現代の忍×鎌倉末期の侍 ◆s5tC4j7VZY
迷ったら積極的な方を選ぶ。 自分が動けば、自分が変わり、運命が変わり、人生が変わる
流音弥
1章 信濃守護
「……」
ここは、E-3石神村。
科学と原始が科学融合している村。
そこに一人佇む男。
男の名は小笠原貞宗。
幕府が滅ぼされた後、帝の綸旨により新たに信濃守護に任命されし侍。
―――ふざけるな!
見知らぬ暗き空間。
自分がそこにいる原因が縫い目の坊主の手によるものだと理解した最初の感情は憤りといった怒り。
家臣に行き先を伝えているならともかく、無断で自分の領地を空にしているこの状況。
国司や郎党の口から帝の耳に入れば、手にした信濃守護の地位をまず剥奪される。
それだけではない。帝の命に背いたとして朝敵の汚名を着せられて最悪討伐の綸旨が出されてもおかしくないのだ。
始めこそ、そうした怒りで腸が煮えくり返るほどだったが、今は、逆に冷静となっている自分がいる。
(あの坊主らしき男……余りにも得たいが知れぬ、面妖な男よ)
目に汗がジンワリと流れ出す。
異能の目が男の異常さに気づいたからだ。
あの男の肉体は既に死んでいるように見えた。
討ち死や悪党の手で殺されたといった死体を数多く見たからこそ気づけた違和感。
だが、その違和感をそのまま信じることはできない。
まず、死者が普通に喋るわけがない。
それと、年の所為か夜目が効かなくなってきている。
それもあり、確証が得られないのも大きい。
ただ一つ分かるのは神仏に仕える僧には見えぬということ。
(それに、殺し合いか……)
別に殺すという行為に抵抗や忌避があるわけではない。
そもそも戦場に出る身。
戦場では剣を握れば女子供もない。
殺さなければ自分が殺される。
それは自然の摂理。
しかし、一枚の紙が考慮させることとなる。
「……」
(五大院宗繁……たしか、北条宗家被官の御家人。甥を裏切るが、恩賞をもらえず乞食のような身なりに落ちぶれたと風の噂では聞いているが……)
まぁ、五大院はどうでもいい。
そんな雑魚より参加者の中に見逃せない名前が記されている。
「北条時行……」
北条一族の生き残り。
やはり、どこかで匿われていたのか。
疑わしきは信濃の諏訪だが、今は捨て置く。
とにかく、この場所にいるのであれば探さなくてはならない。
一族や残党を探し捕縛せよとの命が下っているからだ。
殺し合いに乗るかは今は保留で良いだろう。
「……」
ふと、脳裏に浮かぶのは長寿丸なる小僧。
だが、名簿にはその名は記されていない。
ともかく、運よくここに潜んでいるかも知れない。
貞宗は、村をまず一通り見回ることとする。
☆彡 ☆彡 ☆彡
2章 ふわぁぁあああああ!!
「むッ!……」
貞宗の目の前に見えるは、火が付いたままの妙な釜戸らしきもの。
気になるため、近寄ると、棒の側面に開けられている小さな穴から飛び出ている細い雪のように白い糸が見えた。
「この細糸は……」
よーく目で見つめてみるが正体は判らず仕舞い。
仕方なく、道具の方を見ることにする。
「!!??」
(これは……!!)
丸い形の木に触れると、ぐるぐると回ることに気づいた貞宗はとりあえず回すこととする。すると、白い糸がたくさん溢れてでてきたではないか。
そして、その白い糸は絡み合い、一つの塊になりかける。
俄然、興味が湧いた貞宗は正体を突き止める意味も兼ねてギアを回す。回す。回す。
―――白い塊ができあがった
「食べ物……よな」
(よもや毒物はまざっておるまい……)
あの坊主らしき男は殺し合いを望んでいた。
参加者に支給された毒物ならいざ知らず、村に設置されているのを食べて死亡はあの男にとってどっちらけになるはず。
ええい、ままよ!と意を決して口の中へ頬張る。
「ふわぁぁあああああ!!」
(な、何だ!?この骨の髄までとろける味はッ!?)
一口齧れば口の中全体を支配する甘味。
その味、天にも昇る勢い。
眼なんか過去最大といっていいほど飛び出てしまう。
背景があるとすれば💗で埋め尽くされるであろう。
「口が止まらない……ッ!!)
齧る。齧る。齧る。
舌で溶けるフワフワ。
まるで雲を食べているかの如く。
唐菓子の加久縄や甘葛(あまずら)を調味料としてかけた”椿餅”を遥かに上回る。
小笠原貞宗甘味ランキング
1この白くてフワフワした丸いもの
2椿餅
3 唐菓子 加久縄
突如としてランキング1位となるほどその味には抗えないッ!!!
「ふわぁぁあああああ!!」
(い、いかん!?正体を見極めなくては!!)
本日二度目のふわぁぁあああああ!!
すっかり甘味の虜になりつつも貞宗はこの味の正体を考える。
すると、一つの答えにたどり着く。
(!?……もしや、砂糖か!!)
―――砂糖。
砂糖が日本へ伝わったのは奈良時代の事。
遣唐使として唐へ渡った最澄が持ち返ったのが始まりといわれている。
しかし、当時は砂糖は薬として用いられ、大仏の供え物として非常に貴重な物だった。
調味料として使われるようになったのが、鎌倉時代末期から室町時代と正に貞宗が生きていた時代。
当然、現代のスーパーやコンビニで手軽に購入できる物ではない。
ましては、京の都でもないこの名も聞いたこともない村に砂糖があることに衝撃を隠しきれない。
(馬鹿なッ!?こんな村に砂糖があるだと!?それに、砂糖菓子を作ることが出来るこの道具は……!?)
正体が分かれば、謎や疑問がどんどん生じてくる。
「……」
しばし、食べかけのわたあめを見つめるのだった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
3章 問う お主は―――
「しかし……見れば見るほど奇妙な村よ」
わたあめを食べ終え、再開した村の探索。
一通り終えた貞宗は、改めてこの石神村の奥知れなさに驚愕を禁じ得ない。
(藁の屋根に木の床や水車など一見何の変哲もない村かと思えば、この甘き菓子を作る道具に今も用途がまったく分からぬ道具と差が激しい)
まるで、本来の村に唐や朝鮮といった渡来人の技術がやってきたことによって構成されている。
だが、それにしてもここまでの村など日ノ本にあるのかと言われたら首を傾げる。
規模こそ小さい村だが明らかに帝が住まう京都以上と断定できる。
「ふむ……どうやら、いないようだな」
捜し人である北条時行。
その痕跡を感じる物は一つも見当たらなかった。
地図を開き、次なる潜んでいそうな場所へ移動しようとしたその時。
貞宗は歩みを止めると、支給品の黒い鳥打の弓を持ち、矢を構える。
「……」
―――ビッ
ズンッと大人が鳴る程の威力の弓矢は潜んでいた者の衣類を射貫く。
射貫かれた矢じりはそのまま木の表面へ突き刺さる。
が、そこで貞宗の目は飛び出る。
なんと、突如小さい丸太に変化したのだ。
そして、首元に短刀を突き付けられた。
「……珍しいな。女の忍びか」
「アンタは殺し合いに乗っているのか?」
女忍びはキッと睨みながら、問いかける。
貞宗はそれを気にも留めずに答えると、今度は問いかける。
「いや、人を探している。女忍びよ、北条時行という名の者を知っているか?」
「……いや、まだアンタとしか出会っていない。こっちも聞きたいことがある。花奏すずという女を知っていねーか?」
「……儂も貴様と同じよ。女忍び、貴様が最初よ」
互いの捜し人の名を問うが、結果は同じ。
「……」
女忍びは貞宗の答えを聞くと、短刀を引くと、バッと後退する。
「そうか。じゃあ!」
女忍びはその場を去ろうとする。
が、その歩みは貞宗の次なる問いにより止まることとなる。
―――問おう
―――貴様は男か?
「!!??」
貞宗のまさかの質問。
「へっ?……いや、そのッ……!!」
女忍びは、ズテッと転ぶと大慌てで動揺する。
「……」
この慌てよう……怪しい。
反応から推測すれこやつは男。
だが、明らかに女人の体つきに貞宗は首を傾げざるを得ない。
(いかん、いかん。儂も何を問うておるのだ。……あの縫い目の坊主を視てから、ありもせずことを考えてしまうようになったようだ)
結論からいうと、貞宗の考えはどちらも正解ではあるのだが、常人としての感覚がそれを否定してしまっている。
「人を疑うこの乱世。ましてはこの場所は異様な殺し合いの場。あの女忍び?には怪しい面がある。だが、愛する者を必死に探そうとする者を疑うのは野暮になるわ」
「……?なんか言ったか」
「……何もいっておらぬわ」
☆彡 ☆彡 ☆彡
終章 ―――まる
本来なら、すずがいないと知ったなら、直ぐに他の場所へ移動を開始する方針であった祭里だったが、貞宗のまさかの問いにあたふたし、ひとまず会話を続けることとなった。
そこで判明したことは、貞宗と祭里の生きていた年代が違うと言う事。
貞宗は始めは祭里が未来の人間だということを世迷言だと感じたが、あの美味なる甘味”わたあめ”のことを知っていることを始め貞宗の知らぬ情報をいくつか持っていた。
与太話だと切り捨てず、ひとまずはそれを受け入れた。
「ところで貞宗さんはどーして、俺がこの村に潜んでいるとわかったんだ?」
忍びとして隠密行動は基礎の基礎。
こう見えても祓忍としての自信はあるほうだ。
「釜戸に火がついていた。なら、人がいると考えに至るのは当然であろう」
「……それも、そーだよな」
貞宗同様、祭里もすずがいないか石神村を探索していた。
鎌倉末期の貞宗と違い、現代人である祭里は、釜戸の白糸の正体が砂糖であることに気づくことができた。
この殺し合いを強要される状況では、甘い物=花奏すずを嫌でも連想してしまう。
それでふと、火を点火してしまった。
丁度、その時、人の気配を感じたため、急いで場を離れたのが真相だ。
(気を付けねーとな。すずのことになると、どうも俺は―――)
自覚をしていたが、初歩的なミスをしたことに自戒する。
だけど、思春期の男にそれを責めるのは酷な物。
愛する者を守れずに失うかもしれぬ恐怖。
ましては、現状の身では”恋人”として結ばれぬのだから。
「しかし……女子が女子を大切に想うとは……な」
所謂、男色ならぬ女色。
日本では、平安時代後期以後、流行した男色。
武家社会では比較的容認されており、戦国時代では、武田信玄が当時の愛人(男)に出したと言われる手紙が後世にまで残されているのが有名だ。
片や、女性同士の恋愛は男色の文化と比較すると未解明な部分が多い。
鎌倉時代の宮廷文学に”わが身にたどる姫君”という作者不明の作品がある。
内容はなんとレズビアンを扱った先進的な文学。
この出会いはある意味必然でもあるかもしれない。
まぁ、もっとも祭里は男なのだが。
「……すずの存在は俺の熱風(かぜ)の中心なんだ」
風巻祭里にとって花奏すずは、それだけ大切な人である。
「なら、尚更一人で我武者羅に動いても仕方あるまい。……どれ、一つ儂も手を貸してやるとしよう」
協力の申し出に祭里の目は点となる。
「別にただの慈善ではない。貴様の話を聞く限りでは、どうやら儂の知らぬことが多くあることが分かった。戦場では情報は命だ。貴様との行動は儂の利益にも繋がるのだ」
そう、打算も込みでの協力の申し出。
「サンキュー……いや、ありがとうございますだな」
「……構わぬ。ここでの殺し合いに役職も歳も関係ない。遠慮せず、貴様の好きな口調で話せ」
(それに……武士の常識に囚われていたら、この殺し合いは勝ち抜けぬわ)
礼節を重んじる貞宗。
それは、小笠原流礼法の中興の祖とされている。
だが、この場は自分より未来の人間もいることがわかった。
風巻のように礼儀に疎い若造も多いだろうと割り切る。
「オッケー、わかった貞宗さん」
そういうと、祭里は手を差し伸べる。
ここに一組の現代の忍者と鎌倉末期の武士が手を取り合った。
―――まる。
【E-3/石神村/1日目・未明】
【小笠原貞宗@逃げ上手の若君】
[状態]:健康
[装備]:スピードの弓と矢のセット@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考]
基本:北条時行を捕らえ、生きて領地へ帰る
1:とりあえず、今は風巻祭里と行動を共にする
2:北条時行を探して捕らえる それと花奏すずの捜索
3:あの”わたあめ”なる甘味はとても美味であった……
[備考]
※参戦時期は36話後。
※名簿を確認したため、この場に北条の残党(時行)がいることを把握しました。
※自分の時代より未来の参加者がいることを知りました。
※異能の目により縫い目の坊主(羂索)は身体が死人であること。風巻祭里が男であることを感じましたが、今はそれは、気の迷いだと思っております。
※簡単にですが風巻祭里の祓忍のことや現代の知識を知りました。
【風巻祭里@あやかしトライアングル】
[状態]:健康 焦り(小)
[装備]:屠坐魔@呪術廻戦
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考]
基本:ずすを守り生きて帰る
1:とりあえず、今は小笠原貞宗と行動を共にする
2:すず……どこにいるんだ それと北条時行の捜索
[備考]
※参戦時期は73話後。
※自分の時代より昔の参加者がいることを知りました。
※自分が男だと言うことを貞宗には話していません
『支給品紹介』
【スピードの弓と矢のセット@ONE PIECE】
貞宗に支給。
カイドウの百獣海賊団の真打ちの一人であるスピードの獲物。
弓術の達人である貞宗のため問題なく使用できる。
【屠坐魔@呪術廻戦】
風巻祭里に支給。
見た目は短刀のような形で、刀身には2つの穴があり、柄の部分は布のようなもので巻かれている。
呪力が篭められていて呪いにも効く
最終更新:2022年10月31日 23:08