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『仮初塗れの日常。だけど私がいて、貴方がいる。それだけで』


(キャラ) ヨル・フォージャー、ロイド・フォージャー、千代田桃




ロイドさん。ごめんなさい。
私はずっと、貴方に嘘をついていました。
私の前職はマッサージ師じゃないんです。


私の今も続くお仕事は、ガーデンで、いばら姫と言う名前で……
あぁ、すみません、これじゃあ何の話か分からないですよね。
そうですね……本当の私は、一言で言うなら─────



─────殺し屋だったんです。



だから、ごめんなさい。
申し訳ないですが、私とあなたの契約はここまでです。
妻役は、他の方を探してください。


もし、貴方が生きてアーニャさんともう一度会えたなら、どうかお元気で。
ユーリには申し訳ないけれど、謝っていてもらえると嬉しいです。
…僅かな間でしたが、貴方と、アーニャさんの隣で。妻として、母として一緒の時を過ごせたことは。
私にとって、何と引き換えにしても惜しくない……そんな宝物でした。


だから。


もう逢う事が無いよう祈っています。
…さようなら、ロイドさん。





「命の授業何て……許せません……!」


見慣れない街で目を覚ましてから。
私、ヨル・フォージャーがまず憶えたのは憤りでした。
東洋の方の様でしたが突然人を拉致した上で、爆弾付きの首輪を嵌めて。
致死率100%の予期せぬ死がどうとか言っていましたが……とにかく許せません。

だって、身体の動かない私の前の座席に座らされていたのは……
私の(契約上の)夫で、アーニャさんのお父さんの、ロイドさんでした。
目だけを何とか動かして、アーニャさんまで連れてこられていないか探しましたが…
アーニャさんはいない様子でした。とは言え、ロイドさんまで巻き込んだのは絶対に許せません。

万死に値します。売国糞野郎にも劣るド外道です。お掃除しなくちゃ……
いえそれよりも。もし、ロイドさんに何かあったら。
ロイドさんは何でもできて、とても頭が良いですから、そんな事はありえないと思いますが。
けれど仮の話として、もしロイドさんに何かあったらあの森口という方は何も思わないのでしょうか。
私より少し年嵩に見えましたが、お子さんとかいらっしゃらないのでしょうか?


「急いで引きちぎったら、爆発する前に放り投げられないでしょうか………」


私達の命を握る首輪を撫でながら、私は考えます。
私だけであれば可能かもしれませんが、ロイドさんは無理でしょう。
何とか首輪を外す方法を見つけなければなりません。
……不思議ですね。こんな時でもロイドさんならもしかしたら……と思ってしまっている自分がいます。


「とにかく、ロイドさんを見つけないと」


そう思って、ロイドさんを探そうとした所。
森口と言う方から渡された…スマートフォン?という小さな電話から、音が鳴りました。
わたわたと操作方法が分からず慌てて、危うく地面に叩き付けそうになった所で音が止み。
何事かと恐る恐る画面を見てみると、そこには。


「え…………?」


ぴかぴかと光る画面に映っていたのは。
いばら姫への依頼という文言と、この命の授業の放棄をした参加者を掃除する事という依頼と。
スマートフォンの画面の裏側に貼り付けられていた、二枚の写真。
一枚ひらりと落ちたそれを、拾い上げて。


「……………!」


裏返しで落ちたそれを拾い上げた瞬間、とても………とても、嫌な予感がしました。
喉がとても渇いて、それなのにとても寒々しい感覚。
見たくないのに、見なくちゃいけないと。そう思わされる。裏側に依頼報酬と書かれたその写真を。
私は、表に向けて。




「アーニャ、さん…………?」


先ほどまで私とロイドさんがいた黒板のある部屋。
そこに座らされているアーニャさん。俯いて、表情は見えません。
そして、アーニャさんの座っている席の前の机。そこに置かれた。

4~5歳ほどの、子供の指。



「……………!!!」



怒りで、頭がどうにかなりそうで。
叫びだしたくなる衝動を堪えながら、考える。

これはニセモノ?
             私が断れば、アーニャさんは?


そんなはずはない。

             殺したって相手が言う事を守ってくれるとは。   

                                  でも、今断ればアーニャさんがもっと酷い目に。

殺されてしまうかも。   アーニャさんが、死んでしまう?



大丈夫。
       そんなこと。     多分   きっとおきない。


     今断って、首輪を外して。アーニャさんを助けるのに間に合う?



────間に合わない。


大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。


       きっと。    
            多分。
                   恐らくですけど。


  ここで反抗して、言う事を聞かなくたって。




「…………多分、きっと、恐らく」



そんな何の根拠もない言葉に。
私は、アーニャさんの命を預けるのですか?
確かに、言う事を聞いたってあの森口と言う人が約束を守ってくれるかは分かりませんが。
それでも、言う事を聞かなければ"今”アーニャさんが死んでしまうかもしれないくらい酷い目に遭わされる。
それだけは確かで。だから、私は。


「ロイドさん」


あの頭のいいロイドさんなら、何か別の方法が思いついたのかもしれませんが。
生憎私は、殺人(コレ)しか能のない女で。殺人(コレ)しか知らない人生で。
だから、私は。








考えろ、黄昏。
一体この状況は何であるのか。
東国(オスタニア)に西国の秘密組織WISEのメンバーである自分の正体が露見したのか?
まんまと連れ去られ、拷問の一環としてこの狂気の宴に参加させられているのか?
断言してもいい、答えは否だろう。


「ありがとう、千代田桃さん。君のお陰でこのアプリの使い方が分かったよ」
「いえ、別に。私も知っている事を教えただけですし」


まず我々に殺し合えと命じてきた森口という女はどう見ても東洋人だ。
堀の浅い顔立ちからしても、体格からしても間違いないだろう。
それに突然放り出されたこの場所の街並み……地理的にもこんな場所は潜入前の事前調査でも。
潜入後のフィールドワークでも情報が入って来る事はなかった。間違いない。


「でも……お若く見えますけど、お仕事でスマホとか使われないんですか?」
「仕事柄守秘義務と言うやつでね。普段はこういった通信機器は預けて仕事をしていますから。そのお陰で疎くて……いやお恥ずかしい」
「精神科医のお仕事って、デリケートなお仕事みたいですもんね」


恐らく東国の手によるものではない拉致と言う線は、千代田桃という少女との邂逅を経て確信に変わった。
この少女もまた東洋人(本当か?桃色の髪とかしているけど)であり、さりげなく会話中に何度もオスタニアの名前を出したが特に反応がない。
思い切って風土料理などを絡めオスタニアについて知っているか聞いてみたものの、彼女は首をかしげるばかりだった。これは虚偽や演技ではないだろう。
そして今俺の手の中にある通信機器……スマートフォン。これはどう考えても俺の知る通信機器の常識を超ている。
世界の諜報機関の最先端であるWISEですら、こんなものを扱っている人間は見た事がない。持ち帰れば世界の常識を塗り替えてもおかしくない代物だ。


「えぇ、人の心と言う物は人それぞれで…それに寄りそうというのは慣れません。
これでも何十人という患者と接してきましたが、家庭に帰れば未だに妻や娘の心中が分からず右往左往することもあります」
「……ご家族に心配をかけないためにも、帰らないといけないですね。私も今は姉と離れて暮らしていて…心配に思う日もありましたから」


勿論俺の知識を用いれば数分以内にスマートフォンの使用法を理解習得するのは難しくなかったが。
それでも俺の認識で未知の筈の通信機器を苦も無く扱っている千代田桃と言う少女にも違和感を抱いた。
まるで昔からこのスマートフォンを知っていて、使えるのが当たり前という雰囲気すらある。
まさかSF小説の様に時代を飛び越えた未来の人間とでも言う訳もあるまいと思うのだが、これ以上深掘りをすると訝しまれる恐れがある。


「そうですね、余り心配をかけると帰った時に埋め合わせに何を強請られるか恐ろしいですから」
「はい。私なら吹っ掛けられるだけ吹っ掛けます」


色々不可解な点は多い。状況も、桃と言う少女も。
だが、分かる事は今の所この少女はこの命の授業とやらに否定的。それは事実であると見て良いだろう。
間に合わせのプロファイルだが、少女の視線や声のトーンからある程度本当のことを言っているかは測れる。
……無論のこと、測り切れない事は存在するが。




「それで、その……差支えなければ伺いたいのですが……千代田さんの、その恰好は?」


千代田桃と言う少女に置いて、最も不可解な点。
アーニャが見ているアニメーションに登場するキャラクターの様な、珍妙な姿を彼女はしていた。
ともすれば、ふざけているのかと思われかねない。黒くてフリフリの奴だ。
もし彼女の趣味なら気にする必要はないが……返って来た返事は実に歯切れの悪い物だった。


「えっと、これはその……自衛のためというか」
「自衛?」
「あの……できれば余り深く追求しないで貰えるとありがたいです」
「そ、そうですか………」


とにかく何か事情あってのことらしい。
それが何なのか気になる所ではあったが、これ以上追及しようとしても不信感を抱かせるだけだろう。
そう思って話題を変えようとしたその時だった。


ヒュ


と風を斬る音が聞こえて。



「ロイドさん!離れて!!」



目にも止まらない速さで、千代田桃に押しのけられる。
それは俺にとって二重の衝撃だった。
一つ目は見た目十代の少女に俺が簡単に押しのけられた事。
もう一つは、俺がこの間合いに接近されるまで襲撃者を察知できなかったこと。


だが、そんな事は、次に襲って来た衝撃に比べれば些事でしかなかった。
次の瞬間には思い知らされる。何故なら、襲ってきたのは────



「ヨル………さん?」






万が一に備えて、予め変身しておいてよかった。
ロイドさんを突き飛ばして、私は襲って来た相手に対して備える。
ここまで察知できずに接近されたのは失態だけど、ここまで察知できなかったという事は。
相手は闇の一族の類でも過激派魔法少女でもない。
ただの人間の暴漢なら、例えマシンガンで武装していても負ける気はしない。
その筈、だった。


───早、いッ!


正確に、私の額に向けて投擲されてきたナイフ。
それは魔法少女に変身した私、千代田桃でも、寸での所で回避できる速度だった。
髪が二、三本切られて宙を舞う。
手加減できる相手じゃない。一瞬で私は確信した。


「けど、甘いッ!」


本当に人間か疑わしい身体能力だ。
コンクリートの壁程度なら二、三枚枚ぶち抜ける私の反撃を気圧される事無く捌いて。
襲撃者は一旦私から距離を取る。


(女……!?魔法少女でも闇の一族でもないのに………?)


月明かりに照らされて、私の目に映ったのは。
私より一回り年上の、何方かと言えば華奢な女性だった。
魔力はやはり感じない。この人は魔法少女や魔族じゃないそう確信する。

───この強さじゃなければ!

襲撃者の女性は私のステッキの殴打を回避し続ける。
力自体は全く劣ってはいないと思う。けれどそれでも三十を超える攻撃を放っても未だ一発も当たらない。
全ていなされ、受け流されている。物理で殴れば戦は勝てるというのが私の持論だけど。
それだけに同じ極まった物理の使い手には手こずる。


────勝機、


が、ここで漸く好機が巡って来た。
襲撃者の女の人が、ハイキックを放ってきたからだ。
まともに受ければ変身している私でも首の骨がへし折れるんじゃないかって鋭さ。
だけど、狙いが直線的だから実戦向きじゃない!
軸足を刈られたらすぐに転ばされるし、タックルのタイミングも測りやすい。
───獲った、そう確信する。その直後の事だった。

「な………」

背中に、こつんと小さな衝撃が来て。
次の瞬間、私、千代田桃の戦闘衣装(コスチューム)・ダークネスピーチが解除される。
見れば襲撃者の女性の手の中に鎖が見えた。あれで何かを引き寄せたのだろう。
でも、何を?


(────さっきのナイフ────!)


さっき躱したナイフに何かからくりがあった。その考えに辿り着いた時には、既に遅かった。
私の正面に、既に女性は迫っていて。
庇う暇もなく、女性の放った掌底で、私の意識は刈り取られた。







追ってきては……いない様子ですね。
上手く手加減ができたようです。
ロイドさんは優しい方ですから……気絶している女の子を置いて私を追ってくることはない。
そう考えての手加減でしたが、慣れていないから……うっかり殺してしまわなくてよかったです。
写真を落としてきてしまったのは、無意識でしょうか。それとも……
いえ、どうせもう一枚ある以上。落としたところで問題はありません。

そう、これでいい。これで後は、アーニャさんのために戦えばいい。

例え私が失敗したとしても、ロイドさんなら……ロイドさんならきっと。
この殺し合いを打ち破って、アーニャさんを助けてくれる。
だから、私の役目はそれまでアーニャさんが無事でいられるように時間稼ぎ。
私がいばら姫として仕事をすれば……その間、アーニャさんはこれ以上酷い事をされずに済む。
今まさに危ないアーニャさんを今すぐには助けられない以上、今私ができるのは時間稼ぎだけ。

もし、ロイドさんが上手くいかなくても…その時は私がロイドさん以外の参加者を皆殺しにして。
ロイドさんを優勝させる。そうすれば、彼がアーニャさんの元へと帰る事ができる。
私は元より仮の妻。アーニャさんをお腹を痛めて産んであげた実の母親じゃなくて。
部外者……ですから、だから今はロイドさんをアーニャさんの元へと生きて帰してあげる。
それだけを考えて戦えばいい。これまでのお掃除のお仕事と同じです。
あぁ……でも。私は今まであの人を騙していたのに。
それをはっきりと伝えて、もう一緒にはいられないのに。それがどうしようもなく………、



───素敵です!誰かの為に、何かの為に過酷な仕事に耐え続ける事は普通の覚悟では務まりません。誇るべき事です。

───病める時も、悲しみの時も、どんな困難が訪れようとも。ともに助け合おう。



ユーリがいて。
アーニャさんとボンドさんがいて。
私がいて。
貴方がいる。


私には、それだけで十分だったのに。



「行きましょう………アーニャさんのため、先ずは何人か死んでもらいます」


【ヨル・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:健康、いばら姫
[装備]:天逆鉾@呪術廻戦、万里の鎖@呪術廻戦
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1、アーニャの写真
[思考]:アーニャさんを守るため。命の授業に反抗的な人を掃除する。
1:主催からの指示に従う。
2:最悪、ロイドを優勝させた後自害する。
[備考]:原作8巻終了後から参戦です。





「う……ん…………」


呻きながら目を覚ます。
そして首に付けられた首輪の感触と、顎に走る鈍い痛みに溜息をはいた。
油断していたのはある。相手が信じられない位強かったのも。
でも、それでもただの人間に敗けたのだと思うと、ショックは大きかった。
シャミ子が聞いたら、ひっくり返るかもしれない。


「……ッ!そうだ、ロイドさん!!」


意識がはっきりと覚醒してきたからようやく。
私はさっき出会った男性の事を思い出す。
魔法少女の私を倒す程の相手だ。そんな相手にロイドさんが襲われたら一たまりも無いだろう。
そう思って、必死で探す。


「……………?」


ロイドさんは直ぐに見つかった。意外にも、無傷の姿で。
だけど、様子がおかしい。
さっきまでの冷静で知的で、人当たりのよい顔じゃなくて。
ハンマーで頭を殴られた様な、そんな愕然とした顔をしていて。


「何が………あったんです?」


恐る恐る、そう尋ねると。
ロイドさんの手には、一枚の写真があった。
そしてロイドさんはどこか泣き出しそうな、怒りに打ち震えている様な声で、一言。
ずっと私に隠してきたのに……隠し事が下手な人だと呟いて。


「さっきの女性は…………私の妻です」


ねぇシャミ子。
貴方なら………今、目の前のロイドさんに、何て言ったかな?


【ロイド・フォージャー@SPY×FAMILY】
[状態]:動揺(大)、健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1~3、アーニャの写真
[思考]:ゲームから脱出する。
1:ヨルさん……貴方は………
2:情報を集め、森口を打倒する。
[備考]:原作8巻終了後から参戦です。

【千代田桃@まちカドまぞく】
[状態]:魔力消費(微量)、顎に軽い痛み。
[装備]:フレッシュピーチハートロッド@まちカドまぞく
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2
[思考]:ゲームから脱出する。
1:ロイドさん……
2:シャミ子やミカンはいないよね…?
[備考]:原作3巻終了後から参戦です。


[支給品解説]

【万里の鎖@呪術廻戦】
自在に伸縮できる鎖の呪具。
武器などに付ける事で自在にリーチを調整する事ができる。

【逆逆鉾@呪術廻戦】
全長約50センチぐらいの二股の刃物のような見た目。武器として刺すことができるが、これが特級呪具としてなっている価値はその効果。
効果は”発動中の術式強制解除”。
なお、当ロワではその効果は呪術に留まらない。








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最終更新:2026年07月26日 20:04