「・・・す、すごい雨ですぅ。」
「・・・、うん、そうだね。」
修学旅行先でいきなりの大雨。
しかも運悪く、山登りの最中。
遅れた私たちは、近くにあった山小屋で雨が止むのを待ってる・・・が。
「い、いつまで降るんでしょう・・・これ。」
もう、一時間ほどは降っているであろう。
しかも大粒、きっと真紅達は同級生達ともう合流をしているであろう。
・・・羨ましいにも程がある、けど。
こうして雨が止むのを待っている時だけでも、大好きな妹と二人きりになれるから正直言って少し嬉しい。
「・・・早く止まないですかねぇ・・・。」
本心と、少しの嘘が混ざった今の気持ちを口に出した。
・・・その時だった。
ドンッ
・・・あれ・・・?
・・・気づくのには数秒間かかった。
その鈍い音は・・・
「・・・!?・・・翠星石!」
「・・・え?あ、あれ・・・?あはは。少しふらついたかも、で、すぅ・・・。」
私がそう呟くと、支えるように後ろに回る蒼星石。
「・・・ちょっ!ちょっと!しっかりして!翠星石!・・・そうだ!」
心配してくれてる蒼星石がゴソゴソと鞄から何かを取り出す。
・・・?
「・・・変なことを、聞きますが、それは・・・?」
「桜田先生から貰った栄養ドリンク。・・・緊急時以外は飲むなって言ってたけど。」
「・・・チビ野郎から貰ったドリンクなんか飲みたくねーですっ!蒼星石が飲みやがれですぅ!」
「でも、・・・そうだ。」
・・・通販なんかしてる先生の飲み物・・・、嫌な予感がしまくりだし・・・。
・・・ん?
ふと見たら蒼星石が口にさっきの飲み物を含んでいる。
「ふっふっふ・・・本当に飲むんですねぇ?バカな妹です。」
静かにそう呟いたその瞬間だった。
「・・・むぐ!?」
口の中に入る異物感。
・・・生暖かいような、ぐにゅっとしたような・・・、・・・これって!?
・・・・口移し!?
「・・・ぷはっ!?・・・ちょっ!」
「・・・飲めた?」
「飲めはしましたけど・・・何か頭がポーッと・・・。」
不意に蒼星石を見る。
・・・何だろう、この感じ。
蒼星石を見てると胸が熱くなって・・・。
「・・・そうせぇせきぃ~♪だぁいすきですぅ~♪」
「へっ!?翠星石・・・!?ちょっ!」
「えへへ~♪愛してますぅ~♪」
何だか無性に甘えたくなって、気がついたら頬ずりしてた。
「す、翠星石!それ以上やられると・・・僕も理性が・・・。」
「・・・そおせぇせきぃ・・・、・・・すきぃですぅ・
・
・
・
・
・
「・・・ん、あれ・・?」
「あっ、気がついた・・?翠星石。」
「蒼星石・・・あっ。」
しばらく寝ていたらしい。
起きたら蒼星石のコートがかけられていた。
「・・ありがと、です。」
「・・・・どういたしまして。」
「・・・・・え?」
にこっと笑いかける蒼星石の顔は何故か血色が悪い、それに何か震えている。
・・・まさか。
「ちょっと触るですよ?」
「えっ?ちょ、ちょっと待って!・・・あう。」
ぴたっとおでこを触る。
・・・やっぱり。
「・・・すごい熱いですよ?」
「・・・そんなことないって、それより翠星石は大丈夫なの?」
「・・・・人の心配するより自分の心配しやがれです。・・・バカ。」
「・・・ごめん。」
・・・蒼星石は本当に馬鹿だ、と、時々思う。
自分の心配はしないで私の心配をするなんて、・・・まぁ、こんな所も好きだけど・・・。
申し訳なさそうに謝る蒼星石に、自分が飲まされた栄養ドリンクを渡す。
「飲めば良くなるはずです。ほらっ。」
「・・・副作用とかないといいんだけど。」
「え?」
「いっ、いや!何でもない!飲むよ!うん!飲む飲む!」
奪い取るかのように慌てて私の手から栄養ドリンクをとる、そして・・・。
グビッという音がした、・・・が。
「ぶふっ!」
・・・口に含んだものを噴き出す。
「ど、どうしたんですか!蒼星石!」
「……な、なにこれ、激マズなんだけど。」
「・・・はい?そんな訳・・・だって・・・私は飲みましたよ?」
「それは僕が飲ませたから!・・・普通に飲むと凄いマズイよ・・・。」
「・・・・もう。」
今度は蒼星石から栄養ドリンクを奪って私が口に含む。
蒼星石からは一瞬、笑顔が消えた。
「え?ちょ、ちょっと待っ・・・むぐ!」
「・・・ん、」
今度は私から。
・・・しょうがないと言えばしょうがないけど、何だかドキドキする。
・・・・・。
「・・・ん、ちゃんと、飲めましたか?」
「・・・・・。」
「・・?そうせ・・・?きゃあっ!」
・・・いきなり押し倒された。
びっくりして、一瞬動きが止まる。
・・いや、だってこんな展開、普通は想像できないし!
「ん・・・♪翠星石、可愛い・・・♪」
「・・い、いきなりそんな事言われても!・・・困ります。」
突然でびっくりしてる私にいきなり、普通に話し始める蒼星石。
・・・耳元で。
「・・・・・・・ね、翠星石、今までさ言いたかったのに言えなかった事、ある?」
「へ・・?」
「くす、僕はね、あるよ。・・・教えてあげよっか。」
「・・・なんです、か・・・?」
・・・・こんな状況なのにドキドキしてるなんて・・・おかしいにも程があると自分でも思う。
・・いつもと違う妹に押し倒されて耳元で囁かれて・・・。
あー!もうっ!何が何だか分からなくなってきた。
心の中では頭を抱えて悶えている私がいるのを安易に想像できた。
・・・・あれ?
自分に乗っかる重い感触。
・・・まさか。
「・・・そ、そーせぇせき・・・?」
「・・・・すー、・・・」
「・・・寝てますし・・・。」
案の定寝てた。
・・・後に聞いた話だが、あのドリンクは飲むと本性(?)が出るドリンクらしい・・・。
「・・・はぁ、まいったですぅ。」
・・・。
ザーザー振り続ける雨に、ゴロゴロと鳴り響く雷。
そして。
愛しい妹の可愛い寝顔。
「・・・・。」
ファーストキスは、・・・しょうがなかったから。
セカンドキス、つまり二度目だ、・・・それも、半分はしょうがなかったから。
・・・そして。
「・・・覚悟、決めたです。」
・・・これは、三回目の正直。
行為を求めるための、愛しい相手にする、本当のキス。
・・・・叶わぬ恋だけど、永遠に。
「・・・大好きです。」
そして、唇を重ねた。
・
・
・
・
・ 2日後
「・・・いや~、一昨日は本当に大変でしたね~。・・・はっきりと覚えてますよぅ。」
「・・、本当。・・・はぁ。」
あれから2日経った。
あの後、すぐ、雨がやんで真紅達が助けに来てくれた。
・・・ドキドキしたけど正直言ったら・・・。
・・死ぬかと思った。
・・・・あっ、そういえば。
「覚えてますか?蒼星石。」
「・・・ん?」
「・・あの時の事ですよぉ!私に言いたいことがあるって!」
「・・・!い、いいや!し、知らないよ!そんなの!・・・言いたい事なんて大した用事じゃあ・・・。」
「・・・・教えてください。・・何ですか?」
「・・・・・いや、恥ずかしいし・・・、えっと、その、」
・・・えっと、正直こんな赤面してて恥ずかしがってる蒼星石、見たことないんですけど・・・。
何て思ってると覚悟を決めたようにグッとこっちを見て蒼星石はいった。
「・・・・こんな僕だけど、・・・君を好きになっても・・・良い・・?」
「・・・・えっ・・・?そ、それって・・・まさか、・・・・」
・・・・告白?
そう続けようとしたとき、ぎゅっといきなり抱きしめられた。
・・・・・この状況、かなりヤバい気がします・・・。
「・・・答えは・・・?」
「・・・こ、答えっていうと・・・?」
「僕を好きかどうかに・・・決まってるでしょ?」
「・・・・そ、そりゃあ・・・もちろん・・・好き、です。」
・・・正直言って叶わぬ恋だと思ってた。
でも、まさか・・・状況が信じられない。
両想いだった・・・なんて。
「・・・ほ、ホント・・?す、翠星石・・・。」
顔を真っ赤に染めながら言ってるんだろうなぁ、と簡単に想像が出来る。
・・・・嬉しすぎて死ねます・・・。
「・・・・・翠星石は嘘なんて言いませんよ?・・・・あと。」
「・・・あと・・?」
少し蒼星石から離れて笑顔でこう告げる。
「・・・四回目はロマンチックにしてくださいねっ♪」
・・・もしかしたらこれが私からの一番の告白になるかも、・・・・知れません。