心の闇に刃を潜めて
「そんな馬鹿な!?なんでここにシャドームーンの名前があるんだ!!?」
南光太郎はマンションの階段付近で、乾巧――を名乗る
草加雅人――に名簿を見せて貰っていた。
「………あいつはゴルゴムと共に滅んだ筈だ……まさか、まだ死んでいなかったと言うのか!?」
「……誰か知り合いでも居たのかな?」
「ええ、貴方はシャドームーンを……銀色のボディに、エメラルドに輝く眼を持つ男を見ませんでしたか?」
「その人は危険な人物なのかな?」
「………ええ、俺の知っているシャドームーンなら、危険だと言わざるを得ないでしょう………それで見たんですか?」
(あいつは確か俺の姿を見ていなかったな、南光太郎の口振りや後ろの二人を助けようとしなかった事からも
ゲームに乗るかはともかく、他の参加者とは敵対する可能性が高い。今はあいつを泳がせておく方がいい)
「すまない、生憎そんな奴は見ていない……」
「そうですか………今、あっちの方で爆発が起こりませんでしたか?」
光太郎が指し示す方向では、建物が粉塵をあげながら倒壊していた。
「どうやらあそこで、戦闘が行われている様だな……」
「俺はあっちの様子を見てきます!乾さんはそこの部屋の中で待っていて下さい」
名簿を返しながら光太郎は、マンションの一室を指し示す。
「待て、俺も一緒に行こう」
「怪我の癒えていない、乾さんが来ては危険です!」
「負傷はしていても、戦う手段はある。それに危険を言うなら、ここに一人で居てもそう変わらない」
草加が同行を申し出たのは、計算に基いての事。
今から行けばゲームに乗っている者がまだ居たとしても、制限や戦闘によるダメージ、消耗によって戦えない可能性が高い。
ゲームに乗っていない者が居たら、そのまま仲間に引き込めばいい。
(いざという時は南光太郎を囮にして、逃げる事も出来るしな……)
「あそこに助けを求める人が居るかと思うと、俺ものんびり待っていられないからな」
冗談めかしてそう言った後、草加は真っ直ぐな表情で光太郎を見据えた。
「……分かりました。貴方がそこまで言うなら、共に行きましょう」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(本当に何なんだよ、この人は?)
城戸真司は混乱していた。
真司にしてみれば突然自分のカードデッキを奪って変身し、あまつさえ自分を殺そうとした男が
またも突然にそのカードデッキを返し、礼を言ってきたのだから無理も無い。
しかもその男が自分に向かって、倒れてきたのだから真司の混乱は極みに達した。
「うわぁっ!!?」
咄嗟に抱き止めてみたら、男は気を失っている。
「ちょ!だ、大丈夫かよ!?いや、大丈夫じゃないのは見たら分かるんだけど」
真司は狼狽しながらも何とか男の息がある事を確認し、とりあえず近くの民家の中に運び込むことにした。
「お邪魔しまーす……って誰も居ないか、そりゃそうだよな……」
居間に布団を敷きそこに男を寝かせて、真司はようやく一段落付くことが出来た。
「でもこれから俺、どうすればいいんだよ……矢車さん放って置いて、他所に行く訳にもいかないし……
早く蓮達を捜しに行きたいけど、やっぱり矢車さんが目覚めるまでここに居ないといけないよな……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
―――先程、みなさんに希望を訴えた真理ちゃんは命を落としました。
(おのれクライシス!真理さんの夢と命を無残にも引き裂くとは、この俺が許さん!!)
建物の倒壊があった場所に向かいながら、光太郎は再び怒りに打ち震える。
思いを言葉にしないだけ彼にしては自分を抑えているのだが、例によって真理殺害犯はクライシス帝国になっていた。
―――みんな、聞こえたか。麻生さんや真理ちゃんが言った通り、諦めるんじゃないぞ。
(変身能力を持つであろうヒビキと、仮面ライダーキックホッパーが合流したか……)
怒りに燃える光太郎とは対照的に、草加の心は冷めている。
真理の死によって草加の思考は、ゲームの参加者を如何に効率良く殺すかだけに切り替わっていた。
今更誰のどんな呼び掛けの言葉を聞こうと、心が乱される事は無い。
(あの二人を殺すのは、仲間に引き入れて利用しながら隙を窺ってからか
あるいは俺以外の奴をぶつけてだな……)
「なんて事だ!町が廃墟になるまで破壊されている!!この惨状、クライシスの仕業か!!」
「……南君、これを見てくれ」
廃墟と化したG-5エリアの町並みを光太郎と散策していた草加は、被害を免れた民家まで続く血痕を見付ける。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
真司は自分達が隠れている民家の玄関前に、人の気配を感じ取った。
玄関に聞き耳を立て、外の様子を窺う。
―――この民家の中まで、血痕は続いているようだな。
―――俺が中の様子を見てきます!乾さんは外で待機してて下さい。
―――……分かった、だが無茶はしないでくれ。それと、もう少し声を落としてくれないかな。
(どうやら外の奴等は、二人で組んで動いているみたいだな。
お互いを気遣ってるし、悪い奴等じゃ無さそうだよな……よし!)
真司は意を決し、自ら玄関を開ける。
「あのー……」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
警戒も露に草加の楯になって構える光太郎を見て、真司は慌てて両手を伸ばし自分の目の前で振る。
「ちょちょちょっと待った!!俺は戦う気は無いですよ!」
「戦う気が無いと言うのは本当か!?」
「本当ですよ!信じて下さい!」
草加は真司の手に、カードデッキを見付ける。
(あれは
秋山蓮の持っていた物と、色違いだが同じ形状だ)
「君は秋山蓮の知り合いかな?」
「あ、あんた蓮の事を知ってるんですか!?」
草加は賭けに勝った事を、内心でほくそ笑む。
(やはり秋山蓮と同じタイプのライダーか、こいつも交渉次第で駒に出来るな)
「この家の中まで続いている血痕は、誰のものかな?」
「これはさっき重症を負っていた人を見付けて、その人を家の中まで運んだ時のもの……だと思います」
「ならその人を見せて詳しい事情を説明してくれないかな?それと秋山蓮との関係も教えて欲しい。
もしそれで君を信用出来るとこちらが判断したら、秋山蓮について知ってる事を教えよう」
「事情を説明したらいいんですね。……あ、その重症を負っていた人はこっちです!」
(こんな不当な取引にあっさり応じるとは、どうやらこいつもかなりのお人好しみたいだな)
光太郎と草加は、真司に案内され矢車の居る部屋に向かった。
「そうですか……蓮は殺し合いに乗っていたんですか……」
「ああ、秋山蓮はさっき話した二人の仲間、警官の制服を着た男と緑色の怪物に変身する女と共に……珠純子さんを殺したんだ」
居間に集まった三人はお互い殺し合いに乗る気が無い事を確認し合うと、詳細な情報交換を済ませた。
最も草加には、虚偽や隠している情報も有ったが。
「……蓮が……人を殺していたなんて」
『一つでも命を奪ったら、お前はもう、後戻り出来なくなる!』
『……俺はそれを望んでる』
何時か交わした蓮との会話を思い出し、真司は呆然とする。
(……蓮……お前はもう、後戻り出来なくなったのかよ……)
「……そうだ、こんな事してる場合じゃない!乾さん、蓮達はF-7エリアに居たんですよね!?」
「俺があいつ等を最後に確認した時は三人とも重症を負っていたし、秋山蓮と女は気を失っていた。
あれからそれほど時間も経っていないし、F-7エリア付近に居ると見ていいだろうな」
「俺、今から蓮達の所へ行って来ます!」
「待て!行ってどうするつもりだ!?」
「決まってるじゃないですか、蓮を止めるんですよ!」
光太郎の静止も聞かず、真司は自分の荷物をまとめ出発しようとする。
それを見て草加は、真司に蓮と氷川やひよりを始末して貰う事を思い付く。
(その前に一応、引き止める振り位しておくか……)
「少し落ち着いてくれないかな。彼等は既に人を殺しているんだ、口で言って説得出来るとは思えないがな」
「だからって放っとく訳にはいかないでしょ!」
出発を急ごうとする真司の肩を、草加が掴んで止める。
「今の彼等を止めるつもりなら、殺す位の覚悟が要る。君にそれがあるのかな?」
「何で殺さなきゃいけないんだよ!?そんな事しなくてもちゃんと止めてやるよ!蓮も、この戦いも……ッ!!?」
真司は全てを言い終わる前に、草加に殴り飛ばされる。
「いって~……何すんだよ!!お前……」
「この戦いを止めたいと思っているのは、お前だけじゃ無い!!!」
詰め寄る真司を、草加が一喝する。
「すまない……殴ったりして……だが秋山蓮達を止めたいのは俺も同じだ。
俺は……守ると約束した純子さんを、奴等に殺されたんだからな」
草加は顔を伏せ、拳を震わせる。
「………乾さん」
「秋山蓮は残忍で、仲間の二人は狡猾だ。奴等は善人の振りをして俺達に近付き
隙を見て無抵抗な純子さんを殺し、俺も奴等の内二人に深手は負わせたものの、逃げるのがやっとだった……」
震える拳からは、血が滲んでいた。
「生半可な覚悟で奴等に向かっても、返り討ちに遭うか利用されるだけだ」
「……そうですね、乾さんの言う通り生半可な覚悟で行っても、どうしょうも無いかもしれない」
真司は静かな表情に、迷いの無い目で草加を見据える。
「でも、どうしても放って置く訳にはいかないんです。あいつの闘いの重さを受け止めるって約束したから……
殺す覚悟は出来なくても、命をかけてその約束を果たす覚悟はあります」
誠心な表情で真司を見返しながらも、草加は内心苛立つ。
(ゴミが!煮え切らない事を言いやがって……まあいい、何時までも引き止めて気が変わられても困る……)
「仕方ない、なら俺が君を奴等との戦闘があった場所まで案内しよう」
(俺も行ってあいつらとの戦闘中に、事故でも装って殺せばいい
この単純な城戸真司なら、どうとでも誤魔化せる)
「俺は奴等を直接見た事がある、共に捜した方が見付け易いからな」
「乾さんは、まだ怪我が治ってないじゃないですか!」
「さっきも言っただろう、俺も君と同じ様に奴等を止めたいんだ。それに君一人を行かせたら、心配でしょうがないしな」
「………分かりました。安心して下さい!何があっても俺が乾さんを守りますから!」
笑顔を作りながらも悔しそうに顔を伏せる草加に、真司は同行を承服した。
「南君は悪いがここで、
矢車想を見ていてくれないかな?」
「ええ。誰かが矢車さんに、付いていないといけませんから」
「すまない、君もシャドームーンを捜しに行きたいんだろうが……」
「仕方ないですよ、そっちは宛が無いですし」
「もしここを引き払わなければならなくなったら、ここからでも見えるあの一番高いビルの屋上で落ち合おう。
今日の18時の放送までに会えなかったら、俺達は死んだものとして行動してくれ」
そう言いながら草加は、矢車のデイパックを改める。
「乾さん……そのデイパック、矢車さんのじゃないですか?」
「ああ、彼の持つ武器を確認しておこうと思ってな。食料や水を奪うつもりは無いが
武器になる物は取り上げておいた方がいい」
「……でも気絶している人の物を取るのは、やっぱりまずいんじゃ……」
「君を襲った以上、これ位の警戒は必要だ。……どうやらこのカード以外は、特別な支給品は無いみたいだな」
「あっ!それサバイブのカードじゃないですか!!」
「君はこれを知っているのかな?」
「これを使えば、俺の変身するライダーはパワーアップするんですよ!!」
「なら、これは君に渡そう」
「え……でも、いいのかな?」
「どうせこの場に居る者の中では、君以外には使えない物だ」
「じゃあ、これは俺が貰っておきます」
「では、俺達はそろそろ出発しよう。南君、後の事は頼む。くれぐれも矢車想には気を付けてくれ」
「ええ、貴方達こそ気を付けて行って下さい」
草加は真司と肩を並べ、F-7エリアを目指す。
「しっかし驚いたな、神崎がクライシス帝国なんて連中と手を組んでたなんて!
幾ら優衣ちゃんの為だからって地球を侵略しようとしてる連中組んだり、
こんな殺し合いを仕組んだりしても優衣ちゃんは喜ばないっての!」
(こいつ南光太郎の話を信じてるのか?)
「ああ、俺も神崎を倒し、この島に居る人達を守りたい。……城戸君、力を貸してくれるかな?」
(まあ、それくらい単純な方が利用しやすいかもな)
「当たり前ですよ!いや~、なんか久しぶり意見の合う人に会ったみたいですよ。ホント乾さんに会えて良かった~」
(まずはこいつを確実に手懐けて……)
「……そうだな、俺も君に会えて良かったよ………」
(俺の言いなりになる駒に仕立てるとするか………)
草加は真司と、強く手を交わす。
内に秘めた、憎悪の闇を隠して。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
[時間軸]:47,8話前後。優衣が消えたことは知っています。
[状態]:健康。
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:アドベントカード(サバイブ)
[思考・状況]
1:乾さん……やっとまともな人に出会えた。
2:蓮達を捜し出して止める。
3:ひとりでも多くの人を助ける。
4:戦いを絶対に止める。
【備考】
※草加を巧、ファイズだと思い込んで全面的に信頼。
※神崎はクライシス帝国と手を組んでいると信じています。
※サバイブのカードの種類は後の書き手に任せます。
【草加雅人@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
[時間軸]:ファイズ終盤
[状態]:全身に負傷。背中に切り傷。疲労。参加者全員への強い憎悪。
[装備]:カイザドライバー(カイザブレイガンのみ付属) 、ゼクトマイザー。
[道具]:ファイズアクセル、三人分のデイバック(佐伯、純子、草加)
ディスクアニマル(ルリオオカミ、リョクオオザル、キハダガニ、ニビイロヘビ)
マイザーボマー(ザビー、サソード、ガタック(小消費)、ホッパー)。
[思考・状況]
1:城戸真司と手を組み、利用し尽して殺す。
2:ゲームの参加者の皆殺し。
3:秋山蓮達を捜し出して殺す。
4:更に頼れる仲間を集める。
[備考]
※珠純子の死を秋山蓮か青いライダー(加賀美)に擦りつけようと考えています。
※自分のことを乾巧と偽っています。展開に応じて、臨機応変に対応。
※ゼクトマイザーは制限により弾数に限りがあります。
【南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
【時間軸:第1話、RXへのパワーアップ直後】
【状態:健康。】
【装備:リボルケイン】
【道具:カラオケマイク(電池切れ)、ハイパーゼクター】
【思考・状況】
1:矢車想を見張る。
2:矢車想が気付き次第、事情を聞く。
3:シャドームーンを捜す。
4:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す 。
【備考】
※黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。
※ガタックゼクターをクライシス帝国の罠だと勝手に確信しています。
※草加を巧、ファイズだと思い込んで、全面的に信頼。
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
【時間軸:8話 ザビー資格者】
【状態:気絶。重症。全身打撲&火傷&刺傷(急所は避けていました。大出血もありません)】
【装備:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)】
【道具:無し】
【思考・状況】
1:気絶中
※矢車はBOARDという名前に嫌疑(ワームの組織では?)
※カブティックゼクターは、どのような形でかは分かりませんが島に存在します(不明支給品?)
最終更新:2018年11月29日 17:26