蒼「水銀燈、あのね…」
蒼「もう、水銀燈っ!」
蒼「ねぇ、水銀燈…?」
いつも憎かった。私の場所。あのひとの隣を、奪おうとするあの子が。
――でも、その反面、凄く羨ましかった。
いつも、私がはっきりと伝えられない想いを、あの子はぶつけていたから。
薔「……それ…以上、銀ちゃんに、近付かないで…」
――私の、唯一、安らげる場所……
……奪わないで。
蒼「はぁ…ねえ薔薇水晶。それ、君に言われる筋合い、ある?」
薔「わかってる、わかってる!!っそれでも……!」
蒼「僕は水銀燈の事が好きだって。いつだって、僕だけを見ていてほしいって。…水銀燈に、伝えたよ?」
蒼「でも、君はどうなのさ!!一度でも、水銀燈に言った!?」
薔「………っ!」
――言ってない。…怖くて、言ってない。
私の事だけ見ていてほしい。私にだけ、あの場所をあけていてほしい。
それでも、あの子が眩しい。
……勇気が、出ない。
薔「………」
蒼「…僕はいつだって水銀燈と一緒にいたい。君と居るときよりも、もっと幸せそうな笑顔を、僕だけの物にしたいんだ。」
蒼「君が伝えないのなら、僕が君の分まで伝えてあげるよ。…だから、もう…邪魔しないで。」
――何も言えない。蒼星石にさえ。こんな私が、あの人を…愛していいのだろうか。
――――
銀「ちょっとぉ、どぉしたのぉ?」
薔「うぐ…っえっぐ、ひっく…」
銀「まぁーたイジメられたのねぇ、まったく…」
銀「ねぇ、薔薇水晶ぉ。こっち向いてぇ?」
薔「ひっく…ぐす…?」
銀「やぁだ、可愛い顔が台無しぃ~。真紅みたいなブッサイクになっちゃうわよぉ?」
銀「笑いなさぁい、薔薇水晶。貴女はきっと、もっと自分を好きになれるはずよぉ。貴女のことを苦しめる人は、私が許さない。…私のこと、信じて。」
銀「…ほら、笑顔ぉ♪」
――――
薔「銀…ちゃん…」
薔「えがお…」
――諦めるの?こんな簡単に。…諦めきれるわけ、ないじゃん。
だって、私の気持ち。あなただけに、受けとめてほしいもの。あなたの隣にいていいのは、私だけなんだから。
…誰にだって、譲るもんか!
自分の気持ちを整理したら、後は早かった。
あの子に呼び出しの電話を掛け、軽く髪を整える。そして、自らが指定した、あの人との想い出の場所まで、全速力で駆け出す。
風が気持ちいい。そういえば、もう春なのか。風に揺れる桜たちが、私を応援してくれているように見えた。
薔「はぁ…っは…」
キョロキョロと辺りを見回せば、青いズボンをはいたあの子が見える。
私は一度深呼吸をすると、一歩一歩、踏み締めるように、歩き出した。
薔「蒼星石…」
蒼「やぁ、薔薇水晶。話って、何かな。」
蒼星石の鋭い目が、私をとらえた。…でも、怯まずに続ける。
薔「きっと、うまく話せないと思う…でも、聞いて欲しいことがあるの…」
薔「あのね…蒼星石に言われたこと、ずっと考えてた。私は…こんな私が、銀ちゃんを好きでいて、いいのかって。…自分の想いすら、伝えられないのに、って」
「でもね、思ったの…」
胸が熱くなる。呼吸が荒くなる。落ち着け、私。これで自分の気持ちに、決着をつけるんだ。
薔「やっぱり私は、銀ちゃんが好きだから…!!」
薔「今までずっと、怖くて、言えなかった。…でも、銀ちゃんの隣に居れなくなることの方が、もっと怖いから!」
薔「――蒼星石には、負けない…!!」
――言った。…やっと、言えた。私の、銀ちゃんへの想い。
蒼「…そっか。やっと、解ったんだね。それじゃあ僕は、もう邪魔者、かなっ…」
そう言って、後ろに振り向く。
蒼「じゃあね!君の事…すごく大好きだったよ!」
私の横を走り去る蒼星石。笑顔だったけど、その瞳からは雫が落ちていた。
蒼星石がいた方を見てみる。そこにはなんと、愛しい…
薔「銀、ちゃん…?」
…あの人の姿があった。
つづく
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