「どうしたですか…?」
目を丸くして、玄関に佇む翠星石
当たり前か…
図書館へ勉強しに行っていた妹が息を切らしながら帰ってきて、
切羽詰まった様子で意味不明な事を口走っているのだから
当たり前か…
図書館へ勉強しに行っていた妹が息を切らしながら帰ってきて、
切羽詰まった様子で意味不明な事を口走っているのだから
「…蒼星石?」
こういう事になってるんだけど、どうすればいいか教えて欲しいんだ…と
全て伝えれば、翠星石はきっと力になってくれるだろう
一番信頼できる、優しい姉だから…
だけど助けを求める言葉を遮って口から出た言葉は
一番信頼できる、優しい姉だから…
だけど助けを求める言葉を遮って口から出た言葉は
「何でも…ないよ…」
拒絶を孕んでいた
「どんなリアクションするかなって思ってさ…えへへ」
「…」
「…今日の晩御飯って…何?」
「…」
「…」
「…今日の晩御飯って…何?」
「…」
それは翠星石を思っての事なのか、僕自身のためなのか…
話を切り替えて家に上がろうとした時、翠星石の手が僕を掴んだ
僅かに震えてる、小さな手
その手を振り払う事が出来ず、仕方がないから立ち止まる
話を切り替えて家に上がろうとした時、翠星石の手が僕を掴んだ
僅かに震えてる、小さな手
その手を振り払う事が出来ず、仕方がないから立ち止まる
「最近…ちょっと様子がおかしいですよ…」
そして姉は静かに、そう呟いた
「…おかしい?僕が?」
「そうです…何か嫌な事でもあったのですか…?」
「そうです…何か嫌な事でもあったのですか…?」
気付いてたのなら、何故もっと早く声を掛けてくれなかったの──?
言いかけて、必死に抑える
言いかけて、必死に抑える
「バスケで嫌な事があったですか?それとも勉強の事ですか?」
答えは両方、だよ
「…どうしてそう思うの?」
僕の方こそ、どうして素直に言えないんだろう…
「…あのテストの日から、元気がなくなったです…」
「…ただ疲れてるだけだと思うよ」
「…ただ疲れてるだけだと思うよ」
気付いて欲しいのに、心配して欲しいのに…
なぜ自分から突き放す言い方をしてしまうのか
ようやく翠星石が、僕のSOSに気付いてくれたんじゃないか
なぜ自分から突き放す言い方をしてしまうのか
ようやく翠星石が、僕のSOSに気付いてくれたんじゃないか
「じゃあ…バスケは楽しいですか…」
「え…?」
「え…?」
震えた声は何を意味する?
何で君が泣きそうなの?
それとも、怒ってるの?
何で君が泣きそうなの?
それとも、怒ってるの?
「バスケ?」
「嫌な事があっても、バスケをしてれば忘れられると」
「…」
「厳しい練習のハズなのに、いつも活き活きして帰って来てたです。なのに…最近は少しも楽しそうじゃない」
「嫌な事があっても、バスケをしてれば忘れられると」
「…」
「厳しい練習のハズなのに、いつも活き活きして帰って来てたです。なのに…最近は少しも楽しそうじゃない」
そんな事も言ったっけ
あの時とは違う…いや、急速に変わったんだ
あの時とは違う…いや、急速に変わったんだ
「バスケの事は良くわからないですけど…相談にならいつでも乗ります…だから」
「…関係、ないよ…」
「え…?」
「…関係、ないよ…」
「え…?」
一度口にしてしまえば、もう歯止めが聞かなかった
「バスケや勉強とは関係ないと───」
「違うよ。君には関係ないって言ってるんだ」
「ふ…ぇ…?」
「バスケの事も知らない、ロクに勉強もしない…そんな君には何を話したってわからないだろう!」
「違うよ。君には関係ないって言ってるんだ」
「ふ…ぇ…?」
「バスケの事も知らない、ロクに勉強もしない…そんな君には何を話したってわからないだろう!」
言葉が言葉に勢いをかけ、激しさを増す
翠星石があんなに怯えてるじゃないか
翠星石があんなに怯えてるじゃないか
「のんびり暮らしてた君には──」
バスケの事?勉強の事?
そうじゃない…どちらも突き詰めれば水銀燈先生の事だ
それなら翠星石にだってわかるだろう
そうじゃない…どちらも突き詰めれば水銀燈先生の事だ
それなら翠星石にだってわかるだろう
「努力する者の苦労や悩みがわかるはずない!」
だけどそんな厚意が同情に思えてしまって…
怒鳴り声を聞きつけた祖父母に止められるまで、散々罵倒し続けた
普段から持っていた小さな不満や、水銀燈先生から受けた多大なストレスまで
自分が悪いハズなのに、翠星石に全てをぶつけた
怒鳴り声を聞きつけた祖父母に止められるまで、散々罵倒し続けた
普段から持っていた小さな不満や、水銀燈先生から受けた多大なストレスまで
自分が悪いハズなのに、翠星石に全てをぶつけた
「…ぅ…ぅ…うぅぅっ…」
その場に泣き崩れる弱々しい姉を見て──
我に返った僕は、つられて泣きそうになる
我に返った僕は、つられて泣きそうになる
「…ゴメン…なさい…」
小声で囁いて、そのまま部屋に閉じこもった
それから夏休みまで翠星石とは口を聞かなくなり、
唯一の支えを失った僕は、また流されて敵地の真ん中に立っている
それから夏休みまで翠星石とは口を聞かなくなり、
唯一の支えを失った僕は、また流されて敵地の真ん中に立っている
こんな妹で、ゴメンなさい───