【名前】飛鳥
【出典】閃乱カグラシリーズ
【性別】女性
【年齢】17
【支給品】妖刀紅桜@銀魂(左腕として肉体と一体化)
【キャラ設定】
ポニテくノ一。国家に所属し国益のため働く忍の集団・善忍を養成するための国立半蔵学院の生徒。
いつも元気いっぱいで、どんなことにも一生懸命。日々成長し続けている胸が悩み。忍の道とは何か、本人なりに一生懸命に考えている。忍としての実力はまだまだだが、偉大な忍を祖父に持っており、潜在能力は抜群。趣味は修行とオーソドックスな主人公キャラ
……「だった」。
【あらすじ】
対主催として行動し、ジャイアンやガイ、猿飛あやめやユフィ・ヤモトなど多くの仲間と出会い、殺し合いを生き抜いていく。
だが彼女の努力も虚しく、仲間は次から次へと死んでいってしまう。
その過程で失った左手を紅桜にし、さらに仲間を守るために死ぬ覚悟で危険なドーピングを施すも、ジャイアンを除いた全員が死亡し、暴走によって信頼を寄せていたガイをこの手でかけてしまう。
それでも殺し合い序盤から付き添っていたジャイアンによって持ち直しかけるも、ジャイアンも死亡してしまい、最後の精神的砦を失ってとうとう発狂してしまう。
最後は主催に虐殺を行い、焔と相打ちに近い形でビルから落下して再起不能になる。
しかし、まだ生きていた彼女は主催の残党に連れ去られてしまい……
最終的には生還するも、果てしない不幸の果てに一片の救いのない結末を迎えた。
詳しくは
こちらを参照。
なお、本編では
エピローグ後編からの出典にしてしまうと実質別キャラになってしまい、殺し合いどころではなくなってしまうメタ的な事情から参戦はエピローグ前半……すなわち赤き蛇に救助される前の、主催残党に囚われていながら辛うじて自我を失ってない時からの参戦となっている。
【本編での動向】
いつ終わるともしれなかった、ノマド・ソウカイヤ残党による地獄の日々は唐突に終わりを迎えた。
代わりに彼女は忘れたくとも忘れられない最悪のデス・ゲーム、バトルロワイアルに再び参加させられる形となった。
一方で自我が消えかねなかった調教・拷問・殺戮の檻に長らく閉じ込められていたこともあり、久しぶりの外の世界は飛鳥に密かな喜びと感動を与えていた。
――それもこれも目の前の恩人、ロジェ長官のおかげだ。
※ ※ ※
……会場に転送されていた直後の飛鳥は状況がわからずに混乱して彷徨っていたが、そんな彼女を発見したロジェはパラサイトヒュージョナーの効果で手駒にした
カーズに続き、飛鳥を配下に加えることを画策する。
(ちなみにロジェの姿は
アニロワ4終盤のビックファウと融合したロジェではなく、主催の手で真人間に戻っている)
パラサイトヒュージョナーはデッキに一枚しかなく、既にカーズに使っているのでカードによる洗脳はできないが、見るからに精神的に参っている少女なら簡単に騙せると思い、言葉巧みに引き込むことにする。
ロジェは飛鳥に「君を救い出したのは私だ」「救い出したのは良いが、主催に捕まって殺し合いに二人共々参加させられてしまった」と嘘を吹き込む。
さらに「協力してくれたら主催の技術を奪ってこの殺し合いや君が参加させられた殺し合いもなかったことにしよう」と彼女に囁いた。
もしロジェの言うことが本当ならば忍者ロワで起きた全ての悲劇をなかったことにでき、ガイや柳生など失いたくなかった大切な人を全て取り戻せると思い、飛鳥はロジェの甘言に乗ってしまう。
これは度重なる拷問で精神的に弱り果てていたこともあって思考がおぼついておらず、飛鳥はロジェを恩人だと思い込み、心服してしまったのだ。
さらに名簿を確認すると元ロワで守りたかった大切な人――剛田武ことジャイアンの名前を見つける。
ロジェ長官に従えば彼を無事に元の世界へ返すことも、死んでしまった彼の友達のスネ夫も生き返すことも可能だと、死にかけていた飛鳥の心に野望・希望が灯る。
大切な人たちの命と幸せのために、飛鳥は今一度、修羅に戻る所存であった。
一方のロジェは本当に飛鳥や参加者を救い、殺し合いをなかったことにする気など更々なく、主催の技術を奪って全てのシンクロ次元を征服することしか考えていない。
仮に主催から技術を奪えなくても、自分を殺したアニロワ4対主催への報復や優勝は目指しており、立派な危険人物であった。
飛鳥に関しても体のいい捨て駒としか見ておらず、不要になればいつでも切り捨てるつもりであった。
そうとは知らずに飛鳥はロジェに尊敬の眼差しを向ける。
だがロジェの野望を良しとしない男がいた。
相撲の化身である
ヨコヅナちゃんである。
ロジェから言い知れぬ邪気を感じたヨコヅナちゃんはロジェを成敗するために一行に挑みかかったのだった。
ロジェは戦力であるカーズの温存と、飛鳥の実力を試せる良い機会だと思い、飛鳥に一体一で殺すように指示を出した。
ヨコヅナちゃんは確かに
オリロワ5では強対主催の一角であった。
しかし飛鳥は紅桜+バリキ・善滅丸・ヴァンプのナノマシン+忍者ロワ主催残党の改造でそれ以上に超強化されており、一方的に追い詰められていく。
さらにヨコヅナちゃんはこれより前に強者限定マーダーだった更木剣八と戦っており、痛み分けによって消耗していたことも押されている原因の一つであった。
張り手もろくに効かない相手に、固有結界を発動して肉体と肉体のぶつかり合いによる真剣勝負……すなわち相手を丸腰(飛鳥の左手にある紅桜の融合解除ができる)にして勝機をつかもうとする。
自分の得意な土俵である相撲に持ち込めばヨコヅナちゃんは確実に勝てたであろう。
だがヨコヅナちゃんは飛鳥との取っ組み合いの中で気づいてしまった。
飛鳥はただの殺戮者ではなく、大きな悲劇の被害者ということに。
固有結界を発動すると敗者は必ず死んでしまう……心優しいヨコヅナちゃんは飛鳥相手に固有結界を発動する事ができなかった、
その優しさが最大の隙となり、逆に地面にめり込むほど投げつけられて動けなくなってしまう。
そして動けなくなったヨコヅナちゃんを飛鳥は文字通りバラしていく……
「やめて! ツッパリもシコ踏みもできなくなる!」というヨコヅナちゃんの懇願も無視して手足をもいでいき、悲鳴をあげる彼の体をバラバラにして飛鳥は惨殺してしまった。
幸運の要素もあったとはいえ、ほとんど一方的な勝利であった。
飛鳥の予想以上の力に思わず喜ぶと同時に吐き気を覚えるロジェ……ヨコヅナちゃんを殺せとは命じたが、解体しろとは一言も言っていなかったことで飛鳥を褒めると同時に叱りつける。
飛鳥は申し訳なさそうにロジェに謝り、ノマドに拉致されてカオスアリーナに参加させられていた頃の、対戦相手をより残虐に殺す『癖』が抜けてないと反省する。
しばらくしてロジェはカーズに敵対的な参加者の駆逐を命じ、別行動を取らせる。
そしてロジェと飛鳥は探索中に一つの地下施設を発見した。
そこにはロジェ曰く我々の切り札になるかもしれない巨大兵器が配置されていた。
ロジェはさっそくこの『兵器』をいつでも動かせるように調整を開始する。
その間に飛鳥には任務が与えられた。
方法は問わない。
先ほどの女みたいな男を殺した時のような残虐な方法でもいい。
我々に敵対するであろうオルフェンズに他の参加者から『信用』を失わせるように仕向けろ、と。
ロジェは地下施設から出したドローンから自分を殺した鉄華団の一員である三日月・オーガスの姿を発見した(実は世界線の違う別人なのだが)。
その三日月、ウルフウッド、敦、フーカからなるグループはいずれ敵対するとしてロジェは他の対主催からの信用を失墜させて争わせる計画を思いつく。
直接皆殺しにするよりは対主催同士で仲違いさせて滅ぼし合わせようと言うのだ。
任務を受けた飛鳥は地下施設を抜けた後にオルフェンズをこっそりと追跡し、遠目から仕草や装備を観察・暗記。
ウルフウッドですら気づかない内にパニッシャーの空薬莢を盗んで離脱することに成功する。
次に飛鳥は忍転身を使って最も体格が似ている敦に似た姿に変身する。
※忍転身はその忍に適した戦闘装備(コスチューム)になるだけではなく、このような工作や潜入に適した姿に変装できる。
少なくとも遠目からでは敦と誤魔化せるようになった飛鳥は単独行動を取っていた聖沙の命を狙う。
敦を装って襲撃することでオルフェンズが一人で行動していた対主催を襲っていたという既成事実を作るつもりなのだ。
聖沙「……この『星崎きらり』ってどんな人なんだろう。
きっと本当にお姫様みたいで……目には星がいっぱいあって」
などと支給された妄想ノート@オリ5を読み、頬を染めていたのも束の間、奇襲される聖沙。
だが、聖沙も少女なれど守護天使にエクラエルを持つ猛者。
飛鳥と互角とまでは行かずとも、簡単には殺せないだけの実力は持っていた。
しかしそこへ死者の名前を告げる定時放送が流れ、そこに武の名前があることに気づく。
また武君を守れなかった……そう思った瞬間、飛鳥の中で感情が爆発し、ダメージ無視の特攻を聖沙に仕掛けることになる。
この特攻が結果的に功を成し、飛鳥の気迫に飲まれた聖沙が一瞬すくんでしまう。
その一瞬の隙を飛鳥が見逃すことはなく、聖沙は心臓を素手で抉られて奮戦虚しく死す事になる。
守りたかった武を失い、何度目かの絶望をする飛鳥だったが、ロジェに従えば全てをなかったことにできることを思い出し、そのために冷徹冷酷に任務をこなそうとする。
ロジェの指示された通りに聖沙の死体の服を剥いてドラキュラ伯爵のごとく串刺しにして晒し者にする。
更に獣の爪状の切り傷をつけ、パニッシャーの空薬莢をばら蒔き、あたかもオルフェンズがやったかのように見せかける偽装工作を聖沙の死体に施し、飛鳥は撤退する。
後にシンは陵辱の限りを尽くされたように偽装された聖沙の死体を見て絶望し、江ノ島は偽装に気づきつつも工作に便乗する。
江ノ島を通じて嘘の情報を流された結果、一人の対主催が騙されてオルフェンズを襲撃することになるのだがそれは別の話。
偽装工作を終えた飛鳥は元の姿に戻り、ロジェの待つ秘密基地へ帰ろうとする。
武を失った飛鳥の心は確実に病んでおり、一方でロジェと彼の目指す全てをなかったことにする思想に加速度的に信望していった……
その最中にロジェから通信が入った。
戦力だったカーズが戦闘によって洗脳が解けてしまったのだという。
ロジェと飛鳥だけだと目的達成への道が厳しいので早急に戦力になりそうな参加者を一人連れてきて欲しいとのことだった。
さっそく指示通りに都合の良い参加者を探す飛鳥は一匹の豚を先頭にした聖帝軍と一人の少女の戦闘現場を目撃する。
ぶりぶり「よくも珠美を殺してくれたな、このメンヘラおばはん!」
アスナ「!?だ、だれがおばさんですって!?」
少女は前の殺し合いから引き続き、恋人であるキリト蘇生のために優勝を目指すマーダーとなったアスナであった。
そのアスナが怒れるジャッカルより凶暴な豚――
ぶりぶりざえもんに追い詰められていた。
このぶりぶりざえもんは
剣ロワにて剣豪武蔵に鍛えられており、煽り術と小柄さと身軽さを生かした剣術でアスナを翻弄して互角以上に渡り合っていた。
ぶりぶりざえもんに傷つけられ、豚の持つ刀が眼前に迫った時にアスナは死を覚悟したが……
そこに飛鳥の突然の乱入である。
不意をつかれたことによってぶりぶりざえもんは自分に何をされたのかわからぬまま、数瞬のうちに挽肉となってしまった。
ぶりぶりざえもんの死と突然の乱入者によって騒然となる戦場。
飛鳥の次の狙いはアスナであり、アスナは迎撃に移るも負傷と実力差から装備していた剣を弾かれて右手のひらを紅桜でぐっさりと串刺しにされ、今度こそアスナは最期を覚悟した。
しかし、その時に飛鳥とアスナの眼があった。
お互いが見たその眼差しには、自分と同じく「大切な何か」を失った悲しい目をしていることに気づき、アスナが自分と似ている気がすると思った飛鳥はアスナにトドメを刺すことを躊躇してしまう。
ロジェからの通信が来たのはその時であった。
「飛鳥、その娘を連れ帰りなさい。
カーズに代わる新たな『お仲間』として迎え入れます」
ロジェからの指示を受けた飛鳥はアスナを当身で気絶させた後に彼女を抱えて退却する。
聖帝軍とそれ以上戦わなかったのは流石に数が多かったことと、アスナを守りながらは戦えないという判断からであった。
そして地下施設に飛鳥はアスナを持ち帰ることに成功する。
気絶から覚めたアスナはもちろんロジェに従う気はなかったが、カーズの洗脳が解除されたことで戻ってきたパラサイトヒュージョナーを使って洗脳して手駒に加える。
しかし、洗脳されたアスナはキリト蘇生の執念からロジェの命令を自分の目的に都合のいいように解釈することでじわじわと暗躍しようと画策していた。
忠義を植え付けられても根底にあるキリトへの狂気に似た愛情は変えられないのである。
おそらくパラサイトヒュージョナーが解除された瞬間、アスナはロジェの首を切り飛ばそうとするだろう。
一方でアスナは飛鳥にはとても好意的であった。
これは元ロワでキリトを失った悲しみを共有できる者がいなかったことと、似たような経緯を持っていことによる同情から飛鳥に同族意識を持ったものと思われる。
ロジェは次の任務まで少女たちに休息を与えることにし、その間に飛鳥とアスナはガールズトークに話を明かすことになる(と言ってもアスナが若干一方的だったが)。
キリトとのノロケ話に、彼が蘇生した後の結婚プランを打ち明かすアスナ。
ちなみに二人はオンラインゲームで知り合った仲なので結婚式のイベントにもゲームを盛り込むらしい。
やや暴走気味なアスナの恋バナに耳を傾ける飛鳥だったが、ある言葉が飛鳥の耳に止まった。
アスナ「はぁ~、リセットボタンがほしいなあ~」
飛鳥「リセットボタン……?」
アスナ「そう、殺し合いに巻き込まれる前まで時間を巻き戻してキリトくんと一緒に過ごせる幸せな日々に戻るの。
殺し合いに巻き込まれなきゃキリトくんは死ぬこともなかったし、私も苦労して一回死ぬこともなかった。
そういうリセットボタンが目の前にあれば躊躇わず押すんだけどね」
飛鳥「……」
アスナ「まあそんな都合の良いものがあるわけないし、目指すべきはリセットじゃなくてキリトくんとロジェ長官のためにゲームクリアすることだけど。
お互いに頑張ろうね、飛鳥さん」
全てをやり直せるリセットボタン……そんなものがあれば自分は迷いなく押すだろうと飛鳥は思った。
アスナとの会話は死んでしまった武や仲間たちとの思い出を思い出させた。
殺し合いさえなければ、みんな元の世界で幸せに暮らしていたのだろう。
あの笑顔をもう一度だけみたいと飛鳥は願い、そのためにもロジェ長官に今後とも尽くそうと飛鳥は考えた。
二人の少女が話に花を咲かせていた、そんな時、事件は起きた。
施設限定マーダーと言える両津勘吉によってロジェ一行が潜んでた地下施設の真上にある建物を破壊されて侵入可能になってしまったのだ。
更には強マーダーの志々雄が施設に侵入をしようとし、思いもよらない事態に焦ったロジェは飛鳥とアスナに出動を命じた。
志々雄は炎の剣技の使い手にして、僅かな切り傷で死に至る帝具「村雨」を所持しており、元の実力と一撃必殺の村雨の力によって、強化された飛鳥にしてもヨコヅナちゃん・聖沙以上の強敵となっていた。
しかし志々雄とは因縁のあるアスナが仲間にいたことで手の内が粗方わかることや、同盟を組んだこともあるクロメから村雨の危険性を教えられたことと、そして二人の連携によって志々雄相手に防戦一方に追い込むことができた。
最終的には志々雄側が戦闘時間の限界が近づいていたことで撤退。
抹殺こそはできなかったが、地下施設への侵入は防いだのである。
(実は志々雄との戦闘中に江ノ島に侵入されていたのだが、三人は気づいていない)
強敵だったが何とか迎撃に成功した飛鳥とアスナは地下へ帰ろうとする。
……が、その途中で飛鳥が突然倒れてしまう。
まさか志々雄の村雨に斬られたのかと、アスナは飛鳥の負傷を確かめるために急いで彼女の服の下を確かめる。
すると信じられないものをアスナは目撃してしまった……それは村雨に斬られるよりも遥かに残酷なものであった。
一方その頃、ロジェは秘密兵器の調整にひと段落がつき、飛鳥が殺して回収した聖沙の支給品の中にディスクがあったのを思い出し、暇つぶしがてらにパソコンに挿入する。
それは飛鳥に纏わる過去が描かれたデータディスクであった。
ロジェとしては飛鳥をより体よく操れると睨んでの閲覧であった。
しかし……
(何なのだ、これは…!?、いくら私でもここまではやらんぞ!)
ロジェの目に映っていたのは飛鳥がノマド残党に調教されている映像……否、調教という言葉では生ぬるい地獄の日々の映像であった。
その内容は外道であるロジェですら本気で寒気を覚えるレベルである。
常人でもオークやニンジャに犯され陵辱されるのは耐え難いだろうが、それさえ児戯に思えてくるほどの拷問が飛鳥に行われたのだ。
それだけに留まらず、自分たちの玩具や手駒にするための麻酔なしの改造手術……これは紅桜やナノマシンなどのドーピングのしすぎのせいで麻酔が効かないためであるか、そのために痛覚そのままでメスを体に入れられ、意識を手放していない内にあらわになった肉や内臓を見せつけられる。
改造そのものも粗雑で普通は適合しないチャクラの経絡を無理矢理移植される。もちろん体の作りが違うため、飛鳥にチャクラはナルトやガイのように忍術は使うことができず、骨折り損である。
食事は死なない程度に毒が入ったものであり、これにより徐々に心の余裕を失い壊されていく。
時には闇コロシアムに参加させ、なるべく相手を残虐に殺さないと拉致してきた罪のない人質が殺される。
飛鳥の無駄に残虐に相手を殺す癖はここでついてしまったのだろう。
さらにその対戦相手や人質も飛鳥のように拉致られた者や同年代や幼い子供ばかりである。
ここまでやられて飛鳥が自殺をしなかったのは、自殺すると関係のない人質の子供を殺すと言われて死ぬに死ねなかったのだろう。
……どのシーンにも飛鳥の悲鳴が入っており、ロジェは彼女の悲鳴がしばらく耳から離れないほどであった。
ノマド残党は建前上は飛鳥を組織再興のための兵器として改造するためにこのような拷問じみた調教を行ったとしているが、実際は首魁を対主催の忍者たちに殺されたことへの報復と逆恨みが目的で、その恨みを飛鳥一人にぶつけ、死ぬよりも辛い目に合わせたのだとしかロジェには思えなかった。
このような地獄の日々を終わらせたものが現れたとなれば、どんな悪党ですら仏に見えるのだろう。
飛鳥を手中に収めた時、馬鹿な子供だと思っていたロジェであったが、自分もあのような地獄を味わい、救い主だと吹き込まれれば容易く信じるだろうと、飛鳥に同情をした。
目的達成のための捨て駒であることは変わらなかったが……
映像を見て呆気に取られてロジェであったが、そこへアスナが倒れた飛鳥を背負って舞い戻る。
アスナ曰く、ノマド残党に改造されすぎた飛鳥の体は傷だらけであり、強大な戦闘力を持っているが肉体はボロボロで、常人なら瀕死状態のところを紅桜とヴァンプのナノマシンのおかげで辛うじて生きながらえていたのだ。
更に本当は立っているだけで激痛が走るような体でありながらも、ロジェやアスナに気を使わせないために黙っていたようである。
トドメは改造のしすぎで女性の喜びの一つである、子供を産む能力を失っている。
そんな惨憺な状態で飛鳥はあなたのために戦っていたのだとアスナは涙ながらにロジェに訴える。
いくら強いとはいえ、このまま酷使すれば飛鳥は過労で死んでしまう……アスナはロジェに飛鳥の休息を要求する。
そんな喧騒の中で飛鳥は気絶から醒め、アスナに施設へ運んでもらったことへのお礼と、ロジェに心配をかけさせたことへの謝罪をし、次の任務はないかと聞いた。
体は既に死に体なのに、なぜそこまで無茶をするのかと二人は飛鳥に聞くと飛鳥は答えた。
「ロジェ長官が主催の技術を使えば、全ての殺し合いをなかったことにできるから。
殺し合いをなかったことにすれば、多くの人たちの笑顔が戻るから。
そうなれば武くんのような守れなかった人々、殺してしまった人々への報いができるから。
そのためなら私は命なんて惜しくない」
飛鳥はロジェの言葉を本気で信じており、転じて殺し合いに巻き込まれてしまった人々全てを救えると信じているのだ。
そのためならば改造された肉体も無理を承知で利用し、戦いの過程で死んでしまっても良いとすら考えていたのだ。
恩人や仲間たちへの献身の心こそが彼女を動かす原動力と言えた。
とはいえ、現状は消耗で体を引きずっており、とても戦わせられるような状態ではなかった。
それでも戦おうとする飛鳥にロジェは押してダメなら引いて見ろと言わんばかりに、戦おうとする意気込みは買いつつ、戦力の温存は必要だと飛鳥に説き、僅かながらも休ませることに成功する。
眠りについた飛鳥を前にロジェはこっそりとアスナに命令した。
「飛鳥が危ない時は守れ」と。
それは気遣いであったのか、それとも戦力的に飛鳥を失いたくなかったのか、それは自分でさえわからなかった。
アスナはロジェの命令を静かに承諾する……自分としても殺し合いで出会った数少ない友人である飛鳥は守りたいとアスナは願っていた。
殺し合いもいよいよ終盤戦に入る。
飛鳥が目覚めると微笑むロジェとアスナと、起動寸前まできた秘密兵器……眠れる天使と言えた巨大MA『ハシュマル』がそこにはあった。
どこから情報が漏れたのか、トレーズ一行やオルフェンズがMSやACによる小隊を整えてこの地下施設に向かってきている。
だが、飛鳥が任務をこなしてくれたおかげで迎撃もとい征服の準備が間に合ったという。
そのための礎がハシュマルであり、思想に賛同しない敵対勢力を亡きものにするためにロジェは、自分と飛鳥とアスナをこれに乗せて出撃した。
この後に起こる戦いに勝利すれば、目的達成まで目前だと飛鳥は自分に言い聞かせた。
ハシュマルによるビーム攻撃、ハシュマルから排出される「人間だけを殺す機械」プルーマによって会場は業火に包まれる。
プルーマによって惨殺される九兵衛の死を飛鳥も目撃していたが、全ての惨劇をなかったことにするための必要な犠牲だと割り切って、感情を押し殺す。
戦況はロジェ一行優勢であったが、プルーマの攻撃をくぐり抜けてハシュマルの近くまで接近していた因縁ある聖帝軍の生き残りことサウザーとロリカイザーを発見し、アスナとプルーマと共に戦闘に入った。
サウザーとロリカイザーは強者であった飛鳥とアスナ、そこにプルーマの大軍も加わった勢力は捌ききれるものではなく、善戦はするも疲弊した隙を突かれてサウザーの胸にアスナの剣が刺さることになる。
アスナ「やった!心臓を貫いてーー」
サウザー「ニヤッ」
アスナ「!?」
サウザー「ゴフッ・・・残念だが・・・俺の心臓は“右”にあるんだよ!」
ズバッ!!
飛鳥「アスナちゃん!?」
ロリカイザー「サウザー!?」
アスナの僅かな慢心――サウザーの心臓を狙って左胸を貫くも、彼は心臓が逆についているという珍しい肉体を持っており、致命傷を回避されて反撃で大ダメージを負ってしまい倒れるアスナ。
更にロジェ一行の災難は続き……
ハシュマル『――!』
ロジェ「む、どうしたのですハシュマル!」
ハシュマル『――――ウ プ プ』
プルーマ『――!』ピーピーピー!
江ノ島が地下施設に侵入した際にハシュマルに施した細工が発動し、ハシュマルが暴走。
無差別攻撃の上に会場中に散ったプルーマを自爆させ始めたのだ。
明らかに異常事態が発生したと知り、サウザーたちとの戦いを中断し倒れたアスナを担いでロジェとの合流を目指すことに。
追撃を加えようとしたロリカイザーだが、プルーマの自爆攻撃が激しく、更に重傷を負ったサウザーを放っておくわけにもいかないので追撃を断念して最前線から離れることになる。
会場が揺れるほどの激しい戦いを繰り広げる暴走ハシュマルと対主催連合のロボット部隊。
その騒動の裏でロジェとの合流を目指し、戦友アスナを治療したいと願い走る飛鳥。
そんな彼女の願いと裏腹に森の音楽家クラムベリーと、かつての友人である死塾月閃女学館のリーダー雪泉から挟撃を仕掛けられる。
戦闘狂であるクラムベリーは強敵の音色がする飛鳥への挑戦と、恩人である波平や未央に報いるために。
雪泉は飛鳥が狂ってしまった原因は元ロワで暴走した正義を振りかざした自分にもあると思い、その責任を取るためにもこの手で飛鳥を討とうとしていた。
手負いとはいえ、音を操り原作最強格の力を持つクラムベリーと、氷を操り死塾月閃女学館でもエリート中のエリートである雪泉は相当な実力者であり、反対に飛鳥は負傷したアスナを庇いながら戦っているので満足な戦闘ができない。
アスナを見捨てて戦えば互角には戦えるだろうが、飛鳥にはそれができなかった。
友であるアスナが傷つき、死んでしまうところを見たくはなかったし、彼女には生きて恋人に会わせたかったである。
殺し合いの中で芽生えた友情……だがこの場で友情は飛鳥の足枷になっていた。
だからこそ、友は自分という足枷を飛鳥から外してあげたのだ。
飛鳥がやられかけたその時、気絶していたアスナがクラムベリーと雪泉の前に飛び出していった。
アスナは息も絶え絶えの状態で攻撃を剣でかわし、もしくは攻撃が直撃してもダメージ無視で突っ込んでいく。
肌が裂かれようが、目が潰れようが、片腕が弾け飛ぼうが、骨と内臓が砕けようが構わずに突進し、鎧の下に隠していた大量の爆弾でクラムベリーと雪泉を巻き込むほどの自爆をアスナは敢行したのだ。
それは余りに不憫な飛鳥に同情したロジェが珍しく善意でアスナに言った、飛鳥が危ない時は守れという命令……加えて純粋に友達を守りたいというアスナの献身によって移された行動であった。
最期に「飛鳥さん、今までありがとう」「キリトくんごめんね、あなたのためにゲームクリアできなかったよ」という言葉を残してアスナは閃光の中に消えていった。
大爆発により木っ端微塵に吹き飛んだアスナであったが、クラムベリーは音を使い、雪泉は氷を盾にすることで辛うじて生きていた。
だが、助かったと思った瞬間にクラムベリーの胸に紅桜が突き刺さり、死亡する。
雪泉はクラムベリーを殺した修羅――飛鳥の表情を見ていた。
修羅は泣いていた……また友を守れなかった自分の無力さへの憎しみから泣いていた。
そして、また一人自分の手で「友」を殺さないといけない無情さにも彼女は泣いていた。
それを理解した雪泉は飛鳥に「あなたを止められなくてごめんなさい」と謝罪した後、彼女に首を撥ねられた。
たった一人残った戦地に飛鳥の悲痛な叫びが木霊する。
「みんな、私の元からいなくなる……武君も、アスナちゃんも……」
少女の悲しみなど知ったことかと言わんばかりに戦況は刻一刻と悪化していく。
暴走していたハシュマルはライオンとアンパンを足した巨大ロボのハンマーによって小麦粉のような光になった。
戦況云々よりもハシュマルに乗っていたロジェはどうなったのか、飛鳥にとってはそれだけが心配であった。
そんな彼女の前に新たなる刺客、強者限定マーダーから対主催に改心したアナキン・スカイウォーカーが襲来する。
アナキンは殺し合いの中で意気投合し、ジェダイにもシスにも囚われないゴーマニズムという新たな道を教えてくれた小林よしのりをハシュマルに殺されたことでロジェ一行を恨んでおり、フォースとライトナックルでロジェの仲間である飛鳥を殺そうとしていた。
飛鳥は表向きは無傷に見えるが中身はノマド残党の調教で体がズタボロになっており、更に連戦に次ぐ連戦で消耗も激しかったのに対してアナキンはピーク時のフォースを備え、実戦経験も飛鳥より遥かに上であった。
紅桜も届かない相手に一方的に飛鳥はフルボッコにされていく。
彼女がやられていく様子を、そう遠くない場所でロジェは見ていた。
吹雪にデュエルで負けたロジェは命からがら暴走ハシュマルを中心とした主戦場から逃れるも、その先で自分を元ロワで怪物にさせた因縁の相手であるケルブレムに捕まり、処刑されかけていた。
戦闘に集中している飛鳥はこちらに気づいていないようだが、気づいたところで救助は間に合わないだろう
だが、自分は飛鳥に気づいており、愚直なまでに自分に付き従ってくれた少女がアナキンに殺されようとしている。
どうせ自分は死ぬが、一人は助けることはできる、ゼロやマイナスよりはプラスの方がいいだろう。
そう思ったロジェは一枚のカードをデュエルディスクに挿入した。
飛鳥にトドメを刺そうとしたアナキンの前に突如、古代の機械系
モンスターが現れ、飛鳥への攻撃を妨害する。
そして飛鳥の持っていた通信機からロジェの声が聞こえた、
ロジェ「飛鳥! ハシュマルがやられた以上は正面から戦わなくていい! プランDだ! 走れ!」
飛鳥「!」
ロジェ「君は忍だ、力技では勝てなくても逃げることだけはジェダイより秀でている。私もすぐに『例の場所』に向かう。そこで落ち合おう」
ロジェからの指示によりモンスターに足止めされたアナキンから一目散に逃げ出す飛鳥。
アナキンは難なくモンスターを倒すが、その僅かな間に飛鳥を見失った。
プランDこと例の場所とは希望ヶ峰学園方面に逃げ込むこと。
最後の味方であるロジェが無事なのを知って内心喜んでいた飛鳥だが、もうロジェはそこに向かえないことを飛鳥は知らないのであった……
ケルブレムに処刑される寸前のロジェは原作同様みっともなく醜態を見せるかと読み手に思われていた。
だが、実際は読み手の予想の反対であり、ロジェは達観こそしていたが、命乞いなどもせず、むしろ何かをやり遂げたという爽やかさすらあった。
元ロワで利用されるだけ利用されたことや、騙されているとも知らずに自分に付き従い……自分や他者への真心のために本当に最後まで尽くしてくれた飛鳥との出会いで何処か心変わりがあったようだ。
「これも今まで自分の欲望のまま動いてきた報いでしょうかねえ」と苦笑し、自身が初めて守りたいと思った飛鳥を思い浮かべ、「せめて飛鳥は幸せになってほしいものです」の今際の言葉を吐き……そして安らかな笑顔を浮かべてケルブレムに殺された。
先にたどり着いた苗木らアンテナ組から身を隠す形で希望ヶ峰学園に到着した飛鳥。
しかしいつまで経ってもロジェが現れる様子がない。
ロジェが来るまで待つつもりであったがハシュマルによるプルーマ自爆によって限界を迎えた会場は崩壊を始めだす。
このままでは崩壊に巻き込まれてしまうと焦った飛鳥だが、彼女の前に会場と主催本拠地――宇宙ステーションを繋ぐ軌道エレベーターが現れる。
これに乗れば助かる気がするが、ロジェを待たなければと思ったが、遠くで宇宙ステーションに向けて飛び立つシャトルを見て、確信こそないがロジェならば自分とは別のルートから脱出したのかもしれないと信じ、飛鳥はエレベーターへと飛び乗った。
主催戦――殺し合いの最終局面。
主催本拠地にてロジェと合流すべく対主催から姿を隠す形で隠密行動を取る飛鳥。
そこで飛鳥は信じられないものを見つけてしまう。
主催は前哨として、回収した参加者の死体を魔神柱に変貌させて戦力にしてきたのだ。
その柱の中には惨殺された武、アスナの肉塊、更には生きていると信じていたロジェの姿までもあった。
そこから武やアスナに続いて、最後の心の拠り所であるといえた主の死を知り、対主催の見えないところで飛鳥は嗚咽を漏らした。
何度目かわからない絶望に塗れる飛鳥。
自分の中で最善の手は打ってきた。
大切な人々のために肉体をボロボロにし、手を血に染めさえもした。
だが結果は残酷で、誰ひとり守れなかったのだ。
もはやこれまでと思った飛鳥は自殺を試みようとするが、その時に飛鳥の中で一つの感情が芽生えてきた。
自分や多くの人々を不幸に巻き込んだ殺し合いの「運命」そのものへの、憎悪であった。
そしてアスナの言葉とロジェの言葉を思い出し、飛鳥は口ずさむ。
「アスナちゃんが言ってたんだ。
殺し合いに巻き込まれる前の時間に巻き戻せるリセットボタンが欲しいって。
殺し合いがなければ誰も不幸にならず悲しい思いをしなかった。武くんたちは死ななかった。
そもそも殺し合いに巻き込まれない世界こそ実は正しい歴史なんじゃないかと思うの。
いや、私がそうする。
過去も未来も異世界も巡ることができる主催の力を奪い、全ての殺し合いが起こる前の時間軸に戻って、全ての殺し合いの主催を全員殺す。
そうすれば殺し合いそのものが全部無くなって誰も不幸じゃなくなる。
全部、全部全部全部ゼンブ、ぜんぶ、全部! 私の手でリセットするんだ!!」
殺し合いそのものをなかったことにする……それが飛鳥の願いとなった。
願いを叶えるべく、主催の戦力に対主催をぶつけて疲弊させ、最後に主催の力を奪うべく主催本拠地で暗躍を開始する。
そのためなら情心を殺して対主催にいかなる犠牲が出ても構わないつもりでいた。
全てはこの殺し合いを含めた何もかもをなかったことにし、あらゆる不幸を終わらせるために――
飛鳥の暗躍があるとも知らずに本拠地を前進していく対主催軍団。
だが主催・対主催双方に次々と犠牲が出て戦力をすり減らしていく。
この損耗も飛鳥の狙いであり、対主催が自分の目的の邪魔になる可能性もあったので、手助けすると同時に退路を断ったり雑兵であるモノクマを誘導してぶつけるなどをして戦力を減らすように仕向けていた。
姑息で冷酷なやり口であったが、最終的には全部自分がなかったことにするのでやむを得ない犠牲と割り切った。
そんな彼女は対主催から先行する形でアルターエゴと共に対主催を待ちわびていたマーダー・江ノ島を発見した。
ロジェの計画を台無しにした仇敵でもある彼女に飛鳥は怒りを込めて奇襲で討ち取ろうとするが、彼女は主催から因果律すら操る「本」を手に入れており、奇襲は失敗して逆に捕らえられてしまう。
そして瞳はほの暗く歪んでいるが、確かな希望を持っている飛鳥を絶望させるために江ノ島は彼女の理想を論破する。
飛鳥は殺し合いが起こる前の時間に戻り、主催を暗殺するなどして全ての殺し合いをなかったことにするリセットを望んでいる。
それは飛鳥が歩んだ時間軸も消すことにも繋がる。
一見すると飛鳥の望み通りに不幸も消えるように見えるが、実際は違う。
過去に歩んだ時間軸を消すことは深刻な時の矛盾……タイムパラドックスを引き起こし、未来の飛鳥を消すことに繋がる。
未来の飛鳥が消えると、未来の自分が行った過去の出来事もなかったことにされてしまうのだ。
すなわち「殺し合いそのもの」をなくすことなどできず、リセットされるのは「殺し合いが始まる前に止めようとする自分の行い」なのだ。
飛鳥はこれに対して負けじとタイムパラドックスに縛られない平行世界説ならばとも持ち出すが、だったらいくつかの「殺し合いが起きなかった」平行世界が生まれるだけで、未来に影響は及ぼさなくなる。
結局は殺し合いの悲劇に巻き込まれた者全てを救うことはできない。
助けられなかった平行世界全てを無視して助けた分だけで自己満足するなら勝手だが、バタフライエフェクト的に自身や世界に破滅的なダメージを与える可能性の方が大きく、それは救った者も含まれる。
そう、江ノ島は嘲笑いながら論破したのだった。
おまえは疫病神なんだよ、と付け加えて。
今まで自分がやってきたことや、これからやろうとしていることは全て無駄で、悲劇をなかったことにすることも許されないのか。
今まで殺してしまった人々の犠牲やロジェやアスナの理想を叶えることもできない己の無力さを打ちしがれた。
仮にリセットを実現することができたとしても、「本」の力を手に入れて因果律すら操れるようになった江ノ島にはパワーもスピードも意味を成さず、越えられない壁になっていた。
これでは本当に自分が疫病神のまま終わるんじゃないかと、飛鳥は嘆いた。
そして飛鳥が危うく江ノ島に殺されかける寸前で対主催軍団がたどり着く。
だがこれに対して江ノ島は自身の分身であるアルターエゴと共に【深遠なる闇】を復活させ、更には主催戦力であるナインボール・セラフとフィッツジェラルドに挟撃を受け、対主催軍団は窮地に陥る。
拘束された飛鳥はその戦いを生気を失った目で見ているしかなかった。
流れ弾にでも当たって苦しんで死ねたら救われるかもしれないという自殺願望すらあった。
しかし、周辺にセラフに撃墜されたACから放り出されて瀕死の遠野が飛鳥を発見すると、すぐに彼女の拘束を解いたことが転機に繋がる。
なぜマーダーであった自分を助けたのか、そもそも全てを諦めた自分はもう生きる気力がないんだ。と遠野に力なく言う飛鳥。
彼女はロジェの仲間でもあり、間接的に彼の恋人である野獣先輩を殺している。
しかし遠野はそのことを告げられても恨むことなく、お互い様だと言った後に一つの花を渡す。
それは武が飛鳥に渡したかったモノ。
志半ばで散ってしまった武の想いと願いを叶えるために野獣先輩に託され、厄災戦で亡くなった野獣先輩から彼の恋人である遠野に託されたもの。
遠野「花言葉は『枯れない愛』・・・・・・彼を殺そうとした俺が言えたことじゃないが、武くんは君のことをずっと思い続けていたそうだ」
それはサボテンの花だった。
その小さな花は武と同じでとても暖かい心を感じさせた。
武は願っていたのだ、優しくて強い飛鳥お姉さんには生きていて欲しいと、愛情を向けていたのだ。
遠野からそのことを教えられた瞬間に飛鳥の心は確かに揺らぐ……ここで意味もなく死んでしまえば武から向けられた愛情まで裏切ることになってしまうんではないか、と……
心をビッシリと覆っていた錆が剥がれていき、修羅に身を落としていたつもりの飛鳥は、自分がいつの間にか涙を流していることに気づく。
一方、抜け殻になっていた飛鳥が遠野によって己を取り戻しつつある横で、江ノ島とアルターエゴは邪悪な笑みを浮かべていた。
江ノ島「なんかこれは一回でもやっとかないともやもやするよね~」
江ノ島アルターエゴ『というわけで、みんなお待ちかね、オシオキタ~イム!』
2人『さぁ~て、本日の犠牲者は~!』
人の命を弄ぶようにオシオキというの名の拷問処刑を始めようとする江ノ島たち。
それに合わせて突如現れたスロット……このスロットによって誰かがランダムに処刑される。
一度絵柄が揃ってしまえば、因果律を操る本の力によって誰にも逃れる術はない。
さっそくスロットを動かすと、絵柄の三枚の内二枚が飛鳥に揃っていた。
それを見た遠野が飛鳥をやらせるものかと、絵柄が揃う前にスロットを破壊する。
オシオキを妨害した場合どうなるか?
その場合はもちろん、妨害した者が処刑される。
飛鳥は遠野を止めようとしたが、間に合わず、どこかへ連れて行かれる。
だが遠野は自分が処刑される身になっても後悔している様子はなく、武を殺そうとした罪をこれで許して欲しいとさえ言った。
遠野のオシオキは、下北沢誘拐殺人事件。
裸に剥かれた後にヤクザを模したモノクマに散々痛めつけられた後に見ただけで心臓麻痺しそうな醜女のロボットに精を貪り尽くされるという凄惨極まりないものだった。
全てが終わった時、飛鳥の下に戻ってきた遠野の骸はカラカラのミイラと化していた。
また一人、心を通じ合わせられるかもしれなかった仲間の死に飛鳥は涙を流す。
だが今までと違い、泣いて立ち止まるのではなく、血も凍る漆黒の意志に身を任せるのでもない、かつての温かい血が飛鳥の中で燃え上がろうとしていた。
そして同時刻、奇跡は起きた。
リアが己の命そのものを光の天使の力で「GN粒子の光」に換えて敢行した擬似クアンタムバーストによって、生き残った参加者の肉体・武器が強化され、精神の浄化も行われ、飛鳥もまたその恩恵を受けることになる。
飛鳥の目の前に現れる、武、アスナ、ロジェ、忍者ロワで散った仲間の残留思念。
ガイら忍者ロワの仲間は一度は外道に身を落とした飛鳥を責めることはなく、叱咤激励をする。
仲間たちはどんなに辛くても心は傍にあるから挫けるなと、優しく諭した。
ある意味飛鳥を悪化させた原因であるアスナとロジェは自分たちの隠していた嘘を告白するも、同時に自分たちにひたむきに尽くしてくれた飛鳥に心を救われ、確かな信頼を感じていた。
もっと早く会えていれば良かったという二人に、例え始まりは嘘で繋がった仲でも自分に居場所を与えてくれた親友と主君に感謝した。
そして武……彼は飛鳥に渡したかった『枯れない愛』を胸の内に抱いていることに笑顔を向けていた。
更に葛城や斑鳩といった自分のいた世界のくノ一たちの想い……彼女らは今日も必死に飛鳥たちを探しつつも、きっとどこかで戦い続けていると信じていた。
もし自分からゲームオーバーになったりリセットボタンを押すようなことをすれば、彼らの想いを踏みにじってしまうことになる。そんなことは飛鳥には許せない。
これまで自分を支えてくれた『心の友』に報いるために飛鳥が目指すべき道は生きること……すなわち主催打倒によるゲームクリアであると。
そして飛鳥は多くの対主催と同じく身も心も進化した。
これまでの陵辱や拷問その他もろもろでぼろぼろになっていた肉体は擬似GN粒子の力で快復に向かう。
合わせて自分を縛り付けていた紅桜も寄生が解けて左腕から外れる。
もう彼女に殺すためだけに作られた紅桜は必要ない……必要なのは共に支えられた熱い心と拳のみで十分だった。
今ここに、善忍でも悪忍でもない、友のために拳を振るう忍が生まれた。
「飛鳥、心の友のために、舞い忍びます!!」
そしてノマド残党によって半ば無駄につけられていたチャクラ経絡を使い、飛鳥はガイの技であった八門遁甲を使用する。
それは本来なら八門(死門)まで開けば高い戦闘力と引き換えに死を約束される代物であったが、ノマドの改造とリアによるクアンタムバーストがかけ合わさったことによって原作にてナルトがガイを柱間細胞とチャクラ供給によって命を救ったように、いきなり八門を開いても死亡しないまま使い続けられるという超絶パワーアップに繋がったのだ。
そうして赤い真影となった飛鳥はモノクマ軍団や量産型ナインボールを蹴散らしていき、対主催に貢献する。
戦いの過程で【深遠なる闇】、セラフは墜ち、江ノ島やフィッツジェラルドも討ち取られ、ここでの戦いは終わった。
飛鳥は必然的に対主催と合流する形になるが、元マーダーであり多くの対主催を殺すことに繋がったロジェ一行の仲間である彼女と対主催の間でもちろんひと悶着あった。
ロジェに騙されていたとはいえ彼女自身も多くの対主催を殺しており、ロジェに騙されていたと知った後も飛鳥はロジェを主君としていたのも問題だった。
彼女を仲間と認めずに恨みを向ける者も多く、仲間を殺されているサウザーやシンなど背後を預けたくない者もいたが、ここで意外な人物たちが飛鳥を弁護する。
一人は一時期仲間であったカーズ。
実はカーズは柱の男の力でロジェの洗脳効果を最初から大部分抑えており、前の殺し合いで自分が銀時に負けた理由を知る為に人間観察として操られたふりをしていただけだったと明かされる。
そのカーズもこの殺し合いで
シックスを通して己の醜さと人間の中にある黄金の精神を知り、彼自身は人間を好敵手としつつも見下さずに存在を認める銀色の精神に目覚めていた。
そんなカーズの口より、飛鳥は漆黒の意志に狂ってはいたが仲間に対して裏切りは絶対にしない女であり、今は銀時のような黄金の精神に目覚めていると弁護した。
もう一人は以前に殺し合った中であるアナキン。
彼のフォースの力で飛鳥の心を読んでおり、飛鳥が仲間として戦いたいというのも戦って贖罪をしたいというのも嘘ではないというのがわかっていた。
アナキン個人としてはよしのりを殺したロジェの仲間である飛鳥を到底許すことはできなかったが、ただ憎いから殺すという幼稚な考えはよしのりから教えられたゴーマニズムに反するとして今は見逃すことにした。
飛鳥の合流にはかなり難儀を示し、まだ彼女を信じられない者も多かったが、弁護人の助けによって対主催の一員として黒幕と戦う仲間として迎え入れられたのだった。
そして、サイバーエルフとして電脳世界の存在になったエックスの手によっていよいよ黒幕に繋がる道は開かれた。
待っていたのは世界の秩序を守るコンピューター「管理者」と赤いターンエーガンダムだった。
管理者から明かされるこの殺し合いの目的とは――正史から外れた行動を取り、バタフライエフェクト的に世界に害を成す存在になったイレギュラーの抹殺――その下準備としてのデータ採集のための実験、であった。
飛鳥にしてみれば、仮に誰にも救出されずにノマドに囚われていたままであったら奴らの尖兵として世界に害を成す存在になっていたのは明らかであり、イレギュラーを無くす目的そのものはあながち間違っていないように聞こえた。
だが管理者のやり方はそれぞれの参加者の生き様を否定し、それらを受け入れたり救ったりはせずに存在を消すだけの対処療法だ。
そしてこの殺し合いの参加者は皆、尊厳を無視されたモルモットとして扱われた。
おそらく管理者を倒さないと彼が最適解を得るまで、また多くの殺し合いを戦った者が実験材料として殺し合いをさせられるのだろう。
未来の悲しみをなくそうとするのは管理者なりの戦いなのかもしれないが、そのために過去にあった思い出や仲間の存在の否定を許すわけにもいかなかった。
仲間との思い出は全てが悲劇ではなかった。
飛鳥にもう殺し合いで出会った仲間はいないが、胸の奥には心の友がいる。
彼女にとってこの戦いは善悪を越えた、自分と心の友たちの存在意義を勝ち取るための戦いだった。
最後の戦いは正に総力戦であった。
リアのクアンタムバーストによってほぼ全員が強化されているとはいえ、また一人、また一人と落命していく。
むしろリアの助力があって漸く管理者に立ち向かえるレベルであり、さもなくば3分待たずに全滅していただろう。
それでも飛鳥は、多くの対主催は己の存在をかけて戦い続ける。
ターンエーが敵を駆逐するために最悪の虐殺兵器と言える月光蝶を放った時、これは対主催にピンチをもたらすと同時にチャンスをもたらす。
アンパンマンとアナキンが命を代価にしたアンパンチとフォースグリップによって月光蝶の噴射口が塞がり、必殺兵器を封じた。
それにより生じた隙に対主催軍団は最後の総攻撃を仕掛ける。
ナノスキンによる自己修復を許してしまうと再び月光蝶が来る。
そうなれば勝ち目がないための突撃であった。
しかし、ターンエーはもう一つの奥の手であるアーマード・コアネクストから流用したコジマ粒子による防壁を大爆発に転じたアサルトアーマーで対主催は吹き飛ばされ、突撃は失敗。
無視できないダメージを負い、逆に窮地に陥ってしまう。
辛うじて致命傷だけは免れた飛鳥は横にいる三日月の機体、ガンダム・バルバトスを見る。
バルバトスは爆発の衝撃で頭部と左腕を失っており、コクピットにも深刻そうなダメージを受けていた。
落としたKARASAWAライフルを拾いに行こうとしているところからしてパイロットは辛うじて生きているようだが、その死に体のバルバトスに、ターンエーは容赦なくトドメを刺そうとする。
持っている武器は主催の一人であった技術者クラウン・リリスの作った次元を歪ませることも可能な試作武器であり、直撃すれば堅牢なナノラミネートアーマーに守られた
ガンダムですら容易く四散するだろう。
ここで飛鳥は自分は死ぬかもしれない可能性が頭によぎるも、ターンエーに勝てる攻撃力を持つMSを失うことは勝機を失うことに繋がりかねない冷静な分析、僅かな間とは言え共に戦った仲間を見捨てられない義勇心、そして武が望んでいた強くて優しい忍であるために、飛鳥は突撃する。
ターンエーが撃つ直前に、命躯で邪魔な服を全て脱ぎ捨てることで圧倒的な機動力を得た飛鳥は敵に肉薄し、全てのチャクラを結集させたガイ譲りの必殺の蹴り『夜ガイ』で武器を破壊し、バルバトスへの攻撃阻止に成功する。
だが発射直前の砲を破壊することによって、内部のエネルギーの暴発によって次元の穴が開いてしまう。
死力を尽くしてしまった飛鳥にこの穴から逃れる術はなく、仲間の救助も間に合わずに闇の中に吸い込まれていった……
一度次元の穴に落ちてしまえば無数にある世界のどれかに行ってしまい、元の世界に戻れる可能性は望み薄、むしろ人間がいられる場所ではないどこかに飛ばされて死亡する可能性の方が高いだろう。
それでも飛鳥に悔いはなかった……生き残ることこそできなかったが、身も心も裸にして全てを出し尽くし、自分が貫きたかった忍道は貫けた。
忍者ロワではできなかった、仲間を守ることが漸くできたのだ……
飛鳥が次元の穴に墜ちた後、彼女の身を挺した攻撃からターンエーはアサルトアーマーを使った直後はプライマルアーマーを張れずに防御力が激減するというヒントを得たトレーズは、相討ち覚悟でターンエーに特攻し、ついに撃墜に成功する。
これを見た管理者は自身のバックアップを他の次元に送ろうとするが、再起した三日月のバルバトスのKARASAWAによってバックアップは転送前に爆破され、本体もまたガンダムのラストシューティングならぬメイスによるラストブローによって破壊された。
飛鳥の犠牲が結果的に対主催に勝利を招いたのだった……
……と、生き残った対主催(というか住民)の中では飛鳥は死んだ者として扱われたが、全てのエピローグが出揃った後に本当に最後のSSが投下されていく。
それは殺し合いが起こらなかった場合のどらえもん世界で、どらえもんがセワシに対してジャイアンの花嫁になる女性について語るという内容である。
その花嫁が彼女であるという証拠はどこにもない。
ひょっとしたら似てるだけの誰かさんかもしれない。
それでも……
どんなに辛くて悲しかろうとも人生にリセットはない。だが。
人が命と過酷な人生に立ち向かう意志という名のコインを持っている限り、コンティニューは許されるのだ。
最終更新:2024年01月23日 17:19