しばしクライシスの栄光より遠ざかり
「今すぐ俺を元の場所に戻せ。死にたく無ければな。」
俺は自分にデイパックを差し出す、ロングコートの男に右腕を向ける。
「止めろグランザイラス!!」
上官気取りのジャーク将軍が俺を制止するが、聞く必要は無い。
俺に命令出来るのはクライシス皇帝か、その代理人であるダスマダー大佐だけだ。
ロングコートの男が、俺の右腕にデイパックを掛けると
ロングコートの男を含め、周囲の全てが光の中に溶けて消えた。
気が付くと、無人の岩肌の上に居た。
俺は遠くに見える人工建造物の密集地帯、市街地を目指して歩く。
元の場所に戻れないのなら仕方ない、この場所で任務を遂行するまでだ。
RXを倒し、家々を焼き払い、人々を殺戮する。
クライシス皇帝から受けた命令を果たすのに、何の問題も無い。
他の参加者が戦いを仕掛けてくるだろうが、例え俺以外の全員が束になってかかって来ようと
クライシス帝国でも最強を誇る俺には敵うまい。
ましてや先程から岩陰でこちら窺っている馬鹿など、物の数ではない。
「出て来い、そこに居るのはわかっている」
岩陰から出てきたのは見知った者の姿、ジャーク将軍だ。
「よく余が隠れている事がわかったな」
「月明かりしかなくとも、岩陰から伸びる影を見落とすほど馬鹿では無い」
俺は神崎士郎にそうしたのと同じように、ジャーク将軍に右腕を向けた。
「そういえば、貴様もこの殺し合いの参加者だったな」
「待て!余はそちと事を構えるつもりは無い。」
「その言葉を信用できると思うか?首輪を嵌めている以上、他は全て敵のはずだ」
「確かにルールでは、生き残れるのは一人だけだ。だがいかにそちでも一人で50人の敵を相手にはしていられまい。
参加者には只の地球人だけでなく、RXや霞のジョーばかりか、他にも得体の知れない連中が居るのだぞ?」
「俺はクライシス帝国でも最強を謳われたグランザイラスだぞ?誰が何人かかって来ようが俺の敵ではない」
ジャーク将軍は呆れた様に、口の端を吊り上げて笑う。
「成る程な、戦えばそちに敵う者は居まい。だが真っ向から挑んで来る者ばかりではあるまい。
隠れて逃げ回る者も当然居るだろう。そんな連中を捜して回っていたら時間が掛かり過ぎるだろう。
時間切れでそちの首輪が爆発しては、元も子もあるまい」
「時間切れ?何だそれは?」
「支給品の説明書も見ていないのか?一週間以内に一人も死者が出なかった時は、全員の首輪が爆発するのだぞ」
「だったらどうするというのだ?」
「余と手を組もうではないか、グランザイラス」
どんな気の利いた命乞いをするかと思えば、何故この俺がジャーク将軍如きの力を借りなければならない。
「貴様と行動を共にしたところで、時間の節約にもならん」
「行動を共にするとは言っておらん。余とそちで手分けして他の参加者を殺していけばいい。
我等二人だけになってから決着を付けても遅くはあるまい」
ジャーク将軍は、クライシス帝国地球攻略兵団の最高司令官だ。俺以外の者とは敵対するしかないだろう。
「いいだろう。だが妙な考えは起こすなよ」
俺の返事を聞いて、ジャーク将軍は満足気に頷いた。
「ところでそちの支給武器を教えてくれんか?余は直接敵と戦闘するのは、向いていなくてな
武器もこの杖だけでは、些か心許ない。もし強力な武器を持っているなら、交換して欲しいのだが……」
そういえば神崎士郎から渡されたデイパックがどういう具合にか、まだ俺の右腕に掛かっていたな。
「くれてやる」
俺はそう言って、ジャーク将軍にデイパックを投げる。
「構わんのだな?」
ジャーク将軍もつまらん事を聞く。神崎士郎から渡されたゴミに構う訳が無い。
これ以上話すこともあるまい、俺はジャーク将軍に背を向け再び歩き始める。
「何処へ行くつもりだ?」
「市街地だ。貴様は別の所へ向かえ」
その会話を最後にジャーク将軍と別れた。
ジャーク将軍は心中、去っていくグランザイラスの背中に嘲笑を浴びせた。
(こちらから存在を知らせてやったのに、何が『影を見落とすほど馬鹿では無い』だ。)
下手にグランザイラスにこちらから声をかけるより
向こうから発見する形をとった方が、安全に会話に持ち込めると考えての行動だった。
(あやつは確かに戦闘力は高い。だが己の力を過信している者と協力は出来んな。
それにあやつの体内にはメガトン爆弾がある。行動を共にしては巻き添えになる)
だからこそグランザイラスと同盟を結びながら、別行動をとる事にした。
自分の体に秘められた力を伏せておいて―――。
(あの様子では、やはり余がジャークミドラに改造された事を知らないらしいな)
ジャーク将軍はグランザイラスを見送った後、別方向へ出発した。
(余には果たすべき使命がある。クライシス帝国の同胞を欺いてでもこの戦いに勝ち残り同士達の下へ帰らなければならん)
ジャーク将軍が果たすべき使命、それは怪魔界50億の民を地球へ移住させる為、地球を征服する事。そしてもう一つ―――。
(待っておれRX!必ずやボスガンとガテゾーンの敵を討ってくれる!!)
【グランザイラス@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:深夜1:00頃】
【現在地:海岸I-9】
【時間軸】地球到着直後
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考・状況】1.市街地を破壊し、人々を殺戮する。
2.RXを殺す。
3.ジャーク将軍は後回しにする。
【ジャーク将軍@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:深夜1:00頃】
【現在地:海岸I-9】
【時間軸】ジャークミドラに改造後
【状態】健康
【装備】杖
【道具】不明
【思考・状況】1.RXを殺す。
2.この戦いに勝ち残り同士達の下へ帰還する。
最終更新:2018年03月22日 23:40