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『KICK BACK』


(キャラ) 豪炎寺修也、ヴィンスモーク・サンジ、ミニーニャ・マカロン






 なんだ、このバケモノは。
 無残に折れた左腕の痛みに悶えながら、豪炎寺修也は仰向けで敵を見やる。

 もちろん、抵抗はした。
 炎のエースストライカーに相応しいシュート力ならば、対抗できると思った。
 サッカーコートの中を数え切れないほど駆け回った自慢の足ならば、逃げ切れると思った。

「ひどいですよぅ、そんな目で見るなんてぇ」

 けれど、その全てが机上の空論。
 こちらの攻撃はまるで通じず、圧倒的な力で蹂躙されるしかなかったなんて、豪炎寺の身体を見れば説明するまでもない。

「わたし、これでも乙女なんですから」

 とん、と女が着地する。
 おっとりと間延びした声色とは裏腹に、女の周囲は爆撃が起きたかのように瓦礫の山で満ちている。
 その一角を踏み潰し、悠々と歩み寄る姿を、豪炎寺はただ眺めることしか出来なかった。


「あらぁ? 鼓膜、破れちゃいましたかぁ?」




        星十字騎士団

        ザ・パワー
           “P”

      ミニーニャ・マカロン



「バケ、モノめ…………」

 喉元から絞り出したのは、そんな言葉。
 片腕で地面をついて、懸命に立ち上がろうとはしているが、実力で敵わないことは散々に理解させられた。
 だから豪炎寺はこうやって、負け惜しみのように声を上げたのだ。

「バケモノじゃないですよぅ><」

 内心で傷ついているのか否か、表情には一切の変化が見られない。

「あなたより強いだけですぅ」

 かつて、雷門の校舎を破壊したジェミニストームに抱いた絶望感のようなものを彷彿とさせる。
 あの時も圧倒的な実力差に敵わず、似たような台詞を吐くしかなかった。

 違いは、殺意の有無。
 ジェミニストームはあくまで、サッカーの勝敗によっての征服を目的としていた。

 けれどこの女は違う。
 なんの為に鍛え上げられたのかも分からない身体能力を、ただ破壊のために振るっている。
 思惑も感情も、まったくの理解の外にある彼女に対して、もはや豪炎寺は恐怖よりも諦めを抱いていた。


「それでは、失礼しますねぇ」

 お喋りをしている間に、死の距離は間近に。
 一見華奢に見える右腕を振り上げて、豪炎寺の頭に狙いを定める。

 あれを喰らえば、終わる。
 人間の頭蓋など原型も留めない。
 必死に身体を捻って回避しようとするが、間に合わない。


 崩壊の音が響く。
 人間の打撃。それを何倍にも圧縮したような轟音。


「見てたぜ、ツンツン頭」


 けれど、そこに肉が潰れる音はない。
 予想外の横槍を前に、ミニーニャの目が僅かに見開かれる。


「こんなか弱いレディをバケモノ扱いなんて、紳士の振る舞いじゃねえな」


 ニヒルな声が、豪炎寺の上から聞こえる。
 男がいた。金髪に隠れて、表情は窺えない。
 一体いつの間に、なんてつまらない疑問は彼方へと消える。
 地盤をひっくり返し、コンクリートを砂塵に変える剛力を、ただの脚一本で受け止めている事実よりも驚くことなどないのだから。

「誰ですかぁ~~?」

 ミニーニャは咄嗟に後方へ飛び退く。
 視界を広く確保したことで、突如出現した男の全体像を視認する。

「自己紹介が遅れたね、お嬢さん。
 俺はサンジ。気軽にサンジくんって呼んでおくれ」

 ゆっくりと片脚を下ろし、煙草の煙をふかしながら丁寧に一礼をする優男。
 ワインレッドのスーツに身を包む乱入者へ、ミニーニャと豪炎寺はそれぞれ違う反応を見せた。

「あんた、は……」
「ガキは黙って寝てろ」

 上体を起こそうとする豪炎寺を、サンジは片手で制する。
 相変わらず豪炎寺からはサンジの顔色は窺えないが、状況からして助けにきたと考えていいだろう。
 ミニーニャのバケモノじみた膂力を警告しようとしたが、全身の痛みが言葉を詰まらせる。

 対して、ミニーニャは無言。
 目立った動揺を見せてはいないが、最大限の警戒を滲ませて、冷静にサンジの出方を伺っていた。


「どうしたんだいお嬢さん、次は君が名乗る番だぜ。
 それとも、俺があまりにいい男なんで見とれちゃったかな?」

 ────霊圧は感じられない。

 そんなことあるだろうか?
 聖文字(シュリフト)として与えられた自慢の怪力を軽々と受け止めておいて、霊圧のない常人であるはずがない。
 死神、虚、完現術者(フルブリンガー)、滅却師(クインシー)。
 ミニーニャの知る力の持ち主は、多かれ少なかれ霊圧を持っているはずだった。

「サンジくん、もう一度聞きますねぇ」
「なんだい?」

 だからこそ、改めて問う。

「あなた、何者ですかぁ?」

 ──こいつは、なんだ。
 ──自分は今、なにと対峙している。

 サンジは緩慢な動作で煙草を吸い、苦い煙と一緒に深く息を吐きつくす。
 宙をうねる紫煙に目を取られることもなく、ミニーニャは無言で答えを促した。

「ただの不良さ」

 根元まで焼け落ちた吸殻を放り捨て、再び取り出した一本に火をつけながら。

「“授業”もまともに受けられないような、ね」

 自称不良の男はそう言い切る。

「真面目に答える気はないんですねぇ」

 表に出さずとも、ミニーニャは相応に苛立っている。
 そもそも彼女も突然この殺し合いに呼ばれた被害者なのだから。
 不可解な事象に疲弊していたところで、ルール上仕方がないから豪炎寺を襲っていた際に、サンジという未知なる戦力に衝突したのだ。

「なら、死んでくださいよぅ」

 募らせた感情を拳に乗せる。
 今度はサンジの胴を正面に捉え、腰を入れた右ストレート。
 骨ごと胴体を貫通させるつもりで放ったそれは、金属同士がかち合ったような衝突音を奏でた。

 ──また防がれた。
 いや、防がれるのは問題じゃない。
 生身の人間を殴ったにしては、手応えが硬すぎる。
 まるで鋼鉄が静血装(ブルート・ヴェーネ)を纏っているかのような、そんなイメージが頭をよぎった。

「熱烈な歓迎ありがとう、お嬢さん。
 けれどごめんよ。キミを蹴るのは、俺のポリシーが許さない」

 ジャブ、ジャブ、ストレート。
 ジャブ、ストレート、ボディブロー。
 得意のボクシングスタイルは、己の拳を痛めるだけで成果を上げられない。
 一方的に攻撃をしかけ、傷一つついていないはずなのに、逆に追い詰められているような焦燥に駆られる。

「そういうわけだから──」

 ちらりとサンジの目線が豪炎寺に向かう。
 それを隙と捉えたミニーニャは鋭いアッパーカットを放つが、無意味だった。
 残像の顎を撃ち抜いたところで、ダメージを与えられるはずないのだから。

「ここは逃げさせてもらうよ」

 一瞬も目を離した覚えなどないのに、サンジの姿は完全に視界から外れていた。
 左を見れば、すでに豪炎寺を両腕で抱えて離脱の体勢を取っている。
 ミニーニャとサンジが地面を蹴るのは、全くの同時だった。






 ────空中歩行(スカイウォーク)────
 ────飛廉脚(ひれんきゃく)────





 ワインレッドの背中が遠のいてゆく。
 追い付けないな、なんていうのはやる前から分かっていた。
 滅却師の中でも自慢の脚力を合わせた飛廉脚は速い方であると自負しているのに、子供一人背負った状態の人間に追い付けない。
 落ち込むのも束の間。勝ち目のない形だけの鬼ごっこを10秒で切り上げて、手頃な場所に着地する。

「髪、乱れちゃったなぁ」

 ボリュームのある桃色の髪を手櫛で整えて、最後にポンポンと仕上げる。
 もうとっくに夜空の星とも見分けがつかなくなったサンジたちをぼうっと眺めては、自身の拳に視線を落とした。


「……いたぁ~~い><」



【ミニーニャ・マカロン@BLEACH】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:死にたくないから殺しますぅ~><
1:生き残れるならなんでもいい。
2:サンジのような未知なる強者に注意。





 夜空をこんなに近くに感じるのは初めてだった。
 地上から眺めるだけでしかなかった星の煌めきが、今では手が届きそうにも思える。
 きっと飛行機から壁を取り払ったらこんな感じなのだろう、なんて緊張感のない感想が湧き上がった。

「ようツンツン頭、空の旅はどうだい。
 俺の両腕だ、本当ならレディの特権だぜ?」

 いわゆるお姫様抱っこをされながら、豪炎寺はそんな軽口を聞き流す。
 本当なら気の利いた台詞を返してやりたいところだったが、単純に余裕がなかった。

「ありがとう、……ございます」
「返事ができんなら大丈夫そうだな」

 それでもせめて感謝だけは告げようとして、風切り音に負けないように絞り出した。
 相も変わらずサンジは煙草を咥えたまま、空中を蹴る勢いを落としてゆく。

「お前、名前は?」
「豪炎寺、修也です」
「へぇ、変わった名前だな。ま、いいや」

 どれほど距離を稼いだだろうか。
 街並みはすでに、ミニーニャと小競り合いをした場所とは打って変わっていた。
 けれどサンジは中々地上へ降りようとしない。
 完全に安全を確保できるまでは空中にいるつもりなのだろう。
 言葉の外で、彼の思慮深さを豪炎寺は思い知らされた。

「豪炎寺、お前足を大事にしてんのか」
「え?」
「筋肉の付き方とか見りゃわかる。
 それに、あの女の子と戦ってた時だって足を守ってたんだろ。
 それで腕折ってちゃ世話ねえけどな」

 そんな彼だからこそ、見抜かれていた。
 豪炎寺は無意識のうちに、両脚を庇った戦い方をしていたのだろう。
 言われて始めて、比較的上半身に擦り傷が出来ていることに気がついた。

 いつ命を落としてもおかしくない殺し合いの真っ只中なのに、また試合に出られることを夢見ていたのだろうか。
 円堂のことを言えないな、と自分の悠長さに思わず呆れる。

「腕も足も、命の次に大事なもんだ。
 どっちも易々と切り捨てていいもんじゃねえ」

 そんな豪炎寺とは裏腹に、サンジは低い声で告げる。
 まるで誰かを思い出しているような口ぶりに、思わず押し黙るしかない。
 少なくとも、容易に立ち入っていい領域の話ではないのだろうと確信した。
 腕の中から覗かせたサンジの顔立ちには、決して拭えぬ影が滲んでいたから。

「まずはその腕、治せるやつを探すぞ」
「……はい」

 もう少し真面目に医学の勉強をしておくんだったな、なんて今更のことを思う。
 けれど同時に、そんな後悔は自分のサッカー人生や円堂たちを否定することと同じなのだと理解する。

 この足を守ったのには理由があるのだから。
 その理由を振り返る気には、どうしてもなれなかった。




【ヴィンスモーク・サンジ@ONEPIECE】
[状態]:健康
[装備]:煙草(ラッキーストライク)@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:このクソ悪趣味な殺し合いをぶっ潰す。
1:豪炎寺を安全な場所へ運ぶ。
2:助けを待つ人を(レディ優先で)保護する。

※ワノ国終了時点からの参戦です。

【豪炎寺修也@イナズマイレブン】
[状態]:左腕骨折、全身に擦り傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:森口を倒し、殺し合いを終わらせる。
1:ひとまずサンジについていく。
2:出来れば人を傷つけたくはないが、危険人物相手なら……。

※FFI優勝後からの参戦です。








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最終更新:2026年07月22日 20:34