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Dawn(暁、夜明け)


赤い装甲と、格子状の仮面を纏ったライダーが、剣を一気に振り下ろした。
武器らしいものは何も持っていない、怒りを眼に湛えた男に向かって。


些細な偶然から、戦士になってしまった男。
鍛錬と願望の果てに、戦士として在った男。

戦士としては歪んだ男。
戦士の仮面を喪った男。

出遭ってしまった二人の男。
出逢えなかった二人の戦士。

――――――その遭遇は、偶然か必然か?
――――――その対面は、不幸か幸運か?

――――――そしてその邂逅は、この世界に何を齎すのか?


声の元に向けてひた走る。
連なる声は、どす黒い悲劇を繰り広げていた。
低い声が、

『仮面ライダーの知り合いめ、嬲り殺しにしてやる』

告げた。絶望が身を侵す。
……間に合わないのか、俺はっ!?


道の真ん中に散らばっているそれを拾い集める。全身の傷が意識から消える程の動揺。

「ザビー……ゼクター……」

ライダーとしての自分と供に在った、唯一無二の相棒。
その外殻は無残にも砕け、内部も多くの箇所が歪み、捩れ、捻り潰されている。
完全に壊れたという訳ではなさそうだが、回路が幾つもの箇所で寸断されているのは間違いない。

それは、紛れも無い死だ。

機械に命が無くとも、あの確かな鼓動は消えた。

もう二度と、戻って来る事は無い。

「……ぁああああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!」

蹲った。
瞼の裏を灼く熱と、脳髄を抉る冷たい激痛のギャップ。
それが双眸の奥を苛み、熱を眼の端から溢れ出させる。

――――――その時、声が聞こえた。


「くそっ!!」

―――何で間に合わなかったんだ!俺はっ!

市街地に辿り着いた時、末期の声が聞こえた。
あの声が、何処までも重く背中に圧し掛かる。

―――仮面ライダーは……闇を切り裂いて、光をもたらす!

「俺は……人を守る為にライダーになったっていうのに……!!」

また、誰も守れない。

あの放送で死んだ六人も、
今、何処からか呼びかけて来た女の人も、

誰も、守れない。

「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

自分の在り方は――――――そんなにも、弱いものだったのか。


「はは…………」

自嘲の笑いが口から零れる。
自虐の笑みが口から漏れる。

朧な意識の中、虚ろに響いた男の叫び。

―――仮面ライダーとして、

―――希望を捨てないでください!
―――勇気を持ってください!
―――正しく生きることを諦めないで下さい!

「俺は、もう……仮面ライダーじゃないんだ……」

前へと進む希望は無い。
前へと進む勇気は無い。
正道を往く意志は、それらと共に尽き果てた。

ザビーゼクターの残骸を握り締め、ビルの壁へと寄りかかる。
全身の疼痛と迫り来る闇に心を浸し、ゆっくりと眼を閉じた。

――――――望むのはただ、力だけ。



そして――――――彼らは邂逅する。

歪んだ合わせ鏡のように、相似の疵を抱え込み。
華と砕けた鏡のように、互いの瑕を拡げ合う。

――――――二人は遂に、相見える事となる。


市街地を当ても無く彷徨っていると、道の端で建物に寄り掛かるように倒れている男がいた。
胴には刺し傷。顔は青褪め、そして、

血を吐くかのような苦悶の表情で。
大切な誰かを喪ったかのような慙愧の表情で。
、 、 、 、 、 、 、 、 、、、 、 、 、 、、、
自分の在り方を否定されたかのような、漆黒の闇よりも暗く沈んだ表情で。

眼を、閉じている。

―――――――――何故か、鏡を視ているような気がした。

「……大丈夫ですか!?」


幻想を振り払い駆け寄る。七人もの人を救えなかった自分に出来るのは、これから一人でも多く救うことだけだ。
かなり大きな声で呼び掛けたのに、全く反応が無い。

……また救えないのか、俺はっ!

だが、傍に立った時、その男が眼を開いた。

……良かった、生きてる。

「あの、大丈夫です……か……?」

確かに、男の眼は開いていた。
、 、 、 、 、 、 、 、 、 、、 、  、 、 、 、 、 、 、、 、 、 、 、 、 、 、、 、 、 、
非人間的なまでに充血した、地獄の悪鬼そのものの両眼を見開いていた。

反射的に、飛び退く。

――――――これは、眼を合わせてはいけないモノだ。

浅倉とは違う。
東條とは違う。
須藤とは違う。
今までに出逢ったどんなライダーとも違う、真下へと沈み込む螺旋を象った精神性。

脳裏に恐怖を刻まれ、カードデッキを取り出した。
握り締めたカードデッキを男の瞳へと突き出し、龍騎へと変身する。

否、変身――――――しようとした。

「おい!何するんだよ!」

だが、それは阻まれる。

一挙動で飛び起きた男が、カードデッキを奪い取ったのだ。


こいつの顔を見た瞬間、直感で解った。

俺と同じだ、と。
拠り所を喪った俺と同じだ、と。

自分を成り立たせる為の拠り所を喪った俺と同じだ、と。

何か黒いものを持ったその右手が突き出された。腰に現れるベルト。

――――――こいつは、力を持っている。
それが許せない。
俺は全てを喪ったというのに、こいつは力を持っている。
だが、まるで何もかもを手放してしまったかのように絶望している。
力を当然のものとして認識するその考えが、どうしようもなく腹立たしい。

四肢と胴体の筋肉を一度に動かし、壁に寄り掛かる姿勢から一気に飛び掛る。
素早く右手を伸ばし、黒い板状のそれを奪い取った。

「おい!何するんだよ!」

傷の痛みの所為か、血が足りない筈の頭は酷く冴えていた。
奴のベルトが消え去ったことをしっかりと認識し、それについて考察を巡らせることが出来るほどに。
掴んだそれを掲げる。腰に現れるベルト。
……思い通り。
どういった原理かは知らないが、ベルトの存在はこれに依存しているらしい。
そして、バックル部分は空白であり、片側だけが開いている。
恐らくは、これを入れる為の隙間。
装填した。

それが全身を覆う。ベースの赤と銀の装甲、その輝きによって強い印象を与える龍の鎧が。

「……は、はははははははははははははは!!」

力だ。
壁を軽く殴りつけると、それだけで無数の亀裂が走る。

その感触に酔いつつ左手の違和感に眼を向けると、龍の頭を象った手甲があった。
かしりとスライドし、板状の何かを差し込むスペースが現れる。

……何だ?

サイズは丁度、あの黒い板と同程度。

腰の正面に手を遣り、板を探った。
指先に感触の違いが引っ掛かる。
するりと抜け出たそのカードには、『SWORDVENT』の文字と、大陸風の曲刀が描かれていた。
……やはりな。
それを左手の機械へ置くと、しっかりと重なった。スライドを引き戻す。

『SWORDVENT』

電子音声、頭上から飛来する刃。
掴み取り、倒れ込んで喚いていた喧しい男に振り上げる。
そして――――――振り下ろした。


龍騎に変身した男の、狂気と狂喜の高笑い。

「……は、はははははははははははははは!!」

拳を叩きつけ、壁に罅を入れている。

「くそ、何なんだよあんたはっ!」

叫ぶ。だが、全く反応が無い。

地面を転がり、何とか距離を取る。
その間にも声を挙げるが、聞いている様子が無い。

見れば、カードデッキからカードを取り出し、バイザーにベントインしていた。

「……何で知ってるんだよ!?」

自分が見よう見真似でやっていたのを思い出す。その時の再現のように、使ったカードまでもが同じ。

『SWORDVENT』

低い声。刃が大気を切り裂く音。
奴の右腕に、長大な刃が握られていた。

振り上げられる刃。仰向けに倒れている自分。

……ここで、終わるのか……!?

誰かを救う為にライダーになったのに、誰一人として救えずに。

そんなことを、認められる筈も無い。

叫んだ。

全力で、その意志を。


赤い装甲と、格子状の仮面を纏ったライダーが、剣を一気に振り下ろした。
武器らしいものは何も持っていない、怒りを眼に湛えた男に向かって。
だが、刃を正面から見据える男は大きく息を吸い込み、叫んだ。

「あんたも……」

「あんたも、誰かを傷付ける為にライダーになったっていうのかよ……!?」

刃が、止まる。

からん、と乾いた音。
それを支える握力を喪ったライダーの手から、剣が滑り落ち、路面を叩く音が響いた。


知らず、右手から刃が零れ落ちていた。

――――――あんたも、誰かを傷付ける為にライダーになったっていうのかよ……!?

俺は、一体、何をしようとしていた――――――!?

他人から力を奪い取り、
それを振るう感触に酔いしれ、
挙句の果てに、ライダーでもワームでもない者を殺そうとした。

それは、その行動は、不協和音そのものではないのか。

そもそも、俺は何の為にライダーになった?
いや、何の為にゼクトに入った?

ワームを倒す為―――違う。
リーダーになる為―――違う。
パーフェクトハーモニー―――違う。

それらは全て手段に過ぎない。
脳裏に去来するのは――――――

「――――――そうだ、俺は――――――」

ワームから救った少年の笑顔。
護り切った女性の感謝。

そして―――身を挺して庇った部下の安堵の声。

「――――――誰かを護るために、仮面ライダーになったんだ……!!」


戦士の意志に呼応し、それが――――――鋼の甲虫が眼を醒ます。
だが、飛び立つことは無い。

今は、まだ。


男の変身が解除される
現れた顔は、何処か穏やかな笑顔だった。
今見れば、両眼の充血は泣き腫らしたものだと分かる。

カードデッキを差し出され、戸惑いつつも受け取った。

「……ありがとう。君のお陰で、最も大切なものを取り戻せた」

「え、ちょ、あんた、あんたは一体なんなんだよ!!」

俺の言葉に対して、その男はにやりと笑い、言った。

何処か誇らしげに。

「――――――矢車」

それこそが、今の自分だというように。

「――――――仮面ライダーではなくなった男、矢車想だ」

何処か誇らしげに、言った。


朝焼けに包まれて、彼は走り出す。
往くべき道を。

その情熱のベクトルは、誰かの胸を貫くのか。


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G5】
【時間軸:8話 ザビー資格者】
【状態:重症。全身打撲&火傷&刺傷(急所は避けていました。大出血もありません)】
【装備:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)】
【道具:アドベントカード(サバイブ)】
【思考・状況】
1:もう二度と、こんな過ちは犯さない。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
※矢車はBOARDという名前に嫌疑(ワームの組織では?)
※やさぐれ抜けた所為で、傷の痛みと出血で気絶する可能性があります。
※カブティックゼクターは、どのような形でかは分かりませんが島に存在します(不明支給品?)

城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G5】
[時間軸]:47,8話前後。優衣が消えたことは知っています。
[状態]:健康。小沢さんは思考の彼方。
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:なし
[思考・状況]
1:何なんだこの人は!?
2:ひとりでも多くの人を助ける。
3:戦いを絶対に止める。
4:蓮たちを探す。

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最終更新:2018年11月29日 17:25