01 ウェルカム
PM6時。
ちょっぴり涼しいこの部屋で直人がおやつのスナックを食べながら、ノートパソコンの画面に集中している。
片手でキーを叩き、もう片方の手で袋を手探りにあさって、口に運ぶ。
それが1時間近く体制一つ変わらずに進行している。
一体、なにをそんなに集中しているのだろう。
彼は今、話題沸騰中のコミュニティーサイト、「デッド・マーブル」のチャットサービスを利用し、離れた地域の友人と文字で会話しているのだ。
直人のハンドルネームは「ナオ」、言うまでもなく本名からの由来である。
「お、ダイがチャットルーム開設してやがる。入るか」
直人はチャットでの友人の1人、大樹を見つけ、彼の作ったチャットルームを発見する。
大樹のハンドルネームは直人同様、名前の一部を取り、「ダイ」。
「ルームタイトル『暇な人話そう』…か。ダイらしいな」
独り言をつぶやきながらダブルクリックで入室。
慣れた手つきでカチャカチャと文字を入力し、挨拶をする。
ちょっぴり涼しいこの部屋で直人がおやつのスナックを食べながら、ノートパソコンの画面に集中している。
片手でキーを叩き、もう片方の手で袋を手探りにあさって、口に運ぶ。
それが1時間近く体制一つ変わらずに進行している。
一体、なにをそんなに集中しているのだろう。
彼は今、話題沸騰中のコミュニティーサイト、「デッド・マーブル」のチャットサービスを利用し、離れた地域の友人と文字で会話しているのだ。
直人のハンドルネームは「ナオ」、言うまでもなく本名からの由来である。
「お、ダイがチャットルーム開設してやがる。入るか」
直人はチャットでの友人の1人、大樹を見つけ、彼の作ったチャットルームを発見する。
大樹のハンドルネームは直人同様、名前の一部を取り、「ダイ」。
「ルームタイトル『暇な人話そう』…か。ダイらしいな」
独り言をつぶやきながらダブルクリックで入室。
慣れた手つきでカチャカチャと文字を入力し、挨拶をする。
ダイさんの発言:お、なおじゃん!待ってたぜ
ナオさんの発言:こんばんはー!あーバイト疲れたぁ…
ダイさんの発言:俺も明日仕事だ、ダルいなぁ
ナオさんの発言:なんか最近毎日が同じように感じる…なんかおもしろいことないかなぁ
ダイさんの発言:なぁ、デッドマーブルのトップページ更新されたの知ってる?
ナオさんの発言:…え?
ナオさんの発言:こんばんはー!あーバイト疲れたぁ…
ダイさんの発言:俺も明日仕事だ、ダルいなぁ
ナオさんの発言:なんか最近毎日が同じように感じる…なんかおもしろいことないかなぁ
ダイさんの発言:なぁ、デッドマーブルのトップページ更新されたの知ってる?
ナオさんの発言:…え?
「マジかよ。メッチャ久しぶりじゃねぇか」
その報告に思わずタイピングを止め、画面上の大樹の発言に少々見入ってしまう直人。
そして、カーソルをチャット画面から外し、トップページを素早くチェックした。
確かに更新されていた。直人はその内容について話そうと再びチャット画面を開く。
その報告に思わずタイピングを止め、画面上の大樹の発言に少々見入ってしまう直人。
そして、カーソルをチャット画面から外し、トップページを素早くチェックした。
確かに更新されていた。直人はその内容について話そうと再びチャット画面を開く。
ナオさんの発言:これってなんかのイベントなの?
ダイさんの発言:らしいね、よくはわかんないけど本当だったらすごくね?
ダイさんの発言:らしいね、よくはわかんないけど本当だったらすごくね?
彼等が目にしたこのサイトのイベントとは一体なんなのであろう。
実はそれは、[仲のいいユーザー同士で実際に会って楽しく話してみませんか?]という前代未聞かつ、想定外のイベントだった。
最初はその突然すぎる内容に誰もがやる気どこらか信じるそぶりすら示さなかった。
だが、期間が迫るにつれ具体化していくサイト側に、利用者側は少しずつ耳を傾けていき、距離や地域の関係で会いたくても会えない団体やネットを通して交際をしている男女を深く期待された。
そして、イベントの知らせがアップされて2ヵ月後、直人や大樹も含むほとんどのユーザーがそれを受けれ参加申し込みを済ませることになる。
「しかし楽しみだなぁ。再来週かぁ…会場まで設けて交通費まで負担してくれるなんて太っ腹だなー」
直人が電話の相手に話をしている。
電話の相手は大樹である。
彼等の会話手段はチャットだけではなかった。
直人と大樹は互いの顔も写真で交換しあい、この通り携帯のメールアドレスや電話番号も交換済みのようである。
ここまでくれば触れ合ってないだけでほとんどリアルの関係である。
そんな二人が参加する気満々の今回のビッグイベント。
内容はサイト側の営業者が、宿泊施設、開催場所であるドームを1週間貸切状態にし、利用者の方々が自由に交流したり予め用意されたゲームやステージライヴで盛り上がるというもの。
そしてイベント終了間際に数週間前にサイト上で募集された、特別イベント参加権の当選者が発表される予定である。
当選した参加者とその団体にはなにかあるらしいが、どんな商品が貰えるのかは当選までの秘密になっている。
「なぁ、他の奴とも合流の約束しようぜ」
直人が言った。
「だったら、ハヅとかインパラも誘っちゃおうか!」
「おぉ!いいねいいねー」
そんなことを話しながらあっという間にイベント当日がやってきた。
実はそれは、[仲のいいユーザー同士で実際に会って楽しく話してみませんか?]という前代未聞かつ、想定外のイベントだった。
最初はその突然すぎる内容に誰もがやる気どこらか信じるそぶりすら示さなかった。
だが、期間が迫るにつれ具体化していくサイト側に、利用者側は少しずつ耳を傾けていき、距離や地域の関係で会いたくても会えない団体やネットを通して交際をしている男女を深く期待された。
そして、イベントの知らせがアップされて2ヵ月後、直人や大樹も含むほとんどのユーザーがそれを受けれ参加申し込みを済ませることになる。
「しかし楽しみだなぁ。再来週かぁ…会場まで設けて交通費まで負担してくれるなんて太っ腹だなー」
直人が電話の相手に話をしている。
電話の相手は大樹である。
彼等の会話手段はチャットだけではなかった。
直人と大樹は互いの顔も写真で交換しあい、この通り携帯のメールアドレスや電話番号も交換済みのようである。
ここまでくれば触れ合ってないだけでほとんどリアルの関係である。
そんな二人が参加する気満々の今回のビッグイベント。
内容はサイト側の営業者が、宿泊施設、開催場所であるドームを1週間貸切状態にし、利用者の方々が自由に交流したり予め用意されたゲームやステージライヴで盛り上がるというもの。
そしてイベント終了間際に数週間前にサイト上で募集された、特別イベント参加権の当選者が発表される予定である。
当選した参加者とその団体にはなにかあるらしいが、どんな商品が貰えるのかは当選までの秘密になっている。
「なぁ、他の奴とも合流の約束しようぜ」
直人が言った。
「だったら、ハヅとかインパラも誘っちゃおうか!」
「おぉ!いいねいいねー」
そんなことを話しながらあっという間にイベント当日がやってきた。
期待とそれ以上の緊張を抱えながら直人は主催地向けのバスに乗る。
実はこのバスも主催側の用意したもので運転手にハンドルネームとサイトにて応募者のみに公開された合言葉を言えば乗車することができる
そしてバスが走り出しておよそ2時間。
座席で思わず熟睡してしまった直人を起こすかのように歓喜の声が段々と近くなる。
バスが開催場の横を通っていたのだ。
直人は眠そうな顔で窓を覗くが、すぐにその瞳はパッチリと見開いた。
大きなバルーンが幾つも空に放たれ、花火の音と楽器隊の演奏が辺りに響く。
その光景はまるで巨大なパレードのようでとてもインターネットサイトによるイベントによるものとは思えないものだった。
「すっげぇ…」
その豪華さに思わず声を上げてしまう直人。
バスを降り、係員から会場のマップを配られる。
直人は早速大樹に電話をかけて合流を試みた。
「もしもしダイ!?俺きたぞ!マジすごいって!」
あまりの興奮に落ち着きを保ってられない直人。
「おう!お前どこだよ、俺今バス降りてすぐの時計台前だよ」
直人はそれに答えもせず携帯から顔を放し、その時計台をさがす。
「あった!今いくよ!」
直人は携帯を畳み、見つけた場所に早歩きで向かう。
そこには見覚えのある顔つきの人物が立っていた。
それを確認したのか、直人は足を止めその男と目を合わせ、再び携帯に話しかけた。
「…もしもし?」
すると男はクスッと笑って手に持ってる携帯を顔にあてた。
「もしもし」
それは明らかに大樹の声で、口の動きも同じだった。
その一言に直人は笑顔を堪えきれなかった。
携帯の電源を切り、残った歩数を踏みしめる。
その男は紛れも無く大樹だった。
「うわぁすげえ!本当にダイかよっ!」
「ナオだ!会いたかったぜおいー!」
必然でもなく偶然でもない出会いに戸惑うも、早くもこのイベントの醍醐味を味わった直人と大樹。
冷めることを知らない興奮と嬉しさが次々と溢れ出る。
午後3時、会場全体に放送が流れた。
「ご来場の皆様、只今からサイトの方でお伝えして頂いた希望のお客様同士の合流団体化を行わせて頂きます。
係員の指示に従ってハンドルネーム、団体名明記の用紙を順番に提出してください」
直人と大樹はこれまでの回想や出来事を語り合いながら場の流れに従った。
「ナオ様と、ダイ様ですね。4番の旗までどうぞ」
係員のチェックが終わり、誘導されるがままに指定場所に向かう直人と大樹。
そこに居たのは葉月と大志だった。
この2人も無論、チャット内ではよく話し、仲も良かったグループの人間である。
「うわー!リアルナオだー。すごぉ」
葉月が早速話しかけてきた。
彼女のハンドルネームは「ハヅ」。
だが、ほとんどの連中から本名で呼ばれる始末。
サイトにアクセスする時間もバラバラな神出鬼没な女子高生。
「ダイ、ある意味初めまして。俺わかるよね?」
「おぉ!タイシか」
斉藤大志。ハンドルネームは「タイシ」。
特にダイとは仲が良く、お互いを知っているという面では直人にも負けない。
こうして4人の合流が実現された。
つい昨日まで、お互いかなり離れた土地から文字や音声だけの会話で成り立っていた関係。
今ではほんの数センチの距離である。
話題は尽きることなく、4人は笑いに笑いを重ね人目気にせず大声で互いの合流を喜んだ。
まだメンバーは2,3人いる。
当分彼等の顔から喜びが消えることはないだろう。
しかし、本物の感情変化はまだまだこれからである。
彼等が本当に見るものは「今」の奇跡だけであろうか。
そんなものはすぐに彼等自身が知ることになるだろう。
実はこのバスも主催側の用意したもので運転手にハンドルネームとサイトにて応募者のみに公開された合言葉を言えば乗車することができる
そしてバスが走り出しておよそ2時間。
座席で思わず熟睡してしまった直人を起こすかのように歓喜の声が段々と近くなる。
バスが開催場の横を通っていたのだ。
直人は眠そうな顔で窓を覗くが、すぐにその瞳はパッチリと見開いた。
大きなバルーンが幾つも空に放たれ、花火の音と楽器隊の演奏が辺りに響く。
その光景はまるで巨大なパレードのようでとてもインターネットサイトによるイベントによるものとは思えないものだった。
「すっげぇ…」
その豪華さに思わず声を上げてしまう直人。
バスを降り、係員から会場のマップを配られる。
直人は早速大樹に電話をかけて合流を試みた。
「もしもしダイ!?俺きたぞ!マジすごいって!」
あまりの興奮に落ち着きを保ってられない直人。
「おう!お前どこだよ、俺今バス降りてすぐの時計台前だよ」
直人はそれに答えもせず携帯から顔を放し、その時計台をさがす。
「あった!今いくよ!」
直人は携帯を畳み、見つけた場所に早歩きで向かう。
そこには見覚えのある顔つきの人物が立っていた。
それを確認したのか、直人は足を止めその男と目を合わせ、再び携帯に話しかけた。
「…もしもし?」
すると男はクスッと笑って手に持ってる携帯を顔にあてた。
「もしもし」
それは明らかに大樹の声で、口の動きも同じだった。
その一言に直人は笑顔を堪えきれなかった。
携帯の電源を切り、残った歩数を踏みしめる。
その男は紛れも無く大樹だった。
「うわぁすげえ!本当にダイかよっ!」
「ナオだ!会いたかったぜおいー!」
必然でもなく偶然でもない出会いに戸惑うも、早くもこのイベントの醍醐味を味わった直人と大樹。
冷めることを知らない興奮と嬉しさが次々と溢れ出る。
午後3時、会場全体に放送が流れた。
「ご来場の皆様、只今からサイトの方でお伝えして頂いた希望のお客様同士の合流団体化を行わせて頂きます。
係員の指示に従ってハンドルネーム、団体名明記の用紙を順番に提出してください」
直人と大樹はこれまでの回想や出来事を語り合いながら場の流れに従った。
「ナオ様と、ダイ様ですね。4番の旗までどうぞ」
係員のチェックが終わり、誘導されるがままに指定場所に向かう直人と大樹。
そこに居たのは葉月と大志だった。
この2人も無論、チャット内ではよく話し、仲も良かったグループの人間である。
「うわー!リアルナオだー。すごぉ」
葉月が早速話しかけてきた。
彼女のハンドルネームは「ハヅ」。
だが、ほとんどの連中から本名で呼ばれる始末。
サイトにアクセスする時間もバラバラな神出鬼没な女子高生。
「ダイ、ある意味初めまして。俺わかるよね?」
「おぉ!タイシか」
斉藤大志。ハンドルネームは「タイシ」。
特にダイとは仲が良く、お互いを知っているという面では直人にも負けない。
こうして4人の合流が実現された。
つい昨日まで、お互いかなり離れた土地から文字や音声だけの会話で成り立っていた関係。
今ではほんの数センチの距離である。
話題は尽きることなく、4人は笑いに笑いを重ね人目気にせず大声で互いの合流を喜んだ。
まだメンバーは2,3人いる。
当分彼等の顔から喜びが消えることはないだろう。
しかし、本物の感情変化はまだまだこれからである。
彼等が本当に見るものは「今」の奇跡だけであろうか。
そんなものはすぐに彼等自身が知ることになるだろう。