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白桃伝説 第十話『代償』

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rozen-yuri

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第十話『代償』


「初めまして黒薔薇のお姉さまと紅薔薇のお姉さま…」

足に巻き付いた茨が、素早く全身を束縛した

「へぇ…これで勝ったつもりぃ…?」

横には真紅がいる
わざと残したのではなく、水銀燈の拘束で精一杯だったという事はお互い何となく感じていた

「紅薔薇のお姉さまと黒薔薇のお姉さまは強い…と桃薔薇のお姉さまからよく聞いています」
「桃薔薇…?あぁ…雛苺ね…」
「そのおチビさんとあなたはどういう関係ぇ?」

おそらく蒼星石に聞いても無駄な質問
当事者が出て来てくれたのは水銀燈側にも好都合
雪華綺晶は俯き…少し頬を赤らめて口を開いた

「…愛人です」
「ぶっ」

予想外の回答に吹き出す水銀燈
体を縛られているという劣勢さが微塵も感じられなかった

「…それで、あなたの愛人とやらは何がしたいの?」

笑いの止まらない水銀燈を尻目に、真紅は冷静に続ける
この騒動の中枢となる質問

「あなたへ復讐がしたいそうです。紅薔薇のお姉さま…」
「復讐…?」
「復讐!?あはははははははは!!真紅ぅ!あなた何恨まれるような事したのよぉ!あはははははははは!!」

さらに声を上げ笑う水銀燈
その声は、強く締まる茨によって中断された

「私の事は笑っても…桃薔薇のお姉さまの事は笑わせない…!」
「…ふぅん…見事な崇拝っぷりねぇ…」

締まる事よりも、茨に生える棘が微妙なダメージを蓄積する
水銀燈の顔から余裕が消えた

「それで…復讐ってどういう意味?」
「…私はあなたを連れて行く以外に聞かされてません」
「結局、雛苺の犬って事じゃなぁい?…くっ!」

さらに強く締め上がる茨
水銀燈も我慢の限界だった

「真紅ぅ!さっさとこいつジャンクにしちゃいなさい!!」

既に臨戦体勢だった真紅はステッキを構える
それより早く雪華綺晶は走った
真紅の方ではなく、未だに羽で固定されている蒼星石の方へ…
そして鋏を手に取り──

「…私が勝算もなく飛び込んで来たとお思いですか?」

荒っぽい一振りで蒼星石の両腕を縛る羽を払う

「これで2対2…黒薔薇のお姉さまが動けない分、こちらが有利です…」

蒼星石へと鋏を返す雪華綺晶
しかし──
カシャン…
蒼星石はその鋏を受け取らず、床に落ちて切ない金属音が響いた

「蒼薔薇のお姉さま…?」

振り返る雪華綺晶
そこには完全に戦意を喪失した目、乱された服を直そうともしない蒼星石がいた

「蒼薔薇のお姉さま…?」

もう一度問いかける
反応はなかったが、トロンとした眼差しで水銀燈を凝視している事は伺えた

「…翠薔薇のお姉さまがどうなってもいいのですか?」
「翠………翠星石…」

その言葉でようやくゆっくりと立ち上がる
…が、到底戦えそうには見えなかった

「しっかりしてくだ…うぐっ!!」

何かに右頬を殴られ、吹き飛ぶ雪華綺晶
右目がないため死角が多く、床に叩きつけられたところで真紅の拳に殴られたと理解した

「うぅ…ぐ…」

何とか体を起こそうとする
同時に、喉元に冷たいモノを感じた

「殴られたぐらいで能力を解除するなんて…やっぱり甘いわねぇ…」

背後に立つ水銀燈
その手には剣が…
どこから出したのかわからないほど長い剣が、雪華綺晶の首を捉えていた

「意外そうな顔…あなたの愛人さんから私の能力は聞いてなかったのぉ?あ、動くと首を落とすわよぉ♪」

クスクスと笑いを含んだ言い方
しかし下手に抵抗すると容赦はしないといった殺気が感じられた

「さっきはすっごい苦しかったのぉ…」

剣を持たない方の手で、雪華綺晶の顎を後ろからなぞる
不快、その一言に尽きる程の悪寒

「本当だったら今すぐグチャグチャのジャンクにしてあげたいぐらいだけどぉ…」

その手が肩へと移動し、強く握り締める
力だけではなく、怒りも込められていた

「おチビさんの目的が真紅であるように…真紅の目的もおチビさんなのよぉ…」

嫌な予感
一滴の汗が雪華綺晶の頬を伝う 

「そのためにあなたは利用価値がありそうねぇ…」

瞬間、雪華綺晶は逃げ出した
いや、逃げようとした
実際は寝転んだ体勢からの逃亡など不可能に等しく、掴まれた肩のせいもあり
体が大きく跳ねるようなモーションをとっただけに終わった
それでも、水銀燈はそれを許さなかった

「おバカさぁん…」

剣がゆっくりと曲線を描く
雪華綺晶の右腕が宙を舞った

「い…いや…イヤァァァァァァァァ!!」

かつて真紅の腕を千切ったように、肩から綺麗に失っていた

「痛い?痛いわよねぇ!?あははははははは!見なさい真紅ぅ!……………真紅ぅ?」

真紅の方を見る
すると蒼星石が真紅を抱きしめていた
雪華綺晶の腕が飛んだ事などお構いなしのような光景

「僕…まだ…体が疼いて…」
「ど、どうすれば…あぁどうすれば…」
「ねぇ真紅…して…?」
「困ったのだわ。困ったのだわ…んぅっ」

蒼星石の方から真紅の唇を奪い、そのまま押し倒した 

「…」

唖然とする水銀燈
呻き叫ぶ雪華綺晶

「…私一人で頑張ってるのにぃ…何を呑気に…」

と、ここで蒼星石を犯していた自分を思い出す
ダラダラとしていてこうなったのならお互い様…
ならばこちらで勝手に進めようではないかという結論にたどり着いた

「まぁいいわぁ…」

水銀燈の剣が羽へと戻り、雪華綺晶の体を固定する

「めぐに借りた二つ目の道具もここで使う事になるとはねぇ…あなたも一本イっとくぅ?うふふ…うふふふ」

右手には蒼星石に使った媚薬、左手にはバイブが握り締められていた
 
 
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