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『虚無のルイズ』


(キャラ) ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、ウェイブ




ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはモフモフした桃色の髪を揺らしながら、渋谷を再現した夜の街を彷徨っていた。
まず目についたのは、建造物の高さだった。
どれもが屋敷や城や神殿のように巨大で、彼女にとっては高層ビルという建造物は未知の存在。
聞いたことがあった。ルイズの使い魔である平賀才人の国「日本」。
彼が話す世界は、ルイズにとっては信じられないもので、魔法が存在せず、それでいて様々な技術と文明が進んでいるという。
才人が嘘をついているとは思わない。信じるともルイズは言ったが、実際に目の当たりにすると信じられない気持ちが勝る。
だが決定的だったのは、ルイズの遥か上空で輝いている月だった。
ルイズの世界には二つあったそれが、一つしかない。
これが、才人の世界に意図せず来てしまったという決定的な証明だった。

(サイトもこんな気持ちだったのかしら……)

森口という才人と同じ人種のような女から、殺し合いを命じられたからというのも当然あるが。
全く見覚えのない異世界に飛ばされて、本当に帰る手段がないというのは、ここまで心細いとは思わなかった。

(……サイト)

想い人の名を心の中で呼び、顔を思い浮かべながらルイズは肩に担いでいたデイパックの紐を強く握りしめた。

もうこの世にはいない。平賀才人を想いながら。

サモン・サーヴァントを行い、そしてゲートが完成した直後だった。
ルイズが命の授業とやらに巻き込まれたのは。
とんだ皮肉だと思った。
使い魔を七万の大軍に突っ込ませ、死なせた魔法使い(メイジ)に命の講釈を垂れるだなんて。
ゲートの完成は、使用した魔法使いに使い魔が存在していないことを意味する。
よって、ルイズは才人の死を立証してしまったのだ。他ならぬ主自らの手で。

泣き腫らした瞳からは涙すら枯渇したようで、覇気のない瞳はぼんやりと目の前の景色を映している。
死因百パーセントの予期せぬ死など、最早どうでも良かった。
歩くのに疲れたルイズは、地べたに腰を下ろしてから背負っていたデイバックの中身を雑にばらまいた。
食料や水などが散らばって、何かの道具らしく物が転がるがどうでもいい。
すると、転がる道具の中でルイズは一つだけ目に付いた物を拾い上げた。
四角い板で、真っ黒なガラスのような画面が才人の持っていたノートパソコンに似ていた気がした。
それだけ拾い上げて、ルイズは適当にスマホを弄った。
画面が光って、奇麗だと思った瞬間に瞳に涙が溢れ出して、視界は溺れたように歪んでゆく。
初めてノートパソコンを見せてもらった時の事を思い出して、そして傍にいた使い魔の事を連想して。



『勝利報酬:最後の一人(優勝者)には、「元の世界への帰還」および「あらゆる願いを叶える権利」が与えられる』



ルイズは、この時初めて悲しみ以外の感情を抱いた。
凍ったように固まって、ただただ何度も同じ文を読み返す。
バトルロワイアルのルールがまとめられたアプリの中にあった一文をひたすらに。


「サイトが……生き返る……?」


転がっていた道具の中に見覚えのある杖があった。ルイズが魔法を使うのに使用している杖だ。
手を伸ばして拾い上げる。
いつもは、羽のように素早く振り回していた筈の杖が鉄塊のように重く感じた。
ずっしりと手に圧し掛かる荷重を感じながら、ルイズはぶつぶつと同じ言葉を繰り返す。

「サイト……」

次、誰かに会ったら。
魔法を使って攻撃しよう。

優勝すれば、どんな願いも叶うというのなら。

死んだサイトを、蘇らせることだってできるのかもしれない。

カツカツと、深夜の渋谷の街中に新たな足音が響いてきた。
ルイズは杖をぎゅうっと握り締め、小声で詠唱を始める。
主を守るガンダールヴもいない、虚無の担い手が一人で戦えるはずもないというのに。
そんな簡単な事を考える余裕はルイズにはなかった。
呪文を唱える前に、反撃されて殺されるかもしれないのに、ルイズは詠唱を止めない。
勝算も勝機も何もかも度外視で、半ば自殺染みたルイズの特攻。

「あんた、クロメって女の子を見なかったか!!?」

それは、磯臭い男の慌てふためいた大声で中断されるのだった。





ナイトレイドの一員タツミと共闘し、シコウテイザーを押し返した直後だった。
帝国にも反乱軍にも属さず、敵前逃亡を選択したウェイブは東洋人らしき女に殺し合いを命じられ、見知らぬ街へと連れ去られたのは。

(民間人は避難させられたから、ナイトレイドとあの巨大帝具の戦いに巻き込まれる人たちはもういないはず……)

支給品を確認しながら、ウェイブは森口に連れ去られる前の記憶を振り返る。
タツミとシコウテイザーの戦いの結末は分からないが、被害だけは最小限に留められているはずだ。
それだけは安堵しながらも、もう一つ気がかりなのは恋人であるクロメの存在だった。
反乱軍との戦争中とはいえ、帝国の追手がクロメを始末しに来ないとは限らない。
しかも、ウェイブは一度帝国に戻っている以上、生存がバレているかもしれない。
一刻も早く、クロメの元に帰らなくてはならない。
それどころか、こんな殺し合いにクロメも巻き込まれている事だってありえる。
グランシャリオが支給されているのを確認し、腰に差したウェイブは走り出す。
先ずは誰かに会う。クロメが参加しているか情報を集めて、仮に殺し合いに乗るような人物がいるのなら倒す。
すると、ウェイブは杖を持ったピンク髪の少女を発見した。




磯臭い男を、魔法で爆破して……そして……。
ルイズは頭の中で組み立てたプランを、終ぞ実行できずに杖を下げてしまった。


ウェイブと名乗った男は、必死でクロメという女の子の事を聞いてくる。
普段なら平民のくせに、貴族への言葉遣いがなってないわと言い返していたかもしれない。
それぐらい、無礼で失礼な態度だった。
一方的に自分の事だけ語って捲し立てて、それで情報だけ引き出そうとするなんて。


(……そんなに、好きなんだ……)


だけど、今のルイズにはウェイブという男の気持ちが分かってしまった。
分かってしまったから、もう杖をあげることもできない。

「ごめんなさい。……まだ、誰とも会っていないの」

クロメという女の子の事を知らない事すら、申し訳なく思えた。


「……そっか、悪い。俺、冷静じゃなかったな。あんたも訳の分からねえ殺し合いに巻き込まれちまってるってのに、自分の事ばかり」


ようやく落ち着いたウェイブが、ルイズを気遣うような言葉を言ってくる。


「ウェイブって言ったっけ?」
「ん?ああ……そうだけど……」
「……アンタは、私みたいに亡くしちゃだめよ」
「な、なにを……?」
「良いから……会えるといいわね」
「は?」


ルイズは寂しそうに微笑んでから、踵を返してウェイブから離れていく。
後ろからウェイブが声を掛けても振り返ることなく、ゼンマイの切れかけた人形のようなおぼつかない足取りで。


(奪えない……わたしには……)


この男が、きっとクロメにとっての才人なのだとしたら。
二人がどんな恋愛をしているかなんて、ルイズには分からなかったけれど。
こんなに我を忘れる程に思われているのなら、それは掛け替えのない存在には違いなくて。
きっとそんな人たちが、ここにはごまんといるに違いなかった。


「これで、いいのよね。サイト?」


返事が返ってくることのないのを知りながら、ルイズは二度と話すことのできない自らの使い魔に語り掛けた。
杖だけを片手に、ルイズはまた当てもなくアスファルトのジャングルを彷徨いだした。

願わくば、いっそ誰かが楽にしてくれるなら。そんな風に思いながら。




【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態]:健康、才人が死んだ悲しみ
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]:……
※参戦時期は原作八巻でサモン・サーヴァントを試した直後。



「なんだよ、あの娘……」

何処かへ去っていこうとするルイズの背中を見て、ウェイブは唖然としていた。
まるで幽霊と話しているような気分だった。
精気が全くなく、そこにいるのに実体すら感じないような気持ちにさせる。

「……」

追いかけるかどうか、一瞬ウェイブは迷った。
クロメが殺し合いに参加していないのであれば、まだ余裕はありルイズを追えるが。
もしも、殺し合いに参加していればそうはいかない。
剣技は達人の域にあるクロメだが、薬の影響で肉体は蝕まれ帝具も今はない。
こんな状況下だ。殺し合いに積極的な参加者は少なからずいる筈であり、今のクロメが後れを取らない保証はどこにもない。

「クロメ……」

あらゆるものをかなぐり捨てた。
恩人への恩義も、仲間から受け継いだ志も、上司からの信頼も。
全てを犠牲にして、好きになった女を守り続けると誓った。


『ウェイブはウェイブのままでいて』


「……ああ、放っておけねえよな」


もしも、この命の授業にいないのなら、少し長くなってしまうけれども、絶対に生きて生還する。
もしも、この命の授業に巻き込まれているのなら、見つけ出し守り抜く。

だが、その前に手を差し伸べられる人たちがいるのなら、差し伸べたい。


「悪い、クロメ。少しだけ待っててくれ。必ずお前の元に帰るから……!!」


好きになった女が、好きになってくれた自分のままでいるために。
ウェイブは去っていくルイズの背中を追いかける。



『これで、いいのよね。サイト?』



去り行くルイズの唇から零れ落ちた、その名。
本来なら、彼女の傍らで彼女を守るべきだった男の名、だとウェイブは思う。


──しばらくは俺が、あんたの代わりになってやる。
   だから、早くこの娘を守りに来やがれ。


会ったことも、話したこともない。ウェイブは届くはずのない相手に、心の中でそう告げた。


【ウェイブ@アカメが斬る!】
[状態]:健康
[装備]:修羅化身グランシャリオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:クロメも民も守る。
1:ルイズを追いかける。
※参戦時期は原作十五巻タツミと共闘した直後。






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最終更新:2026年07月22日 21:08