樹海に咲く花




樹海に咲く名も無き白き一輪の花。
月の光に照らされ、高貴な美しさを纏う。
凄惨な戦いの場であっても花は種子を散らし、また新しい生命が息吹く。
あかつき号、雪山での事故、弟を失い、そしてアギトとなる力を手に入れた……
木野薫はその花にライダーとして、医師として、すべての守るべき人間を重ねた。
人間を守るため闘う。だが……アギト、いやライダーは俺一人でいい。
この戦いを生き残り最強かつ唯一無二のライダーとなる!
決意を確かめるかのように、強く右手を握り締める。
参加者の中には氷川もいた。ライダーでは無い者も居ると言うことか……
支給された精密ドライバー、首輪を分解するのには使えそうだ。
神崎と言う男にいつまでも命綱を握らせておく必要はない。
ザッザッ……
静寂を破り足音が近づく、ライダーか?

瞳が灰褐色に蠢く、オルフェノクの特性。
研ぎ澄まされた感覚が遙か前方の気配を察知した。
一輪の花の前に、精悍な男が佇んでいる。
支給されたバックの中を確認する。水と食料、そして何かのカード?
……ターゲットに送るシャンパン、Krug Clos du Mesnilは無い。
白く清楚な花……影山冴子の脳裏に長田結花―クレインオルフェノクの姿が重なる。
気に入らないわ。冷酷に言い放ちゆっくりと近づいて行く。
「ねえ、あなたもライダーなのかしら?戦場で花を愛でるなんて、ずいぶん余裕があるのね。」
妖艶な微笑みを湛え、何の躊躇いも無く花を手折る。
紅い薔薇の花ビラのような唇から毒づく。
「花って儚くて美しいわ。でも、手折られるために生まれて来るなんて人間と同じね。
この花もあなたも、すぐに紅く染まる。フフッ。」
――刹那、
 銀色の甲殻類が冴子の顔を這い回るように見えた。
耳障りな音を立て鋼のような装甲が表皮を覆い尽くしロブスターオルフェノクへと姿を変える。
しなやかに繰り出されるサーベルの連撃。
咄嗟に身を躱したが切っ先は木野の頬をかすめる。
 人間の敵、いや俺の倒すべき相手はアンノウンやアギトだけでは無いと言うことか。
頬の血を拭いオルフェノクを見据え、両腕をクロスさせ力を込める。
――変身 
 全身が眩い緑の閃光に包まれ筋組織が再構されて行く様な感覚が走る。
ロブスターオルフェノクに向かい突進しバイオクロウで薙ぎ払う。
 凄まじい斬撃と打撃を受けるたび、ミシミシと甲殻が悲鳴を上げる。
スピードと攻撃力は敵わない。接近しては不利……
「ハゥッ」
 ガードを下げたロブスターオルフェノクの体が相手の射程距離外まで弾け飛ぶ。
すかさず間合いを詰めるが、拳撃はシェルグラブで弾き返しされた。
クンッッ―― 手首が弧を描き、滑り込むようなサーベルの突きが右肩、左腕、脇腹へと
徐々に心臓に近付く。
冴子の幽体が浮かび上がる。
「苦しそうね。なら、もう死になさい。串刺しになって、ね?」
 月明かりにサーベルを煌めかせ、高く、上から心臓を目掛け真っ直ぐに突き刺す。
だが、先程までの変則的な突きに比べ、威力は勝るが回避は容易い。
 一瞬早く身を翻し、渾身の力でロブスターオルフェノクを叩き伏せる。
「ウオァァァッ」
 口部クラッシャーを展開させ能力を全開にする、足元にアナザーアギトの紋章が浮かび上がる。
――微かな違和感……
 湧き上がるエネルギーを感じない?だが躊躇している暇は無い!
絶叫と共にアサルトキックを放つ。
突き刺すような衝撃で地面に叩きつけられロブスターオルフェノクの変身が解ける。
 ダメージは与えているが致命傷では無い!
違和感は確信に変わる。アサルトキックの威力が激減している……
「グァアッ」
木野の脇腹に激痛が走った。オルタフォースの力が急速に全身から抜け人間体へ戻る。
ふらつきながらも体勢を立て直す。

 ダメージはお互い様のようね。
……冴子は踵を返し樹海の奥へ消えていった。

 手折られた花に手を伸ばす、サラサラと灰になり崩れ落ちた……
再び歪んだ正義が、木野の心を支配する。
――守るべき者を救う。
すべてを滅ぼし最強の存在として君臨することで、その願いを果たせると。



【木野 薫@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夜明け前】
【現在地:A-5】
[時間軸]:本編35話あたり
[状態]:肩、腕に加え、脇腹にサーベルの刺傷
[道具]:精密ドライバー
[思考・状況]
1:  自分に無力さを痛感している
2: 力を得るために最強のライダーになる

【影山冴子@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夜明け前】
【現在地:A-4】
[時間軸]:本編最終話あたり
[状態]:アサルトキックによるダメージ
[装備]: 不明
[道具]:カード(詳細不明)
[思考・状況]
1:生への執着 (王の復活)

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最終更新:2018年03月22日 23:30