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甘い悪魔の囁き・番外 『愛情の亀裂』

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集
「どうしたですか…?」

目を丸くして、玄関に佇む翠星石
当たり前か…
図書館へ勉強しに行っていた妹が息を切らしながら帰ってきて、
切羽詰まった様子で意味不明な事を口走っているのだから

「…蒼星石?」

こういう事になってるんだけど、どうすればいいか教えて欲しいんだ…と

全て伝えれば、翠星石はきっと力になってくれるだろう
一番信頼できる、優しい姉だから…
だけど助けを求める言葉を遮って口から出た言葉は

「何でも…ないよ…」

拒絶を孕んでいた

「どんなリアクションするかなって思ってさ…えへへ」
「…」
「…今日の晩御飯って…何?」
「…」

それは翠星石を思っての事なのか、僕自身のためなのか…
話を切り替えて家に上がろうとした時、翠星石の手が僕を掴んだ
僅かに震えてる、小さな手
その手を振り払う事が出来ず、仕方がないから立ち止まる

「最近…ちょっと様子がおかしいですよ…」

そして姉は静かに、そう呟いた

「…おかしい?僕が?」
「そうです…何か嫌な事でもあったのですか…?」

気付いてたのなら、何故もっと早く声を掛けてくれなかったの──?
言いかけて、必死に抑える

「バスケで嫌な事があったですか?それとも勉強の事ですか?」

答えは両方、だよ

「…どうしてそう思うの?」

僕の方こそ、どうして素直に言えないんだろう…

「…あのテストの日から、元気がなくなったです…」
「…ただ疲れてるだけだと思うよ」

気付いて欲しいのに、心配して欲しいのに…
なぜ自分から突き放す言い方をしてしまうのか
ようやく翠星石が、僕のSOSに気付いてくれたんじゃないか

「じゃあ…バスケは楽しいですか…」
「え…?」

震えた声は何を意味する?
何で君が泣きそうなの?
それとも、怒ってるの?

「バスケ?」
「嫌な事があっても、バスケをしてれば忘れられると」
「…」
「厳しい練習のハズなのに、いつも活き活きして帰って来てたです。なのに…最近は少しも楽しそうじゃない」

そんな事も言ったっけ
あの時とは違う…いや、急速に変わったんだ

「バスケの事は良くわからないですけど…相談にならいつでも乗ります…だから」
「…関係、ないよ…」
「え…?」

一度口にしてしまえば、もう歯止めが聞かなかった

「バスケや勉強とは関係ないと───」
「違うよ。君には関係ないって言ってるんだ」
「ふ…ぇ…?」
「バスケの事も知らない、ロクに勉強もしない…そんな君には何を話したってわからないだろう!」

言葉が言葉に勢いをかけ、激しさを増す
翠星石があんなに怯えてるじゃないか

「のんびり暮らしてた君には──」

バスケの事?勉強の事?
そうじゃない…どちらも突き詰めれば水銀燈先生の事だ
それなら翠星石にだってわかるだろう

「努力する者の苦労や悩みがわかるはずない!」

だけどそんな厚意が同情に思えてしまって…
怒鳴り声を聞きつけた祖父母に止められるまで、散々罵倒し続けた
普段から持っていた小さな不満や、水銀燈先生から受けた多大なストレスまで
自分が悪いハズなのに、翠星石に全てをぶつけた

「…ぅ…ぅ…うぅぅっ…」

その場に泣き崩れる弱々しい姉を見て──
我に返った僕は、つられて泣きそうになる

「…ゴメン…なさい…」

小声で囁いて、そのまま部屋に閉じこもった
それから夏休みまで翠星石とは口を聞かなくなり、
唯一の支えを失った僕は、また流されて敵地の真ん中に立っている

こんな妹で、ゴメンなさい───



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