オープニング◆Z5wk4/jklI



 広間には、静寂が満ちていた。
 冷たい床には、多くの者が力なく横たわっている。その首には、金色の首輪が嵌められていた。
 多くは人の姿をしていたが、中には宇宙人とも、怪人ともつかぬ者が少なからずいた。
 やがて、一人、また一人と目を覚ます。
 傍にいた者を揺り起こしにかかる者、仲間の無事を確かめる者、お互いを疑ってかかる者、
怒号、悲鳴、困惑、様々な声に広間はたちまち喧騒に包まれる。
 やがて、全ての者が目を覚まし、見知らぬ場所と置かれた状況を認識し出した頃、
何処からともなく流れてきた金色のもやが壇上に集まり、若い男の姿を成した。
「お目覚めのようですね。皆さん」
 男は、困惑や誰何の声の満ちる広間をぐるりと見渡し、こう告げた。
「これから、貴方がたには殺し合いをして頂きます。たった一人、勝者を決める為に」
 そして、黒い衣装を身に纏う男を見つけ出すと、嘲笑う様に声を掛けた。
「まったく…つまりませんよ、理央。
 せっかく面白かったというのに、あなたとゲキレッドは最後の最後で、私の邪魔をしてくれた。
 おかげで、私はまた退屈に時を過ごさねばなりません」
「…貴様の暇つぶしに付き合えとでも言うつもりか。ロン」
 怒りを抑えきれないように、理央は低くうなった。
 傍らの若い女、メレは威嚇するように武器を構えている。
「その通りです。これ程の人数が殺し合う様は、退屈しのぎに相応しい」
 さも当然のようにロンは笑った。
「麗と深雪を頼む。サンジェル」
 それまで、静かに成り行きを見守っていた壮年の男が、妻と娘らしき二人を傍らの若い男に委ねると、
瞬く間に、その姿を人から異形のものに変えた。
「そのような悪しき戦い、天空聖者の名にかけても許すわけにはいかない!
 この場で、貴様を打ち倒す!!」
 赤き異形の剣士は二刀を構え、ロンに向かって技を放つ。
 彼を知る者には、そんな幻視が見えたかもしれない。
「グッ!!」
 技が発動する寸前、首輪が金色に鈍く点滅すると、剣士は血反吐を吐き、くず折れる。
「勇さん!!」「ブレイジェル!!」
 深雪とサンジェルが駆け寄り助け起こすが、その体はぴくりとも動かず、すでに息絶えていた。
 麗は悲痛な声をあげ、その場に立ち尽くす。
 その顔をいつの間に近づいたのか、ロンが首を傾げ覗き込む。
 父の仇を目の前にしながら、麗は凍りついたように動けなかった。
まるで、彼女の苦手な蛙が蛇に睨まれた時のように。
「お可哀想に。ですが、妙な考えは起こさないことです。お父上のようになりたくなければね。
 …あなたもですよ」
 彼女を助けようとしたのか、それとも無理を承知でブレイジェルの仇を討とうとしたのか、
背後で、魔法を使おうとしていたサンジェルにロンは釘をさす。
「悲しむ事はありません。あなたが最後の一人になればよろしいのです。
 勝ち残った者には、どんな願いでも一つ叶える権利を差し上げましょう。
 私の力を持ってすれば、この場にいる全員の命を甦らせることさえ容易い」
 そして、ひとかたまりになっているバックを指し示した。
「名前を呼ばれた者から順にあれを一つ掴みなさい。
 おおよその事は、その中に書き記してあります」
 閉まっていた門扉が音も無く開き、その奥の深い闇を晒す。
「さあ、あの門をくぐり出発しなさい。バトルロワイアルの宴に。
 最後の一人になるまで、せいぜい私を楽しませてください」



【小津勇=ブレイジェル 死亡】
残り41名


(2008/02/10(日))

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最終更新:2018年02月11日 00:43