【名前】ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド
【出典】黒博物館スプリンガルド
【性別】男
【名ゼリフ】
「待ってな……“悪い夢”なんざ、バネ足だけで十分だ」
「どれだけ完璧だろうが、凍っちまったもの……そこに『最高』は留められない。人間にとっての『最高』ってヤツは『変わっていく』ってコトなんだよ」
【人物】
アイルランドやイングランドに広大な領地をもつ若き侯爵。実母を幼くして亡くし、厳格で冷酷な父親をはじめとする、「うわべ」の関係の周囲に囲まれて育った。青年期からは社交界に出、貸切にした無人の蒸気機関車同士を正面衝突させて面白がったり、酒場で喧嘩騒ぎを起こしたり、馬車を倒したりと放蕩の限りを尽くす。その一環として、
フランシス・ボーモンの協力の元、怪人「バネ足ジャック」による悪戯を考えつき、ロンドンを騒がせたが、一人の女性に初めて真正面から叱咤されたことを機に、それを止めてしまう。
精悍な顔つきに険のある目、「あきゃきゃきゃきゃ!」という、甲高い笑い声が特徴。
性格は傍若無人で奔放、プレイボーイな態をも装っているが、自分を変えてくれた女性であるマーガレット・スケールズには弱い。
【本ロワでの動向】
「黒博物館スプリンガルド異聞 マザア・グウス」後より参戦。
対主催のスタンスを取るも、因縁あるフランシス・ボーモンによって悪評をばらまかれる。序盤において、柊つかさ、
東方仗助、
不良怪獣ゼットンらと「チーム不良」グループを形成する。
三人とのファーストコンタクトでは、軽い調子の仗助を馬鹿にするように「クロケット頭」と禁句を言ってしまったがために、クレイジー・ダイヤモンドにノックアウトされたが、スタンドを操る仗助や明らかな人外のゼットンに興味を持ち、また、つかさを見て自らの姪を思い出したことにより、彼らに合流した(年齢的にはマーガレットのほうが近いと思われるが……藤田作品と「らき☆すた」だから仕方ない)。
殺し合いの場にありながら、仗助と意地を張り合ってはた迷惑な賭けごとを始めたり、ヴィクトリア朝ロンドンの怪奇譚(バネ足譚含む)を語ってつかさを怖がらせたり。ゼットンにカオリちゃんという彼女がいる事をつかさ経由で知った時には、仗助とともに驚いていた。
マザア・グウス後からの参戦であるためか、チームの中では「大人」の役割を担った。ふざけた顔の裏に黄金の精神を燃やす仗助や、喋れなくても芯に確かな優しさをもつゼットン、他者を受け入れる温かい包容力を備えたつかさの強さをそれぞれ見抜き、「くだらないな。いいじゃないか!」の台詞とともに彼らを支えた(とは言っても、時々は生来のヤンチャスイッチが入り、上述の如く仗助と傍迷惑な賭け事に興じたり、ゼットンやつかさをからかって愉快がったりもしている)。
また、フツオ・影狼と合流した際には、ノートPCを巧みに操るフツオに感心したり、彼が狼女としての影狼を受け入れていることを知って、「かくも美しきルー・ガルーがおわしたとはな。月下の散歩でも?」などと声をかけてアタフタさせたり、フツオの淹れたコーヒーを皆で飲む場面で、うちの屋敷に来いと今度はフツオを勧誘、向きになる影狼と小競り合いをやるなど、やはり楽しんで接している。数限りない選択の中で様々なものを背負ってきた少年の心の陰を影狼同様に察し、肩の力を抜いていられるようにと気遣っていたようだ。
原作でのウォルターは、ロッケンフィールド警部やマーガレットといった理解者を得ながらも、物語の中では常に一人で孤独に戦い抜いた「寂しい怪人」である。そんな彼にとって、フツオや影狼をも交えたチーム不良でのドタバタは、その中に自らを含めた一つの輪として、新鮮で大切なものとなりえたらしく、傷ついた体を抱えてボーモンの迎撃に向かう前にも、「楽しかったよなァ……あれは」と呟いていた。
本ロワにおける彼の、「跳ぶ者(スプリンガルド)」としてのハイライトは、フレディとの対決、そしてそれに続くラストエピソード『バネ足男は月輪に跳ねる』――――フランシス・ボーモンとの因縁の再戦であると言えよう。
度重なる疲労の中でダウンしたつかさの夢に、フレディが出現する。大けがを負わされ、あわや殺されるかというところを、夢での戦闘経験を持つフツオが察知し、睡眠を回復するメパトラの石を用いて救出。現実世界で逃げ出したフレディを、怪人バネ足ジャックとなったウォルターが追いかける。この決戦は、ロワ中でも異色の怪奇回であり、「ウォルター・ストレイド」としての心情描写を一切省かれた「怪人バネ足」と「フレディ」の対決であった。このときばかりは、恐怖する「人」でなく都市伝説の「怪物」となり、辛くもバネ足ジャックが勝利をおさめる。
しかし、ちょうどウォルターが帰還したのとタイミングを同じくして、会場では、総軍大戦と交わるように神州王の禁忌王モードが発動。すさまじい量の死者の群れが蠢く地獄絵図が始まっていた。
はぐれたフツオ達と再び合流するため、チーム不良の面々は押し寄せてくるゾンビの群れを何とか突破して、合流地点の避難所へ到着。ダメージの残っているつかさを休息させて、ほとんどの面々はゾンビ退治にかかりきりとなる。
その隙を突いて、ホッパードーパントと化したボーモンが来襲した。彼は、チーム不良結束の中心となっていたつかさを狙ってきたのである――そう、かつて、マーガレットを殺しにきたときのように。
再演は雨の教会墓地ではなく、死者が蠢く歪んだ月の下の避難所。
青く照らされる建物を背にした「バネ足ジャック」が、「バネ足ジャックだったもの」の前に立ちふさがる。
「失せな、フランシス。ここから先は馬鹿で間抜けな俺の友人ども以外立ち入り禁止だ。
……お前だけは、入らせない」
あの日をなぞる様に放たれた台詞は、この地でかけがえのない仲間を得た自らの姿の肯定と、「変わり果てた」友に対する永遠の決別であった。
激昂したボーモンによって甚振られるウォルター。19世紀の時代遅れな怪人が、仮面ライダーと渡り合ったガイアメモリの怪人に敵うはずはない。
もうバネ足などいらない、殺し合いに優勝して、美しかった君を、凍りついた時の中で永遠に美しいままにする、と叫ぶボーモンの蹴りが、バネ足を抉り、致命的な傷を刻みつけていく。それでもウォルターは、仲間の到着を信じ、人間にとっての最高は、「変わっていく」ということだ、と啖呵を切る。
そして――それに呼応した魔人探偵脳噛ネウロの登場と、駆けつけてきたゼットンの加勢によって、形勢は逆転。ボーモンは倒され、避難所は守られた。
だがその時、すでにウォルターの命の火も消えつつあった。
半壊したバネ足男へ泣きながら駆け寄ったつかさに、彼は笑いながら檄を飛ばす。ネウロへ感謝の意を告げ、差し伸ばされたゼットンの手に拳を合わせて、つかさがお前の心を守ったように、お前もつかさを守ってやれと呟く。……今も戦っているであろう悪魔使いの少年と、彼に寄り添う狼女には、届かずとも胸の内で“エール”と“乾杯”を送って。
最後に、チームのもう一人、何度も背を預けて共に戦った「クロケット頭」との馬鹿騒ぎを思い出しながら、その黄金の精神へ後を託し、「バネ足ジャック」――ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド卿は、月夜の舞台から退場した。
“ゆけゆけジャック きびきびジャック
ろうそくたてを とびこえて
ともだちみつけた ばねあしジャック
わのなかで ほら わらってる
とんだ とんだよ ばねあしジャック
ろうそくたてを とびこえて
おつきさまさえ とびこえた
さみしいジャック つよがりジャック
ひとりじゃないよ ばねあしジャック”
ゼットン、仗助に対して特殊な能力を何も持たない彼は、頑健な成人男性で、拳闘の心得があるとは言うものの、基本的にはつかさと同じ一般人であった。バネ足を回収してからは、機動力を活用してサポートに回ることができたが、それでも、時代遅れな装備を使う「弱い人間」には変わりがなかった。しかしそれ故に、本ロワのテーマの一つである「変化」「進化」の体現者でもあり、仲間の輪の中で自らも変わりながら、アドルフ・ラインハルトや
カズマ、ロールシャッハ等と同様に、「人間ゆえの意地と矜持」を貫けたのだと言える。
最終更新:2013年12月16日 20:45