【名前】ルルーシュ・ランペルージ
【出典】コードギアス 反逆のルルーシュ
【性別】男


【本ロワでの動向】
参戦時期はなんと初期の初期。第一話の冒頭にて貴族との賭けチェスに勝ち、リヴァルと一緒にアッシュフォード学園への帰路に就いた直後のことであった。
故に今回の彼は代名詞とも言える切り札のギアスを有していない。

突然の殺し合いへの徴収と強制。不測の事態に弱いルルーシュにとってそれは理解の範疇を超えていた。それこそ本当に『まるで意味が分からんぞ』状態であり、しかもそれが後々まで常時続くこととなる。
殺し合いの舞台に放り出されたルルーシュの混乱は極まっており、これから何を指針に行動すべきか正直分からない。
殺し合いに乗った危険人物の不意打ちを恐れながら、おっかびっくりとりあえず状況の確認の為に他参加者を探して行動を開始する。
最初からクライマックスがそこかしこで頻発しているカオス過ぎるこの空間を本当に現実なのかと疑いながら、ルルーシュは遠目にある人物を目撃した。
黒衣を纏いマントをはためかせる仮面のマッチョマン――ゼロ。
異なる世界・異なる未来において自身と同一の存在なのだが、ゼロどころかC.C.とすら出会っていない時点から参加しているルルーシュがそれに気づくはずもなく。

ルルーシュ「(何て革命的なデザインだ…今後の参考にせねば…!)」

ただそのデザイン自体は大きく気に入ったのか(自分自身のセンスだしね! 仕方ないね!)眼を輝かせてゼロの雄姿を目に焼き付けていた。


ゼロとは距離があった為、その雄姿は遠目からしか拝見できず直ぐにその場を去って行った。
いいものが見れたと満足する反面、結局何も得られていないことに気づいたルルーシュはいかんいかんと改めて首を振りながら他参加者の探索を続けた。
そんな彼が実質的に最初に出会った参加者はリネット・ビショップことリーネ。
当初どこかで怯えて泣いている女の子の声(しかもそれがナナリーのように聞こえたため)鬼気迫る迫力で草の根分けて探し出したのが彼女であった。

ルルーシュ「そこかぁ!? ナナリィィィ!?」
リーネ「ひぇ!?」

思わず怯えて彼女がルルーシュに銃を向けてしまったのもこれでは仕方ないだろう。読み手からも「落ち着けシスコンww」と突っ込まれることになった。
しかも不幸なことにこの傍目からはルルーシュが襲い掛かりリーネが必死に抵抗しているかに見える現状をたまたまそこに通りかかったアスラン・赤城組に目撃され、婦女暴行未遂の現行犯扱いでアスランにとっちめられることになってしまう。
リーネからの説得もあり誤解であると事なきを得たものの、婦女暴行犯に見間違われるほどに自分はヤバく見えたのだろうかと地味に落ち込むルルーシュであった。

とりあえず彼ら三人を交えた互いの情報交換を執り行うルルーシュ。
ウイッチだのザフトだの艦娘だの正気を疑うような話に頭が痛くなりかけたが状況が状況である。彼らの話を本当のことと仮定して、この状況を彼らと一緒に乗り切るために共に行動することにする。
道中、せめてあの黒衣の仮面の男が仲間に加わってくれれば心強いのだがとない物ねだりのようにぼやくルルーシュ。
それはいったいどんな人物かと訊ねてくる三人にルルーシュは懇切丁寧にあの革新的デザインの仮面のマッチョマンのことを説明する。

アスラン・赤城・リーネ(それってただの変態なんじゃ……?)

内心ドン引きしながらも、熱心に説明するルルーシュに水を差すのは可哀そうかと思い黙って最後まで聞いてあげた三人のなんと良心的なことか。当然、ルルーシュが知る由もない。


そんなこんなで四人による珍道中はその後も暫く続くことになる。
基礎的な軍事・サバイバル知識は全員が共通して持っているので、もやし男子のルルーシュが体力面で足を引っ張る以外は基本的に君子危うきには近寄らず方針で何とか乗り切っていく。
リーネにナナリーの面影を見て彼女をそれとなく励まして支えてやったり。
潜在的ヒャッハーなアスランを時に冷静に諌めたり。
道中はそれなりにまだ平穏と言えた。この時までは。


ルルーシュに予期せぬ転機が訪れたのはそれからしばらく後のこと。
自らの支給品である時限バカ弾を誤爆させてしまいおっぺけぺー化。
止めようとする三人を振り切ってそのまま彼らと逸れてしまったのだ。
後から思い返せばそれこそ腹を切って自害したくなるような醜態であったが、後悔しても後の祭り。
正気に戻った後、急いで彼らと再び合流しようと探し始めたルルーシュの前に一人の仮面の男が現れた。
あの仮面のマッチョマンとは別人の、渦巻き型の奇妙な仮面を被った長身の男であった。
身のこなしも見る限り只者ではなかったが、正直見た感じの格好が怪し過ぎる。
咄嗟に不審人物というよりは危険人物と判断したルルーシュは身の危険を感じて一目散に逃げ出した。
されど持久力皆無のもやしのルルーシュでは到底逃げ切れるはずもなく。少しして呆気なく体力が尽きたルルーシュはもう動けぬと地面へと倒れ込む。
リーネたちに胸中で無念の別れを告げながら、最後に愛する妹の姿を脳裏に浮かべ覚悟を決める。
しかし目を瞑ったまま一向に訪れる様子がない死の気配に不審を抱きかけたその時だった。

「少年、そんなところでいつまでも寝ていると風邪を引くぞ?」

不意に聞こえてきたのはこちらをまるで気遣うかのような気さくなおっさんの声。
恐る恐る瞼を開けて確認すれば、やはりそこにいたのは仮面越しに倒れた自分を見下ろしている仮面の男。
……まさかとは思うが先程の声はやはり、

「立てるか? 手を貸すが……足でも挫いているなら肩の方が良いか?」

そう言ってまるでこちらのことなど無警戒であるかのような態度で手を差し伸べてくる男。
こちらに対する害意は……どうやらこの様子ではなさそうだ。
一瞬、躊躇したものの今更ここで抵抗したところで無意味と諦め、ルルーシュは彼の手を取って立ち上がった。

柱間「オレは千手柱間。火の国にある木ノ葉隠れの里は知っているか?
   まだ出来たばかりで大した名ではないが、一応そこの火影……まぁ代表を務める忍だ」

貴様は見たところ異国の少年だな? 所で此処はどこぞの異国だと思うのだが場所は分かるか?……等と気さくな感じでそんなことを訊ねてくる自称忍者のおっさん。
頭を抱えるような間抜けな光景だが、それがこの後にルルーシュにとって最大の相棒となる千手柱間との出会いだった。


とりあえず見た目の怪しささえ除けば柱間というこの男は言動通りの気さくなおっさんであった。
ルルーシュの周りには該当例がいないタイプなので多少戸惑うところはあったが、少なくとも悪人と疑うのが何故か逆にこちらが申し訳なってくるようなそんな不思議なタイプのお人好しだ。
騙すのは容易……それこそ口八丁に適当なことを吹き込んでも本気で信じてしまいかねないだろう。
懐かしき幼き頃の親友スザク。彼があの真っ直ぐな性格のままに歳を重ねれば、あるいはこのような男になるのかもしれない。
忍者、と名乗っていたがそれはどうやら自分が知るイレブン……日本人の昔の諜報員とは別種のものであるらしい。
むしろ柱間の語る世界観は完全にルルーシュの理解を超えた既にファンタジーのそれだ。アスランが語っていたコズミック・イラなる正気を疑うSF宇宙時代も大概だが、柱間の語っている忍界大戦などというそれはベクトルこそ違えど最早大差ない。

ルルーシュ「世界は広い……いやこの場合は多いとでも言った方が適当か。並行世界か多重世界か知らんが俺からすればSFもオカルトもこれでは大差ないぞ」
柱間「えすえふ? おかると?……うむ、ルルーシュは頭が良いらしいな。オレにはさっぱりだ」

頭を抱えるルルーシュを尻目に愉快そうに呑気に笑う柱間。カルチャーショックなどという言葉が可愛らしいレベルで話が噛みあっていない。
本当ならこんなおっさんは放っておいてリーネたちを探したいのだが、彼女たちを探す当てがあるわけでもない。
そもそもリーネたちを見つけてどうするというのだろう。再合流を果たした後は? この殺し合いからの脱出? 主催者たちの打倒?
……ありえない、無理だ。少なくとも多少は頭も回るし修羅場慣れしていようがしかし所詮自分はただの学生だ。何の特別な力だって持っていない。

――どうせ世界は変わらない。

いったいいつ頃からだったろうか。当たり前のようなそんな世界の真理に気づき、流されるままに諦めるような生き方をするようになったのは。
ルルーシュ・ランペルージ、否、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなど世界を変える一石にすらなれない路傍の小石だ。
渇いた笑いと共にもうどうにでもなればいいと投げやりな態度をとるルルーシュに柱間はじっとこちらを見た後にやがて意を決して話しかけてくる。

柱間「ふむ、元気がないのう。……ん、さては貴様後ろに立たれると小便が止まる繊細なタイプだな? 分かる、分かるとも。オレの友にも同じような奴がおる。そのウザい自覚症状、貴様はあいつに良く似ている」
ルルーシュ「……少し黙れ、ウザい」

けんもほろろに返すルルーシュの棘のある言葉に落ち込む柱間。
能天気に下世話に笑っているのかと思えば少し強く言うと簡単に落ち込む。
これではどっちがウザいというのか。ルルーシュは顔も名前も知らぬこの面倒臭い男の友をしているという奇特な人物に少し同情の念を抱いた。
しかし下らないコントばかりをしていても仕方ない。いつの間にか少しだけ沈んでいた心が楽になっていた。横目に柱間を見ながらまさかなと思うルルーシュ。
このまま諦め座して死を待つ……何だか今はその考えが無性に腹立たしくなってもきていた。
少なくともこの隣のウザい能天気親父があっけらかんとしているのに、それに負けて自分だけ落ち込むというのは悔しい。
不思議と負けず嫌いの性分が戻ってきたルルーシュは柱間にとっとと行くぞと促しながら最初の一歩を踏み出す。
どうせ世界は変わらない? だったら自分がその前例になればいい。

ルルーシュ「主催者共に教えてやる。撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだと」
柱間「うむ、その調子ぞ。なかなか粋なことが言えるではないか、ルルーシュ」

両者揃って不敵に笑い、今反逆者としての一歩を歩み出した。


柱間の持っていた支給品であるゼロの仮面と衣装。それは最前のマッチョ仮面が身に着けていたのと同じものだった。
ノリノリでそれを身に着けたルルーシュは柱間共々に仮面の反逆者コンビを結成し、行動を開始する。
直接戦闘はそれを得意分野と豪語する柱間へと一任し、ルルーシュは戦略面での頭脳労働を担当することになる。
その矢先だった。殺し合いに乗っていたストライダー飛竜の襲撃を受けたのは。
オレに任せろと告げる柱間にお手並み拝見と任せたルルーシュだが、柱間が披露する大規模な木遁忍術に驚愕し、度胆を抜かされる。
されど相手はこちらも超人クラスの実力を有するストライダー。柱間のような規格外の忍術こそ持ち得ないが各種オプションに柱間にも引けを取らない体術をもって互角に迫る。
ルルーシュが知る地上戦における最強の機動兵器であるナイトメアフレームすら玩具に等しく見える超常の戦いに、それこそルルーシュは目を奪われていた。
激闘の末、勝負を制したのは柱間だった。
任務失敗を悟り自決を覚悟する飛竜をしかしルルーシュは止める。

ルルーシュ「違うな、間違っている間違っているぞ、ストライダー。捨てる命だというのなら我々が拾おう」

ルルーシュが告げるその言葉にしかし飛竜は話にならんと鼻を鳴らす。
ストライダーは野を馳せる者。狼は何者にも属さず、そして従わない。
お前たちに従う義理はないと強情に突っぱねる飛竜にしかしルルーシュもまた譲らない。

ルルーシュ「属さない、従わない……その気高き反逆精神大いに結構。ならば相互利用の契約だ。
      我々はお前に戦場と死に場所をくれてやる。お前はそれが自分に見合うものであるかどうか見極めてみせろ」
飛竜「俺を走狗として使い潰してみせると……大した度胸だ」
ルルーシュ「事実、俺達は既に一度お前を下している。出来ないと思うか?」
飛竜「……面白い、やってみろ」

一歩も引かず頑として自信を構みせるルルーシュの態度に興味を持ったのか、柱間が自分を倒して見せたという事実も合わさり飛竜は二人の軍門に加わることを承諾する。
二人から三人チームとなった彼らはしかし無論これで満足するはずもない。

柱間「それでルルーシュ、これからどうする?」
ルルーシュ「戦いの大前提は数だ。同じ志を有する協力者を募る」
飛竜「烏合の衆にならなければいいがな」
ルルーシュ「案ずるな。そのための頭、そのための手足だ」

リーダーを柱間、参謀をルルーシュ、参謀直属のカードとしての飛竜。
柱間の持つ天性のカリスマがあれば人は集まる。自分は参謀へと専念し最善を尽くせば組織は回る。
工作員としての実力・技術共に確かな飛竜はルルーシュにとって信頼に足る人材だ。
問題ない。条件は全て整っている。後は作戦へと移るだけだ。
後に柱間教と呼ばれた対主催チームはこの時より始動した。


そうして柱間教はそこから次々と実力者たちを集めていく。
通りすがりのサラリーマンこと高槻巌。本人曰く少々忍術を嗜んでいる程度のどこにでもいる単身赴任中のサラリーマンとのことだが、その実力は柱間や飛竜にも決して引けを取らない。
歴戦のイレギュラーハンター、ゼロ。第0特殊部隊の隊長を務める強者。レプリロイドとしての身体能力は人間を凌駕し、幾度となく機械の反乱から世界を救ってきた英雄。
彼らとは何ら問題なく仲間として迎え協力し合うことが出来た。
唯一問題があったとすれば、忍者ばかりが集まって機動力だけ大幅に上がったのはいいのだが、そのせいで彼らの超人的強行軍にルルーシュ自身がやはり足を引っ張ってしまったことか。

飛竜「いくら頭が回ろうがこれでは宝の持ち腐れだな。もう少し体も鍛えろ」
ルルーシュ「……お前らみたいな規格外を基準に語るな」
柱間「まぁまぁよいではないか。ルルーシュにはルルーシュにしか出来ぬ役割がある」
巌「そう、補ってあまりある程度にはね」
ゼロ「元からそこを買われての参謀でもあるからな」

手の空いた者に代わる代わる背負われながら進むその姿はある意味シュールだった。


彼らの言通りルルーシュが参謀として買われた役割、それが大いに発揮されたのは作戦立案とその指揮。
そして何より他参加者と接触した際のその交渉術であった。

ルルーシュ「間違っているぞ、柱間! お前から下手に出てどうする!?」
柱間「しかし偉そうに上から言えば人の反感を買うだけぞ」
ルルーシュ「高圧的になれと言っているわけではない。組織の頭であるお前が最初から低く出過ぎれば、俺たち全体が体よく安く見られることになる」
柱間「頭を下げて丸く収まるなら、それは一番安くすむことではないのか?」
ルルーシュ「簡単に頭を下げ誰にでも媚びへつらうような指導者には誰もついていかない」
柱間「むぅ……そこまでやっているつもりもないのだが」
ルルーシュ「自分自身で思っているお前と、他人から見えるお前は必ずしも同一ではない。これは人の上に立つ者に共通して言えることだがな、組織の長とは常に誇りと気概を持つべきだ。傲慢であれと言うのではない。ただ、他者の命を預かる者としての自覚と責任を忘れてはならないんだ」
柱間「……何だかだんだん貴様の小言が扉間のように聞こえてくるぞ」
ルルーシュ「不満や文句があるのなら聞こう。参謀として改善できるところは可能な限り努力する」
柱間「い、いや別に不満も文句もありはせんのだがな……」
ルルーシュ「ならばお前も俺の言葉を信じて協力してもらいたい」
柱間「う、うむ。それは無論だが……なんだか体よく言いくるめられておる気もするのう」

基本、お人好しでありあまり人を疑わず流言飛語の類いすら簡単に信じかねない柱間へとルルーシュは数えるのも忘れるほど何度も釘を刺した。
しかし或いはその甲斐もあってか、柱間は参加者間からお人好しであれど人を裏切らぬ信頼できる人物と見られ、そのカリスマ性も増々に高まり同志を増やしていくことにもなる。
その後、日独同盟を結成していたシュトロハイムと木曾。基本ドイツ軍人以外を信用していないものの相互利用の目的で軍門に参加したルーデル。最強の尖兵ジェネラル。
……気づけば最強に近い布陣を結成するに至っていた。
「これ元の世界で黒の騎士団結成するより強くね?」とは集結した柱間教の人員を整理した際の読み手の感想だった。

後に漸くに序盤で逸れたリーネたちと再会した際、その凄まじい布陣をゼロの格好をしてノリノリで引き連れるルルーシュを見て三人は別れた間に何をしていたのだろうと本気で驚いていた。

以下、最盛期の柱間教の面子である。
教祖:柱間
参謀:ルルーシュ
左官:ルーデル
忍者:飛竜、巌、ゼロ@ロックマンX
軍人:シュトロハイム、木曾、ジェネラル、アスラン、赤城、リーネ

攻防共にどころか物理的にも精神的にも隙が無さすぎる布陣であった。
これだけ大人数で強力なチームは他に類を見なかった。ルルーシュ自身も柱間と共に彼らをまとめ上げながらこれなら殺し合いも打倒できるはずだとそう信じていた。

ルルーシュ「人々よ! 我らを畏れ求めるがいい。我らは力有る者が力無き者を襲う時、現れるであろう。それが例えどれ程強大な敵であろうと必ずに討ち斃す! 我々は武器を持たぬ総ての者の味方である! 我々は戦いを否定しない! だが! 強者が弱者を一方的に殺すことは断じて許さない!――撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!
      力有る者よ、我らを畏れよ! 力無き者よ、我らを求めよ! この殺し合いは我々の手で裁く!
      我々の名は黒のk―――」
飛竜「――能書きが長い。簡潔に纏めろ」
ジェネラル「感心しませんねぇ、一人で勝手に決められるのは」
巌「では”通りすがりの正義の味方”、でいいのではないのかな?」
柱間「うむ、それぐらいシンプルで分かり易い方が良かろう」
ルーデル「ならば決定だ」
シュトロハイム「通りすがりの正義の味方の対主催力は世界一ィィィ!」
木曾「語呂悪っ!」
ルルーシュ「…………」
リーネ「あの、ルルーシュさん……ドンマイです」

会場中に響き渡る締まらない演説をしながらその存在をアピールする柱間教。
一癖も二癖もあり過ぎる問題児の集まりに、ルルーシュが頭を痛めたのは言うまでもない。
だが同時に誇らしくあったのも事実だ。
これ程に気の置けずまた癖があり過ぎるに関わらず生死を共にすることに悔いを抱かずにすみそうな仲間たち。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしてではなくルルーシュ・ランペルージとして自分を信頼して命を預けてくれる彼ら。
どうせ世界は変わらない。かつては確かにそう思い諦めていた。だが今ならば、こいつらと一緒ならば世界だって変えられる。
ルルーシュはそう強く信じていた。


とは言え最強対主催集団とも言われた柱間教とて万能であったわけではない。
戦場への武力介入による争いの抑止。一言で述べてもその範囲が広すぎた。
どれだけルルーシュが油断と慢心を消し去り、策を弄そうと。
どれだけ柱間たちが全力でそれに応えてくれようとも。
犠牲者は出る。
最初期からの仲間だったアスランと赤城が主任戦にて死亡。
ヒトラーと一人で戦うために離脱したルーデルもまた帰ってこず。
そして、妹のように気にかけていたリーネもまた目を離した隙に殺された。

――不幸になるために生まれてきた人間などいない。

かつて母マリアンヌはルルーシュへとそう教えてくれた。母が死に妹が盲目と半身不随になるまでは彼もそう思っていた。
それでもルルーシュにとってその言葉は彼にとっての行動理念の根幹にあったからこそ、柱間たちと共にそれを信じて戦ってこられた。
だがやはり……また大切な仲間たちが死んでしまった。
そう、仲間が死んだ。いつもしたり顔で戦術の観点から相手にくれてやっても替えが効くゲームの駒ではない。
替えの効かない仲間が、死んだ。
ルルーシュがもう少し後の、それこそ魔女と契約しギアスを得て、復讐のための修羅道を歩むと覚悟を決めた時期から参戦していれば、仲間の犠牲もある程度は割り切った耐性が持てただろう。
だがこのルルーシュはどれだけ態度で強がろうとも、所詮は一学生時代からの参加。他人の死を背負い修羅道を歩むと覚悟を固めるには幾ばくか早過ぎた。

柱間「自分を責めるな、ルルーシュ。貴様の責ではない。あ奴らを守れなんだのは力及ばなかった俺の未熟が原因ぞ」
ルルーシュ「俺が万全の策を敷き、完璧な戦略を組み立てて戦場に送れていれば……あいつらは死なずに済んだはずだ」
柱間「……人は万能にも神にもなれん。全てを自分の手だけで救えると思うのはあまりにも傲慢ぞ」
ルルーシュ「……ならお前の言っていることだってそのまま当て嵌まるじゃないか」
柱間「俺は大人で皆の頭だからのう」

こんな時だけ子ども扱いで甘やかしてくれるなよ、そう反論しようとしかけるも結局は直前で思い留まる。
確かに柱間の言う通りだ。参謀などと賢しらに偉ぶろうと、今の自分は覚悟が定まっていない単なるガキだ。
たまたま強く優秀な仲間と出会い、それを自分の力と勘違いして世界だって変えられると万能感に酔っていただけの子供。
油断や慢心などしない? 覚悟は固めた? 違う! そう勘違いして仲間に甘えていただけだ。
千手柱間が自身の未熟を罪だというのなら。ルルーシュ・ランペルージの怠慢はやはりそれ以上の罪だ。

柱間「子供がのぅ……死ぬのが堪らなく嫌だった」

不意にポツリと語り出す柱間の語りにどういう意味だと言った様子でルルーシュは無言の視線を向ける。
それに気づいているのかいないのか、だがいつもの太平楽とは違った様子で柱間は朴訥と語り続ける。
自分が子供の頃より体験してきた忍界大戦。親兄弟は無論のこと、敵同士であれど友情を結べた親友の家族も、数え切れないほど死んだという話。
柱間が中でも特に辛かったと感じたのは自分より幼い弟を守ってやれずに死なせてしまったということ。
もうこれ以上の、幼い犠牲は沢山だ。だからこそ、争い合うことを止めて敵とだって手を取り合いたかった。
親友と彼は考えた。それはどうすれば可能なのか。

柱間「己の腸すらを見せ合う覚悟と理解が必要だ、とオレとあいつは結論付けた」

言うは易し行うは難し。命懸けの戦いの中でそこへ至るためにどれ程の困難があったのか。
柱間が語りルルーシュがそれを想像する以上に、実際のそれは険しかったはずだ。
けれど――彼らはそれを成し遂げた。
木ノ葉隠れの里とは、火影とは、言うなればその夢の結晶だ。
過去と現在を耐え忍び続けて勝ち取った、彼らの誇る未来なのだ。

柱間が何故そんな話をルルーシュへとするのか。それはルルーシュとて察せられないわけではない。
つまりこの話は柱間がルルーシュを信頼して腸を見せる覚悟を示しているということだ。
元より一蓮托生なれば、彼の罪は己の罪だ。ならばこの共犯者の真実とはいかなるものか。
柱間はルルーシュを対等と見ているからこそ、今ここでの真実の開示を躊躇わない。
本当にどこまでもお人好しで、真っ直ぐな男だ。きっと長生きできるタイプではない。
だがルルーシュはその姿を羨ましく思えたからこそ、いつの間にか感化されていたのかもしれない。

ルルーシュ「ならば俺もまた語ろう。ルルーシュ・ランペルージとしてではなくルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての真実を」

嘘で塗り固めて生きてきた己の偽りの人生。その真実の全てをルルーシュは柱間へと語った。
母マリアンヌの理不尽な死。妹ナナリーが強いられた耐え難き苦難。自分たちを捨てた父シャルルへの抑え難き憎悪の念
そして思い通りにもならず残酷で傲慢な運命を与えてくる世界への怒り。
最愛の妹であるナナリ―にすら語ったことのない真意をルルーシュは柱間へと語った。

ルルーシュ「これが俺の見せることが出来る腸だ」
柱間「……成程、まぁいろいろ個人的に思うところはあるが、オレが口出しできるものではないからのう」

柱間としてはルルーシュには復讐の念など捨てて生きて欲しいのだろう。彼の態度や口ぶりを見ていればそれは分かる。
けれどそれを彼は安易に口にはしない。正邪に分けなくその想いがルルーシュの根幹をなしているものだと理解しているからだ。
それに、今のルルーシュは――

ルルーシュ「だが今は――俺は仲間を死なせたくない」

自分は死ぬわけにはいかない。生きてナナリ―を守り、復讐を成し遂げ、母の死の真相を突き止めねばならない。
何よりもそれはルルーシュにとって大事なことだ。
だが同時に、今それ以上に消し去ることも出来ず脳裏へと映るのは共に戦ってくれている仲間たちの姿。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしての真意。今だけはそれは耐え忍び抑えよう。
今はあいつらの仲間であり柱間教の参謀であるルルーシュ・ランペルージとしての自分を選ぶ。
その選択をルルーシュは後悔しなかった。


その後、柱間教は高槻巌が別行動を取ることになり別れ、代わりになる形で葉隠康比呂を保護すべき力無き者と言う形で迎え入れる。
或いは彼の加入こそが、柱間教の……ルルーシュの明暗を分けたと言えるだろう。
湾岸地帯に集結した怪獣勢による最後の大決戦。それが引き金となる形で起こった怪獣王ゴジラのメルトダウン。
放っておけばこの会場中の半数、否、それ以上の被害が生まれる未曾有の大惨事になることは明白。
それを食い止めるべく柱間教は一丸となって事態へと介入。失敗は許されぬ最重要ミッションということもあり、ルルーシュも自ら最前線にて陣頭指揮を執る。
チームメンバーによる他参加者の避難誘導や護衛。柱間の木遁忍術による怪獣王の一時的な足止め。そしてルルーシュ自身が考案し実行へと移った湾岸地帯の足場崩壊によるゴジラの海上への放逐。
皆が皆、命懸けで最善を尽くし全てを賭けた。
結果、最悪の事態だけは回避することに成功する。
通りすがりの正義の味方としての意地は通した……らしくもなくルルーシュもそんな安堵を抱きかけたその瞬間だった。
皆への伝令役兼補佐役として協力してくれていた(実際は土壇場の修羅場で何度も足を引っ張られたのだが)葉隠を襲う凶手の影。
周りには戦闘に特化した者はおらず、ルルーシュ自身も大した武器など持っていない。肝心の葉隠に至っては当然気づいておらずむしろ今から警告を放とうとも遅すぎる。
殺される、そう頭の隅のどこかでは冷静に葉隠の死亡をカウントしていた。
だが――ルルーシュの身体は違った。
理屈や計算など度外視。それこそ無意識と言っていいレベルでルルーシュは動き、葉隠と敵との間に割り込んでいた。
その結果がどうなるかなど……もはや語るまでもなかった。


父が憎かったのか。世界が憎かったのか。運命が憎かったのか。
今となっては分からない。それはどれも同じであるように思えたし、逆にどれも違うように思えた。
『お前は生まれた時から死んでおるのだ』
かつて父は自分に対してそう言った。母の死も妹の不幸も、かかずらうべきに値せぬ弱者の運命と切り捨てた。
恐らく、ルルーシュにとってそれは最初で最後となる父との親子としての会話であり、決別だった。
生きながらにして死んでいるとまで侮蔑されたに関わらず、その時の彼は何一つとして言い返せなかった。
そうして彼は妹共々に、父に国に捨てられた。
それからの自分は惨めだった。名前を変え、経歴を偽り、己の心にすら目を背けて仮面を被った。
己は弱者、屍である。
幼き日に父へと反論できなかったその言葉通りの現在をルルーシュは送り続けてきた。

――どうせ世界は変わらない。

それは賢しらに自分だけが早熟に世界の真理を悟ったかのような言葉ではなく。
反逆への気概の一つすら示せない自分から目を逸らすためだけの言い訳だった。


ただの学生がどれだけ吠えようと、暴れようと、世界は小揺るぎもしない。
違う、どうしてその一言が言えなかったのだろう。どうしてその一歩を踏み出せなかったのだろう。
運命なんて糞喰らえ、世界なんて脆いもの。
死ぬ気で何かを成し遂げようとする覚悟さえあれば、いくらだって変えられる。

ルルーシュ「……なぁ、そうだよな……柱間」
柱間「応、そうともよ。……だからしっかりせい」

ないアル修羅の襲撃から葉隠を救い出した。彼は無事で怪我一つなく生きている。
ルルーシュが守ったのだ。勝ち取った結果だ。
かつてなく清々しい気分に思わず笑いが漏れてくる。
代償に負った自身の致命傷など本当にどうでもよくなるくらいに。

涙目で自分を抱きかかえる柱間。先程から直ぐに治療してやる、傷は浅いぞなどと励ましてくるが……正直、それが嘘なのも分かっているし、何よりこの清々しい今の気分に対しては無粋だ。

ルルーシュ「……頭が動揺するな。組織の長の混乱は、部下たちにも伝わる……」

本当に情けない。何度言えばわかるのか。そのカリスマ性は認めるが、その甘さは早死にの原因にしかならないぞ。
そんな小言を言ってやりたかったが、しかしもはや口を開けることすら億劫だ。
それに何より本当に言わなければならない言葉が残っている以上、余計なことを言っている余力もない。
霞む視界でルルーシュは周りを見回す。正確には把握できていないが、どうやら仲間たちも集まってきているらしい。

ルルーシュ「……被害、は?」
飛竜「俺たちには死傷者はいない。……尤も、役立たずを庇って死にかけている参謀を除いてだがな」

動揺が収まらず答えられない柱間に代わるように、飛竜が淡々としかも冷たく手厳しく言い放つ。
仲間内で飛竜を非難する言葉が上がるが、ルルーシュ自身がそれを制する。
俺に手厳しいのは構わないが、葉隠を責めてくれるな。あいつには非はないし、何より力無き者だ。
俺たちはそもそも通りすがりの正義の味方だろ?
そう返すルルーシュに飛竜はまだ納得がいかない様子で鼻を鳴らすが、もはや反論してこようとはしなかった。
ルルーシュが最も恐れていたことの一つはこれが原因で葉隠が責任を負わされること。
……だがこの様子なら大丈夫だ。彼らは仲間を吊し上げるほど狭量ではないはずだ。
罪悪感に震えながら遠巻きにこちらを見ている葉隠に、案ずるなと無言で頷き返す。
力無きことは、弱者であることそのものは決して罪などではない。
そこだけは決して違えられない、父を否定し認められぬルルーシュ自身の価値観であり、誇り。
だからこれでいい……これで、いいのだ。

伝えておくべきことがあるとすれば、あと一つだけだ。
ルルーシュは柱間にいい加減にしっかりしろと喝を入れながら、その言葉を告げる。

ルルーシュ「……柱間、これは契約だ。俺の死など今は……耐え忍べ。
      ……代わりに、お前がこいつらを生還させる……未来を、創れ」

耐え忍ぶ者としての忍者。これまで多くの苦難を耐え忍んできた男に更なる重みを背負わせるのは申し訳ないと思う。
だがルルーシュがこの仲間たちを安心して託せるのは、腸を見せ合った友である柱間を置いて他にはいない。
故にこそ、ルルーシュは彼へと願うのだ。皆が生きて帰れるその未来を。
ブリタニアに復讐を誓いながらも生きながらにして死んでいたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとしてではなく。
この殺し合いで仲間たちと共に駆け抜けた柱間教の一員であるルルーシュ・ランペルージとして。
千手柱間という友に願いを託す。

ルルーシュ「ルルーシュ・ランペルージとして願う……俺の仲間を、助けてやって……くれ……」

ルルーシュの最期の懇願に柱間はしばし沈黙した後、強く強く目を瞑り、噛み切れんばかりに唇を噛み締めた後
やがて絞り出すような言葉と共に頷いた。

柱間「良かろう、千手柱間の名に懸けて――貴様のその願い、確かに受け取った」

確かな覚悟をもって頷いた柱間のその言葉。それが聞けただけで満足だ、もう安心だと思えた。
後顧の憂いはない。自分のこの結末にも……悔いは、ない。
ルルーシュ・ランペルージはかけがえのない仲間たちを案じ、そしてその仲間たちに看取られながら、短くも鮮烈なその反逆の人生に幕を閉じた。


願いの本質の一つには、自分の力だけでは叶わないことを誰かに求めるという部分がある。
本来の歴史においてルルーシュはその願いの具現としてギアスという王の力を手に入れた。
彼は己の成し遂げた人生の最後において、親友である枢木スザクへとこんな言葉を投げかけている。
願いとはギアスに似ている。
確かに方法と解釈はどうであれ、ルルーシュの絶対遵守の力の裏面には他者との繋がりや絆を求めるという一面がある。
彼はその生涯の最期に、人々に、親友に、願いという名のギアスをかけた。
Cの世界にて垣間見て知った人々が明日を望むという想いを信じて。
世界の明日のために。

本ロワにおけるルルーシュは当然ギアスを持ち得ない。
魔女C.C.と出会うより以前、自らが語った通りに生きながらにして死んでいた時期から連れて来られたからだ。
ルルーシュ・ランペルージは魔女と出会わなかった。しかし代わりにかけがえのない友と出会い仲間を得た。
復讐という己を成り立たせている大前提すら放り捨て、王の力を振るう魔王にもなれず、最後まで一人の無力な人間であった。
彼は本来の歴史における人生とは違い、それほど多くのことを自らの力で成し遂げたわけではない。
それこそ、本当に自分だけの力で成し遂げたことなど葉隠康比呂の死の運命を変えた程度。
その命を使ってまで助けられた命など、それ一つだ。
けれど彼に後悔はない。どんなに小さく安っぽい功績だろうと、それでもたった一つであれ運命に反逆することが出来たのだから。
自分の意志で、自分の一歩で、幼き日にかけられた父の呪縛を凌駕してみせたのだから。
故に彼は自分の力で成し遂げられぬことを友へと託した。
彼もまた願いとは自分の力だけで叶わないことを誰かに求めることなのだと気付いたゆえに。
彼もその生涯の最期に、仲間に、戦友に、願いという名のギアスをかけた。
復讐ではなく、本当に欲しかったもの、望んでいたものがこれで正しかったはずなのだと信じて。
仲間の未来のために。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年06月17日 16:45