【名前】鬼人正邪
【出典】東方Project/架空学園ロワ2
【性別】女
【年齢】中学生
【種族】天邪鬼

【人物】
何でもひっくり返す程度の能力を持つ、天邪鬼の少女。キルラキルの纏流子に似てる。
東方projectにおいては数少ない極悪人キャラだが、「架空学園2」の世界では設定がやや異なる。
学園テロを起こしかけるほどの問題児であるが、この世界では妖怪が差別され幻想郷は部落のような扱いを受けており、妖怪や亜人をいじめる問題教師への反抗という大義名分が(一応)ある。
さらに言ってしまうと彼女が行動を起こさないと問題教師・嘉門(後の主催陣営の一人)を罷免できなかった可能性があるので行動に意味はあった。
不良故にクラスメイトとの仲はあまり良くないが、弱いものイジメはしない。
学園テロ未遂の際に自分を倒した遊矢やアマゾンネオ(千翼)には拘りを持ち、彼らに下剋上するために殺し合いに乗らないと強く誓い、ロワ中でも対主催仲間を裏切ることは一度もなかった。

総じて嫌われると喜ぶ天邪鬼の気質や価値観は原作と同じである一方、善人とも言い切れないがゲスとも言えない武人的な性格になっている。

架空学園2でのあらすじはこちらを参照。


【今ロワでの動向】

〇初日

元ロワでの桐山との決闘で死んだと思いきや、蘇生させられた正邪。
目覚めると自分が拉致された架空学園での殺し合いとは比べ物にならない規模で参加者が集められており、主催から自由と報酬が欲しければ殺し合いをしろと要求される。
当然、天邪鬼であり主催が信用できない正邪は殺し合いでの優勝を否定。下剋上を狙うことにする。

支給品のPADより上条やリク、レイやアカネなど学園の顔見知りが何人かいることを知り、ひとまず協力体制を取るために合流を目指す。
実はこの時、彼女はデータの見落とし……というか全部読むのがだるくなるレベルで参加者が多いため、リクやアカネなど同じ名前の人間が複数人いたことに気づいていなかった。
さらに言えば一部の人間は世界線の全く違う別人であることを彼女は知らない。

とりあえず初日は仲間を探しがてら、対話の余地もないモブマーダーこと襲いかかってきた毛狩り隊やドラクエモンスターなどを弾幕でピチュらせる程度で、目立った行動はしていない。
ただ、会場の真ん中に生えている山のように大きな大木が気がかりであり、一先ずそこを目指して歩いて行った。

だが……彼女が知らない裏で、オールリピロワ参加者による「主催に陣営に組みした方の」正邪の悪評が流れていたこと、そしてここにいる彼女と参加していないオールリピの正邪が別人であることを知っていながら、あたかも参加しているのは大悪党の正邪であるかのように、ネットを通して騙った白饅頭と白長の陰謀が蠢いていた……


〇二日目

徒党を組んだ方が生存率は上がるだろうと思い、手を組めそうな対主催を探そうとするが、正邪の顔を見るや逃げられたり、対話を拒否されて威嚇攻撃をされたりもした。
正邪はこれについて元の世界にもあった「妖怪差別」がここでも根強いためと判断。
他の妖怪ならまだしも、嫌われることを喜びとする天邪鬼である彼女にとっては嬉しいことでもあったが、その笑い声は少し乾いていた。
とにもかくにも、まともに組めるのはクラスメイトの連中ぐらいだと思い、見ず知らずの対主催を宛にするのは諦めるのだった。

彼女は疎まれた理由が風評被害であることを知らない。


〇三日目

聖マリス学園近くまできた正邪は、そこで装者マリアに襲撃される。
幻想郷のどこかで聞き覚えのある男に尽くしているらしい彼女は、より多くの女を集めるように命令されたらしく、偶然通りかかった正邪も狙われ、迎撃することに。
マリアは強敵だったが正邪のなんでもひっくり返す程度の能力には対応しきれず、僅差で勝利した。

いざトドメをさそう……としたところで、背後から銃弾と斬撃による奇襲を受けて昏倒、そのまま谷底の川に落下し流されてしまう。
横槍を入れたのはニナと火織であり、風評被害を信じていた彼女らは正邪を悪人と思い込み、マリアが一方的に襲われていると誤解して攻撃してしまったのだ。
この嬉しい誤算に命を助けられたマリアは二人にお礼を言い、楽園に招待することにした……性と淫が支配する楽園「聖マリス学園」に。

一方、川でかなりの距離を流された正邪は血反吐を吐きながらも生きていた。
妖怪であるがためのタフさが、人間なら死ぬダメージを耐えたのだ。
それでもかなりの深手であり、もう一歩も動くこともままならなかった……

そこへ3台のバイクに乗った男たちが現れ、保護されることになる。


〇四日目

気が付くと正邪はどことも知らぬ建物の中にいることに気づいた。
どうやら目の前にいる三人のライダーに保護されたらしい。
一人はこの三人組のリーダー格らしい五代雄介、無愛想な闇医者の木野薫、高校生の月元昭司だった。
いずれも差異や種別は違うが、帯びる魔力から半妖に近い存在だと看破する。
実際に彼らはクウガ、アギト、植物魔人という異形に変身する能力を持っていた。

素直にお礼を言うことができない天邪鬼かつ、先日までの件で若干人間不信になっていた正邪は「助けてくれと頼んだ覚えはない!」と五代に突っかかってしまう。
これに対し「それが命の恩人の五代さんへの態度か!」と激怒する月元と宥める木野。
正邪は嫌悪を向けてくる月元をケラケラと嘲笑う。

しかし五代は怒ることなく正邪を受け入れ、一緒に来ないかと誘う。
月元は正邪を連れて行くことには反対したが、五代は遠目ながらも正邪が善人を襲うことはせず、影ながらに手助けをしていたことを見ており、正邪を保護することに決めたのだという。

まるでクラスメイトの上条を思わせる五代のおひとよしっぷりに正邪は呆れ……同時に信用することにした。
ムスッとした態度で天邪鬼は、五代率いるクウガチームと契約を交わした。
そして怪我がまだ痛むので、その日はベッドで休むことにした。
だが、その夜――


〇五日目

正邪が知らずに感染したシグマウィルスがここで発症する。
川の中にパンデミックを起こした下北沢から流れてきた精液混じりの水が傷口から入り込み、感染したのだ。
鬼人正邪は――鬼人性者となった(激寒ギャグ)。


正邪が正気を取り戻した時は、五代ことクウガに羽交い締めにされ、木野によって首元に注射器が刺されており、足元ではスッポンポンの月元がグスグスと涙を流し、自分は全裸だった。


何が起きたかさっぱり理解できないポルナレフ状態だった正邪は医者である木野に説明を受ける。
下北沢エリアには今、人の性欲を暴走させる謎の感染症が流行しており、正邪を保護する前日に五代・月元も感染したが、それぞれ体内に宿す霊石と魔界植物のおかげで大事にはならなかった。
この二人の血で血清が作れると読んだ木野たちは、この血清作りのために下北沢に残った住人を助けるために坑道の隠れ家に引きこもっていたとのこと。
そして血清は完成したのだが、その前後に正邪も発症し、裸になるやいなや月元の身ぐるみを剥いだ後に性的欲求のままに強姦しようとしたので、五代が慌てて止めに掛かり、木野が血清を打ち込んだというわけである。

なお、ギリギリ処女は無事……とはいえ、いくら天邪鬼でも乙女は乙女。
男どもに裸を見られるわ、好きでもない男に危うく貞操を奪わせかけるわで正邪は顔面真っ赤になる。
ついでに素っ裸の月元はボコった。どう考えても彼は悪くない、ただのやけくそである。


そんなtoLaveる、もといトラブルがあったしばらく後、半壊したガンダム――Gセイバーが近くに落下した。
コクピットの中から、見るからに冴えない印象のパイロットが慌てて降りてくる。
パイロットはリュウと名乗り、ミーティアという妊婦が破水したため、すぐにでも医者を探さなければならないとのこと。
幸い、木野は医者であり、産婆を請け負うこともでき、さらにミーティアという女性は月元にとっての大事な知り合いらしく、すぐにでも合流するためにミーティアが待つ坑道の隠れ家を目指すことになった。

隠れ家に到着すると今にも子供が生まれそうなミーティアと、リュウと師弟関係であるシノがいた。
さらにリュウがいない間に合流した新たなる仲間である対主催の飛竜、ダンテ、蘭子、ザベルも先に到着しており、五代チームは一気に11人以上の大所帯となる。
ミーティアの出産は一先ず木野に任せ、残るメンバーは見張りと情報交換を行う。

どうやら飛竜一行は主催の目的に心当たりがあり、会場のある場所に生えている超巨大な大木の正体は「モウソウノセカイジュ」であるとのこと。
このセカイジュを端的に言えば上位の神さえ容易く殺し、数多の世界を滅ぼせる超兵器であり、仮に主催が完全制御をしてしまえば、世界征服も簡単にできてしまうということ。
飛竜らの招かれた殺し合いではセカイジュ自体に自我を芽生えさせることで滅亡を回避したが、殺し合いを生き延びた悪しき者が同じものを作り出した可能性はあるのだ。
セカイジュは下北沢を越えた先に生えているらしく、五代チームは元々下北沢へ向かうつもりではあった。
ミーティアの出産が終わり次第、向かおうチームは方針を決めた。
なお、飛竜はやたらと正邪の顔を渋い目で見ていた気がするが……理由を聞いても何も答えてくれなかった。

隠れ家の一角の見張りを任された月元と正邪。
先の乱痴気騒ぎもあり、なぜ私(僕)がこんな奴と……と互いに関して不満気味な二人だったが、五代的には仲良くなって欲しいがためにあえて二人ひと組で警備を任せたのだ。

しばらく互いに沈黙が続いたが、何時間も何も話さないのは辛いと思ったのか、月元の方から話しかけた。
名簿にもある、洸と光希という者たちを見かけてないか? ということだった。
正邪は会ったことないというが、月元にとっては拘りのある人物らしい。

話を聞くと月元は過去に二回も殺し合いに巻き込まれており、一度は悲劇の中で死に、二度目は生還したが多くの戦友を失ったとのこと。
その折に出会った洸はミーティアの夫でもある魔人で、二度目の殺し合いの折には怪物化していた自分を能力で助けてくれたが、ミーティアを人質に取られたと知ると殺し合いに乗ってしまい、結局和解することもできないまま死んでしまったとのこと。
光希は月元にとって憧れの人であったが、一度目の殺し合いにて月元と合わせて悪に騙され互いに殺し合い、果てに殺してしまった。
二度目の殺し合いで両方蘇るが、世界を破滅させようとした邪神とアエゴーシュマ(多大な代償と引き換えにあらゆる願いを叶える魔法)による二度目の殺し合いでは完全に悪に染まってしまっていた。
主催や黒幕のナインズは討伐したものの、月元や仲間たち、そして絆を力とするタロットは魔王となった光希に敗れた。
取り逃がした光希は旧支配者の魂と持つ少女と悪の科学者と共に「森浄化杜」なる悪の組織を立ち上げ、邪神やアエゴーシュマの使徒である夢想人に襲われて恐怖に負けた人々を吸収し、七つの世界を征服する機会を待っているとのこと。

二人が殺し合いに招かれていたが、月元はこれを二人を悪の道から連れ戻せるチャンスと見ていた。
五代や木野のような頼れる仲間たちもできた、今度こそ皆の絆の力を合わせれば成し遂げられると。


その話を聞いた正邪は――月元ではなく、悪に走った洸や光希の方に同調した。
怒り混じりに「なぜだ!?」と聞き返す月元であったが、正邪には自分なりの考察を述べる。

洸に関しては主催に従わねばミーティアが殺されるしかない……それこそ仲間である月元たちが頼りになれば話は別だったが、少なくとも周囲が見えなくなる程度には仲間の力を信じていなかったのだ。
ミーティアは確かに助かったが、これは対主催だけの力というよりナインズら主催の仲違いによる運の要素が大きいようにも見える。

そして光希が悪の道に走ったのは本人の意思かもしれないが、助長したのは他でもない月元たちだ。
最後の決戦に使ったという「絆のタロット」……絆の力で奇跡を呼び起こすアイテムらしいが、言い換えればコレは代償や使用条件が違うだけの「アエゴーシュマ」。
光希が失望したのは、殺し合いから何も学ばずに絆の力に頼ってでも自分を止めようとした上で負けたこと……彼女視点ではアエゴーシュマを使った連中と同じくらい情けなく見え、世界の破壊に走るのもわかると正邪は述べる。
絆の脆弱さを証明してしまったのが他でもない月元たちであるのだ。
だが絆のタロットは夢無たちが絆の力で造り上げたものだと月元は言う、対する正邪は生み出した経緯や使用目的がなんであれ道具として扱った事実は変わらないし、相手側からすれば言い訳にしかならないと返した。

なぜそこまで言うのか、今度は怒りではなく疑問から月元に尋ねられる。
正邪は一重に虐げられてきた妖怪であり、架空学園2世界の社会では弱者に位置している。
洸や光希のような精神的な余裕がなくなって悪に走った者たちの気持ちを理解できるからだ。
正邪としてはそいつらを理解しないで「救いたい」と抱く月元の願望は「正義や絆の押し付け」にしかなっていない。
「仲間」「絆」のような耳障りの良い言葉で強くなったと思い込み、全てが解決できると思いこんでいるなら傲慢でしかない。
その傲慢で目が曇ってる内はおまえは絶対に二人には勝てないと正邪は忠告する。

月元は思うところはあったみたいだが、それでも絆の力を信じ二人を助けたいという。
正邪は勝手にしろ、と言って見張りの仕事に集中し、夜が明けるまで互いは口を聞かなかった。


そして――


〇六日目


ミーティアの子供が無事に産まれた。
殺し合いの中とはいえ、子供が産まれたことに喜ぶ一行。
ミーティアは出産を助け、自分たちを守ってくれたお礼に一人一人に産まれたばかりの赤子を抱かせる。
正邪はガラじゃないと一度は拒否するが、五代たちの奨めにより抱きしめることに。
彼女は口ではブサイクだなんだと言いつつ、爪や指で傷つけないように丁寧に抱きしめる。
架空学園2世界の妖怪は差別の対象故に人間には恐れられて同族以外の子供には触れさせてもらえなかった。
抱きしめて初めて赤ん坊の温もりと柔らかさとか弱さを感じさせてもらった正邪は、偏見を持たずに触らせてくれたミーティアに内心では感謝をしたそうな。

余談だがその後、10人で赤子の名前を決める際には「針妙丸」にしようとしたが、木野に却下された。
元々悪ふざけのつもりで勝手に幻想郷での知り合いの名前を使ったのがまずかったのか。



――しかし、ここまで順風満帆かに思われた五代チームにも悲劇が訪れる。

発狂マーダー、サトゥルヌスが遠方から発射した支給品のミサイルで隠れ家が崩壊。
さらに隠れ家の爆破により、周辺にいたマーダーたちも一斉に殺到してきたのだ。
その中で正邪は月元共に崩壊した足場に巻き込まれて坑道の中へと閉じ込められてしまう。
大きな傷はなかったが、五代ら他のメンバーと離れ離れになってしまった二人は急いで仲間と出口を探すことにした。

探索を進めると、二人はマーダーに接敵した。
それは白き鎧・インクルシオを身に纏った空手家MUR(リピ2016)と、ISを身に纏ったトーテンタンツァによるマーダーコンビである。
その足元には頭のないザベルと、胸を貫かれた木野の死体が転がっていた。
仲間の死には月元は激怒、正邪も「うるさい奴と無愛想なオッサンが死んでくれてせいせいしたぜ」と口では言いつつも、額には青筋を立てていた。

特にトーテンタンツァは月元にとって因縁のある悪女らしく、憧れの人を騙して悪の道に引きずり込んだ元凶にして、月元も彼女のせいで一度は地獄を見たらしい。
それをやった理由は単に愉悦のためだけであると、トーテンタンツァ自身が告白し、高笑いを浮かべる。
衝突はもう避けられなかった。

正邪はトーテンタンツァと相対し、月元こと魔拳士カクタスは彼女の盾であるインクルシオと激突する。
男たちが拳による押収を繰り返す横で、女たちは弾幕勝負を行う。
だが、戦況は膠着状態にもつれ込む。
正邪は反転させる能力を使って戦うが、頭の回転が早いトーテンタンツァは対応が早く攻撃がなかなか当たらない。
反対に弾幕ごっこで鍛えた動体視力・反射神経で向こうからの攻撃もなかなか命中しない泥仕合になっていた。
互いに攻め手を欠いた中で、トーテンタンツァは唐突に一冊の本を投げてよこし、なぜか攻撃を中断した。

いきなり、何を……と思った正邪は、渡された本を読んでみると、そこには衝撃的な事実が書かれていた。


その書は、架空学園2世界からの参加者詳細名簿。
そして自分が死んだ後の架空学園2世界……すなわち、正邪の世界の最期が記されていた。
あの世界は異聞帯という、遅かれ早かれ滅びゆく宿命の世界。
リピ2018の主催は解釈のためにダンテも見た虚無の王『ギドラ』によって跡形もなく消滅したのだという。
正邪が帰るべき世界はもう残っていない、上条ら対主催の努力も無駄……主催であるダイモンたちを倒したところで破滅の先延ばしにしかならなかったのだ。
当然、越えたかった遊矢やアマゾンネオはこの世にもういない。
全ての、下剋上のための夢や努力がふいになったという事実には、さしもの天邪鬼もショックを隠しきれなかった。

戦意を喪失した正邪にトーテンタンツァは甘い誘惑を仕掛ける。
――私たちの仲間にならないか、と。
天邪鬼の本質は『悪を喜ぶこと』だ。五代のようなヒーローの真似事は似合わない。
どうせ帰る場所はないのだから、くだらない意地やモラルなど守る意味はない。
好き勝手に暴れて殺して奪ってこその天邪鬼ではないか?
真の天邪鬼なら「裏切って嗤える」ほどの極悪であるべきだ、とサイコパス女は語る。
正邪もまた彼女の言葉に乗せられたように「そうだ、私は妖怪で天邪鬼なんだ……人間とは違う」と言い出し、唐突に戦闘中のカクタスの背中に弾幕を打ち込む。

弾幕はカクタスの鎧を貫くことはなかったが、正邪の突然の裏切りに月元は焦る。
対照的にトーテンタンツァとMURは高笑いを上げる。
正邪は恨まれたり蔑まされると喜ぶ天邪鬼の本能に従って裏切らせてもらったと言いながら、月元の目の前で横にいるトーテンタンツァと微笑み顔で硬い握手を結んだ。



次の瞬間、正邪の微笑みはゲスな笑顔に代わり、トーテンタンツァの右手がブチブチと音を立ててちぎれた後、宙を舞った。
正邪は最初から狙っていたのだ。膠着を切り崩すために、相手が油断して懐を晒す瞬間を。
「裏切って嗤える」極悪な裏切りをするために、味方さえも騙して攻撃を加えたのだ(最初から自分の弾幕ではカクタスの防御力は貫けないと計算済みで)。
サイコパス女は月元の絶望顔を拝むつもりが、まんまと罠にはまったのである。
トーテンタンツァは激昂し、その場を離れた正邪に大量に召喚した剣による最大の一撃を与えんとする。
しかし、正邪はこうなった相手に負ける気はしなかった……かつて桐山が自分にやったように、怒りで周囲が見えなくなった者を倒すのは難しいことではない。


TTT姉貴「小娘きさまああああああ」
正邪「それを待っていた! 逆符『イビルインザミラー』!!」

悪MUR「え? なんでTTT姉貴の剣が全部俺の背中に!? ポッチャマッ!!!(断末魔)」

感覚を反転させれれた状態で放たれた剣は全て反対側にいた存在に集中し、まさか味方に撃たれると思わなかったインクルシオに全弾名中、悪のMURはインクルシオごと破壊されてバラバラの死体になった。
怒り狂うトーテンタンツァと、喜ぶ月元の表情が目に入る。

月元「正邪、やっぱり君は裏切ってなかったんだね!」
正邪「敵を騙すには味方からだ。
   それに天邪鬼の『YES』の意味は『NO』。
   それを知らずに舞い上がったアイツが悪い」
TTT姉貴「クソが! クソがああああ!!!」

ここで勝敗は決した。
いくら強力なISを纏っているとはいえ、2VS1は部が悪く、坑道の中故に逃げ道もない。
だが錯乱したトーテンタンツァに降伏の意思はなく、無闇やたらに剣を飛ばす。
ここで決着をつけようとカクタスは吶喊し、正邪は彼をサポート。
剣の大半がひっくり返す程度の能力で跳ね返って主の肉体に刺さり、カクタスに多少当たっても、彼の硬化した植物の装甲を貫くには至らなかった。

「さようなら、汀先生」

敵に肉薄したと同時にカクタスは必殺のパイルバンカーを放った。
片手だけでは防御も間に合わない。
一瞬の後にはトーテンタンツァの首から下があまりの威力に粉々に吹っ飛び、残った首も正邪がサッカーボールのように蹴った結果、散り散りの肉塊になった。

因縁ある敵そして自分を見下した悪党を倒した月元と正邪の表情は互いに、スカッとしたものであった。


月元「ありがとう正邪、君がいなかったら僕は奴らに勝てなかった」
正邪「お、おまえのためじゃないからな!
   ただ、私は生まれ持ってのアマノジャクだ。
   嘘は平気でつくし、人様からは嫌われた方が楽しく感じるくらいだ」

トーテンタンツァの説いたインモラルは確かに天邪鬼的にとっては魅力的だった。

正邪「だけどな、弱いものいじめは好きじゃない。
   弱くて傷ついた奴倒してもなんにも嬉しかない。
   どっかの誰かさんみたいに不幸のどん底から這い上がり、悪足掻きしてる奴なんて殺して何が楽しいんだ?」
月元「正邪……」
正邪「おまえとは境遇が違うけどね、私は見てきたんだよ。
   絶望的な状態から下剋上しようとする弱者を……
   リバースヒエラルキーはそんな奴らが成し遂げるべきだ。
   下剋上をするのは少なくとも誇りも何も持ってないあいつらじゃない」

しかし、彼女にもプライドはある。
本能と欲求だけを優先させて強者のみならず弱者をも虐げるほど、正邪の誇りは安くなかったのだ。

正邪「ああ、もう!トーテンなんたらや知的障害者もどきに従うよりはマシとはいえ
   人助けなんてやっちまった自分に腹が立ってきたー!
   腹いせにおまえが私の裸を見て勃起していたことに言いふらしたる」
月元「やめろおおおおお!あれは生理現象だしそもそもアレは正邪が悪い」
正邪「あーあー、聞く耳もちませーん。さっさと五代たちを探すぞ。
   早いとこ下北沢に向かうんだろ?」

天邪鬼らしからぬことをしたかもしれない自分にイライラしながらも、月元と共に生きている仲間を探すことにした正邪。
仲間と月元が探し求めていた人物はそれからすぐに見つかった。最悪の形で。

一枚の鏡の近くにダンテらしき死体と飛竜の死体が転がっていた。
さらに鏡の中には、ミラーワールドの制約により今にも消滅しそうなミーティアと洸がいたのだ。
正邪たちが来る前に発狂した洸が襲撃し、ダンテと飛竜を殺害し、ミーティアが止めるために仮面ライダーファムに変身し、自分もろとも洸を鏡の世界に引き込んだのだ。
デッキが破損したために、元の世界に戻れないまま二人共消滅する結果になるとわかりながら……

龍騎の世界の仮面ライダーを知らない正邪と月元でも、直感で二人の結末がどうなるかは予想できた。
ミーティアは洸にあれだけ逢いたがっていたのに、この仕打ちとは……月元は悲鳴を上げ、正邪さえも苦い顔をしていた。
二人はもう助からない……だがせめて因縁には決着をつけるべく、月元と洸の戦いが始まった。
能力と使った殺し合いでなく、己の想いを吐き出すかのような心の殴り合いを、洸のことを知らない正邪はただ見守った。

激しい論争で一番の決定打になった月元の言葉であった。

月元「そんなに俺と江口が…もっと前の殺し合いで一緒に戦った人たちが頼りなく…弱く見えたのかよ……!」

『ウロボロス! 野球は一人でやるもんじゃないぞ。 僕と一緒にバッテリーを組もう!』……洸はかつての殺し合いで自分が言った言葉、2度目の殺し合いで忘れてしまった言葉を思い出した。
2度目の殺し合いでは誰にも相談せず一人で解決しようとしていた…そのことを改めて思い知らされ、何も言えなくなってしまった。


ミーティア「……もういいの、洸が必死だったのは妻である私が一番良く知ってる。
      洸はたくさんの間違いを犯したけど、それでも私はこの子を愛してる」
洸「ミーティア……」
ミーティア「彼が禁術を使ってくれなければ私も私のお腹にいた赤ちゃんも死んでいた。
      洸の選択を余地を削ったのは他でもない私の責任よ。
      多くの人々を殺めたことは到底許されることではないけど……だったら私も一緒に裁かれて逝くわ」




「――ただ、月元くん、正邪ちゃん。お願い。

産まれたあの子に罪はない。
あの子だけは、この狂った殺し合いの世界から助けてあげて」

それは母であるミーティアの切実な願い。
幸い離れ離れになった赤ん坊はシノとリュウがGセイバーに乗せて戦場から先に脱出させてくれた。
五代と蘭子も無事であり、希望はまだある。
月元は必ず赤ん坊を守ると約束し、正邪は何も言わなかったが答えは決まっていた。
天邪鬼は約束は守らない性分故に、あえて約束しなかったのだ。


そして2人は鏡の世界でキスをして、月元と正邪が見守る中で霧散していった。
最期の最後だけは二人は憑き物が落ちたような顔をして……


再び恩人を、そして恩人の恋人さえ救えなかった月元は鏡に拳を叩きつけ慟哭する。
正邪は男がメソメソ泣くんじゃないと叱咤する一方で、彼に胸を貸し優しく抱きしめた……


〇七日目

その後、落ち着いた月元と共に正邪は死亡した仲間や洸たちの埋葬を終えた。
戦闘の疲れも手伝ってヘトヘトであり、襲撃の気配もなかったので坑道の中で二人は休むことにした。
いざ、休もうとした時にトーテンタンツァのよこした詳細名簿がディパックの中からチラつく。

自分の世界はギドラなる存在に跡形もなく滅ぼされた。
もはや殺し合いを生き延びた時点で帰る場所はどこにもない。
今までの努力も、架空学園での殺し合いを打破しようとした仲間の頑張りの全てが無駄になった。
自分はもちろん、上条や桐山はなんのために戦っていたのか。
それを思うと泣きたくなった。
天邪鬼は一人ぼっちや絶望こそ望むところな妖怪のハズなのに、何もなくなってしまったことが辛くなってしまった。
嫌ってくれる奴らも自分をイラつかせる善人もひとり残らずいなくなったからだ。
主催への下剋上を果たしたところで、自分はどこへ行けばいいのか……戦いの中では必死だったために引っ込んでいた不安が心の中で広がる。

その時、すぐ近くで眠っていた月元が正邪が泣いていることに気づき、胸を貸した。
なんのつもりだ?と言う彼女に対し、月元は穏やかな笑顔でさっきの意趣返しであると答える。
「……おまえキモイな」と罵りつつも、正邪は月元の胸を借り、すすり泣いた後に疲れて眠った。

今は先のことなど考えず、戦い続けることを誓う。


〇八日目

起きた二人は坑道の出口を探すが、一向に見つからない。
どうやらこれまでの戦闘の余波で塞がってしまったらしい。
どうするか悩む二人だったが、そこで凄まじい振動が坑道全体を襲う。
同時刻、ゴジラが空中に浮かんでいたバーンパレスを撃墜し、その振動が坑道まで届いたのだ。
多くの参加者の犠牲を強いられた大破壊であったが、これが坑道にいた二人には幸運をもたらし壁に罅を入れて脱出を助けた。

久しぶりに外に出た二人であったが、ここで会場の異変に気づく。
空は赤黒く染まり、セカイジュはより大きくなり、遠くに見える下北沢はジャングルと化していた。
他にもめぼしい施設が瓦礫と化しており、自分たちには手に負えなさそうな巨大ロボットや怪獣が暴れている様子も見えたが、一体たった二日で何が起きたのか?
とにかく情報を求める二人であったが、ここで更なる絶望の淵に叩き込まれる。
電波が届いたPADに追加された情報によると仲間である五代と蘭子、リクやアカネといった正邪のクラスメイトや月元の仲間であるウィードも死んだとのこと。
特に五代は月元にとって最も信頼していた仮面ライダーであり、正邪にとっても命の恩人だ。
殺した存在がわかり次第、下手人を許せないだろう。
不幸中の幸いなのはシノとリュウは無事らしく、二人が保護しているミーティアの子供も無事だろう。

まだ希望を捨ててない二人は、下北沢を目指すことにした。


〇九日目

下北沢に着いた二人であったが、意外にも刃の二人が流した嘘情報につられて正邪に襲いかかる存在はいなかった。
……というより、ここで生き残っている参加者に構ってる余裕はないと言った方が正しいだろう。
下北沢は魔の森と化しており、数多の怪物が跋扈していた。
しかも溢れ出る正体不明の瘴気により、生身の人間なら入り込んだだけで侵されて死ぬか色狂いか怪物化してしまうレベルの汚染地帯だ。
例外として魔の力を持つ存在は一定の恩恵を受けられるらしく、妖怪である正邪と体内に魔界植物を宿した月元はトーテンタンツァに付けられた傷を癒し、それ以上に能力を拡大させていった……ある意味、怖さすら感じつつ。


そして量産型の野獣先輩のようなクリーチャーを倒しながら探索を進めていく二人。
――その先でばったりと出くわしてしまった。
世界の破壊者とされた危険人物、仮面ライダーディケイド。
そして朝之光希こと魔闘士ロージィ……否、彼女はなぜか五代と同じクウガの姿をとっていた。

まさか、光希が五代を殺してクウガの力を奪ったのでは……!?
悪の堕ちた光希ならやりかねない行動だと月元は言う。
ならば許せないと、月元は正邪の制止も振り切って攻撃を開始し、光希も正邪を見るや襲いかかってくる。

光希「鬼人正邪! あなた、月元くんを騙したのね!」
正邪「??? 騙す? 何の話だ!」

戦いはクウガ・ディケイド・G3と仮面ライダーが三人、男だか女だかよくわからない変態一人と向こうは倍以上の頭数があったが、正邪・月元側も下北沢の瘴気の恩恵で互角の戦闘ができた。
ひっくり返す程度の能力やパイルバンカーを武器に、二人は激闘を繰り広げるが、戦っていくなかで違和感が生じる。互いに会話が噛み合わないのだ。
月元が「江口やティアードロップの時のようにはいかない」と言っても光希は知らない素振りを見せ。
正邪も光希に「ヴォルケーノの力はどうした」といきなり言われてもなんのことだかさっぱりわからなかった。

正邪「一条って奴はどこいった? まさか既に殺して」
一条「一条は私だが、一体何の話をしている?」
正邪「……は?」

一条という男は光希に拉致されているという情報であったが、G3を纏っていた一条を名乗る男は光希をサポートしており、どう見ても人質には見えないし洗脳されているとしては意思がはっきりしている。
ここまで来るととても嫌な予感がした……誰かが仕組んだ罠ではないかと。
そう思った矢先に、光希ことクウガ・ロージィはディケイドの力(FFR)でシャベルへと変形し、突き刺した地面から生成した荊棘が正邪と月元に襲いかかる。
体にまとわりついた荊棘は正邪と月元はお互いに協力して断ち切ることはできたが、荊棘には魔力を吸う力でもあるのか、瘴気で得た分の魔力は奪われてしまった。
形成は不利だと見て、正邪は月元は撤退を要求し、月元は悔しそうな顔をしつつも逃げることにした。

光希たちを撒いた二人だが、逃げた先で瘴気とは違うギジェラの花粉が襲いかかり、逃げる暇もないまま巻き込まれてしまった。


目が覚めるとそこは見慣れた架空学園2世界。
少し違うのは差別されてきた妖怪たちは正邪を軸に人間たちから自由と権利を勝ち取っていた。
彼女が軸となって遊矢やアマゾンネオ、桐山さえ実力で倒し、下剋上を成し遂げたのだ。
新しい世界で女王のように君臨していた天邪鬼の鬼人正邪は高笑いを上げた。

架空学園での殺し合い、ギドラによって滅ぼされた世界、二度目の殺し合い。
まるでそっちの出来事の方が夢だったかのように……


だが、民衆に向けて手を振り上げた瞬間、チクリと何かが刺さり、出血する。
それは隣にいたカクタスに変身していた月元のサボテンの針だった。
次の瞬間、見ていたのが甘美な幻であったことに気づく。
それでも月元はまだ夢の中であり、自分も花粉によって再び幻の世界に引き戻されそうになるが、カクタスの針には花粉に対する抗体があると睨んだ正邪は幻を振り払うため。
そして仲間である月元を現実に引き戻すために、針で手が貫通して血塗れになることも構わずに、彼の手を強く握った。

正邪の祈りが届いたのか、月元もまた現実へと帰還した。
彼もまた洸やミーティア、亡くなった多くの仲間が生きていて、憧れの光希が悪の道に走らなかった夢を見ていたらしい。
だが所詮、夢は夢、もはや成し遂げられなかった未練は捨てて戦うしか、死んでしまった者たちに示しが付かないとお互いに自覚し、どんなに辛くても現実で戦っていくしかないと改めて決意をした。

とにもかくにも光希やディケイドを探して下北沢の奥に進んでいく二人。
ギジェラの花粉にやられている対主催もいたが、抗体を得た月元の魔界植物の針で治していく。

最奥では強大な破壊神ジェノシドーがいた。
シドーはバズズとの邪配合に加えて下北沢の瘴気によって更に力を桁違いに引き上げており、それは対主催最強戦力と言っても過言ではないビルスでさえ不利に追い込まれている。
神や神に等しい力を持つ者でさえ、あらゆる攻撃スキルを跳ね返し防御スキルを貫徹するシドーには敵わず、苦戦。
それ以上に多くの対主催グループが近場にいながら、互いに疑心暗鬼になっており連携して戦うことができない。

ビルスとシドーの二大破壊神の戦いは月元と正邪の介入でどうにかなるものではないとわかっていたが、そこへ光希やディケイドたちが戦場に現れ、シドーと戦い始める。
口々に何かを言ってるようだが、戦闘音でよく聞き取れない。

月元「光希さんが破壊神みたいな奴と戦っている…彼女を倒すなら今がまたチャンスだけど、しかし…」
正邪「どうする昭司? 破壊神の方の妖力の方が圧倒的に上だが……」

シドーもなぜか光希たち相手には積極的に攻撃をしてこない。
光希には破壊神に対抗する何かを持っているのか?
もし光希が月元の知る悪人ならば、破壊神を倒して自分の力とするだろう……
だが、先ほどの違和感の正体もよくわかっていない以上、背後から攻撃すべきだろうか?

そこへ、正邪らより早くGOことマガタノディケイドが、光希たちに電撃で襲いかかる。
まず一条を名乗るG3が倒れ、その彼を光希クウガは盾となって守った。
自分の体が雷撃で焼けていくにも関わらずに……

月元「正邪! 彼女を、二人を守れ!」
正邪「がってん承知! 逆転・チェンジエアブレイブ!!」

葛藤していた月元は助ける決断をし、正邪は弾幕と感覚反転でGOの攻撃を防いだ。

GO「ほぉ、(俺に逆らうとは)良い度胸してんねえ~」

狂気の魔神GOの腰の部分をよく見てみると、そこには血のついたベルト、五代がつけていたアークルがあった。
光希の腰にもアークルがついているが……これはどういうことか?
その時、遠方からのGN粒子――覚醒したシノがサイコクアンタムバーストを発動させ、ちょうど発動範囲内にいた下北沢の参加者たちを飲み込んだ。
それによって誰しも心が丸裸にされ、これまでの嘘と真実が明らかになる。


ネットを使った悪意ある者たちによって真実を歪められおり、対主催を今まで疑心暗鬼に陥らせていた。
正邪は知らない者には主催戦力となったオールリピの正邪の方だと吹き込まれており、多くの参加者が警戒していた理由は差別意識などではなく風評被害だったのだ。
さらにここにいる光希はオリリピ2の悪堕ちした存在とは関係ないオールリピの少女。
クウガへの変身能力も「ある人物」から譲られて手にしたものであり、五代から奪ったわけではない。
言うなれば月元が知る光希とは別世界線の存在だったのだ。

そして五代を殺したのは光希ではなくGO、GO自身も五代や蘭子を惨殺したことについて自慢げに話し、月元と五代の親友であった一条を激怒させた。

誤解が解けたところで正邪と月元、アクシズ教団、もう一人のクウガ組、グレーテル組は破壊神と魔神相手に共同戦線を張ることになる。
死闘ではあったが、今までバラバラだった対主催がひとつになることでより強力な戦力となった。
ビルスの献身によりシドーとバズズが分離され、バズズを殺害することで破壊神シドーは無力化。
ディケイドもGOに敗れるが、死ぬ前に奥の手であるオールライダーカードを使うことで、仮面ライダーとなった存在をパワーアップさせた。
月元も(なぜか)アメイジングクウガになり、アルティメットクウガとなった光希との連携でGOに大打撃を与え、仮面ライダーたちの猛攻の前に禍々しき神はこの世から消え去った。
一方仮面ライダーならぬ正邪は死にゆく士から絶対に悪用されるなとディケイドライバーを託されることになる。

他所での戦いもあって下北沢に蔓延る悪党は一掃されたと思いきや、ここで主催が放ったらしい巨大ミサイルが地表に直撃。
大規模な地殻変動が発生し、地割れが多くの参加者を飲み込んでいった。
その被害は下北沢にもおよび、せっかく生き残った参加者を殺さんとしていた。
飛べるものもいたが、何十人もいる参加者を乗せて運べるものがおらず、飛行できる乗り物は全て大破していた。
ワープ系の能力は星から発せられた魔力により阻害され使用できない。
月元も飛べる正邪だけでも逃がそうとしたが正邪は拒否し、曰く「おまえらがいないと主催への下剋上の道が遠のく」と言って方法を探す。
しかし見つからない、譲られたディケイドライバーも正邪や他の対主催には適合しなかった。
そうこうしている内に、下北沢は崩落する。
これまでか、と多くの対主催が思った中、巨大な腕に掴まれその場にいた全ての対主催が助け出された。
正気を取り戻したシドーが巨大な体で間一髪、崩落から救いだしたのだ。


そして、味方に戻ったシドーの背に乗った参加者たちがたどり着いた先は空飛ぶメカエアーズロックことテツヲメカゴジラシティ。
そこにはシノら、崩落を免れ生き残った参加者たちが集っていた。
シノは舎弟であるリュウの死に悲しんでいた……彼らは坑道から赤ん坊を連れて脱出した後、テツヲに捕まり、リュウの犠牲と攻殻機動隊や月島さん、死に戻り組の助力がなければアエゴーシュマが発動して対主催が壊滅する危険があったらしい。
リュウこそ帰らぬ人になってしまったが洸の子供は無事であり、月元と正邪は慣れないなりに父親・母親のように泣き続ける子供をあやし、笑顔にした。

それから別世界線の光希…いわば善光希と合い、月元はもう果たせないと思った戦友との久しぶりの交流に涙する。
善光希はもう一人の正邪…完全にオールリピ主催の軍門に下った正邪と死闘を繰り広げた経験があるらしく最初は警戒してたが、月元より口は悪いが性根は悪い奴じゃないと言われて安堵した。
だが褒められると気分が悪くなるのが天邪鬼の性であり、和気藹々な空気に我慢できなくなった正邪は善光希に「薔薇臭い」「ペチャパイ」「男に間違えられそう」「レズの気ありそう」と悪口連発。
結果、互いのほっぺたをつねり合う程度の大喧嘩になる。

シドー「ひょっとして照れ隠しか?」
月元「……たぶん」

一方、善光希の口から知り合いに遊矢の名前が出てきた時には驚く。
どうやら別世界線の自分も遊矢にしてやられたらしく、自分も学園テロを未遂に追い込まれて敗北したこともあるので、何だか因果関係を感じずにはいられなかった。


……と、最後の休息時間を穏やかに過ごした対主催たちだが、シティが成層圏の近くまで上がったところで会場だった地球型惑星の正体を知る。
それは一個の巨大な生命体……月元はこれを植物系の旧支配者ヴルトゥームを惑星サイズに巨大化させたものだと称した。
そして日付が変わったちょうどその時、主催から対主催全員に向けて宣戦布告がなされた。


〇最終日

モニターに映ったのは月元が探し求めていた悪の帝王、オリリピ2のブルー・ロージィ。いわば悪光希であった。
まさか主催にいるとは思わなかったので驚く月元と正邪、もうひとつのクウガ一行。
彼女の口から説明された主催の目的を端的に言えば、高次元存在のギドラ召喚による全世界の抹消。
旧支配者から生えたセカイジュはギドラにとって最高の供物であり、一度食べさせてしまえばギドラ自身をパワーアップさせて全平行世界さえ消しされるとのこと。
そうなれば強さ云々の次元ではなく、あらゆる全知全能の上位存在でさえ、滅びに抗うことはできない。
オールリピ主催があくまで支配に留めているなら、こちらは最悪の心中である。
これに対しオルガは他の者の気持ちを代弁するように心中なら自分たちだけでやれと激怒したが、悪光希は死ぬのではなく生まれないことに意味があると言って、通信を切るのだった。

なんにせよ主催を止めなくてはいけないが、どうやら主催は会場となった惑星とは別の惑星EIにも本拠地があるらしく、
二箇所同時進行して計画を阻止する必要があった。
ここで対主催は二つのグループに別れて進軍、正邪と月元のコンビはシドーの進言もあり、善光希らと共にセカイジュとそれを守る基地となっているナザリックへの制圧部隊に参加。
他は艦隊に乗り、惑星EIを目指すことに。
洸の子がメカゴジラに乗ってしまうのはやや心配だが、守りながら戦うことはできず、どのみち安全地帯はどこにもないのでシノたち(と堀川くん)を信じて預ける他なかった。



多くの対主催と共に、セカイジュを目指す一行。
シドーの背中の上では、シドーを案じる善光希と一条、脳内で一心同体となったパトロンと会話するゼロプール。
高校生ヒーローと中学生天邪鬼の一幕があった。

月元「正邪、死ぬかもしれない戦いなんだ。降りるなら今の内だぞ」
正邪「そっちこそ、薔薇女連れて逃げちゃえよ」
月元「彼女は違う世界線の別人なんだ、俺が憧れてた光希さんとは違う。
   そもそも世界の存亡がかかってるのに降りろと言っても聞かないさ」
正邪「はあ~めんどくさい奴だな……私は降りないよ、ここまで来たら最後までおまえらの下剋上に付き合ってやる。
   ……これは嘘じゃないぞ。本当のことは天邪鬼的に言いたかないが」
月元「僕も降りないさ、世界の皆や洸とミーティアさんの子供の生きる未来のためにね」

思えば、長く月元と戦ってきた気がする。
五代が死んだ、木野も死んだ、知り合った者のほとんどが死んでしまった。
元の世界の知り合いも行方不明のレイを除くと一人残らずいなくなってしまった。
自分は一人ぼっちだと思ったが、まだ月元だけは残っていたことを思い出す。
ここで逃げたら月元に「負ける」ことになり、それだけは認めたくないと同時にまだ張り合える奴がいたことだけは流転の運命に感謝した。

もはや、結末がどうなろうと下剋上を目指すのみと、更なる決意を固める。


ついに始まった最終決戦。
宇宙では艦隊戦が、惑星EIでは潜入作戦が行われている一方、旧支配者の体の上ではセカイジュとナザリックを中心に地上戦が繰り広げられており、もはやバトロワではなく戦争である。
並みのように押し寄せるナザリック、エクシフの兵、植物魔人……その中に混じって蒼い閃光が先陣を切り、鎌のひとふりで一人の神の首を落とした。
魔王ブルー・ロージィだ。
多くの対主催(モブ)が挑むがバッサバッサと首をはねられていく。

あまりの強さに遠方から見ていた月元は明らかに最後に戦った時より桁違いに力が増していることを指摘。
そして次の瞬間、鎌を構えた悪光希に肉薄されるが、そこへ最強クラスの実力者サイタマによる助太刀、もといマジ右ストレートで助けられる。
神さえ一撃死させる存在を遠くまで殴り飛ばせるサイタマも凄いが、一分足らずで戻ってきてほとんど無傷な悪光希もクレイジーな強さを持っていることをうかがい知れる。
流石にサイタマクラスの実力者でないと話にならない上、計画発動まで時間もなかったので、どうしても悪光希と決着をつけたい月元をなんとか説得し、善光希らと共に今のうちにセカイジュまで飛んでいくことに。

セカイジュの前までたどり着いた一行……どうやらゼロプールはセカイジュの止め方を「なんとなくだが」わかるらしく、接触を試みようとする。
しかし、ゼロプールがセカイジュに触れるよりも早く、ブーメランのように飛んできた鎌が彼女(彼?)の左腕を切り飛ばし、そのまま衝撃で近くのクレバスの奈落へ突き落とされた。
振り返ると先ほど自分たちに助太刀したハゲの男の首級を片手に、悪光希が降臨していた。

正邪たちも応戦するが、天邪鬼、クウガ、G3、シドー、カクタスの五人や他の対主催の力を束ねてもまるで勝負にならず、全員膝を折ることに。
だが月元は何か明確な違い……強さも異常だが、神を憎んでいたにも関わらずギドラに縋っているなど思想面が違うのだ。
それを指摘されると悪光希は語る。

悪光希は月元が知る彼女より少し先の時間軸から来ており、最終決戦の折にヒーロー連合は彼女が指揮する森浄化杜の前に全滅し、他の生還者ごと皆殺しにしたのだと言う。
そして多くの世界を支配下に置いた……が無軌道な侵略が祟り、上位の神に目をつけられて桁違いの力の前に敗北。
会場の星の正体は幹部である美織が全滅を回避するために自我を捨てて旧支配者として進化した結果であるとのこと。
勝者となったつもりが敗者となってしまった……いや、そもそも負けしか用意されてないゲームだった。
そこへ全てを一つにして滅ぼすギドラの存在を知り、上位存在や運命から人々を「死を伴って」救う手段として主催に加担したのだ。
(ちなみに月元と同じ時間軸の悪光希や美織は主催の計画の過程で未来の自分たちに融合して消滅したらしい)

その話を聞いて月元たちはもちろん、以前は下剋上を目指していた悪光希を支持していた正邪もまた憤慨する。

悪光希「天邪鬼であるおまえはこちら側だと思った」
正邪「おまえが神と戦い続けているなら共感もしたさ。
   だが、おまえは戦いを放棄して試合自体をなかったことにしようとしている。
   自分がやるなら楽しいが、他人がやるとムカつくんだよソレ」

悪光希は自分で神に戦いを挑んでおきながら、戦いそのものを放棄したのだ。
確かに全てを奪われないための戦いかもしれないが、滅びの道を歩んだのは自業自得でもある。
ゲームを無理矢理なかったことにする反則が許されるのは天邪鬼のような存在だけだ、と。
だが何を言ったところで悪光希が全てを無に帰す思想を止めることはない。
魔王の心は月元が知っている時以上に壊れていた。

そして、とうとう計画が発動――したかに思えたが、ギドラそのものの召喚には成功したものの、主催も予期してなかった事態が発生する。
死んだと思われたカギ爪の狂人にセカイジュの制御を乗っ取られたのだ。
以前、幻を見せたものと同じように超広範囲で花粉が舞い散り、対主催・マーダー・主催戦力関係なくミーム汚染をされて鍵爪をつけた事実上のゾンビへと変貌させる。
その被害は、当然セカイジュに一番近い正邪たちも受け、多くの仲間がカギ爪化しかける。
悪光希ですら困惑し、対主催への攻撃を中断してでもセカイジュの暴走を止めようとしたほどだ。
このまま、世界は終わりか――誰もがそう思ったが、各地では諦めないものたちがいた。

その一人が正邪であり、月元であった。
この二人は一度、ギジェラの花粉を受けたことで洗脳や幻惑への抵抗力を心身共に手に入れていた。
正邪は過去に戦った一方通行の能力を参考にひっくり返す程度の能力を応用して、擬似的なベクトル操作で降りかかる花粉を最小限に抑えた。
月元は体内で作り出した血清をカクタスの針として味方に打ち込み、周辺の対主催の体内を浄化した。
カギ爪もまた、夢の国の王の助力を得たサイコクアンタムバースト、死んでいたと思われたゼロプール(デッドプール)のミーム汚染返しに対主催一同の怒りの精神攻撃により、セカイジュの中で消去された。

セカイジュの暴走は対主催にとって窮地ではあったが、アクシデントと同時にチャンスでもあり、主催陣営の揃っていた足並みが崩れた。
実際、急な疲弊によって他の主催と融合していたギドラが警戒してセカイジュに近寄れなくなったのだ。
あと少しで計画成就だったために、今まで感情を見せなかった悪光希が初めて癇癪を見せるほどである。
ここで月元が彼女を説得しようと、戦いをやめるように声をかける。

だが……

悪光希「誰が手を握るものか、ここで握ったら私のせいで死んでしまった人達にどうすればいいの!
    だから終わらせる、何もかもを、私が喰らう者になって…全てを喰らって今度こそこの悲しみを…」

差し伸べられた手は払い除けられ、月元は鎌で斬られる。
さらにもう一人の自分である善光希を鎌で切り裂こうと悪光希は突進、シドーの巨体が盾になることで防いだが、神殺しの鎌をモロに喰らってしまったために、シドーは致命傷を負ってしまう。

万事休す……しかし、正邪は悪光希の胸元に一枚のカードが埋め込んであることに気づいた。
月元が話していた『絆のタロット』だ。
悪光希は純粋な実力の他に、惑星美織から得た魔力を元に奇跡を起こすタロットで、神さえ殺せる力――「反則」をしていたのだ。
反則のカラクリがわかったところで、正邪はなんとかタロットを奪おうとするが、呪いに絶対の耐性を持つブルー・ロージィにはひっくり返す能力の効果がない。
後ろに居た一条諸共、首をはねられそうになるが、そこへ瀕死のシドーが邪配合で得た方法を応用し、破壊神の力とアマダムを配合することで善光希をライジングアルティメットクウガに昇華し、不意打ちを与えたと同時に物質を原子レベルで分解・再構成するモーフィングパワーで悪光希の防御力を弱め。
追撃に一条の援護を受けた月元の六六六菩薩拳により、絆のタロットを奪うことに成功する。

しかし月元は反撃の抜き手をもらい、絆のタロットを一条に託して死んでしまった……即死である。
月元の死には仲間たちや正邪さえ駆け寄って涙を流し、慟哭させる。
一方、悪光希は死んだ元親友に思うところはなく、ただ冷徹に対主催を皆殺しにしようと迫る。
絆のタロットを奪われてなお、余裕なのはタロットなしでも地の能力で正邪たちを凌駕しているため。
何より絆のタロットは悪光希以外誰も使いこなせないと踏んでいたためだ。
それでも正邪や仲間たちは凶悪な魔王を相手に立ち上がった。


正邪は奇跡を信用しないし、絆も口にしない。
絆のタロットも事象改変装置でしかないと彼女は認識している。
だからここからの戦いは全て奇跡ではなく、彼女と仲間たちが手繰り寄せた布石「反則を超えた反則」によるものである。


悪光希は見落としていた。
ここが魔力が一番集中するセカイジュであり、そのおこぼれを一番与れる場所。
先ほどのカギ爪でのアクシデントで編み出した正邪の擬似ベクトル操作で一条の持つ、タロットに魔力が集中。
タロットに光が宿り、ある一定の範囲であれば事象を操作できるようになった。
正邪はここでディケイドライバーを身に付け、一条にアイコンタクトでタロットで何をすべきかを伝える。


一条「月元くんの話を聞く限り、同情の余地はあるかもしれん……しかし!」
善光希「あなたは私…人間じゃなくなっていく恐怖に負け、それがこじれて悪の道に走った。
    殺してもあなたの言うとおり、悪しき誰かに生き返らせられて力を利用されるかもしれない。
    だから! あなたを蝕んでいる元凶を私自身の手で摘む!!」
正邪「下剋上させてもらうぜ。さあ、魔王なんかやめてただの人間に戻れ! 変身!!」

月元が悪光希から奪い、一条に渡した絆のタロットが輝き、一瞬だけ正邪を世界の破壊者にして最強の叛逆者であるディケイド激情態に変身させる。
タロットの恩恵で初変身にも関わらず、戦い方がわかる正邪は次に善光希をFFRでシャベルに変形させて構える。
正邪の狙いは、荊棘によるブルー・ロージィの魔界植物の浄化だ。
タロットの限られた魔力や時間制限を鑑みて、浄化による短期決戦だけが悪光希に勝てる鍵と正邪は見たのだ。
超強化された善光希一人では、元が同じためか悪光希に動きが読まれているために最初の不意打ちを除いて有効打をたたき出せていない。
ここは正邪が戦うしかなかった。
悪光希もまた、ブルーの力を奪わせまいと鎌を構え、激突。

浄化のシャベルと神殺しのデスサイズが、鍔迫り合い火花を散らす。
途中、不覚を取って鎌が顔面を掠めてマスクと片方の角が割れて飛んでいってしまうが、正邪は恐れることなく攻防を続ける。
妖怪は精神の生き物だ。
妖怪とは精神こそが本体であり、自分が攻撃されたり倒されたりすることには恐怖を感じにくい。
精神的ダメージに弱いとも言えるが、裏を返せば精神的に折れなければ死ぬまでどこまでも戦い続けることができるのだ。
それでもディケイドやライジングアルティメットの変身時間制限がすぐそこまで迫っていることを肌で感じていた。
あと一分持たないだろう。

正邪は一気に決めるために、地上にシャベルを突きたて荊棘を召喚する。
しかし蔓は伸びるが、飛び上がり距離を取った悪光希に届かない。一条も銃器で牽制するが、防がれて意味はなくなった。
正邪が弾幕攻撃を行うが、打撃力不足で悪光希の鎧を貫けず、ただの悪足掻きにしかならなかった――そう悪光希が思った瞬間、片足を長い針が貫通し、機動を失って荊棘の中に落下した。

一体誰が?! と悪光希が振り向くとそこには死んだハズの植物魔人カクタスがいた。
月元は好機を狙って死んだふりをしていただけだったのだ。
敵を騙すにはまず味方から……正邪由来で卑怯な戦い方を覚えた月元は実践したのだ。
正邪は最初からそのことに気づいており、苦し紛れに見えた弾幕は月元生存を隠すための囮である。


ああ、そうかと正邪は漸く理解した。
自分が人間たちに勝つことに強く拘った理由を……遊矢もアマゾンネオも上条も桐山も、五代もミーティアも善光希も月元も、皆過酷な障害や敵、死が先に待っていたとしても、運命に絶対に屈せず反旗を翻し続けた。

強い奴らは皆、アマノジャクだったのだ。

自分が本当のアマノジャクで有り続けたいからこそ、自分を上回るアマノジャクたちだった人間に憧れていたことを知る。
そう、正邪はいつしか人間たちに尊敬の念さえあった、虫唾が走る(すばらしい)くらい大嫌い(だいすき)になっていたのだ。

浄化され力を失っていく悪光希は嘆き、ここで自分たち主催を倒したところで、また別の悪しき神や運命が遅いかかるだけだと宣うが、変身が解除された正邪は強い意志をもって言い放った。

「私たちは、負けない! 私たちは、恐れない!
 戦い続ける奴は天邪鬼なんだ。死ぬまでアマノジャクなんだ!
 私が、私たちこそがアマノジャクなんだぁーーー!」

天邪鬼たちは確かに最凶の魔王を倒し、魔界植物を浄化して力のない、ただの人間に戻したのである。
それでも戦おうと悪光希は鎌をもって足掻くが月元の腹への一撃により気絶。
戦いを見届けた後にシドーは消滅してしまったが犠牲に見合った勝利であった。

今ここに、ひとつの下剋上がなった。
最高のエクスタシーを感じながら歓声を上げたのは鬼人正邪であった。

また、各地でも主催が次々と討たれ、戦いにも終局が見えようとしていた。
悪光希は手錠をかけられ、連行される……月元曰く裁きは元の世界で行いたいとのことだ。
長い因縁にも決着がついたことで晴れやかな顔の月元の顔が見えたが……

直後、そう遠くない場所で主催の一人であるドルマドンと融合していたギドラが落下。
最終攻撃としてギドラ本体を呼び込もうとするドルマドンに対し、グリッドマンは次元の穴ごとトドメを刺そうとする。
それと同時にアイデンティティを奪われて発狂した悪光希が自分の腕を噛みちぎって手錠から逃げ出す。
呪詛を吐きながら、真人間に戻ってできもしないのにギドラと融合しようとして、ドルマドン・ギドラ本体諸共蒸発することになった。

月元は最後のチャンスかもしれなかった悪光希をとうとう救えなかったことを嘆き、絶叫をあげる。
幸い、正邪と善光希が左右から彼を抱きしめ慰めることで彼の精神が壊れることはなかった。
が……月元の願いはとうとう叶わなかったことには、正邪も心を痛めた。
善光希と共に言ったこの死は裁きであり救いでもあるという言葉がどこまで彼に通じたかわからなかった。

正邪の世界を滅ぼしたギドラも死に、主催の計画も破綻した。
それでも最後の主催であるエルミルが残っており、報復としてこの宇宙だけでも滅ぼそうとしているので少しでも余力のある者は魔法のドアで惑星EIに向かってほしいと、どこからともなく現れた石丸と彼にサルベージされたゼロプール。
光希と一条は迷うことなく、アクアたちと共に惑星EIに向かうことにした。
月元も光希たちと共に行こうとするが、正邪は仲間たちに止められてしまった。
彼女の消耗は先の戦いで限界であり、正邪は無理をしてでも行こうとするが弾幕一つ飛ばすこともできず、仲間たちの判断もあって止められてしまった。
最後の最後でケチがついたみたいでバツが悪い感じに多くの戦えなくなった対主催と共に惑星美織に取り残される正邪。


ところが、まだ一つだけ……主催とは別の巨悪が残っていた。
今まで神や悪魔の死肉を漁り、独自に進化した蜂の集団が主力が全て別の星に旅立ったのを見計らって文字通り一斉蜂起したのだ。
漁夫の利的に弱った参加者に襲い掛かり、毒針を刺しては喰らっていく巨大蜂。
正邪も満身創痍の状態で戦うが、キリがない蟲におされ、女王蜂だと思われる怪獣化したチク・ビーに捕まる。
おそらく毒針を刺した後に食べるつもりだろう。
抗いたくとももう手も足も動かせる体力がない。

(最高の下剋上を行った後に虫如きに殺されるとは……、まあいい、私は天邪鬼としては頑張った方だろう。)

正真正銘の終着点……戦い抜いた正邪は潔く死を受け入れようとしていた。



だが、正邪を待ってきた死ではなく、バイクのエンジン音と救いのヒーロー。魔拳士(仮面ライダー)カクタスであった。
彼のパンチにより鉢怪獣の腕が砕け、お返しの毒針もパイルバンカーによってぶつかった針どころか全身ごと砕け散った。
司令塔を失った鉢の集団は統制を失い、一転攻勢で参加者たちに全滅させられた。

「なんで戻ってきやがった!?」と喜びと怒りが混じった言葉で正邪は月元に言うが、彼はただ笑顔でこういった。
「世界を救うのは朝之さんや一条さんみたいな人だけで十分だ。僕はただ、大切な人だけ守れればそれでいい」と。
実際に、エルミルとの戦いは月元が参戦するまでもなく、他の対主催によって倒された。
直感に従って戻ってきた月元の判断は正しかったと言える。

ただ、激しすぎた戦いによって生じた複合的な要因によって惑星美織そのものが崩壊し始めていた。
正邪、月元、その他のものもメカゴジラシティによる救助を求めて走るが、僅かに間に合わない。
ところが、地面の方から突如桜のような巨木が生えてきて、メカゴジラシティまで届く架橋を作り出したのだ。

残る生存者が全てメカゴジラシティに回収され、それから間を置かずに惑星は散華するように消滅した。
長い殺し合いで疲れきった正邪と月元は、穏やかに眠る赤ん坊のベッドの近くで肩を寄り添って眠っていた……







〇エピローグ

時は経ち、月元はヒーローとして変わらず活動を続けている。
首領と幹部が消えた森浄化杜は抵抗を続けたが、以前のような勢いはなく、多くの侵略を受けた世界から猛反撃を喰らって壊滅した。

引き取り手がいなかった洸とミーティアの子供は生還した月元くんが育てることに決め、江洲衛府島の孤児院でスクスクと育ち、月元は20歳になったら正式に里親として引き取る約束を子供と交わした。


正邪はというと、彼女は月元のパートナーとしてオリロワ5世界で暮らしている。
正邪自身は下剋上が目的じゃない「正義の味方」はガラじゃないと言うが「悪の敵」なら悪党相手に下剋上できるから面白そうと、彼専属の使い魔になったという。
何よりも月元とならより最高の下剋上ができるかもしれないと踏んだからだ。


この日は光希の命日であり、九条学園の地下には月元が秘密裏に立てた彼女の墓があり、毎年寄るようにしている。
いつもは明るい彼だが、この日だけは辛気臭くなる。
辛気臭いのは天邪鬼的には好きだが、月元にはとても似合わない気がした。

そこで正邪は彼相手に下剋上もとい嫌がらせをすることにした。
彼に向けて不意打ちの口づけをしたのだ。
これで蔑んでくれれば僥倖、辛気臭さのない彼の困り顔が見れれば御の字だ。

ファーストキスを奪われたお前は、私をどうしたい?
殴りたいよな? 怒りたいよな? 嫌いになったかなぁ?
嫌いになってくれたよなぁ?
なぁなぁなぁなぁなぁ、ヒーローさんよぉ――

だが、月元は怒って嫌うどころか正邪に微笑んだ後により深いキスをした。
これこそ天邪鬼の性分を知り尽くした彼なりの嫌がらせである。

予想外の反撃に正邪は困惑。
下剋上するつもりが逆にされてしまったと、頬を赤らめるのだった。


正邪「お、おまえなんか大っきらいだ!」
月元「それはこっちのセリフさ」





お互いに馬鹿にし罵りながらも、廃校となった九条学園の屋上で深く抱きしめあう二人。
天邪鬼の定義における『NO』は『YES』である。
どうやら今回ばかりは天邪鬼も負けを認めざるをえないようだ。
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最終更新:2024年01月20日 22:08