主従関係
そこは限りなく和風なお屋敷であった。
しかし、日本ではない。それは、落ちものの文献を参考につくりあげた模倣品であり、そこに住んでいるの異形の生き物。
そのお屋敷は広かった。私立の小学校ほどであろうか。3分の1ほどをしめる屋敷と熱帯のような庭で構成されていた。
しかし、そこにはたった二人しか住んではいなかった。異形の人と、落ちものであるヒト。
人の種族は猫。性別は女性で髪は紫、腰にまで届く長髪と紫の瞳。背丈は160あるかないかで、身につけているのは和服。
そして、何よりも特徴的であるのはその体に何本もつながれた医療用のチューブ。
彼女は幼い頃から病弱でありこの屋敷から出たことがなかった。
そんな彼女に両親はヒトを送った。普段自分たちは家にいないからと、とても有能なヒトを探してきたと。
人見知りな君のためにこの屋敷にはこのヒト以外の使用人はいないからと。
彼女の眼の前に連れてこられたのは青年であった。大学生だろうか。慎重は彼女よりも30cmは高いだろう。
空手という武術をたしなむその体は無駄な筋肉がなく細身だ。
しかも秀才かつ人格にも何一つ問題がない。財政難の前の主人は泣く泣く手放したらしい。
短髪の黒髪、鋭い目、屈強な体躯。しかし、彼の柔和な笑顔が威圧感を感じさせなかった。
彼女は、自分とお揃いの和服を着せられていた彼に聞いた。
「恨んではいないか?」
彼は答えた。
「僕は元の世界でも医者だった。人が救えるならどこにいようとかまわない。どんな扱いでもかまわない。人を救うことに意義がある」
彼女、蜜柑には彼の達観した世界観はよく分らなかったが、その答えをきいた瞬間に彼、神名に恋に落ちてしまった。
朝、鶏が鳴く。
「お嬢様、食事の用意ができました」
蜜柑の部屋に訪れた神名の手にはお粥の入った鍋が。
神名はそれを七輪の上に置き、椀にお粥をよそい始める。
もそもそ、布団がうごめく。
「お嬢様、今日はいい天気です」
神名の言葉に、蜜柑は多少めんどうそうに答える。
「・・・分かっている」
「起きてください、お粥が冷めてしまいます」
「冷めたほうが良い。私は猫舌なのだぞ?」
「ダメです。薬の成分が変わってしまいます」
「むぅ・・・」
蒲団から出てきた蜜柑を、神名が優しく抱き抱える。お姫様だっこのような格好にする、チューブがひっかからないように細心の注意をはらわなくてはならない。
蜜柑の体温が上がる。きっと病気のせいだけではない。
「どうぞ」
差し出されたレンゲにには湯気をあげるお粥が。
「熱いだろう・・・?」
下からじっと見つめられた神名は、観念したように、しかし楽しそうにお粥をふぅふぅと冷ます。その吐息が蜜柑の耳にかすかにかかる。
「はぁっ・・・!!」
「どうされました?」
意地の悪い笑み。
「お前・・・わざとだろう?」
「何のことやら」
そういって神名はレンゲを差し出す。十分に冷めたそれを。
「・・・だめだ。もっと冷ませ」
「もう十分冷えています。これ以上は本当に薬の」
神名の主張は、嘘を強く掴む手に遮られる。
「もっと・・・ふぅふぅしてくれ」
すでに泣きそうな蜜柑を見た神名は、七輪の火をつけ、お粥を日にかける。
その間蜜柑はもどかしさに耐えていた。器用に片手で火をつける神名の、器用に片手で尻尾をいじってくるその感覚に。
けっして強くはないが、無視もできない。いつもこうやって攻めてくる。
火をつけ終えた神名は、蜜柑を強く抱きよせその耳に息を吹きかける。
「はぁん・・・」
片手がおなかをやさしく撫で、片手は尻尾のねもとをこする。蜜柑の両手は紙名を強く強く抱きしめ、その腰は秘部を彼にすりつけている。
蜜柑の体に何本も繋がれていたチューブ。それはどこかの国の魔法によって精製された特殊な薬を投与し続けるためのものであったが、神名の改良で今はリストバンドのよう に固定された細いチューブのみとなっていた。
この神名の作り上げた技術は蜜柑の父方の経営する笹ノ葉コンツェルンに莫大な利益をもたらしているのだが、蜜柑自身にはそんなことはどうでも良かった。
蜜柑がこの技術に感謝しているのは神名との閨事が行えるようになったことのみである。
「…あっ、ん…。神名、許して……」
ことが始まってからもう数分立っているはずなのに両名の衣服にこれといった乱れた様子はない。こする音、くちゅくちゅという卑猥な音が響いているのみ。
「許す…?何をですか?お嬢様」
やはり、意地の悪い笑み。
病弱で体力のない蜜柑にはもう体を擦り付ける体力すら残ってはいない。しかし愛する人への欲情が途絶えるわけもなく、体を密着させ続けている。神名もまた彼女が密着しやすいように多少無理のある体勢を続けるために、自力でいじることのできないその体には愛する人の体温がひたすらに移り続けていた。
その熱を少しでも冷まそうとしているかのように愛液があふれ続ける。
「助けて…神名」
イキそうで、イケない。しかし、イクのは時間の問題。何度もじらされ続け開発された蜜柑のからだは、耳や尻尾をいじるだけでイケてしまう程にいやらしくされている。
彼女の小さな体を開発した張本人である神名は、わずかな時間で彼女をイカさることが可能にもかかわらずじらす。それは彼の趣味でもあったが、体力のない主人との閨事を 最大限楽しむための手段でもあった。故に、とことんずらす。
こすることをやめ、きゅっと尻尾を強く握る。
「はにゃん!!あ…あっ!!」
紫の瞳が大きく見開かれる。ただ一度こすられればイケるのに、イカてはくれない。
「おねが…こすって!!尻尾,私の!!!!」
「ダメです」
「んぁ…、なんで?イカせて、おね、がい!!」
「こんなに早くイってしまうとつまらないでしょう?」
耳元でささやくその吐息に頭が真っ白になる。
もぅ、本当にイってしまいそうだ。
「?!きゃぁ!!」
突然、神名が体勢を入れ替えた。左腕を蜜柑のおなかにまわし四つん這いの姿勢で固定する。
右腕で蜜柑の耳が自分を向くように調節すし、ささやく。
「イキたいのですか?」
「はぁ…はぁ…イカせて」
神名が息を吹きかける。
「あ!!あぁ!!ダメ!!イク!!いっちゃう、イクよぉ!!にゃ…はぁん!!」
耳に息を吹きかけられただけのもどかしい絶頂、それが終わらないうちに、神名の手が股間へと動き、ようやくパンツをずらす。
その指はくにゅくにゅと入口をかすめているだけではあるが、余韻が抜けきらない蜜柑にとって十分な脅威であった。
「だめぇ!!イっ…!!イッたばかりなのに、イッタばっかりなのに!!はにゃぁん!!」
少しの休憩もなく続けざまに与えられた絶頂。もはや布団には乾いていた時の面影はない。
「あ…はぁ、もう、ダメだよぅ…」
「そんなことありませんよ」
「え?きゃぁ!!」
神名は胡坐の姿勢をとり、その足の間に蜜柑を体育座りの恰好で座らせる。体が冷えてしまわないように自分の服を使い蜜柑の体をふきとり、パンツを完全に脱がせる。
「はぁ、はぁ…。神名、限界…」
確かに彼女の体力は限界であった。病弱な彼女にこれ以上の行為は無謀なはずだったのだが。
「大丈夫ですよ」
「にゃ…はぁ…、んっ」
こうして耳元でささやかれてしまうと蜜柑に抗うすべはない。今までこの部屋から出たことのない蜜柑にとって唯一の娯楽でもあるこの快楽を、体は貪欲に求める。
体を強く抱きしめられるだけで体温が上がり続けてしまう。もう自分の秘所を濡らす体力すら残っていないというのに、どうしてもうずいてしまうのだ。
「神…名ぁ、私…」
気力を振り絞り顔を上げ、神名を見つめる。
「分かってますよ。でも、その前に」
例えどんな状況であろうとも神名が蜜柑への気遣いをなくすことはない。のどの渇きを潤すためと体力の回復を待つためにお粥と一緒に持ってきていた柚子湯を蜜柑に口うつしで飲ませる。
「んぅ…、ふぅ。神名、一人で…飲めるよ」
「それでは僕の楽しみがなくなってしまいます」
「そんな、んっ」
こく、こく、こく。ゆっくりと液体を飲み干していく音にだんだんど舌のこすれあう音が混ざる。
「ん…ぷはっ、神名、苦しいよ」
「でも、気持ちいいでしょう?」
「んう…」
気持ちいのは確かだ。しかし、あまり続けると蜜柑が苦しいのも事実。神名は蜜柑の息が本当に苦しくなる前には口づけをやめ、小ぶりな胸を揉み始める。
「あ、にゃぁ…ん!!」
徐々に指は激しさをます。ただなでるだけだった手のひらは胸全体をやや強くもみ、その指は小さな、しかししっかりと自己主張をする突起をこする。
「あ、そこ…やぁ…」
指一本動かせない蜜柑はそれでも神名に体を密着させようとする。それに答えるように神名は蜜柑のやわ肌を直に撫でまわし始めるが、やはり服をはだけさせることはない。
「神名…」
「はい?」
「もっと激しくしても良いぞ?」
「これで十分です」
「っあ!!…でも、ふつうはもっとすごいんだろう?私は、この部屋から出たことがないから、エッチっていうのがどんなのかはよく分からない。でも、その…。一度だけふ
すま越しに聞いた母様と父様の…その、それは、」
「お嬢様、これにはいろいろな楽しみ方があるのですよ。ですから、これで良いのです」
「そうなのか?」
「ええ」
蜜柑は、神名以外を知らない。本番というものの存在も、フェラなどという女性主体の動きも知らない。故に神名の言いなりになってしまってはいるが、女性としての本能だ ろうか。言葉にできない焦燥感のようなものを感じていた。
それを理解できない神名ではない。ある種の達観した人生観を持つ彼が蜜柑の体に無茶な行為を要求することはありえないことだが、蜜柑自身がそれを望むのであればかなえ れる限りかなえてやりたいと考えている。
ふいに、神名の手が止まる。
「…え?」
ものほしそうな蜜柑の目。
「それなら、お嬢様。多少むちゃをしていただけますか?」
蜜柑にとって初めての出来事、愛する人から求められるということ。
「…!!分かった…。好きにしてくれ」
求められていると分かっていても、蜜柑は自分が主体になるということを知らない。神名もまた教える気はない。
神名が、唯一の身につけていた西洋の下着を脱ぎ棄てると、15センチはあろうかといういきりたつそれが露出する。
蜜柑の知識にはないそれを、素股の要領で彼女の股間の下に滑り込ませ、両足を持ち上げて開脚の姿勢をとらせる。
今蜜柑の体重のすべては神名のそれにかかっているはずなのに体制をくずすことはない。それほどまでに彼女の体は軽い。
「っん、おまたが、熱い、何…これ?」
自分の大事な場所に理解できないものを押し付けられているというのに恐怖はなかった。むしろ愛しささえ感じ不思議な気持ちになる。
「これの説明はまた後で、今は楽しみましょう」
蜜柑はただ神名に身をゆだねる。
神名の腰が少しずつ前後しはじめ、先端が蜜柑の秘書に快楽を送り始めるころには、また秘所から愛液があふれ出していた。
「いっ!!っあ!!なにこれ?!いいよぉ!!」
「っ…、僕も、いい感じですよ、お嬢様」
「あ、ダメ!!また、またイっちゃう!!まだ神名が楽しんでないのに!!」
「お嬢…様。僕はもう、十分に楽しみました、よ」
「にゃはぁ!!あ、や!!うそ、うそだよ、なんか違うの!!これじゃダメなの!!」
「だめじゃないです」
「ん、あ!!ダ・・・!!イク!!ダメ、どうにかなっちゃうよ!!」
「なってください・・・!!」
神名の腰が激しく動き出すころには布団に新しく水たまりができはじめ、部屋にはくちゅくちゅと卑猥な音があふれ、戸惑い困惑しつつも蜜柑の嬌声はとまらず。
「イク!!神名ぁ、私、ダメだ!!なんかダメなのにいっちゃう!!」
「大丈夫ですよ、受け止めて差し上げますから」
「あ、にゃ、んっ、あぁ!!イク、イクよぉ、神名ぁ」
「っ……!!」
「い、きゃぁぁぁ!!にゃ、にゃは、だめぇぇぇぇ!!!」
小さく頼りない体がびくびくと痙攣をおこす。同時に蜜柑の意識がフェードアウトしていく。
これで今日三度目の絶頂。だというのに、愛する人から求めてもらえたというのに、蜜柑の心には穴が開いていた。
薄れゆく意識の中視界の端に移る、自分を優しく見つめる愛する人。なぜか少し苦しげなその表情に心が痛む。
どうしてかは分らないが、無性に謝りたくなる。そして、求めて欲しくなる。自分のためにしか行動を起こしてはくれない愛しい人。
きっと、眠りに落ちた小さな彼女の頬を伝う涙の理由は、快楽だけではないはず…。