敬意・涙・チェンソー ◆7XQw1Mr6P.
石神村にて協定を結んだ小笠原貞宗と風巻祭里。
だが、その動きだしはとても緩慢としたものとなっていた。
「儂が探す北条時行だが、諏訪大社に立ち寄るやもしれん。
諏訪を始めとする北条に与する一族の名が名簿に無かったことを思えば、奴にとって大社は唯一の縁(よすが)であるからな」
無論、名簿には貞宗の名も記され、その存在を参加者に周知されている。
時行からしてみても潜伏先として予測される地に長居するような危険な振舞いは慎むだろう。
だがもし仮に、奴が諏訪の名に縋るような弱い心に流される軟弱者であれば、あるいはという考えも貞宗の頭にはある。
いかに名門・北条の直系男児、最後の鎌倉幕府の体現者であろうとも、時行はまだ幼い。
補佐の一人もいない中で正常な判断と合理的な行動が出来るとは思えない。
とはいえ敵に所縁のある諏訪大社。一度くらいは確認しておくべきだろうと、精々がその程度の認識で合った。
ましてや死滅跳躍が始まった際、当の時行が諏訪大社で目を覚ましているなどとは、夢にも思っていない。
「とにかく貴様に案が無ければ、儂はこれから北東に向かおうと思っているが、どうする」
貞宗の問いに、祭里も地図を取り出して考え込む。
「俺の方は、すずと待ち合せられそうな場所が無いんだよな。
当ても無く人探しするよりは、まだ行動方針がある貞宗さんに同行したほうがいいかなとは思う。
でも……」
地図を睨みつける祭里の視線は、諏訪大社の周辺に注がれている。
南に展望台、北には那田蜘蛛山。周囲の施設はそれだけだ。
どちらも人が集まるような場所ではない。
となればすずとの合流はもちろん、目撃情報などの入手も困難だろう。
当てが無いならば無いなりに、人が集まりそうな場所へ行くべきではないかと、祭里は考える。
そうなれば、やはりここは単独で行動すべきか。
だがここは殺し合いの場。
名簿で存在が知れた味方も少なく、どれだけの危険人物が潜んでいるかもわからない。
そんな中、一先ず自分に危害を加えようとして来ない貞宗との邂逅は貴重な幸運だ。
そうやって悩んでいる祭里自身、この問題に答えなど無いことは分かっていた。
あとから別の道を選んでおけばと後悔したとしても、それは後だから言える結果論でしかない。
今の祭里に出来ることは、今の時点で迷いを断ち切り方針を打ち出すことだけ……。
「なぁにを若輩者が一丁前に迷っておる。
おおかた貴様は、他の参加者との接触の機会が減ることを危惧しておるのだろう」
胸中を言い当てられ、祭里の心臓が高鳴った。
眼光鋭い中世の武士は、狼狽する現代っ子の顔色からさらに胸の内を見通す。
「図星か」
「あ、えっと……」
「心配せずとも、貴様は儂に一言申せばよいのだ。
"諏訪大社までの道中、人が集まりそうな施設に立ち寄ることは出来るか"と。
そして儂はこう答える。
"よほどの遠回りでなければ構わん"とな」
フン、と貞宗は鼻息を一つ。
対する祭里は貞宗の言葉を咀嚼し、反芻し、その意味を飲み込むのにしばし呆然とした。
「儂としては、譲歩できるのはここから北上し映画館、遊園地を経由するまでだな。
もっと北上して橋を渡り刀鍛冶の里とやらに行くのも悪くはないが、そこまではやはり遠回りが過ぎる。
ここから東へ出た時には少年院なる寺院がある程度で、さほど人が集まりそうな場所もなかろう。
……って、うおおおぉぉぉぉい!!?」
貞宗の奇声で我に返った祭里は、そこで初めて自分が涙を流していることに気が付いた。
「何を泣く風巻!? 儂そんなひどいこと言ったか!?」
「えっ、あっ、いや違っ…………」
慌てて涙をぬぐう祭里の、その胸の内に沸いた感情。
それは安堵、あるいは安心といったものだった。
殺し合いを強制される異常な環境に一人放り込まれ、信用できる者も少ない中。
毅然とした態度で事態に当たり、こちらに対し年長者として接しながらも誠意を忘れない貞宗の振舞いは、とても安心感のあるものだった。
妖を相手に祭里がどれほど荒事に慣れてきていたとしても、彼はまだ十代。
真っ当に頼れる姿勢を見せる貞宗に、どれだけの救いを見ただろうか。
「グス……、うぅ…………」
まだ問題は何一つ解決してはいない。
だが、祭里の中に貞宗と行動を共にすることへの不安感は、もはや欠片も残っていなかった。
「……それで、お願いします。俺、貞宗さんについていきます」
「……よくわからんが、まぁよかろう。ついてまいれ」
「時に風巻よ、この"映画館"なる館はどういった施設なのだ?」
「……………………どこから説明したもんかな」
・・・
D-4を東から西へ横断するように、一台のオフロードバイクが疾走していた。
サイドカー付きの立派な車体は、背後の遊園地の明かりを反射している。
磨かれたフレームは手入れが行き届いている証拠だ。
バイクとセットで支給されていたゴーグルを装着し、バイクを駆るのは公安退魔特異4課の首魁の女、マキマ。
そして、同じく支給品のヘルメットを被りサイドカーの中で丸まるイマイチ元気がないのは、新米デビルハンターの少年、デンジ。
遊園地で直哉に強襲され一撃で打ちのめされたデンジは、マキマに叩き起こされてからというものずっとこんな調子だった。
「……マキマさん」
運転中で風を切るバイクの上では、デンジの呟くような言葉は普通誰にも聞き取れない。
だが、マキマは平然と答えた。
「なにかな」
そして当然、飼い主の声は飼い犬によく届く。
「ホントなんス、よね」
「そうだね」
「……パワー、あの目付きの悪い野郎に殺されたって」
「うん。そして私が、あの男を殺しました」
「……」
黙り込むデンジ。
マキマはその様子をさほど気にすることもなく、言葉を続ける。
「とりあえず5ポイント獲得。
それにパワーちゃんが他の人に迷惑をかける心配もしなくてよくなった。
アキ君は余計な事をするような子じゃないから、私たちはポイント稼ぎに専念できるね」
それは会話というより、断定だった。
事態はすでにこうと決まっているから、了承しなさいと。
言葉や優しい。
口調は柔らかい。
声質も軽やかだ。
だが有無を言わせない力があった。
「……っス」
マキマが回収したパワーのデイバッグを抱えこみ、サイドカーの中で丸くなるデンジ。
きっと普段通りの元気があれば、サイドカーなんて分離させてマキマとの二ケツでも提案してその細い腰に触れようと薄っぺらい画策をしていただろう。
なぜ自分がこんなにも元気がないのか、デンジ自身もわかりかねていた。
最初にマキマが提案した通り、自分たちで50ポイント獲得してみんなで殺し合いを脱出し、死者を……パワーを蘇らせればいい。
だというのに、どうして自分は。
極貧時代、ポチタと二人きりだった時の孤独を思い出しているのだろうか。
ガタン、とバイクが段差を乗り上げる。
サスペンションで殺しきれない振動がサイドカー内で丸まるデンジの胃に、ダイレクトに浸透する。
「うっ」
ヴ ボ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ
――――――
【しばらくお待ちください】
――――――
「大丈夫?」
「すっ、すンません……」
遊園地内で食べたカレーとパフェをサイドカーの座席に全部ぶちまけたデンジは、青い顔のままマキマに頭を下げた。
地面に座り込み、支給品の水を飲んで息を整える。
二人はD-3、会場北西部の施設群に来ていた。
「デンジ君はとりあえず、サイドカーの掃除をお願いね」
「っス」
「私は映画館の中を調べてくるから、いい子で待っててね」
「……へ?」
まだ残る吐き気に重い頭をデンジが上げる。
すると目の前には、毛穴一つ見えない白くて綺麗な鼻と、こちらに真っすぐ突き付けられたように長く伸びた睫があった。
デンジの顔を覗き込む、マキマの顔が間近にあった。
(ほあぁァァあああああああ~~~、か、顔がイイ~~~……ッッ)
「デンジ君、パワーちゃんが死んで落ち込んでるでしょ?」
小首をかしげるマキマを前に、デンジの中でパワーを悼む気持ちがしぼんでいく。
とはいえ、さすがにそう数秒で悲しみや喪失感が消えることはない。
「……そう……スね。生き返らせてやるって思ってても、やっぱ、なんつーか……」
「それならやっぱり、少しは休まないと」
「いや、でも」
「乗り物酔いも落ちつけなきゃだし、デンジ君は番犬役をお願い。
私が映画館の中を調べている間、ここを護ってくれる?」
「いや……やっぱこういう時、一緒に動いた方が」
「デンジ君はショックから立ち直るのと、酔いから回復しなさい」
マキマの指が一本スイと立てられ、デンジの額を軽く押した。
ふいに届いた大人の女性らしい甘い香りに一瞬興奮するも、すぐにデンジの胸の中でナニカが居心地悪そうにする。
これはたぶんポチタじゃない。胃酸とかだ。
それでも気持ち悪さを無理やり飲み込んで、空元気で立ち上がろうとする。
だが、額に添えられたマキマの細い指一本に阻まれ、上手く体を起こせない。
「俺はべつに、大丈――……」
「大丈夫じゃないよ。今のデンジ君じゃ、"ドカンと頑張"れないでしょ」
そうだろうか、とデンジは考える。
そうだろうな、とデンジは考えた。
「そう…………スかね」
「私の言うことを聞いてくれるんだよね?」
「それは、ハイ、モチロン……」
「願いを叶えてほしいもんね?」
「それは、もう、モチロン!」
「じゃあキチンと休んで、心の整理をつけておいてね」
マキマの指が額を離れた。
まだ頭が揺れているような感覚をお構いなしに、デンジは何度も激しくうなずいた。
単純に考えて、今の自分は体調不良だ。
マキマさんの言う通り、マキマさんが映画館の中を調べて、俺が外を守る。
ついでにサイドカーの掃除もする。そこらの民家からホース伸ばしてきて水ぶっかけて全部洗い流そう。
ついでに、パワーが死んだことを少しだけ悲しんでやろうか。
そうだ。どうせ後で生き返るからと言っても、パワーはバディだ。
バディが死んだ後は悲しんでやった方がいい気がする。
どうせ後で生き返るのだから、パワーのために悲しんでやれるのは今だけだ。
パワーのために、ほどほどに悲しんでやろう。
アキも、そうしてた気がする。
アキの顔が頭に浮かんで、デンジは自分の心が少しだけ落ち着いた気がした。
そうだ、アキはまだ生きてる。あいつがひどい目に遭う前に、さっさとこの殺し合いを終わらせてやらなきゃいけない。
それに、そうすれば、パワーとまた会えるのだ。
だったらやっぱり、今の俺がすべきことは、ちょ~~っくら休憩させてもらうことかァ。
そんな心の動きがわかりやすく顔に出ているデンジの頭を、ゆっくりと、髪を梳くように。
マキマは丁寧に三度撫でつけた。
「危ない奴が来たら、今度は守ってくれるよね?」
心臓を鷲掴みにされたような気がした。
・・・
館内の明かりはついていたものの、普段ならデモムービーを映しているであろう巨大モニターは消灯されていた。
映画館に似つかわしくない静寂に、マキマは腰に手を当て、考える仕草を見せる。
そしておもむろに腰の後ろに装着したホルスターから銃を抜き、狙いを定めた。
構えた銃はグロック19。9ミリ拳銃、装弾数は15発。
日本の特殊強襲部隊(SAT)でも採用されている、信頼と実績のある銃。
「出てきなさい」
威嚇、牽制、脅迫、制圧。
それらに用いる際、拳銃はその点において非常にわかりやすい道具となる。
まさか指鉄砲で相手に要求を押し通すわけにもいくまい。
狙いの先は、ロビーからトイレに続く曲がり角。
はたして、トイレから現れたのは全身に贅肉を張りつけた、なんとも丸い印象を与える眼鏡の男だった。
「公安退魔特異4課です。両手を挙げて膝立ちになりなさい」
「……」
パワーを痛めつけていた直哉と出くわした時とは状況が違う。
先走るデンジも、状況が読めないパワーもいない。
実力行使は後でいい。マキマは冷静に、目の前の男から優位を取ろうと模索する。
マキマの警告に、眼鏡の男は両手を挙げる。
ただし膝を折ることはせず、ゆっくりとマキマの方へと向き直った。
「……公安退魔特異……、聞いたことのない部署だな」
「……平たく言えば、警察のデビルハンターです。
次に許可なく発言をすれば発砲します。こちらの質問に答えなさい」
眼鏡の男は小さく、それでもはっきりと頷いた。
たるんだ首の肉が揺れ、伸びた皮膚に皺が寄る様を見て、マキマは考える。
(こんな男から、こんなに強い人間の匂いがするなんて……)
断っておくが、別にマキマは嗅覚で相手の強さを推し量る能力を持っているわけではない。
だがそれでも、眼前の男が漂わせている雰囲気が嗅覚を通し、マキマの感性に強さを訴えかけてくる。
直哉からは欠片も感じられなかった、一定の境界(ボーダー)を越えた『向こう側』の存在としての、経験と力量と自負。
マキマの知る人間の中で、近い匂いを挙げるとするならば。
公安退魔特異1課所属の最強を自称するベテランのデビルハンター、岸辺。
その岸辺が「ステゴロ最強」と称する始まりのデビルハンター、クァンシ。
彼らに匹敵する、あるいは彼ら以上の匂い。
もっとも悪魔の力を扱う彼らと違って、この男からは悪魔の気配を感じられない。
実際に戦ってみたならば、この男は岸辺やクァンシに勝てはしないだろう。
だがひょっとすると、"今の"デンジ程度は倒されてしまうかもしれない。
(……デンジ君には荷が重いな)
「名前、職業、この建物にやって来た理由を端的に述べなさい」
「……坂本太郎。自営業」
「仕事内容の詳細な説明をしなさい。発言を許可します」
「坂本商店という、小売店をやっている。小規模な、どこにでもあるヤツだ」
「いいでしょう。この建物にやって来た理由を」
「……」
坂本は一瞬口を閉じ、言葉を考える素振りを見せた。
何を話し、何を隠すか。それを考えている。
「発言内容に嘘があると判断すれば警告なく撃ちます。そのつもりで」
「……前職で、非合法な連中と関わったことがある。
連中曰く、裏社会専門のノンフィクション映画を作る会社があって、それは一種の情報屋として機能しているそうだ。
その配給会社が……」
坂本が視線を壁に送る。
広いロビーに掛けられている上映予告掲示板。
そこに唯一記された映画の欄には、『配給会社:murder film』の記載が見てとれた。
「つまり早い話が、情報収集だ」
坂本が言葉を切る。質問には答えたと態度で示せば、次に口を開くのはマキマの番だ。
「それで、映画は見られましたか?」
「……発券機から、こんなものが出てきた」
坂本はポケットに手を入れ、紙切れを取り出した。
「……」
通常であれば、不審者がポケットに手を入れれば即射殺するのがベターだ。
武器を出される危険があるし、外部と連絡を取られて状況が悪化する可能性もある。
だが今、マキマが引き金を引こうとしたときには、すでに坂本は指に一枚の紙を挟み、掲げていた。
恐ろしく速い手技。余程目が良い者かマキマでなければ、坂本は最初から紙を手に握っていたとさえ思ったかもしれない。
「『本日の上映は、朝6時10分からとなります。
初回放送後、上映室への入室が可能となります』だそうだ」
「……次にポケットに手を入れれば、その時は射殺します」
「気をつけよう」
「……現時点で上映室への侵入は試みましたか?」
「無理だった。単純に施錠されているだけじゃない。
まるで"見えない壁"に阻まれているように、ドアノブに触れることも出来なかった」
口調や、顔色に変化はない。
嘘をついている様子はない。
だが銃で脅されて正直に話しているわけでもない。
坂本はとても落ち着いていた。
冷静にマキマとやり取りしている。
彼にとってこの状況は、例えば夕方の閉店作業と何ら変わらない程度の、平穏なものなのだろうか。
もし、この男を支配下に置くことが出来れば、とても使える駒になってくれるかもしれない。
「……それで、貴方はこれからどうするつもりですか?」
「ここまで来た以上、映画は観ておいた方がいいと思っている。
真偽の判断は出来なくても、知らないよりは知っている方が得なことは多い」
「なるほど。ちなみに、私もそれを観ても構いませんか?」
「……なに?」
マキマは銃を降ろし、腰のホルスターに仕舞った。
怪訝な表情を浮かべる坂本に、マキマは言葉を重ねる。
「あぁ、映画は一人で観たいというのであれば構いません。
私と"仲間"は映画館の外で待っていますので、あとで詳しくお話を聞かせていただけたら」
「……わかった、一緒に映画を観て構わない。……好きにしろ」
マキマの言葉を遮り、坂本は提案を受諾する。
色よい返事が聞けて満足ですと、薄い笑みを浮かべて頷くマキマ。
一方坂本は、脳裏を走るピリピリとした危機感が、その主張を強めていることを理解していた。
慇懃な態度を崩さないが、この女の本質は"獲物を狙う蛇"であるということも。
警察を名乗るこの女だが、坂本の眼からとてもそうは見えなかった。
こちらへ銃を突き付けているというのに、その様はとても自然体で気張りが無い。
凶器を相手に突きつけている以上、必要となれば殺すという覚悟か、殺してはいけないという緊張が出るはずだというのに。
透明な殺意なんてレベルではない。
この女は、他者の命に欠片も敬意を払っていないのだ。
それでもわずかに、坂本はマキマが自分に興味を持っていることは感じていた。
この得体のしれない女を放置しては後々自分だけでなく、シンや会場の外にいる家族にまで累が及ぶかもしれない。
この女を放置するのは危険だと、坂本の直感が叫んでいた。
そんな坂本の警戒もよそに、マキマは壁に掛けられた上映予告掲示板の、唯一のタイトルに目を向ける。
「それにしても、面白いのかな。
この『呪術廻戦 0』って」
【マキマ@チェンソーマン】
[状態]:ダメージ(小)
[ポイント]:5
[装備]:グロック19@現実、ゴーグル
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品0~2(禪院直哉)、ランダム支給品1(マキマ)、
[思考]
基本:10人殺して『チェンソーマン』と一緒に帰る。
1:坂本太郎……賢そうな子だね
2:放送を待ち、坂本と映画を見る
3:もう一匹犬ができた。ポイントを集めてもらおう
[備考]
禪院直哉を恐怖心に付け込んで洗脳しました。
彼にポイントを集めさせて、献上させるルールを作るつもりです。
【坂本太郎@SAKAMOTO DAYS】
[状態]:疲労(小)
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×2
[思考・状況]
基本方針:誰も殺さずに脱出する。
1:放送を待って映画を見る
2:仲間を集める
3:マキマへの警戒心
[備考]
参加時期はラボ編終了以降(原作4巻以降)
※AM6:10から映画館で『呪術廻戦 0』が上映されます。
・・・
マキマを見送ってから、デンジは一心不乱にサイドカーの掃除をしていた。
近くのコンビニからホースを伸ばして汚れを流し、商品棚から洗剤やスポンジやらを持ち出して汚れた部分にぶちまけて擦る。
少しでも手を止めると、マキマの一言がまた聞こえてきそうだった。
―――今度は守ってくれるよね?
(どういうつもりで言ったんだろう。マキマさん……)
考えたくないと思いつつも、デンジの頭の片隅が思考する。
遊園地でパワーをいたぶっていた男に、デンジは一撃で打ちのめされた。
これまでも敵に不覚を取ったことは何度もある。
だが悪魔の力が何度でもデンジを復活させ、悪い奴らの血をチェンソーに吸わせてきた。
……座席の汚れが落ちれば、今度は渇いたタオルで水気を拭っていく。
……ビチャビチャになったタオルを絞っては、また水気を取っていく。
復活するまでの間に同僚たちが、仲間が、一般市民が死んだこともある。
全てを救う正義のヒーローを気取るのであれば、デンジにとって彼らは"救えなかった"人々だ。
(……いや別に、顔見知りが死んでこんなに糞ほど落ち込んだことなんか無かったよな。
姫野んセンパイの時は、まぁアレだったけど、アレだってアキの方が……)
……ビチャビチャになったタオルを絞っては、また水気を取って。
……はたと、水気を拭う手を止めた。
アキに比べれば、俺はそこまで悲しんでなかった気がする。
あれは俺よりアキの方が、あの美女と付き合いが長かったから、そう言うもんだと思ってた。
でもそれだけじゃないのかな。
目の前で助けられなかったことがよっぽど堪えてたり、したんだろうか。
俺はあの時、パワーを助けられるはずだった。
だから俺、こんなにへこんでるのか?
今こうしている間にも、アキも殺されていたり……。
いや、どうせ後で生き返らせるんだし……。
…………これはそういう話なのか?
頭の中がぐるぐると廻りだす。
胸の中がムカムカと暴れ出す。
もう、考えるのもメンドクセェ~気がしてくる。
「………………なんか……腹減ったな。
わかんねーこととか、難しいこと考えてると腹減る。
マキマさんに作ってもらったカレーとか、全部ゲボっちまったし……」
水気を拭いていたタオルを放り捨てて、デンジは映画館前の階段に座り込んだ。
手持ちのデイバックには非常食があるが、今の気分ではない。
それならばと、デンジはパワーのデイバックの中身を漁ってみる。
なにやらいい匂いがした。
「……うおっ」
匂いの元はバスケットに入った弁当箱。
中にはハンバーガーやら焼き魚、パスタ、カレーライスにサンドイッチに骨付き肉。
おまけにバスケットにはチョコレートとみかんも入っている。
明らかに一人で食べることを想定されていない。
乗り物酔いでまだ気分悪いし、処理した吐瀉物の匂いも、洗剤の匂いも鼻の奥に残ってる。
でもそういうことは全部気にならないくらいに、ともかく旨そうだった。
デンジは骨付き肉に手を伸ばし、かぶりついた。
「……うんま……」
すっかり冷めているが柔らかい。口の中に香辛料の刺激と肉の旨味が広がる。
咀嚼するたびに少しずつ違う旨味が溢れてくる。
表面のしょっぱさ、香ばしさ、脂の仄かな甘みが旨味を引き立てる。
こんな肉、食べたことない。
気づけばデンジは、夢中になって弁当に手を付けていた。
無茶苦茶な喰い方をした。
サンドイッチは口の中にパンパンに詰め込んだ。
変なかぶりつき方をして零れたハンバーガーの具は手で掬った。
カレーライスも手でいった。パスタも手づかみだ。魚は骨ごといった。みかんも皮ごといった。
涙を流しながら。
「ふぇ……んぐ……あぐ……」
頭に浮かんでくるのは、アキとパワーと囲んだ平凡な食事。
そして、ポチタと身を寄せ合って食べていた貧相な食事。
それから、マキマさんに振舞われたどこか覚えのある食事。
どれもこの弁当ほど美味しくはなかった。
でもなぜか、デンジは生涯で一番の食事を食べながら、過去の食事に思いを馳せていた。
「あァ」
そうかと。
別に調理なんてされていないだろうチョコレートを齧りながら、デンジは一人納得した。
暇があると頭にマキマさんの顔が浮かんでた。
でもそこには、前はずっとポチタが浮かんでたんだ。
ずっと一緒だったから気づいてなかったけど、大好きで幸せな顔が浮かんでたんだ。
そして今は、マキマさんと、アキと、パワーと、ポチタの顔が浮かんでるんだ。
「ポチタがいればそれでよかったのに、夢見ちまったのと同じか。
俺ァ、アキとパワーといられりゃそれで良くなってきてたんだ……。
マキマさんと一緒にメシが食えりゃ十分幸せだったんだァ……」
少し前までは、もう一人顔が浮かんでたけれど……。
なんて、そんなどうしようもないことも考えられるくらいには。
いままでになく落ち着いた気分だった。
混乱が極まって、もう何も考えたくない気分はすっかり消えて。
心が辛い思いに支配されていた感覚はすっかり失せて。
なんだか懐かしい感じがした。
『デンジ』
だから、頭に浮かんでたマキマさんとアキの顔が消えて、パワーがポチタを抱きかかえてるように見えるのは、絶っっっっ対に現実じゃないと冷静にわかった。
ポチタとパワーは会ったことないはずだから、これは思い出じゃなくて。
これは、シンソーシンリってやつだろうか。
ポチタは俺の中でずっと一緒だけど、ポチタと一緒に生きたかったとか。
パワーはぜってー生き返らせるけど、パワーを助けてやりたかったとか。
そういう願望がこういう幻覚を見せてんのかな。
前にも夢で見たことがある。
周り一面が暗い世界。
パワーが力いっぱい抱きしめているから、ポチタの顔が内側にスゴイめり込み方をしている。
「ポチタを絞め殺すなよ」
デンジの苦言に、パワーは得意げな顔をする。
『ニャーコはワシの猫じゃ。だからワシに抱かれるのが一番好きなんじゃ』
「それはポチタだし、ポチタは猫でもねェ」
『ここにはニャーコがおらんから、うちに帰るまでこいつがニャーコじゃ』
『勘弁してくれ……』
モゴモゴとポチタが抵抗している。
チェンソーらしい低いモーター音がかすかに聞こえる。
『デンジ』
腕に抱えたポチタの頭に顔をうずめるパワー。
不遜で傲岸で自由で勝手なパワーの雰囲気が、急にしぼんだように見える。
『ワシを殺したのはマキマじゃ』
「あ?」
デンジの意識が覚醒した。
映画館前の階段に座り込んで、空の弁当箱を抱えた姿勢で。
額に嫌な汗が浮かんでいる。
全身が夜明け前の寒さを知覚している。
それでもまだ頭は冷静だった。
意識のどこかがあの暗い世界を知覚していた。
「……ウソつくなよ」
『デンジ』
耳の奥の方で、今度はポチタの声がする。
……なんか苦しそうな声だから、まだ締め上げられてるんだろうか。
『まだ失っていない』
「……パワーのこと言ってんのか?
生き返らせてやるつもりだけど」
『まだ失っていない』
まだも何も、失ったのは確かだ。
だから取り戻そうとしてるんだから。
パワーがいた痕跡だって、今は手元にある名簿だけになってしまったのだから。
デイバックを逆さにして名簿を取り出す。
なんだかんだで初めて名簿に目を通すデンジ。
名簿に記された名前。
知らない名前には目が滑って、知ってる名前だけが浮かんで見える。
自分の名前、マキマ、アキ、パワー、そして。
「あ?」
『まだ取り戻せるんだ』
「…………………………レゼェ?」
【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:ダメージ(中、回復中)、困惑
[ポイント]:0
[装備]:ヘルメット
[道具]:基本支給品一式×2(デンジ、パワー)。ランダム支給品0~2(デンジ)、ランダム支給品0~2(パワー、武器ではない)
[思考]
基本:パワーを生き返らせてみんなで帰る。そして……。
0:レゼ、いんの? ここに?
1:パワーを殺したのが、マキマさん……?
2:出来れば悪いヤツを10人殺したい。
3:アキのことは、まあ、心配。
[備考]
闇の悪魔戦前からの参戦です。
自分の中のパワーの血に残るパワーの意識と意思疎通しましたが、いつでもできる状態ではありません。
パワーを殺したのはマキマだと聞きましたが、半信半疑です。
支給品のサイドカー付きバイク@アンデッドアンラックは映画館の正面に駐車されています。
・・・
「つまり、ほんのちょっとだけ違いのある絵を高速でめくると絵が動いて見えることを利用し、情景を映した精巧な絵を膨大な枚数用意することで、数刻もの間"動く絵"を鑑賞する施設、ということでいいのか?」
「うううううううううううん、たぶんそう!わからんけど!!」
映画館への道中、中世からやってきた武士のため、専門知識が無いながらも必死に『映画館』の説明を繰り広げていた祭里がようやく一定の成果を上げた。
フィルムの説明が中途半端になってしまったせいで、映画というよりは若干アニメの説明に近い気もしているが、もう祭里にそれを訂正出来るだけの元気はなかった。
もう東の空は白み始めている。
石神村からそこまで遠い道のりではなかったが、考えながらかつ話しながらの移動は予想以上に時間がかかった。
とはいえまずは最初の目的地、映画館が道のはるか先に見え始めていた。
「殺し合いの場に用意された映画館。
そこで鑑賞できる"動く絵"は、何かしらの意味があるのかどうか……」
「まあ普通に考えれば、すずや時行?さんの捜索に繋がるとは思えない。
けれど、主催側からの貴重な情報とも言えるし、時間があるなら見たいところではあるよな……。
普通に映画を上映してるだけなら、見てる暇はないんだけど」
映画という概念自体にまだ理解が浅い貞宗としては、ここは祭里の判断に従おうと考えていた。
時行の捜索に役立つ情報や、この殺し合いの盤上から脱するための知見を得られるならば、映画だろうと絵画だろうと鑑賞することに異論はない。
決して、観劇中に食されるという"ぽっぷこーん"や"ほっとどっぐ"なる食べ物に興味があるというわけでは無い。
判断を託された祭里としては、とりあえず映画館自体での情報収集はさほど重要視していなかった。
人が集まる可能性が高い施設に立ち寄るという、当初の目的通りだ。
「ひとまず最初の放送は映画館で聞こうと思う。
まぁ、食糧や備品……多少武器になりそうな物なんかはあるかもしれない。
多少建物の中も調べるとしても、そんなに時間はかけずに次かな……と、思ってます」
「えぇい、とってつけたような敬語は止せと言っておるだろう」
フンと不満げに鼻息を吹いて見せる貞宗。
「儂が貴様に作法を求めんのは、貴様が儂に態度で敬意を示しているからだ。
敵には奪うべき命として敬意を払い、身内には守るべき命として敬意を示す。
例え生きる時代、身分、年齢、性別の隔たりがあろうと、それが出来る貴様だからだ」
貞宗の言葉に、祭里は恐縮するばかりだった。
祭里としても、砕けた口調の方が気楽で助かる性分ではある。
とはいえ祭里にとって貞宗は、すでに身内も同然とまでに頼れる存在と認識している。
そんな敬意を示すべき相手に対し、自然と口調も丁寧になってしまうのは、日本人としての性だろうか。
「……まぁ、言葉遣いは追々でよかろう」
ふと、貞宗の声色が変化した。
その眼光は道のはるか先を見つめている。
「貞宗さん?」
「誰か、映画館の前に座り込んでおるな」
貞宗の言葉に祭里も映画館の方へ目を向けるが、夜明け前の暗がりの中ではまだ遠くの人影を見つけることも出来ない。
その代わりにと働く祭里の頭が、一つの悪い予想を打ち出していた。
映画館の前で座り込み、たむろする輩と言われ、現代人はある存在を想起する。
それは俗にいう、ヤンキーと呼ばれる輩のことだ。
礼節を重んじる中世の武士と、無礼の体現者のような現代のヤンキー。
そんな両者が邂逅することに、祭里の背筋に冷たいものが流れる。
「あー、貞宗サン」
「なんだ」
「もし仮になんでだけど……めっちゃ無礼な奴が出てきたからって、即切り捨てたりなんかしちゃったりは……しないですよね?」
「礼儀も知らん、敬意も払えん。そんな下賤な者にいちいち刀を抜いていては、それこそ武士の刀の重みも減るわい。矢も勿体ないしな」
貞宗の理性的な言葉に、祭里は胸をなでおろす。
とはいえ、貞宗の堪忍袋がチェンソーで両断される可能性は、客観的に見て非常に高いのだった。
【小笠原貞宗@逃げ上手の若君】
[状態]:健康
[装備]:スピードの弓と矢のセット@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考]
基本:北条時行を捕らえ、生きて領地へ帰る
1:北条時行を探し、とりあえず諏訪大社へ
2:時行と花奏すずの捜索を兼ねて人の多そうな施設へ立ち寄る
3:あの”わたあめ”なる甘味はとても美味であった……
[備考]
※参戦時期は36話後。
※名簿を確認したため、この場に北条の残党(時行)がいることを把握しました。
※自分の時代より未来の参加者がいることを知りました。
※異能の目により縫い目の坊主(羂索)は身体が死人であること。風巻祭里が男であることを感じましたが、今はそれは、気の迷いだと思っております。
※簡単にですが風巻祭里の祓忍のことや現代の知識を知りました。
【風巻祭里@あやかしトライアングル】
[状態]:健康
[装備]:屠坐魔@呪術廻戦
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考]
基本:ずすを守り生きて帰る
1:しばらくは小笠原貞宗と行動を共にする
2:すずと北条時行の捜索のため、人の多そうな施設で情報収集
[備考]
※参戦時期は73話後。
※自分の時代より昔の参加者がいることを知りました。
※自分が男だと言うことを貞宗には話していません
【支給品紹介】
【サイドカー付きバイク@アンデッドアンラック】
デンジに支給。
アンディと風子が組織(ユニオン)からの追跡を逃れる二人旅の際に使用していたもの。
なお、原作ではボイドによる強襲を受け登場からわずか4ページで大破していた。
【グロック19@現実】
禪院直哉に支給。
9ミリ拳銃、装弾数は15発。
腰回りに装着するヒップホルスターとセットで支給されている。
【サンジの手作り弁当@ONE PIECE】
パワーに支給。
ホールケーキアイランド編当時における麦わらの一味メンバーの好物が詰められたバスケット。
健やかな心身を形成するカマバッカ王国のバイタルレシピのノウハウが発揮された品。
『世界中の人間が100%毎日ミルクを飲めば世界から犯罪が消えるって…信じる!?』
最終更新:2025年08月11日 22:20