を成し、基地近くの湖に引きずり込むことに成功する。
千太郎の乗っているロボディは水陸両用機であるメロウ。そして河童には水辺は得意な地形であり、ポテンシャルを最大限に引き出すことができる。
そして湖の中で須原機を力の限り蹴り殴る千太郎機。
勅使峰が言っていた「やればできる男」を実践するために、そして人間の中で初めて自分を認めてくれた勅使峰を守るための奮起であった。
湖を見つめる他の仲間たちも千太郎の意外な活躍により本当に勝てるのではないか、と思わせた。

……その期待は糠喜びであった。
湖から出てきたのは「Q」と手足をもがれたメロウ。
須原は対主催の絶望を更に強めるためにわざと千太郎が勝てそうな雰囲気を演出したのだ。つまり舐めプである。
いかんせん戦闘経験が不足している千太郎の全力では「Q」に僅かな傷をつけることぐらいしかできなかった。

須原「河童は大人しく……人間様の奴隷になっとればいいのだーーーッ!!」

全力が全く届かない敵を相手に絶望し、恐怖の中で千太郎はコクピットを貫かれ、潰されて死亡した。
ロックスや未色、舞菜の怒号や悲鳴をバックコーラスに須原と「Q」による弱い者イジメは続く……
432 魔人の最期 真崎洸、魔人ウロボロス、魔神マキシム、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎
ウロボロスと共にマキシムと戦うもやはり魔神は強く、次第に追い詰められていく洸。
野球や温度差攻撃を全く意に介さない事象を自在に捻じ曲げる力に抗えない二人。
戦いの過程でウロボロスがマキシムにバットを奪われ、逆にホームランされてしまう。
一人で戦わなければならず、どう足掻いても勝ち目のない敵に翻弄される洸。
Fはここでも体を明け渡せばマキシムを倒すことができると誘惑するが、洸は断固拒否する。
駄々を捏ねるな、まだ魔人になるのが嫌なのかとFは激を飛ばすが、洸はそうではないと言った。
例え死ぬとわかっても、勝てるかもしれなくても、力には屈したくないと少年は語った。
マキシムがいくら怖くても、Fが本当に絶大な力を持っていても、仲間のために、そして愛するミーティアを守るために戦い続けるのだと言う。
だから肉体が滅んでも魂だけは明け渡さないと自分に誓ったのだ。

だが少年の思いと裏腹に命に関わるダメージを一撃一撃と受けていく。
万策が尽きたと思われたその時、奴を何としてでも打ち倒したい、という思いで思考が埋め尽くされたながら、洸は能力を利用して最後の自爆攻撃を仕掛ける。
この身砕いてでも誰かを守りたいと願った少年は爆炎の中に消えていった……


ミーティア「洸くん――?」


突如、離れた場所で起こった大爆発に嫌な虫の知らせを覚えるミーティア。
すると次の瞬間、誰かが胸から血を吹き出しながら倒れた。
周囲の仲間たちが見ると、そこには事象を捻じ曲げてワープし、魔力のぬいぐるみが警告を放つより早く朔郎を切り裂いたマキシムがいた。
433 新たな魔人 真崎洸
洸の自爆はマキシムに一矢報いることもできず、彼の肉体はバラバラになっていた。
普通なら魔人でも死を迎える状態である。



そう、魔人‘F’がただの魔人であったなら。



精神世界にて少年と魔人は最後の会話を交わす。


『おめでとう、お前の勝ちだ。洸』
「F!どういう事だ!?」
『俺は消える。お前の体と共にな』
「な…に…!?」
『…元より魔人となったお前の方が俺よりも精神は強かったのさ、だから俺は消える。セラフィムがあの男の中に溶けてしまったようにな』
「馬鹿な!何で今なんだよ!」
『環境のせいだろうな。この殺し合いに放り込まれてからお前の意志は幾度となく強くなった。奴を倒したい、あの人を守りたい、死にたくはない、と』
「待てよ!消えるってなんなんだよ!僕の体と一緒にって!」
『魔人の体を持っているのはお前だが…人の体は俺だ。俺が最初にやろうとしていた事を図らずもお前はやってしまったんだ』
「そ、それじゃあ!」
『…終ぞ俺達の目的は果たせなかった、という事さ。洸。もう分離も出来ない。お前は俺を取り込み、完全な魔人になるのさ。俺がなりたくてなりたくて仕方がなかった、な』
「…ッ!」
『お前の事を幾度も死ねばいいと思ったが…今にして思えば俺はお前を誇りに思うべきだったんだな。我が子孫よ。お前は数百年前の魔人に精神力だけで打ち勝ったんだ』
『これは先祖として血を絶やさなかった子孫に対する最大の恩返しであり…魔人を閉じ込めた忌々しい人間に対する最大の呪いだ』
『俺は最も欲しかったものを明け渡すことになるが』
『お前も最も取り戻したかったものを失うんだ』
『だが喜べ、完全に魔人になったお前は強い』
『魔神にだって引けはとるまい』
「『F』…!」

Fは今までずっと勧誘するフリをして洸という人間を試していたのである。
Fはその強すぎる力を制御できない暴れん坊で精神的に未熟であったために封印された過去を持つ。
もし洸がこの力を悪用したり、安易に力に魅入るような惰弱な精神の持ち主であれば乗っ取った方がマシだとも考えていた。
だが洸は、Fが誘惑しても決して力を悪用することはしなかったのだ。
それでもこの前までは力を恐れているだけだったので、まだ力を扱えるほどに強いとは言えなかったが、紛争と殺し合いという環境が今の洸に変化をもたらした。
かけがいのない仲間や愛する人のために今まで恐れていた力を積極的に使い、何度傷つき倒れても強敵に立ち向かおうつする。
それでいて危険な存在であるFに体を明け渡すことを最後までしなかった。
Fが求めていた、力の危険性を理解しつつ、力に溺れず、誰かを守るためだけに振るうことができる者……洸はそれになれたのである。

Fは継承に値する少年に全てを与え、溶け合うことを決めた。
かつての洸であれば死んでも魔人と一つになることは拒否したであろうが、守りたい者がいる彼は魔人化を受け入れ、人間を捨てることに決める。

『最後まで名も思い出せなかったな…畜生』
『さようなら、洸』
『おめでとう、洸』

【真崎洸―消滅】
【魔人‘F’―消滅】


現実世界。
自爆によってバラバラになった魔人の肉体が巨大な魔力により、一つに集まり再生されていく。
しかし、そこに立っていたのはFとも洸ともつかない、全く新しい魔人であった。

【魔人‘???’―誕生】

434 禍々しき真実 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、スエボシ、ミルドレッド・イズベルス
とうとう、黒幕の下にたどり着いた夕露グループをスエボシは褒め讃えつつ、この殺し合いを開いた目的や一連の事件の真実を告げる。
この殺し合いの目的は子ら、すなわり人類がどれだけ強くなったかを見るための儀式であるとのこと。
スエボシは争いが人類を強くすることを60万年前から信じており、儀式を起こす前には世界を揺るがすほどの戦争を起こすのだという。
数多の戦争や第一次・第二次世界大戦すらも本当は彼女によって引き起こされたものらしい。
さらに浄化杜による江洲衛府島侵攻も儀式を始める前に人類全体におけるステータスを高めるためであり、そもそも浄化杜立上げのきっかけになった事件――異能者が無能力者難民を虐殺した『サイコの暴虐事件』はスエボシが実行犯になった異能者を神通力で洗脳することで起こしたものであり、浄化杜絡みの異能者・無能力者の対立はスエボシが意図的に引き起こしたものであった。
更に浄化杜の前リーダーはミルドレッドによって謀殺されており、既に乗っ取られていた。
彼女の息がかかっている私兵以外は前リーダーが死んでいて偽物が指示を出していることも知らず、実質ミルドレッドの欲望を満たすためだけの組織になり下がっていたのだ。
そのミルドレッドの野望とは究極の戦闘AIである「Q」の完成であり、そのためには自身の脳以外を犠牲にするほどに心血を注いでいた。
浄化杜は一人の女の野望達成の道具にすぎず、江洲衛府島の紛争もまた「Q」完成を磐石にするためにスエボシの計画に便乗したに過ぎないかったのだ。
世界を脅かす異能者への報復、異能者による驚異を払拭するための戦いといった初志は既に失われていたのである。

真道「醜いな、老いさらばえた支配者気取り…見るに堪えない、醜悪だな」
スエボシ「ああもっとぉぉぉぉ!」

真実を知り、スエボシたちを非難する対主催。
ちなみにスエボシはどのつくМであり、罵声を受けて快感を覚えるスエボシにドン引きする一幕もあった。
スエボシの口から語られたアイリスフィアの青空教室の襲撃事件のきっかけにもなったサイコの大暴虐事件の主犯が自分であると告げられたことに夕露は激怒する。
主催陣営はこの手で必ず処刑すると宣言すると同時に、なぜ回りくどく戦争を起こしてまで殺し合いを開くのか、人類を強くしようとすることに拘るのか夕露は疑問を口にする。
実験? 支配? 憎悪? 享楽? 破壊? ……そのどれでもなく、スエボシは一重に愛情と答えた。
全員が首を傾げるが、スエボシはまあ聞けと説明する。
争いが人間をどんどん強くし、進化を促しているのは有史以前からの人間史が証明している。
戦うために武器を作り、より強靭で効率よく戦うために武器は振るう腕も作る腕も精錬されていった。
人種的にもスエボシの遺伝子を受け継いだ者でも、スエボシ由来でなくても異能を使う者が生まれた。
人間がもし戦う意思がなかったら他の動物に狩られるだけの羊のような弱い生き物になっていただろう。
実際、そうやって強くなれなかった部族や人種が魔族などに抗うことも許されないまま滅ぼされ、涙を飲んだことも多々あるという。
内外の驚異に対抗するためには人類が種として、多大な犠牲を払っても強くなる必要がどうしてもあるのだ。
現代においても、江洲衛府島の紛争によって機動兵器であるロボディの開発が進み、対異能バリアによって無能力者でも魔人・魔族・魔王・旧支配者のような敵に対抗できるようになった。
ロボディがなければそれらの外敵や暴走した異能者に食い物にされるだけの未来が待っていただろう。
このように人類の進化に争いは不可欠なのだ。
それはスエボシにとって深い愛を注いでいるつもりであり、その結果、全人類から怨まれてもスエボシは構わずに罪を受け入れ、殺されるのも辞さないという。
しかし、これまでの人類は母の言葉通りに優勝するか、反抗しても母の下にたどり着けない者も多く、とても人類を独り立ちさせられなかったと言った。
だが、今回の儀式はこんなにも多くの者が集っており、今度こそ母である自分を殺せるのではないかと期待していた。
母を殺した時こそ人類の巣立ちが始まるのだから。

一通りの話が終わり、スエボシと夕露グループは交戦を始める。
しかし突然、はるかが裏切ってゲイシーを攻撃し、深手を負わせた。
スエボシはサイコの暴虐事件の折のように神通力で洗脳耐性0のはるかを操って襲わせたのだ。
さあ、まずは小手調べからだ。
わらわを殺す前にこの娘を殺して乗り越えてみせろ、と「強くなるために」苛烈な試練を与える母・スエボシは微笑んだ。
435 SMALL TWO OF PIECES 回縞ロックス、織田信長(織田信長)、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、須原毅
圧倒的な性能の前に次々と倒れていくロボディ部隊と高笑いを上げてトドメを刺しに行く須原機。
須原が最初に殺そうと選んだのはリーダーである信長であった。
ミダースの首根っこを掴まれ、コクピットに銃口を向けられた瞬間、信長はタイムスリップによって死ぬべき本能寺の変で生き残ってしまったツケがここにきたと思い、死を覚悟する。
処刑されかかる信長を見て、ロックスの感情が爆発する。

また俺は誰も守れないのか?
ラップスのように、セータームーンのように、かためちゃんのように、雅のように、アイリスフィアのように、ネメスのように、司空のように、水本のように、カリンのように、千太郎のように……香織の時のように。
皆良いやつだった。それが浄化杜や田山のような理不尽なものに奪われた。
信長ほどの器の大きい男がイジメを史上とする狂った、世界の歪みそのもののような男に殺されようとしている。
また俺には何もできないのかと、ロックスは絶望しかける。
だが絶望しきるその前にコクピットの中で歌が響き渡った。
歌っているのは未色であり、自分や周囲を奮い立たすための歌だった。
歌詞はまだ未完成であるこの殺し合いで散っていった「素晴らしき人々」の歌。
この歌によってロックスは奮い立たされる。

――理不尽を認められるか!
俺には理不尽から逃げるのには性に合わない、そして現実や悲しみからも逃げない。
だが過去は変えられずとも受けた悲しみを糧に力に変えて、目の前にある理不尽な悲劇を回避しようとすることはできるはずだ。
そしてロックスは無茶を承知で須原機に突貫する。全ては素晴らしく正しい人々を守りたいがために。

その時、不思議なことが起こった。
完全に偶然ではあるが未色のロボディは対異能バリア発生装置が壊れており、歌を通じて精神に訴えかける力が発動していた。
それだけならロックスたちの士気を回復させるしかなかったが、感情の爆発によって不死蝶の力を全開放した未色の歌はそれ以上を超えていた。
かつてセラフィム田山が会場各地に仕掛けられて放置されたエネルギー収集装置である十字架が呼応し、再起動したのだ。
信長の細工によってエネルギーが逆流させられたことで十字架にはセラフィムのみならず、メネス、アアアア、サレオスの魔力も詰まっている。
その十字架が信長による細工を打ち破り、持ち主へと全エネルギーを返還していく。
しかしセラフィムはもういない……ならばエネルギーを受け取るのは誰か?


答えはかつて香織を名乗っていたスフィア、ダアトである。
ロックスがお守り代わりに持っていたダアトがコンソールに合体し、莫大なエネルギーを持ったダアトはツギハギの機体であったシルキー・リペアを再構成し、進化させた。


そして間に合わないと思われた信長機への処刑を、須原機の目の前にワープしてくるようにロックス機は防いだ。
驚く須原の目の前には神々しいフォルムと羽と多数のスフィアを持って生まれ変わったロックスのロボディがあった。
436 光輝、到来 ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、魔神マキシム、魔人???
マキシムは先ほどのブレーメンズの幻覚からの立ち直りが異様に早かったのを頭の片隅で疑問に思っていた。
故に能力の効果範囲が非常に広い朔朗から潰しにかかったのである。
朔朗は今までの人生経験からずっと基本隅っこで空気に徹していたが、魔神の前では通用しなかった。
幸運なのはマキシムが一撃で朔郎を殺すつもりがなかったために、即死は免れたことだが、どのみちこのままでは失血で死んでしまうだろう。
マキシムを追い払うべくミーティアはスパイ技術を、立華は護符を使って追い払おうとするが、魔神には通じずに一撃で地面に転がされることになる。

ここでマキシムは「今から仲間を裏切り、殺し合いを再開して、最後の一人になれば生かしてやろう」と。
この場にいる面子の戦闘力ではマキシムを倒すなど到底不可能だ。
治療が間に合わない朔郎に関しては介錯してあげた方が良いように思える。
更にウロボロスは敗れ、洸は死に別行動を取っている夕露と信長のグループも苦戦し、勝ち目は薄いことを告げる。
しかし、ここにいる誰もがマキシムに従うことはなかった。

沙織「命欲しさに大好きな人たちを裏切るなんて嫌だ!」
立華「私は真道を信じてる……仲間が戦っているのに自分だけ逃げる真似はしたくない」
勅使峰「生き恥をかくぐらいなら名誉な死を選ばせてもらうよ」
朔郎「た、例え自分の死でも……目を背けない」
ミーティア「……男を萎えさせるような破廉恥な女には成りたくない。
      例え愛する彼が死んでいたとしても! 彼と釣り合わない女に私はならないわ!」

圧倒的な存在を目の前にした苦境でも揺るがない対主催の信念の「輝き」に、マキシムは心惹かれ感動を覚えた。
元々、先ほどの裏切れば助けるという言葉はマキシムが対主催を輝きを持ちえるに値するか試すための言葉であった。
「悪とは何か? 弱さから生じる すべてのものである」とニーチェの言葉を引用し、ミーティアたちを善の心を持つ強き者であると認めて讃えるのだった。


故に消し飛ばすことに決めた。
全力の力で殺そうとするのはマキシムなりの強きものたちへの敬意である。
気づいたミーティアはせめて仲間の四人を逃がすが囮になった自分は攻撃に曝されそうになる。
ミーティアは死ぬ間際に最愛の少年の名を口にしようとするが。

瞬間、呼びかけに応じるがごとく、洸と思わしき魔人がマキシムの一撃からミーティアを守った。
自分の回り限定とはいえ、温度差のみならず時間の正負すら支配する魔人に流石のマキシムも驚きを覚える。
そして洸は次に瀕死の朔郎に触れて体内の時間を可能な限り戻し、傷を熱で凝固させることで出血を止め、応急処置に成功する。

この時と温度を支配する魔人に関してマキシムは思い出したように言った。

マキシム「現代まで生きていれば私さえ越えたであろう、神に最も近い魔人。
     あまりに強すぎたために一族に封印され……もしくは自ら封印の道を選んでこの世から姿を消したとも聞いたが、まさかここで会えるとは。
     名は時の魔人アイオーン、いや破壊のシヴァ、炎の公爵アモン、暴悪忿怒の不動明王、まだまだあるがどれが適切かな?」
洸「F……名前多すぎだろ」

実はFの名前は一つではなく、いくつもの名前を持っていたのだ。
記憶喪失に陥っていたFがいくら調べても自分の正体に行きつけなかったのは多数の名前を持つ一人の魔人が伝承上で別の人物として描かれたために、該当する存在が全て自分と同一人物だと気付けなかったのである。
だがマキシムはあえて過去の魔人Fとは関係ない、それらを越えた洸自身が魔人として新生した存在、魔人の中の魔人『真魔人』と名付けた。
そして激突する真魔人・洸とマキシムの時を操る力と事象を操る力。
今度は互角に近い戦いが繰り広げられ、まさに神と神に近しい者の争いであった。
437 超昂合体! 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、スエボシ、ミルドレッド・イズベルス
操られたはるかは強力な力で夕露グループを押していく。
とても手加減できる相手ではなく、スエボシの洗脳に対処できるものがこの場におらず、やはり殺すしかないのかと非情な判断を迫られかけるが、ヒュスレがここでそんなことは許せないとありったけの痴漢技を仕掛ける。
しかし一度ははるかを絶頂させた技もスエボシの洗脳はそれ以上で、全く通用しない。
ならばボロボロのゲイシーとはるかに想いを寄せるファックマンによる援護を受け、師より受け継いだ痴漢技を更に洗練された痴漢技をはるかに放つ。
今度こそはるかは絶頂し、スエボシの洗脳から解放された。
はるかは再び洗脳され仲間を傷つけてしまったことを悔いるが、当のゲイシーははるかを全く恨んでおらず、ファックマンは洗脳されたらまた助けてやると言い、ついでに愛の告白をする。

一方のヒュスレことヒューマンスレイヤーはスエボシと対峙する。
そしてスエボシの人間という種全体を生かすために強くしたい気持ちは分かるが、ここには無能力者や異能者と言った人間のみならず、魔人や魔族、ヒグマや不死蝶、そして自分のようなエルフまで、多種多様な種族がいる。
スエボシの他の種族を敵とみなして人類だけを最優先する人類至上主義と行き過ぎた保守は時代遅れであり、全ての種が愛し合える可能性を放棄して憎みあってはいけない。
愛し合えば、戦闘力を高めるだけの進化は必要ないと説いた。
それに便乗して「そうですよ~♪」とレイと横から入ってくるが、過去に魔族は愛し合うどころか喜々として人類を襲っていたので、魔族であるレイには敵意を剥き出しにするスエボシ。
レイはその殺意の視線を飄々と躱す。
スエボシは自分の考えが本当に時代遅れかどうかはわらわを倒して証明してみせよと、対主催に迫るが、ここでプロポーズに成功したファックマンとはるかが合体技を披露する。
それはファックマンとはるかちゃんがスターセイバーとビクトリーレオの合体飛行形態のように重なり、互いにアヘりながら突撃する技である。とりあえずサイバトロンに謝れ。

通称はデカマラファック!

とてつもなく下品な技だがバイアグラで強化されたファックマンとはるかの高い魔力は相性が抜群であり(信じられないことに)瞬間火力は現状の対主催最強である。
しかも突撃そのものは物理判定なのでスエボシの異能無力化能力の干渉を受けず、攻撃はスエボシの下腹部に直撃し、スエボシを痛みと快楽で落ちかけさせる。
……これが愛の力なのか。などと思いつつ、スエボシはブレーメンズ相手に全力を出して戦うことに決めた。

「ふわあああああああ、感じちゃううううううう。
しかしわらわもこれだけで負けては母として示しがつかぬから少し本気を出すぞよ」

スエボシは先の話でブレーメンズには二つほど明かしていないことがあった。
一つはこの会場は江洲衛府島並にロボディの対異能バリア発生装置に使われるクリスタルが多数埋まっていること。
一つはクリスタルの正体は自分が過去に分離したクリスタル細胞が増殖したものであること。
そしてスエボシは大地とリンクし、かつて分離した自分の細胞と土壌を吸い上げ、基地を破って66mの大怪獣と化した。
怪獣スエボシは吠えながら、ブレーメンズに言った。

『おまえたちはわらわの考えが時代遅れであり、他種族すら愛すことこそ必要だと言ったな?
それを証明する方法は至極簡単だ。わらわを倒して証明してみせよ。
勝った方が正しく、その思想が世界を導くに値するのだ』


一方、戦いの裏でミルドレッドはスエボシにもブレーメンズにも気づかれぬように基地を移動していた。
怪しい笑みを脳髄の中で浮かべながら……
438 降臨! 神の戦車!! 回縞ロックス、織田信長(織田信長)、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、須原毅
未色の歌、それに触発されて再起動したセラフィムの十字架によってもたらされたエネルギーによって生まれたマシン、否、魔人の力を受け継いだ『魔シン』。
ロックスはこの機体を神の戦車の名前にあやかって『メルカバー』と名付けた。
物体の変化の変化を司るハニエルの力で味方のロボディを戦えるまで修復した後、多くの想いをのせた戦車・メルカバーをもって単身「Q」と須原に戦いを挑むロックス。
空間操作のミカエルと時間操作のザフキエルの力を掛け合わせた瞬間移動、精神干渉のガブリエルと記憶操作のラジエルによるジャミング、物質操作のハニエルと気圧変化のラファエルによる堅牢な防御システム、物質切断のメタトロンと氷結のザドキエルによる光輪による格闘能力、そして破壊のサンダルフォンと焼却のカマエルによる大出力の砲撃に須原は確かに恐怖を覚える。
だが「Q」も伊達ではないとメルカバーを越える自己進化を繰り返し、強化される。
二機の戦いぶりはとても常人がついてこれるような戦いではなく、回りの信長たちが割って入ることも許されない戦いが繰り広げられた。
そして基地から怪獣化したスエボシが出現し、ロックスは須原は自分に任せて信長たちは夕露たちの応援に回って欲しいと言い、信長たちもそれに従って基地の方へ向かった。
味方がいなくなったことでロックスは逆に周囲の被害を気にせずに戦えると思い、メルカバーのスロットルを上げ、フルパワーで「Q」を圧倒しはじめる。
今までは簡単に殺せる相手だと思っていたばかりに、ダメージを積み重ねられている自機の現状に須原は狼狽する。
いじめっこがいじめられっこから予想外の反撃を受けたかのように。
439 「時×∞=輝」を証明せよ 真魔人・洸、魔人ウロボロス、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、魔神マキシム
真魔人として覚醒した洸とマキシムは互角に近い戦いを繰り広げていたが、地の戦闘経験の差かマキシムを倒すには足りなかった。
その頃、セラフィムの力を受け継いだロボディの出現を察知し、久世香織ひいてはセラフィムの人格のモデルとなりそれらとリンクしていた少女でもできなかった法の守護者の顕現を何者かがやり遂げたと発言するが、洸にとっては意味不明であった。
多大なダメージを受けながらも無双盗塁で戻ってきたウロボロスが、投球でマキシムを仕留めようとするが、容易くキャッチされる。
自分にはいったい何が足りないんだとのたうつウロボロスだったが、そこで洸が提案する。

「ウロボロス!
野球は一人でやるもんじゃないぞ。
僕と一緒にバッテリーを組もう!」

洸はかつてFに言われた言葉「二つが一つになれば倍以上の力を発揮する」を思い出す。
洸はセラフィムと田山と同じようにFと完全なる融合を果たし、倍以上の力を振るえるようになった。
だったらウロボロスと手を組めばさらに倍以上の力を発揮できるのではないかと、洸は考えたのだ。
魔人同士はライバルで場合によっては殺し合うような中だが、ウロボロスはこれまでの戦いの中でその考えは古く、強大な敵がいたら手を組むべきだと思い至った。

そして洸は時間の正負の付与の力とマウンドとし、自分がバッターとして氷で作ったバットでピッチャーのウロボロスから投げられた一球入魂・最大パワーの火の玉を打ち返していく。その斜線上にはマキシムが立っていた。
マキシムの事象操作能力も、発動直前の状態に戻されるという形で時間操作によって封じられ、相殺された。
火の玉とそれを打ち返す氷のバットをぶつけられた結果、無限に加速し続ける運動エネルギーを食らいながら自分は無限に減速し続けていくという事態に発展。
事象を操って脱出しようにも炎氷だけでなく時の力を得た野球ボールによる物理的ダメージで邪魔されて発動できない。
無限に近い時間をかけて死に近付きながらも決して死ぬ事はないダメージを負わされ、一度囚われれば二度と逃れることができない時の牢獄に魔神は閉じ込められたのだ。
魔神の封印……どんなに強力でも一人の魔人だけではできないことを二人で成し遂げたのである。

「この輝きに包まれるというのも存外…悪くないものだ…」

マキシムは死ぬこともできぬまま二度と現界できないことを悔いるよりも、今までにない人間と魔人による輝きで包まれながら負けられる栄誉ある敗北を喜び、洸たちの目の前から消えていった……
この勝利と洸の生還に仲間たちは、特にミーティアは喜んで洸に抱きついて涙ながらにキスをする。
だが魔神は討たれても戦いはまだ終わっていない。
近くではミルドレッドの兵が再び襲いかかろうとしており、基地の方では怪獣化したスエボシが大暴れしていた。
おそらく皆苦戦しているだろうし、いかねばなるまいと、ミーティアらは基地方面への前進を決意し、洸の真魔人の力と、野球を通じて共に戦うことを覚えたウロボロスの技でミルドレッドの私兵をなぎ倒しつつ基地へと近づいた。
440 Los!Los!Los! 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、真魔人・洸、魔人ウロボロス、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、スエボシ
怪獣と化したスエボシがブレーメンズに猛威を振るう。
異能無力化能力によって異能に頼った攻撃は全く効果がない。
ならば、ヒグマーマン、由奈、真道、ヒューマンスレイヤー、ブレイン、ついでにファックマンとはるかによるデカマラファックによる力技で攻撃する。
しかし、生半可な攻撃は土壌を吸収して回復してしてしまう。
大地がある限り、スエボシは無尽蔵に戦えるのだ。

だがダメージの回復には土壌が必要になると見抜いた夕露は肉弾戦派を囮に、異能力者たちと共に基地内の爆弾を集める。
そしてスエボシが幾度目かのダメージを受けて、回復しようとしたところでゲイシーのワープの能力で土壌に仕込んだ爆弾を起爆。
ほぼ無限だった回復を阻止する。
さらにマキシムとミルドレッドの兵を倒した洸とウロボロスが遠方から援護射撃を加え、二人の野球も加えられた大攻勢によってスエボシ怪獣体は核となっていた本人が露出させるまでに至る。
いよいよ年貢の納め時か、とスエボシは子らの成長を喜びつつ最期の時が来ると思っていたが……
441 末路 回縞ロックス、織田信長(織田信長)、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、須原毅、ミルドレッド・イズベルス
「Q」の無限に進化する力は、理論的に言えばロックスのメルカバーを性能差で圧倒することも可能であった。
ところが、この場のメルカバーと「Q」における、ある「決定的な違い」によって「Q」は押されていた。
それはパイロットの差であった。
ロックスは紛争と殺し合いにおける二度の死線をロボディに乗ってくぐり抜けてきた猛者であり、戦闘経験がほとんどない須原とは段違いであった。
先程までは腕の差を機体性能で圧倒する形を取っていたが、メルカバーの出現により性能差は埋まってしまった。
さらに問題なのは腕の差だけでなく覚悟の差もあった。
音速を超えるスピードで戦う二機はパイロットを保全する安全装置の現界ギリギリのところで戦っているが

ロックス「もっとだ、もっと早くだ! メルカバー!!」
須原「止めろ、止めてくれ「Q」! これ以上は死んでしまう!!」

ロックスは安全装置による保護も超え、Gで肉体に負担がかかることも構わず命を燃やして戦っていることに対し、須原には死ぬ気で戦う覚悟やプライドがなかった。
あくまで弱い者イジメを至上としてきた者と、痛みを伴う命のやり取りをしてきた者の差がここで出てきてしまった。
ロックスがメルカバーを性能を120%発揮できていることに対し、須原は「Q」の足かせになっていた。
更に戦闘途中で「Q」のコクピット付近で先ほど千太郎機が死に物狂いで攻撃した際に装甲の間に挟まっているパーツの破片に気づいたロックスはそこを突いて攻撃する。
残念ながら押し込んだ破片はギリギリで中身の須原には届かなかったが、須原の戦意をごっそりと削ぎ、恐慌・失禁させるに至るは十分であった。
同時にロックスは千太郎は「やればできる男」であることを証明したのだった。

ミルドレッド「頃合よ「Q」。余分なパーツを廃棄して計画通りに行動を開始しなさい」

ロックスが須原を討つのも時間の問題かと思われたが、ミルドレッドからの通信が入った瞬間、「Q」は須原の制御を受け付けずにスエボシの方向へと逃げ出す。
それを追いかけようとするロックスだったが――なにかとてつもなく嫌な予感を感じていた。

親であるミルドレッドの指示通り、壊れた武器や装甲などの余分なパーツをパージしながら逃げる「Q」。
その際、須原は「Q」にもっともいらないパーツと見なされてコクピットから放り出された。
何事かと思いつつ、なげだされた須原を無視して「Q」を追い続けるロックス。
須原は高所から落下したが、両足を骨折しただけで生きていた。
だが目の前には、夕露グループと合流をする前だった信長のロボディ部隊がいた。

足が折れていて逃げられない須原は死の運命を受け入れる……ことはなく、信長たちに見苦しく命乞いをしだした。
特にいじめるかいじめられる側しかいない過酷な戦国時代を生きていた信長ならば、自分を受け入れてくれるだろうと取り入ろうとする。
しかしそれは信長にとってそれぞれが信念を持って戦った戦国武将の戦いと単なるイジメを同列にしたとする侮辱行為に辺り、信長の怒髪天をついてしまった。
ついでに須原が先ほどの話でいじめで強くなったスパルタ人を引き合いに出していたが、ペルシャとの戦いには勝利したものの、その後に多額の賄賂を貰って堕落したという史実の勉強も添えて、人はイジメでいつまでも強くなれるわけではなく、本当に強い者はいじめ無しでも己の主張や力を誇示できるものであり、さらに強い者は無益ないじめをやめさせられる者であると信長は説いた。
それを知らずに戦国武将たちの名誉に泥を塗ろうとした須原を信長はロボディで砲撃するのではなく、陰陽火縄銃で直接引導を渡すことに決める。

「こ、これは仕方なかったんだ!いじめは強い人間を育てるのに必要なんだ
 だからお前たちは強い…え?私はじめられる…い、いやだ!許してくれ!金なら
 いくらでも!や、やめ…クァwセdrftgyフジコlp」

見苦しい言い訳も通じず、須原の頭は信長の陰陽火縄銃のレーザーによって塵となった。
弱い者イジメは真の強者を育てない……皮肉にも須原自身がそれを証明してしまったのだった。
442 星が喰われるとき 夕露美維兎、ヒグマーマン、九条由奈、真道阿須賀、天城九曜、レイ=ラグナウッド、ヒューマンスレイヤー、ジョン・ウェイン・ゲイシー、雪風はるか、大魔導師ブレイン、ファックマン、真魔人・洸、魔人ウロボロス、ミーティア、郷里沙織、御神薙立華、勅使峰碧、岬朔郎、回縞ロックス、織田信長(織田信長)、ロボロン、時軸未色、大海舞菜、ミエル・リュシエール、スエボシ、ミルドレッド・イズベルス
怪獣化したのにもかかわらずブレーメンズに圧倒されるスエボシ。
だがそこに須原のロボディが登場。
須原に戦いのジャマをするなと言わんばかりに怒るスエボシだったが――

乗っているハズの須原がコクピットにいない。

そのロボディから生物的な触手が伸びてきて――

スエボシ「※※※※※―――!!!!!」

触手こと「Q」によってスエボシが取り込まれてしまった。
するとどうだろうが、元より巨大だったスエボシ怪獣体がより巨大になり、更に土と機械で構成された触手が無数に生えて対主催に襲い掛かり、自らの肉体に取り込まんとするではないか。
その触手の速度は早く、真道が、立華が、ヒューマンスレイヤーが、ロックスが、未色が、更には遠方で能力を暴走させていたミエルすら皆無性能力が無効化されて取り込まれてしまった。
取り込まれた仲間を夕露たちは救い出そうとするが……

一方、変異したスエボシに取り込まれたロックスたちが彼女の体内で見たものは
――何故か平和な世界、誰もが望んだ夢、抜け出せない幸せな幻想であった……

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最終更新:2017年07月29日 08:13