まだ見ぬ未来 ◆OmtW54r7Tc


「俺はルフィ、海賊王になる男だ!」

青年、モンキー・D・ルフィのそんな自己紹介に。

「……はあ?」

少年、伏黒恵は呆気に取られてこう返すしかなかった。

「海賊王?何言ってんですか」
「なんだよその顔?そんなのなれるわけねえって言いたいのか」
「いや、そもそも海賊王ってなんですか…」

こんなグダグダした会話がしばらく続いたが、ルフィの話を聞くうち、伏黒もようやくルフィが自分たちとは違う常識の世界の住人なのだと分かってきた。

「ゴールド・ロジャー…大海賊時代…悪魔の実、ですか」
「おう、それで俺は、ゴムゴムの実を食ったゴム人間だ」

そういってルフィは自身の腕をゴムのようにビヨーンと伸ばして見せた。
他にも、ルフィの仲間には、ヒトヒトの実を食って人語を発するトナカイ人間や、ヨミヨミの実を食ってガイコツの姿で蘇ったゾンビ人間みたいなのがいるらしい。

(パンダがいるうちが霞むくらい愉快な世界だな…)

そんなことを思いつつ、伏黒は考える。
悪魔の実とやらの能力は随分と多彩だ。
それならばもしかして…

「あの…ルフィさん、一つ聞きたいんですけど…悪魔の実の能力の中に、時間を操るタイプの能力ってありますか?」
「時間…?トキトキの実のことか?」
「あるんですか!?」
「ああ、俺も昔話として聞いたことがあるだけだけどな、なんでも人を未来に飛ばせる能力らしいぜ」
「未来に?過去へは飛ばせないってことですか?」
「俺だってよくは知らねえけど、侍たちは未来から来たって言ってたぜ」

そうしてルフィは侍たちから聞いた光月おでんの武勇伝を伏黒に聞かせた。
侍たちは主君であるおでんの無念を晴らすため、黒住オロチや、この殺し合いにも招かれているカイドウを倒そうとしているらしい。
トキトキの実の能力者であるトキは死んだが、悪魔の実は能力者の死亡後再びどこかに現れるのだそうだ。

(過去に飛ばしてやり直しって手を取らなかったところから見ても、飛ばせるのは未来だけと考えた方がいいか…?となると、トキトキの実がこの殺し合いにて使われた可能性は低い、か?)

※※※※※※※※※

伏黒がトキトキの実、というより、時間に関係する能力について聞いた理由。
それは、彼がこの場に呼ばれてから感じた、3つの疑問に起因していた。

まず一つ。
死滅回游が開始されて間もないのに、何故こんな殺し合いを新たに始めたのか。
この殺し合いに呼ばれる前、羂索は死滅回游という、これとよく似た催しを日本全国にて仕掛けた。
詳細については省くとして、この死滅回游は開始から間もなく、というより下手したら正式に開始されたとも言い難く、とても羂索の目的が果たされたとは思えない。
それなのに、何故新たにこのようなことを始めたのか。

二つ目。
伏黒が知る名簿に書かれた名前。
その中に、死んだ者の名前があることだ。
真人、七海建人、そして…

(伏黒甚爾…多分、俺の親父、だよなこれ)

伏黒恵…彼は死んだ父親の顔どころか、名前すらも知らない。
しかし、少し前に禪院甚爾という名前を聞いている。
その名前を聞いた時は、何か引っかかるものを感じつつもピンと来ていなかった。
しかし、禪院甚爾と伏黒甚爾…これを別人として見るのは流石に無理がある。
そして、禪院と伏黒の性を持つ人物といえば…父くらいのものだろう。
ともかく名簿には、死者の名前があった。
まあ真人は羂索に吸収されたらしいので復活させようと思えばできるかもしれないが、七海と甚爾は確実に死んでいるはずなのだ。

そして三つ目。
それは、羂索が残した言葉だ。

『忌々しい六眼に介入されないためとはいえ、我ながら面倒な結界を作ったものだよ』

六眼使い…自身の手で封印した五条悟の介入を、何故警戒している?


これが、伏黒が抱いた3つの疑問。
そして彼は、これらの疑問に対して、一つの仮説を立てた。
それは…

(あの羂索は、俺が知る羂索よりずっと未来の存在なのかもしれない)

未来に、五条悟は封印から解放される。
そして、死滅回游は羂索の目的が果たされる前に瓦解してしまった。
その為羂索は新たな計画を立て、俺たちを過去の世界から呼び寄せる、あるいは自身が過去に飛び、ルフィ達異世界の人間も巻き込んで、死滅跳躍を開始した。
こう考えれば、伏黒の疑問にも説明がつく。
過去の自分たちや異世界の人間を巻き込んだ理由というのは謎だが。
時間を操る手段は、そういう術式を持った呪詛師でも雇ったのではと考えていたが、ルフィから異世界の存在や悪魔の実の話を聞いて、別の可能性もあるかもしれないと考えたのだ。
それが、伏黒のルフィへの質問の意図だった。

「そうだルフィさん。もう一つ聞きたいんですが、並行世界や異世界を渡るような能力には心当たりがありますか?」
「ヘイコウセ貝?イセ貝?それってどんな貝だ?旨いのか?」
「…なんでもないです」
「悪魔の実について聞きてえなら、俺よりサンジの方が詳しいと思うぜ。あいつ、子供の頃に悪魔の実の図鑑を読んでたって聞いたことあるし」
「図鑑…そんなものがあるんですか」

※※※※※※※※※

「え、一緒に来ねえのか伏黒?」

伏黒の言葉に、ルフィはキョトンとする。
現在彼らがいるのはG-6。
ルフィは、ここから西にある鬼が島に向かおうとしていた。
しかしそれを話すと、伏黒は別行動をしようと提案してきたのだ。

「俺も後からそっちに向かおうとは思いますけど…その前にこの町や、北東にある町をもう少し探索しておきたいと思います。特に…図書館が気になる」

この殺し合いに設置された図書館が、普通の図書館とは思えない。
先ほどルフィが言っていた悪魔の実の図鑑や、それ以外にもルフィの世界や、あるいは他にもあるかもしれない異世界の情報が手に入るかもしれない。
それを差し引いても、町は人が集まりやすい場所だ。
探索しておいて、損はない。

「そっか、分かった。それじゃあまた後でな!」

こうしてルフィは仲間や敵との再会を目指して鬼が島へ。
伏黒は仲間や情報収集の為の探索へ。
それぞれの目的の為に、二人は別の道を歩むのであった。
殺し合いの打破という、共通した最終目的の為に。

【G-6/町/1日目・未明】

【伏黒恵@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いの打破
1:この町や北東の町の探索。特に図書館が気になる
2:一通り探索を済ませたら鬼ヶ島でルフィと合流
[備考]
※参戦時期は146話後、虎杖と共に秤先輩の所へ向かっている最中
※この死滅跳躍を開催した羂索が未来の存在で、未来では五条が復活し死滅回游が何らかの形で失敗したのではと考えています。

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いをぶっつぶして元の世界に帰る
1:サンジとの合流やカイドウを倒すために鬼ヶ島へ向かう
[備考]
※参戦時期は鬼ヶ島突入直前


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と或る逆光のRendez-vous 時系列順 鬼ごっこ

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最終更新:2025年08月11日 22:10