Climax Typhoon

「かかってこい! 悪党ども!」
 赤い影が疾風を巻き起こし、黒と紫、二人の悪へと突進する。
「フフ……」
 デルタが手をゆっくり叩きながら悠然と佇む。
「トォッ!」
 拳を振り上げ、デルタに放つが防がれ、逆に殴りつけられる。
 しかし、拳を冷静に見つめ、右腕を取り、背中に乗せながら投げ飛ばす。
 腰をしたたかに打ちつけたデルタは、自身のダメージに構わず、即座に体勢を立て直し再びV3に殴りかかる。
 一、二撃を捌くと、王蛇がベノザイバーにカードをセットする姿が目に入る。
 ――SWORD VENT――
 大理石の壁から飛び出した、ガラガラヘビの尾を彷彿させる剣を手に、デルタを蹴りつける。
「こいつは俺の獲物だ。邪魔をするなっ!」
 雄たけびがあげられ、力任せに剣が振り回される。洗練されたとはいえない剣術だが、強引にチャンスごと斬られる。
(焦るな。隙は必ずある)
 強く耐え、ひたすら剣をかわす。振り下ろされた剣が壁に深く刺さり、攻めるチャンスが巡ってきたことを確信し、勢いよく踏み込み、腰に構えていた拳を腹に打ち込まんとする。
 だが王蛇はあっさりと剣を手放し、身体を独楽のように回して蹴りを放つ。
 V3の拳が王蛇の頬をを打ち抜くが、王蛇の蹴りはV3の脇腹に突き刺さっていた。
 お互い間合いをあけ、地面を踏みしめる。
「ハアァァ、戦いはいい。ゾクゾクする!」
 戦いに陶酔する笑い声が黒い壁を叩き、V3は赤い仮面の下で顔を歪ませた。
「何が可笑しい!?」
 V3には王蛇が理解できなかった。この戦いのために拉致され、無理矢理殺し合わされ、いつ自分の命を失うか分からないのである。
 V3とて正義に身を捧げたゆえ、死を恐れることはないが、目の前の男は戦って何かを得ようという気配がない。
 ただ、戦いを……いや、殺し合いを楽しんでいるようにしか見えなかった。
「こういうもんなんだろ? 仮面ライダーってのは!」
 叫び、剣を引き抜いていく姿を見て、V3は拳を震わせた。

 ――仮面ライダー、お願いだ。俺を……俺を改造人間にしてくれ!!

 父と母、そして妹の復讐の為に改造人間の力を求めた。だがそれも僅かの間。
 すぐに風見志郎は仮面ライダーとして正義の為に戦う決意をした。
 技と、力を受け継いで。
 それを、目の前の王蛇は怪人でしかないと笑った。
「お前だけは許さん!!」
 怒りに燃える両瞳を向け、憤怒の叫びが木霊する
 怪人でさえ圧倒する怒りを向けられながらも、王蛇は萎縮するどころか、ますます歓喜に満ちた声を上げる。
「いいぞ! もっと俺を楽しませろォォォ!!」
 狂気と怒りが爆発し、お互いを砕こうと衝突する。その瞬間、白閃が走り、二人の身体が爆ぜた。

「ねえ、二人だけで遊んでないで、僕も仲間に入れてよ」
 クルクルとデルタフォンを回し、V3との距離を詰める。
 蹴りと拳を捌かれ、手刀で突き飛ばされる。
「遊びだと? 殺し合いが遊びだと、お前は言うのかっ!?」
 V3が叫ぶが、デルタは理解が出来なかった。
「だってそういうルールでしょ? それに……」
 呟き、力を誇示する為壁を殴る。
「僕は世界一強いんだ。今まで負けたことはないし、これかも負けない」
 デルタに……北崎にとって、たった一つの真実を謳う。自分に勝てる奴などいない。
 立ち向かうものは全て灰にしてきた。戦う力を持つものは自分の玩具。力の無いものも自分の玩具。
 浅倉も目の前のV3も、ラッキークローバーもスマートブレインも、ゴムで飛ぶ飛行機の玩具と何も変わらない。
 自分の快楽を満たす道具。
「だから簡単に壊れないでね。僕が楽しくないからさぁ」
 闇を内包した笑い声を上げる。並ぶものを持たなかった龍は、虚無感を快楽で満たす事しか出来なくなっていた。

 デルタの拳が無防備のV3に当たる。だが、V3は微動だにしない。
「どういうつもり?」
「貴様、自分が世界一強いと言ったな。訂正しろ! お前は世界一弱い!!」
 その一言をきっかけに、V3は疾風から暴風へと変わった。拳の嵐をデルタの身体に叩き込み、ミドルキックで腹を蹴り飛ばし、ひび割れた壁に叩きつける。
 壁が崩れ、デルタが瓦礫に埋もれたとき、再度王蛇が突進してくる。
「うおおおお!」
 振り下ろされた剣を、紙一重で避ける。
「V3ッ! 電熱チョォップ!!」
 熱を帯びた手刀が剣を砕き、空中へと王蛇を躍らせる。
「Fire」
 ――BURST MODE――
 デルタの銃が火を吹き、V3の身を焼こうと放たれた。
「ダブルタイフーン!!」
 ベルトの力が、特殊強化筋肉を一時的に硬化させ、銃撃を跳ね返し一気にデルタへと近寄る。
「ハァッ!」
 苛立ちを混ぜたデルタの拳を捌いて肩に担ぎ上げる。
「V3!! ダブルアタック!! むぅん!!!」
 空中に放り投げ、背中を蹴らんと跳躍する。
「今だ!! V3キィィィック!!!」
 悪の背を蹴り踏み、デルタは隕石のように地面に叩きつけられた。
 ――FINAL VENT――
 電子音に視線を向けると、大理石より現れたエイ型怪人に乗る王蛇が眼に入る。
 エビルダイバーを乗り回し、旋回しながら速度を増していく。
 負けじと地面を蹴り、空中で前方向に三回転をする。
「おおおおおおおおおお!!」
「V3回転フルキィィィック!! 」
 両足を揃えた蹴りと、ハイドベノンが拮抗し、行き場のないエネルギーが二人を後方へと吹き飛ばす。
「チッ!」
 再び王蛇がカードを取り出し、空中で装填する。
 ――FINAL VENT――
 サイ型怪人が現れ、肩に王蛇を乗せる。
 メタルゲラスは地上を疾走し、殺意を乗せてV3を貫こうとする。
 V3は今度こそ王蛇を倒さんと、三度跳躍し、得意技を放つ。
「V3!! 反転キィィィック!!!」
 一度目の蹴りが、王蛇のヘビープレッシャーの威力を殺し、背面ジャンプの勢いを生む。
 反転し、悪を砕くと決意の蹴りを放つ。その決意は、銃弾によって阻まれた。
「ぐわぁっ!」
 白い閃光がV3を貫き、地上へと引き摺り下ろす。デルタが銃を構えているのが眼に入る。
「フフ……形勢逆転」
 ベルトの中央部からミッションメモリーを取り出し、デルタムーバーに装着する。
 ――READY――
「Check」
 ――EXCEED CHARGE――
 白いエネルギーが右腕を伝わり、銃に溜まる。
「どけ! 俺が先に殺る!!」
 ――FINAL VENT――
 蛇の相棒、ベノスネーカーが蠢きながら王蛇の背後に立つ。
「駄目だよ。独り占めなんてずるいじゃないか」
 デルタの銃から白い光弾が発射され、V3の眼前で三角錐を展開させ身体を縫い付ける。
「知るかっ!」
 王蛇は背面ジャンプをし、ベノスネーカーに近づき両脚に力を溜めている。
 デルタは三角錐のエネルギーへ向かう為、天に昇っていた。
(くっ! このまま負けるわけにはいかない!)
 震える腕を交差させ、敵の攻撃に備える。
「おおおおおおおおおおおお!」
「ハァッ!」
 王蛇とデルタの掛け声が響く。
 デルタが白いエネルギーに迫り、王蛇はベノスネーカーに弾き飛ばさせる。
 白い三角錐にまとわれたデルタがドリルのようにV3を貫こうとし、王蛇の毒を纏った蹴りの連撃が装甲を削る。
 ニトログリセリンが炸裂したような轟音が、黒い壁を揺るがした。
 しかし、二人の蹴りはV3の身体を貫くことも、吹き飛ばすこともなかった。
 直前で発動させた細胞強化装置が、V3に悪のダブルライダーキックに耐える力を与えたのだ。
「なかなかのダブルキックだ。だがな、その蹴りは日本じゃ二番目以下だ!!」
 二人の脚を掴み、力の限り振り回す。
 手を離すと、二人の身体は弾丸のように発射され、柱を音を立てて崩した。
「グフッ!」
 V3は血を吐き、膝をつく。ダメージを抑えたとはいえ、二人の蹴りはV3の身体を蝕んでいた。

「ハハハハハハッ!」
 瓦礫を払いのけ、デルタよりも早く立ち上がる。
 王蛇、浅倉の心は歓喜に満ちていた。
 北崎も手ごたえは充分にあったが、V3はその北崎と自分をもってしても一歩も譲らない。
 V3の拳は自分のイライラを砕いた。そして自らの拳はV3をイライラごと吹き飛ばす。
 自分の全身には傷が走っている。その痛みを喜びに変え、カードデッキから一枚のカードを取り出す。
「ねえ、何をするの?」
「うるさい。黙っていろ」
 上半身を起こしたデルタにぞんざいに答え、ユナイトのカードをベノバイザーにセットする。
(さあ、お前はくたばるのか!? それとも北岡のように俺に歯向かうのか!?)
 仮面の下には、狂笑が刻まれ、背筋に痺れるような電気を走らせた。
 今の王蛇、浅倉は苛立ちを無くしていた。

 ――UNITEVENT――
 王蛇の杖から電子音が発せられ、V3の背後に三匹の怪人が現れる。
 サイとエイと蛇を模した三つの影は、一つに融合し、獣の皇帝を形作った。
 その名を獣帝ジェノサイダー、破壊をもたらす存在である。
 ――FINAL VENT――
 ジェノサイダーの腹にブラックホールが生み出され、V3を吸い寄せる。
(あれに吸い込まれたら終わりだ!)
 直感が脚に力を入れさせ、踏ん張らせる。
 王蛇が目の前に立ち、こちらに駆け寄ってくる。
「ハッハッハ!」
 笑い声と共にきりもみキックが放たれた。V3には、その蹴りを避ける余裕を失っていた。
「ぐわぁぁぁぁっ!」
 胸板に王蛇の蹴りが当てられ、V3をジェノサイダーの腹へと運び、姿を消させる。
「さすがに終わりか……」
「あーあ、今回は君の勝ちか」
 満足そうに言葉を発する王蛇の後ろに立ち、残念そうな声が上がる。
 その場には、悪が二人居るのみだった。

(ここは……怪人の体内か)
 とっさにV3バリアーを発動させた為、押しつぶそうと迫る闇に対抗している。
 だが、それも長くは持たない。
(このまま終わってしまうのか?)
 ボロボロの身体を抱え、V3に似合わぬ考えがよぎる。
 闇を見つめていると、先程の力なき少女の訴えを思い出した。
 ――仮面ライダーは……闇を切り裂いて、光をもたらす!
(そうだ。先輩や俺、茂やキックホッパーは常に悪と戦ってきたんだ。この程度の闇を切り裂けず、何が仮面ライダーだ!)
「ダブルタイフーン!!」
 拳を固め、ベルトの中央の赤いランプを瞬かせた。レッドランプパワーにより、V3の力が二倍となる。
「V3! 脱出パァンチ!! 」
 左右に二つの拳を放った。

 獣の咆哮が響き、ジェノサイダーが暴れる。
「ああ……?」
 その様子に眉を顰める。
「トゥォォォォッ!」
 ジェノサイダーを二つに裂き、V3が姿を現せる。
 そして王蛇の身体が色を失い、力が抜ける。
「何だ……これ?」
「V3!! きりもみキィィィック!!!」
 戸惑う王蛇の腹を蹴り砕き、デルタと共に宙へ身を躍らさせる。
 二人が壁に叩きつけられ、瓦礫が飛び散り、白煙がもうもうとたちこめた。
 V3は再び膝をつき、大きく息を吐く。
(恐ろしい敵だった。ここまで追い詰められるとは……)
 死闘と呼べる七分間を潜り抜けたV3を、盛大な疲労が襲った。
 変身を解こうと準備するV3に、光弾が迫り火花を生んだ。
 光弾が放たれた方向を見つめると、デルタの変身が解けた北崎が右腕をV3に向けていた。

「まだ終わっていないよ」
 冷たい音が走り、北崎の顔に龍の影が走る。肉が這いずり回るような音と共に灰色の鱗が北崎を包んだ。
 両腕に龍の頭を持つ、ドラゴンオルフェノクがV3に姿を顕在させた。
「フンッ! ハァッ!」
 ドラゴンオルフェノクが掛け声と共に、圧倒的な力をV3に打ち込む。
 V3はただ嵐に翻弄される小船のように、身を躍らされた。
「ねえ、僕は強いでしょう? 日本一どころか、世界一に……」
 纏わり付くような口調でV3に言葉を暴力で強制する。
 先程のことを根に持っていたらしい。
 行動で答えるため、迫る右拳を掴む。
「トゥゥ! タァァァ!」
 続けて拳のラッシュをドラゴンオルフェノクに放ち、顔を蹴り上げる。
「クッ……この!」
 ストレートを身を屈んでかわし、脚を掴んで背中に乗せて投げる。
 ドラゴンオルフェノクが立ち上がる前にボディーブローを当てた。
「V3!! パァァンチ!!!」
 振り上げた拳がドラゴンオルフェノクを捉え、身体を砕き灰と化す。
 舞い上がる灰の中から、外殻を脱ぎ捨て、身軽になったドラゴンオルフェノクが高速で背中を抉り抜いた。
「ガハッ!」
 血を吐くV3に容赦なく傷を生み続けさせる。ついに力尽き、地面に伏せたところで再び魔人態へと姿を変える。
「そろそろ止めを刺してあげるよ」
 悠然と近づくドラゴンオルフェノク。V3は身を起こそうと両腕に力を込めるが、上手くいかない。
「そしてみんな殺してあげる。そうすれば君も僕が一番だと認めるしかないでしょう?」
 その一言が、V3の気力を刺激した。
(おやっさん、純子さん、放送の少女……他にも何人もの犠牲を出してしまった。これ以上犠牲者を出してたまるか!!)
「The……End……」
 全てを砕かんと右腕が振りぬかれた。
 V3は身体を跳ね上げ、自分の倒れていた場所を貫いた右腕を脇腹に抱え込む。
「捕まえた。これであの高速形態は意味を無くしたぞ!」
「ハハ……馬鹿だなぁ。今の君を殺すのに左腕だけで充分じゃないか」
 刺すような激痛が身体に走った。二度目の激痛を生むべき左腕を見つめ、ベルトに力を込める。
(キックホッパー。少しお前に追いつくのが遅れる。だが待っていろ。こいつを倒し、必ず駆けつける!)
 ゆっくりと、技の風車と、力の風車を回す。目的はただ一つ。
(お前が正義の為マシーン大元帥を倒したように、俺も目の前の悪を砕く!)
 ベルトが輝きを増し、生命を吐き出さんと回転を加速させる。
(だからおやっさん、純子さん、放送の少女、俺に……正義を貫く力を貸してくれ!!)
「V3! エネルギー全開ッッ!! 逆ダブルタイフーン!!!」
 風が吹き荒れ、壁と床を砕き、遺跡を揺るがす。
 人一人のサイズが生むにしては大きすぎる、竜巻という自然現象を、機械と自然の使者が生み出し唸らせた。
「グ……アアアアアアッ!!」
 竜巻の中から龍が左腕を突き出し、V3のベルトに直撃した。
「くっ!」
 風の勢いを増し、右腕を捕まえながら龍を宙に翻弄させる。
 だが、先程のベルトへのダメージが響き、キシキシと崩壊の音をたてる。
「いい加減に……して……もらえるかな? 君も……限界じゃ……ないか……」
 ドラゴンオルフェノクの声が耳に入り、笑い飛ばす。
「舐めるんじゃない。仮面ライダーに……限界という言葉は存在しない!!」
 さらに風車の回転を加速させる。竜巻の幅が一回り膨れ上がり、ベルトに火花が散る。
 それでも、V3は加速をやめなかった。
「ただの……やせ我慢じゃないか……」
「違う! これは、俺の力と技と……」
 思うのは、死んでいった人々。
 立花のおやっさん、珠純子、放送の少女、彼ら彼女らはこの戦いで命を落としていった。
 抱えている腕に力を込め、竜巻の勢いを増させ、さらに膨れ上がらせる。
「人々の願いの! タイフーンだぁぁ!!!」
 ベルトより盛大な爆発を生みながら、竜巻は激しさを増していった。
 天井が崩壊し、瓦礫を次々と生む。
 ドラゴンオルフェノクは身体を削られていき、残るのは上半身と右腕のみとなった。
「そんな! 僕が……俺が……やられる……だと……!?」
 無邪気な声が、低い悪の声へと変わっていき、風に巻き込まれ灰となり飛び散った。
 抱えていたドラゴンオルフェノクの右腕をドサッと落とし、ベルトの爆発音と共に、V3は風見志郎へと姿を戻した。

「ハア、ハア、ハア、ハア……」
 喘ぎ、地面に倒れ伏す。機械が剥き出しになったベルトを見つめ、憑き物が落ちたような笑顔を浮かべる。
(俺はもうV3に変身できない。結城と再会したとしても、改造手術が行えるような場所はないだろう)
 だが不思議と悔いはなかった。もう巨悪二人の犠牲者が生まれることがないからだ。
(キックホッパーの元へ行かねば)
 壁に手をつけ、身体を無理矢理立ち上がらせる。
 昔、先輩である本郷と共に戦った滝和也の話を思い出した。
(例え変身できなくても、俺は戦う。俺がこの身体である限り!)
 決意を新たに、ずるずると足を引きずり遺跡を歩く。
 床には静かに青い炎に包まれる、ドラゴンオルフェノクの腕があった。
 目指していた出口は逆ダブルタイフーンによって瓦礫に埋もれている。
 D3エリアから樹海を目指そうと歩みを進める。

「おい」
 聞こえてはいけないはずの声に振り返る。
 浅倉がドラゴンオルフェノクの右腕を踏み砕き、風見を狂った笑みで迎えた。
「まだ終わってないぜぇ……」
 腰には、北崎がつけていたベルトが巻かれていた。
 デルタフォンを口元へ運ぶ。
「変身……」
 ――Standing by――
 首輪のパルスが、デルタの前回使用者が浅倉でない為変身許可を与える。
 準備のできたデルタフォンを、デルタムーバーへと接続させる。
 ベルトより白いラインが走り、浅倉の身体を包む。
 ――Complete――
 黒い強化スーツが浅倉を包み、龍から蛇へと中身を替えた悪魔のライダーが現れた。
「ハァァァッ……」
 首を回し、風見が見据えられた。
 蛇に狙いを定められた事を悟るも、負けじとデルタを睨み返す。
「いいぜぇ、その眼は。ゾクゾクする」
 北崎がしたように、ミッションメモリーをデルタムーバーに装着させ、ポイントシリンダーが迫り出した。
 ――READY――
「チェック」
 ――EXCEED CHARGE――
 ダルそうに下げた銃にエネルギーが走る。
 ゆっくりと銃を向けられ、引き金に指がかかったのを確認する。
 風見には、放たれた光弾を避ける力は残されていなかった。
 白い三角錐が、生身の風見志郎を縫い付ける。
「ハッハッハッハッハ!」
 狂気に満ちた笑い声を上げ、僅かに上下に開いた蹴りで三角錐のエネルギーを纏いながら、仮面ライダーを貫いた。
(お、俺は……茂……)
 右手が虚しく空を掴み、風見志郎は仮面ライダーとしての生を終えた。

「ハァ~、こいつはいい。イライラがすっかり消えた」
 風見の死体を見下ろし、変身を解いた浅倉の顔には笑みが浮かんでいた。
 オルフェノクの身体ではない浅倉がデルタになったゆえ、デモンズスレートという名の毒が回った。
 しかし、浅倉は変わらない。人の闘争本能を刺激するだけの毒では、闘いに飢えている浅倉には影響を与えられるはずがなかった。
 デルタの毒は、毒を内包する蛇に影響を与えれず、ただ巨大な力を提供するだけだった。
「ふん? こいつ、静かになりやがった」
 手に持っているベルトが沈黙したのに気づく。
 浅倉は知らないが、連続使用により過負荷がかかり二時間の間完全に沈黙したのだ。
 神崎の、生への確率を減らす制限の一つだった。
「まあいい。どうせしばらくすればまた使える」
 北崎との戦闘、続けてV3との死闘を通して浅倉はある程度時間が来れば再度変身できることに気づいた。
 頭の回る浅倉は、戦いの余韻もあってかその場で休憩を取る事を決めた。
(キックホッパーを殺しに行って拡声器を奪うのも面白いな。北岡やあきらを呼びつければもっと面白くなる)
 低く笑い、荷物へと向かう。風見志郎の荷物を手にしたとき、中身が零れ落ちた。
「ん?」
 手に取ったそれは、デルタのベルトと似た構造をしていた。
 四角に折り畳まれた物、その名をファイズブラスターと言った。

【北崎 死亡】
【風見志郎 死亡】
残り37人

D2エリアの出入り口が逆ダブルタイフーンで崩れました。瓦礫をどかさないかぎり、C2へ移動できません。

【浅倉 威@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:遺跡D-3】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:左目負傷、全身に負傷、疲労極大。
    イライラが晴れて気分爽快。
[装備]:デルタフォン、デルタドライバー。
[道具]:未確認(北崎のデイバック)。ファイズブラスター。
[思考・状況]
1:変身できる時間になったら、キックホッパーと戦うためC6の丘へ。
2:その後北岡、あきらを探して殺す。
[備考]:デルタドライバーは二時間の間完全に起動しません。
    二時間経てば再使用できます。

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最終更新:2018年11月29日 17:19