当代最強のウマ娘。
そんな呼び声は過去のもの。
神話の神々の名で呼ばれる星たちが軌道を描くように心躍るレースで世間を賑わせてきた私たち、星の世代は、台頭してきたティアラ・グローリア世代に蹂躙され--ーー皆、ターフを去って行きました。
そんな呼び声は過去のもの。
神話の神々の名で呼ばれる星たちが軌道を描くように心躍るレースで世間を賑わせてきた私たち、星の世代は、台頭してきたティアラ・グローリア世代に蹂躙され--ーー皆、ターフを去って行きました。
同期のティアラ・クイーンは、あの有馬散花を目撃したショックで、レースへの情熱を失ったようでした。引退してすぐに伴侶に恵まれ、幸せな家庭を築いているというのがせめてもの救いでしょうか。
スプリンターは春のシーズンに2冠を獲りました。どちらも1番人気が斜行降着となったので。内容としては口が裂けても勝ったとは言えません。お溢れだとしても冠は冠だ、と考えられたらよかったのかもしれませんが、誇り高い彼女にはそんなことは許せなかったらしい。真っ向勝負に勝てず、何が勝利だと。虚しさのあまり、安田記念を最後に走るのをやめてしまいました。
クラシック三冠を分け合ったステイヤーは、次の春こそは盾の栄誉をと、これ以上ない仕上がりで準備していたのに。黒い死神が全てを掻っ攫っていきました。
オーバーワークを止めるように何度も言ったよ。もっと強く言えばよかった。なぜそんな無理をしたのか。
「あんな風に追い抜かれて、轟音と共に背中が遠ざかって。今までの自分が、自分だけじゃない。世代ごと否定されるみたいでさ、……あの時、もう無理だって思った自分が……悔しくて」
気持ちは痛いほどわかりました。何も責められなかった。彼女はもう全盛期のようには、あの菊花賞のようには、走ることができなくなりました。
オーバーワークを止めるように何度も言ったよ。もっと強く言えばよかった。なぜそんな無理をしたのか。
「あんな風に追い抜かれて、轟音と共に背中が遠ざかって。今までの自分が、自分だけじゃない。世代ごと否定されるみたいでさ、……あの時、もう無理だって思った自分が……悔しくて」
気持ちは痛いほどわかりました。何も責められなかった。彼女はもう全盛期のようには、あの菊花賞のようには、走ることができなくなりました。
みんな、蹄鉄を脱いで、私を置いていってしまった。
自信を打ち砕かれて、心が折れそうだったけれど、足を止めるわけにはいきませんでした。プラネットセブンがいる星の世代が弱かったなんて、そんなこと誰にも言わせない。それには、自分が何としても、せめてあとひとつ、勝利を掴まなければいけなかった。
自信を打ち砕かれて、心が折れそうだったけれど、足を止めるわけにはいきませんでした。プラネットセブンがいる星の世代が弱かったなんて、そんなこと誰にも言わせない。それには、自分が何としても、せめてあとひとつ、勝利を掴まなければいけなかった。
昨年のJC、有馬記念覇者のサクラグローリア。今年春の盾を獲ったシンボリレクイエム。そのシンボリレクイエムを破って春のグランプリを獲ったパストラル。
3人とも、今日ここにはいない。
3人とも、今日ここにはいない。
本命不在とは失礼な。前年度覇者を忘れたか。そうでなくとも、皆が自分こそが1番だと思ってゲートに入るのに。それでも、浅ましくも、今回がチャンスだと考えてしまいました。年末のグランプリを諦める気はないけれど、私がもう一度勝てるとしたら今日だったのです。
そうして臨んだ一世一代の勝負。油断も慢心もなかった、はずでした。神話の神々の名を冠する星を巡る、夜空のように青い勝負服でもう一度、1番にゴールにたどり着いて、私たちの強さを証明しなければいけなかったのに。できることは全てやりました。
それなのに、どうして届かない?
夢を追って先頭を行くあなたは、どうしてこんなにも眩しい?
夢を追って先頭を行くあなたは、どうしてこんなにも眩しい?
「地獄の白昼夢」あなたは本当に強かった。
私は結局、自ら輝く恒星にはなれませんでした。
私は結局、自ら輝く恒星にはなれませんでした。
「そんなことない!」
                                
