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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

水飴と綿飴

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rozen-yuri

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 夕暮れに染まるめぐの病室に、開け放たれた窓から小さなメロディーが流れてくる。
 その音に水銀燈が気付き、窓から顔を出してその音がしてくる方を見た。
 その方を見ると、近くの広場に人が集まっている。音はそこから流れてくるようだ。
「ねえめぐ、あれは何?」
「あれ? 夏祭りよ。もうそんな季節になったのね」
「夏祭り?」
「ええ。毎年あの広場でやってるのよ。規模は小さいけどね」
「ふぅん…」
 めぐの説明を聞き、水銀燈は窓の外を再び見る。
 その後姿を見て、めぐは少し微笑んだ。
「興味あるなら行ってみない?」
「え? べ、別に興味なんか無いわぁ。下らなぁい」
「そう? でも顔はそう言ってないみたいだけど?」
「そ、そんな事無いわよぉ。おばかさぁん」
 そうは言ってもめぐの言う通り興味があった。
 だがそれを素直に言えないところが水銀燈の辛いところだ。

「じゃあ仕方ないわね。私一人で行って来ようかな」
「えっ?」
 いきなりそんな事を言い出しためぐに水銀燈は思わず間抜けな声を漏らした。
 めぐが一人で行って大丈夫なのだろうかと心配になる。
「ちょっとめぐ、一人で行って大丈夫なのぉ?」
「少しの時間なら大丈夫よ。ここに入院してる人も何人か行ってるもの」
 話しながらめぐは服を着替えていく。本気のようだ。
「ああでも、途中で発作とか起きたらどうしよう。誰か助けてくれるかなぁ?」
 水銀燈の方をチラチラ見ながらワザとらしく聞こえるように言う。
 水銀燈はそれを聞こえないフリをして窓の方を見ている。
 その様子を面白がりながらめぐは更に続けた。
「それに、男の人も来るわね。ナンパされたら困っちゃうな」
「…!」
 最後の台詞を聞いて、水銀燈の体がガタガタと震えだした。
 そして、めぐの方を振り向いた。
「し、仕方ないわねぇ。一人じゃ心配だから、ついて行ってあげるわぁ。ありがたく思いなさぁい」
 素直になれない水銀燈の発言に、めぐは思わず笑ってしまった。

 それから病院へ出て、祭り会場である近くの広場へやってきた。
「人が多いわねぇ。本当に暇人ばっかりでばっかみたぁい」
「だから面白いのよ。時間も決められてるからその間に楽しみましょう」
 めぐが先に歩き出し、水銀燈もついていく。
 数多くある屋台が珍しいのか、水銀燈は辺りをキョロキョロと見渡していた。
 と、水銀燈の視線がある一点を捉えた。
「あ、くんくん…」
 目が止まったのは、くんくん探偵のお面が売ってある屋台だった。
 それから目が離せずに、水銀燈の足が止まり、それにめぐも気付いた。
「何か欲しいのあった?」
「…べ、別にぃ」
 そう言う事は何か欲しい物があった証拠。
 めぐは隣の屋台に掛けられているくんくん探偵のお面を見て、すぐに分かった。
 その屋台のおじさんに声を掛ける。
「めぐ?」
「すいません、あのくんくん探偵のお面下さい」
「いらっしゃい、500円だよ」
「はい、ありがとう」
 めぐはそのお面を買うと水銀燈の顔に被せた。いきなり被せられた水銀燈は少し怒り気味にそれを外す。
「何するのよぉ」
「欲しかったんでしょ? 素直に言えば良いのに」
「う……」
 見透かされた事が恥ずかしく、顔が熱くなっていくのを感じる。
 だが取り外したお面を見ると嬉しくなってきた。
「…ありがとう、めぐ」
 小声でそう呟き、お面を後頭部に被せてめぐとお祭り巡りを再開した。

 それから射的や金魚すくいなど、お祭りの定番を楽しんでいった。
 そうして腕時計を見てみると、既に決まりの時間までもうあまり無い。
 ちなみに今、水銀燈はお面とすくった金魚とくんくん探偵の袋に包まれた綿飴を持っている。
 この姿だけでどれだけ祭りを楽しんだかがすぐに分かるぐらいだ。
「いけない、もうそろそろ戻らないと…」
「もうそんな時間?」
「うん。ちょっと残念だけど、帰ろうか」
「わかったわぁ」
 時間に遅れては大変と、二人は祭り会場の出口へ向かう。
 その途中、一つの屋台が水銀燈の目に付いた。
「めぐ、あれは何?」
「あれ? 水飴よ。珍しいわね」
「水飴?」
「ええ。興味ある?」
「え…ま、まあ少し」
「じゃああれ買って最後にしよう」
 めぐはちょっと待っててと水銀燈を待たせて、先に水飴の付いた割り箸を買ってきた。
「はい。帰りながら食べようか」
 綿飴と交換で買ってきた水飴を渡して、祭り会場を後にした。
 後ろから流れてくる祭りのメロディが少し名残惜しく感じる。

「…ねえ、めぐ。これどうやって食べるのぉ?」
 水銀燈は渡された水飴を眺めながらどう食べるのか悩んでいた。
 割り箸の先に透明の水飴が纏まって付けられているのだが、このまま食べてよい物か水銀燈には分からない。
「そうか、水銀燈は初めてだったわね。ちょっと貸して」
 めぐは水飴の付いた割り箸を割り、それで先端の水飴をこね始めた。
 その様子を、珍しそうに水銀燈は見ている。
「白くなるまでこねると美味しいのよ。待っててね」
 歩きながら水飴をこねていくめぐ。
 しばらくこねていくと、こね終わったのかめぐの手が止まった。
「やっと白くなったわ」
 街頭に照らされたそれを見ると、確かに無色だったのが白く染まっている。
「ありがとうめぐ」
「はい」
 めぐが手を伸ばして水飴を渡そうと手を伸ばしてきて水銀燈も手を伸ばす。
 が。
「やっぱや~めた」
「ええっ?」
 めぐは意地が悪い笑顔を浮かべて手を引っ込め、水銀燈の手は空しく空を切った。
「ちょっと、意地が悪いわよ」
「…ふふ。じゃあ、『愛してる』って言ってくれたらあげても良いわよ」
「なっ!? 何言い出すのよ、ばっかじゃなぁい!?」
 めぐの台詞を聞いて水銀燈の顔が一気に赤くなった。
 そして不貞腐れてそのまま先を歩き出す。
(ちょっと調子に乗りすぎたかな)
 その後姿を見て、やれやれといった様子でそう思った。

 ドーン、ドーン
 その時、空から轟音が聞こえてきて辺りが明るくなった。
 空を見てみると、打ち上げ花火が空に広がっている。
「花火だわぁ」
「今から三十分だけ花火が上がるのよ。綺麗ねえ」
 足を止めてその花火に見入る二人。と、水銀燈はめぐの横顔をみる。
 花火に照らされたその顔は、普段病室で見るときよりも綺麗に思えた。
 同時に、水銀燈の胸も強く脈打ったように感じた。
「…めぐ…その…」
 花火の音で聞こえないような声で、呟くように言う。
「…あ、愛してるわぁ…」
 別に水飴が欲しいから、という訳ではない。ただ言いたかっただけだ。
 めぐの横顔を見ていたら、不思議とそう思っていた。

「私も愛してる」
「えっ?」
 まさか返事が返ってくるとは思っておらず、水銀燈は一瞬凍りついた。
「愛してるわよ水銀燈」
「あ…聞こえてたの?」
「ええ。しっかりと」
 嬉しそうな笑顔でめぐにそう言われ、沸騰寸前にまで顔が赤くなる。
「な、何言い出すのよぉ!! 私はただ愛してるって言ったら水飴くれるって言うから言っただけで、本気で言ったわけじゃないんだからぁ!」
 恥ずかしさを誤魔化そうと、思わず出鱈目を口から出す。
 そのパニクっている水銀燈を、めぐは可笑しそうに見つめていた。
「そうよぉ、言ったんだから水飴よこしなさいよぉこのおばかさぁん!」
「クスクス、はい」
「何がおかしいの!」
「何にも?」
「~~~!」
 渡された水飴を乱暴に受け取り、そのまま口に放り込む。
「どう?」
「わ、悪くないわぁ。それより、さっきの本気にするんじゃないわよぉ」
「はいはい」
 それだけかわすと水銀燈は早足で先に歩き出してその後ろをめぐがついて行く。

(…まさか聞かれてたなんて…不覚だったわぁ。…でもめぐも愛してるって…あわわわ…)
 嬉しさ半分恥ずかしさ半分で混乱する水銀燈。

 結局、次の日はまともにめぐと目をあわせられなかったとさ。



モデル曲:水飴と綿飴(フジファブリック)

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