トラッシュ・ドーパント

「チームの仲間が言ったんだよお!走れなくなった俺はもうゴミとおんなじだって!」

【名前】 トラッシュ・ドーパント
【読み方】 とらっしゅ・どーぱんと
【登場作品】 風都探偵
【登場話】 第67話「bたちの宝物2/ベイサイドの懲りない面々」~
第73話「bたちの宝物8/罪の焼却」
【分類】 ドーパント
【能力】 有機物を分解する腐食液、周囲のゴミを取り込んでの再生、ゴミを経口摂取することによる治癒能力の向上(ハイドープ
【メモリ】 トラッシュ
【綴り】 trash
【頭文字デザイン】 I字のラインが入ったポリバケツ状のゴミ箱(本体と蓋の間に隙間が空いて「T」)
【モチーフ】 ゴミ、土人形?、ヘドロ
【生体コネクタ位置】 左掌

【詳細】

「トラッシュ」のメモリで変身するドーパント。
その姿は巻末デザイン画の説明を引用すれば「白く塗装した樹脂フィギュアと黒く汚れた不定の油の塊のハイブリッド」。
本体は白い人形のような形状だがまるで未完成のフィギュアのように右半身が欠損し、右側の手足から蟻の触覚のような細々とした骨軸が露出している。こちら側にヘドロ状の黒い不定形の物体がボディを形作ることでハーフ&ハーフなアシンメトリーの外見を生み出している。

ゴミを摂取する能力があり、無機物のガラクタや鉄を口や身体で吸収する。また右半身のヘドロは強烈な腐食液でもあり、これを飛ばして付着させた人間の肉体を溶かして殺害し、これもまた「ゴミ」として体内に吸収してしまう。
この黒い溶解液は人間だけでなくダブルの生態装甲も腐食させてしまう厄介なものだが、相当の時間が経過すればその性質は失ってしまうらしい。またこの粘性がある腐食液が右脚を含めた半身を構成している性質上、地面に吸着しやすく徒歩の移動速度は若干遅い。
「ゴミのドーパント」という特徴から驚異的な再生能力を持っており、喩えマキシマムドライブによる大ダメージを受けても本体が無事ならば周囲の廃棄物を取り込んで再生でき、その場の環境次第ではあるが事実上クレイドールに近い「不死身の肉体」を持つ。

なお、この特徴から自身のことを「廃棄物を代弁する付喪神」のようなものと語っており、平和でエコロジーな発展を遂げた風都の裏で蓄積された欲望の塊(=廃棄物)を「宝の山」と称して特別視しているようだが、それはこのドーパントの正体であるとある人物の生い立ちが心境として重ねられているようだ。

今回の事件の舞台である風都湾岸特別廃棄場に夜な夜な出没する「廃棄物のお化け」の正体であり、ある目的のために暗躍していたブラキオサウルスに協力していた。

カメラマン弁財天源十郎の「夕陽泥棒を捕まえてほしい」という意味不明な依頼を受けた翔太郎たちが現場に赴くと、夕陽が禍々しい色彩を見せるという異常現象に遭遇。
調査中になんとフィリップが源十郎の知り合いの廃棄マニア集団「bbb(ベイサイド・バッド・ボーイズ)」と意気投合し、彼らの溜り場の源十郎宅に泊まりこんでしまう。

その裏で夜間に廃棄場を見回りしていた風都市の職員2名と遭遇すると、自分の姿に慄いて逃走する彼らを腐食して殺害、ゴミと一緒に取り込んでいるところを調査のために徘徊していたフィリップに見つかってしまう。
目撃されたことに気付いてフィリップも襲うとするが、彼の顔を見て謎の動揺を示し、逃げ回っていたフィリップも翔太郎と連絡を取ってファングジョーカーに変身して応戦する。

アームファングを喰らっても逆に自分の腐食液を透過した刃を融かし、自分の黒い体液を手に取って投擲する飛び道具でダブルを追い詰める。
腐食液を警戒するファングジョーカーは、触れる時間を減らすよう「ファングストライザー」を速攻で放つスピード勝負に出て反撃するが、残った半身に周囲のゴミを取り込む再生能力で驚愕させる。
だが、突然戦闘を中断すると自分に立ち向かわないようダブルに警告し、追っ手を足止めするかのように大量発生したボーンズ兵と入れ替わりで撤収する。

翌日、刃野警部たちも殺害現場の調査に訪れ、bbb一同も自分たちの溜まり場で人が殺されたという精神的なショックで落胆していたが、それ以上にフィリップは今までにない葛藤を抱えていた。
翔太郎にも見抜かれているように、自分の顔を見たトラッシュの反応から、その正体が親睦を深めたbbbの誰かだと勘付いていたのだ。
しかし、疑われていても仲間を信じるbbbたちや源十郎の良心、そして自分の内面と対話した正義感から決意し、一同を変色した夕陽が輝く廃棄場に誘って自分の推理を語る。

実は夕陽が異常な色彩を見せていた原因は、廃棄場近辺の大気に飛散していた謎の粒子による化学反応であり、この粒子は何らかの装置を設営しようとしていたブラキオサウルスに付着していたものだった(偶然にもその正体である秀夫がフィリップと接触を図ったことで、彼が撤収したゲートの痕跡からサンプルを回収できた)。
トラッシュは元からこの廃棄場を根城にしていた無所属のドーパントであり、任務中に偶然遭遇したブラキオからの「装置を護衛する代わりにこのテリトリーの安全を保証する」という取引に応じ、瓦礫に隠された装置に近づこうとする人間を殺害していたのだ。
そしてフィリップは装置の存在を推理で明かした自分も狙われている事を自覚した上でドーパントの変身者の誰かに向けて説得するが、メンバーの中から飛び出した人影に襲われかけるも、間一髪合流した翔太郎に阻止される。

トラッシュの正体はbbbの一員、ビリー佛田。
外部で聞き込み調査をしていた翔太郎によると、ビリーは5年前までは優秀なレーサーだったがレース中に大事故に見舞われ、後遺症で障害が残った脚では現在のように満足に歩ける筈が無かったのだ。
仲間が怪物だったことに動揺してにわかに信じられない一同やフィリップに対してビリーは声を荒げ、優秀だった自分が才能を失った途端に周囲からゴミ扱いされたこと、その自虐性から売買されているメモリから自然とトラッシュを選択して侮辱してきた元チームメンバーたちに復讐したこと、そして謎のハイドープが覚醒してゴミを食べれば食べるほど身体が回復して不随だった脚が完治した過去を語る。
それと同時に、「瓦礫から部品を探し集めて廃車を甦らせる」というbbbとしての表向きの夢も元はゴミを摂取していた時に出会った源十郎に自分の正体を悟られぬよう咄嗟に作った虚言だったのだが、やがてbbbのメンバーと行動するうちにその嘘が何時しか自分の本当の夢に代わり、敵だったフィリップにも愛着があったという感情を吐露する。
しかし、そこに現れた秀夫に「一度怪物として道を踏み外した者が普通の人間と馴れ合える筈がない」と半ば強迫のような誘惑を受け、自暴自棄になってトラッシュに変身、対抗して変身したサイクロンジョーカーエクストリームと交戦する。

悪意に支配されてしまうと理性を失い、源十郎たちにも躊躇なく腐食液で襲おうとする残虐な怪物に豹変し、秀夫が変身したブラキオサウルスが装置の運搬をしようとするのを護衛するようにダブルを攻撃する。
そこに(前回のオウルとの死闘で重篤だった)アクセルブースターが空から駆けつけてトライアルにフォームチェンジしてブラキオと交戦。

一方で自分もダブルの「プリズムブレイク」を喰らい、反撃に腐食液をボディに直撃させるが、エクストリームの「相手のメモリを解析して能力を封じる」というマキシマムブレイクに腐食性が無効化されていた。
そしてアクセルトライアルから借りたアクセルメモリ、手持ちのヒート、サイクロン、ルナメモリをビッカーに装填したマキシマムドライブが発動、自身の再生能力を上回る超高熱バージョンの「ビッカーファイナリュージョン」を浴びてメモリブレイクされる。

生身に戻って倒れかけた身体を(人情に厚い翔太郎の意志で)ダブルの肩に支えられ、なおも自分を信じて罪を償うよう説得するフィリップに諭されて涙を流す。
だが、直後に自分への粛清に放たれたオーロラの熱光線を察知すると、巻き込まないよう咄嗟にダブルを突き放して庇い、無残にも白骨化してしまった。

この戦いはドーパントの正体がフィリップが初めて作った友人だったこともあり、残酷な真相と最悪な結末は彼の心に大きな傷跡を残した。

最終更新:2020年07月10日 19:57