甘ったるい香りに頭がくらくらしそうだ。
「さっとう、さっとう、メープルシロップ」
語尾に星やらハートやら音符やらをつけそうなほど上機嫌な雛苺に見つからないようにため息をつく。
お菓子作りの誘いに気軽に返事したのが間違いだった。
「蒼星石、どうしたの?」
無邪気な顔で心配してくれるのだが、笑顔を作る元気もない。
「ん?大丈夫だよ」
本当は全然大丈夫じゃない。甘いものはあまり得意ではないのだ。
「そう?」
心配そうにまだこちらを見ているがクッキーの焼き上がりの音を聞くとすぐにそちらを向いた。
「あー、やっぱりヒナのはだめなの…」
先ほどから色々な焼き菓子を作っているのだが、雛苺は決まって分量以上の砂糖を入れてしまう。
その為、全て真っ黒になってしまうのだ。
僕はそんな冒険をせずにまともに作るためこんがりといい焼き色である。
砂糖やメープルシロップ単体ならばそんなに香りもしないのだが、熱が加わると香りが強くなる。
「蒼星石ぃ…」
「あぁ、いいよ。あげる」
ただでさえ香りでお腹いっぱいなのだ。
これでクリームやらチョコやらのたくさん入ったものを食べさせられると思うと胸焼けする。
「わーい、ありがとうなの」
全快の笑顔できつね色のクッキーを皿に分けている。
「いっただっきまーす!」
目の前には今まで作った、クッキーやらパウンドケーキやらマドレーヌやらを並べている。
次から次へと口に含んでいるのを見るだけで、吐きそうだ。
「おいしい?」
「おいひーのよ」
常にもぐもぐと口を動かしているのを見ていると尊敬する。
「ついてるよ」
ショートケーキを食べたときに頬についた生クリームを掬い、自分の口元へ運ぶ。
「甘い、ね」
「んー」
さして僕の言葉は気にしてないらしい。適当な相槌を返された。
「僕も食べようかな」
そう呟いて、雛苺の後ろに回り込み、雛苺を抱える。
しかし、対して気にもしてないらしい。まだパクパクと口を動かしている。
腹に回していた手をゆっくり胸に動かし、柔らかくまさぐる。
「んっ」
その時、初めて気づいたようにこちらを振り返ったが、何も聞かずに口を塞ぐ。
予想より大きめな胸を触ると、ピクンと反応するのが分かる。
甘い香りにほだされた。言い訳をすればそれだけのこと。
舌を絡ませると甘い味が広がる。
「ひゃっ…」
口を話すと甘い声が聞こえた。
「や、やぁ…そうせ、せき」
このまま服をめくり、素肌を触る。弾力のある肌が掌に吸い付いてくる。
「ひ、ぁあっ…」
下着を外しにかかったところで手を止められた。
「食べれないからやめて」
両頬をぷくりと膨らませた顔が愛らしかったが、これ以上すると怒られそうになったのでやめた。
軽くため息を吐くと、先ほどの定位置に戻った。
「食べ終わってからね?」
聞こえた言葉が信じられなくて雛苺を見つめれば、無邪気な顔でにこりと笑っていた。
終わり
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