七三術師は無駄を許さない ◆OmtW54r7Tc
「夏油傑…!」
殺し合いの宣言を行った男の姿に、普段はクールな七海建人も、さすがに動揺を隠せないでいた。
夏油傑。
かつての呪術高専における、(五条悟と違って)尊敬していた七海の先輩であり、道を違えた呪詛師。
百鬼夜行にて倒されたはずの敵。
そんな死んだはずの彼が、殺し合いを自分たちに宣告していた。
いや、そもそもあれは、自分の知る夏油傑なのか?
「…柄にもなく、動揺してしまいましたね」
ネクタイを緩め、服をパタパタと引っ張り内側に風を送り込むと、フー、と一つため息をついた。
夏油傑らしき人物のことは気になる。
しかし今は、現状を打破することを考えるべきだ。
となると、まず考えるべきは…
「1人殺せば5ポイント、10人殺せば脱出、5人殺せばルールの追加、ですか…」
七海建人は五条曰く、脱サラ呪術師である。
呪術師を一度辞めた後は、サラリーマンとして金のことばかり考えて生きてきた。
そして、彼の術式「十劃呪法」は、7:3の比率の点に強制的に弱点を作り出すものだ。
故に、彼は数字にまつわるこのルールについても着目しないわけにはいかなかった。
ちなみに彼がいるF-6は、地図の縦横を七三で線分して重なる位置である。
まずこの殺し合いの参加者は61人。
自分自身を除いた60人がポイントの対象だ。
この人数の中で10人殺すというのは可能か。
「…まず、難しいでしょうね」
殺しを行う人物が一人なら、まだ可能だろう。
しかし、実際には殺しを行う人物は複数いるだろうし、彼らによる奪い合いになる。
おまけに、死んでしまえば、その過程でどれだけポイントを稼ごうと無駄になる。
4人殺して20ポイント貯めようが、9人殺して45ポイント貯めようが、死んでしまえばそのポイントは消滅して無駄になる。
よっぽどパワーバランスが特定の参加者に偏っているか、運がよくなければ達成は困難だろう。
とはいえ、主催者側としてはそれでも問題はないのかもしれない。
むしろ最後の一人になるまで誰も10人殺しを達成できないことこそ、主催者が願うことかもしれない。
「参加者といえば…そういえば名簿を見てませんでしたね」
七海は名簿を確認する。
彼が知る名前は、虎杖悠仁。
直接面識はないが伏黒恵、東堂葵。
そして真人。
彼らの中には、前述のパワーバランスを崩すタイプの参加者はいない。
虎杖や伏黒は自分より格下だろうし、東堂葵も話を聞く限り強者ではあっても化け物ではない。
真人は強敵だが…それでも五条悟のような無双しかねないほどの強さを持っているわけではない。
「後は実力が未知数の禪院家のものや伏黒君の関係者かもしれない伏黒甚爾、ですか…彼らについては情報がないのでなんとも言えませんね」
次に、5人殺しについて考える。
5人殺して25ポイント消費すれば新しいルールを追加することができる。
こちらはまだ、10人殺しよりは可能性があるだろう。
何人かは、この領域まで到達してもおかしくはない。
だがしかし、このルールについても問題がある。
「…25ポイントを消費したがる人が、どれだけいるのやら」
25ポイント消費してルールを追加する。
それは、10人殺しによる脱出が遠のくことを意味する。
いや、遠のくという言葉ではすまない。
ポイントが限られるこの殺し合いにおいては、まず間違いなく不可能だ。
10人殺しですら難しいというのに、15人殺しができるものがいるものか。
25ポイント消費するくらいなら、50ポイント貯めた方がいいと考える者が多いのではないだろうか。
ルールを追加するものがいるとすれば…脱出を考えず、闘争自体を楽しむ輩か。
あるいは自分に有利なルールを作り、最後の一人になりやすくするという手もあるが…最後の一人を目指すというのは、10人殺し以上にハードルが高いように思う。
それに主催者側も露骨に特定の参加者が有利になるルールは許可するとも思えない。
そして、主催者側の心理としては、こちらのルール追加については10人殺しによる脱出と違って積極的に活用してもらいたいところだろう。
ルールの追加で殺し合いが盛り上がってくれるのは望むところであろうし、10人殺しの脱出が遠のくのも好都合だからだ。
しかし、現実としては10人殺しを犠牲にするこれを使うものがどれだけいるか怪しいし、それに死んでしまえば貯めたポイントが無駄になるという問題もある。
「…そうですね、それならばあえて、主催者側の思惑に乗ってみましょうか」
主催者側の思惑、つまりは25ポイントによるルール追加の行使。
これを七海建人は利用する。
勿論、無害な人間や殺し合いにあらがう者を狙うつもりはない。
殺し合いに乗るものや危険人物を相手に、だ。
そして七海建人が狙うルールの追加、それは…ポイントの譲渡。
先ほども述べたように、この殺し合いでは死んでしまえばそれまでに貯めたポイントが無駄になる。
この無駄をなくすために、殺された参加者が持っているポイントが殺した参加者に渡されるルールを作る。
ルールが追加されるかどうかはGMの裁量しだいということだが、主催者側としてもポイントが無駄になるのは避けたいところだろうから、受け入れられる可能性は高い。
ポイントの無駄が消えるということは50ポイント到達の可能性が高まるということであり、そういう意味では微妙だが。
受け入れられる可能性は…七三といったところだろうか。
それと、このルール追加については、他の参加者にも周知しようと思う。
殺し合いに乗っているか、乗っていないかを問わず。
最悪殺し合いに乗っている者がこのルールを追加してくれても構わないからだ。
もっとも、人に仇なす者は七海の殺害対象であり、見逃す気はさらさらないが。
「では、行きましょうか」
殺し合いの打破のため、七海建人は動き出す。
冷静に…しかし胸の内には熱い想いを乗せて。
【F-6/1日目・未明】
【七海建人@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:呪符巻きナタ@呪術廻戦
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いの打破
1:殺し合いに乗るものや危険人物を相手に25ポイント貯め、ポイント譲渡ルールを追加する
2:上記のポイント譲渡ルール追加案はスタンス問わず他の参加者にも周知する
[備考]
※参戦時期は幼魚と逆罰編終了後
最終更新:2025年08月11日 22:19