鬱蒼と茂った樹海の麓にある白い研究所。その入り口に立つ男がひとり。
 いや、男と呼ぶには少々躊躇われる容姿を彼はしていた。
 赤い宝石のような艶をもつ眼に、物を噛み砕くのに適した強靭な牙。前頭部からは長い触覚が伸び、さながら昆虫のようなフォルムを形作っていた。
 肩と足からは敵を威嚇するかのような棘を生やし、くすんだ鋼のような色をした身体は、その見た目通りに硬質的ながらも生物の柔軟性も備えている。
 そうそれは男と呼ぶより、怪物と呼ばれるのに相応しい容姿をしていた。
 ひとりの人間が究極の生命体を目指し、創造したその怪物の名前はドラスといった。
(お兄ちゃん、今行くよ……)
 研究所のドアを開け、ドラスは中へと入る。
 ドラスがここを訪ねた目的は、ここで休息を取っているであろう麻生勝――ZOを吸収すること。
 同じ創造主の手によって生まれた麻生を吸収することでドラスは一歩神に近づくことができる。
 歩みを進めていく度に、ドラスは気分が高揚していくのを感じていた。尻尾がその起伏を表すかのように自然と蠢く。
(人間なら、差し詰め、恋人に愛を告白しにいこうってシチュエーションかな?)
 目的を果たすために、待ち焦がれていた相手に会うことができる。ドラスの例えは言い得て妙であった。
 やがて、ドラスはある部屋の前で足を止める。
(ここにいるね)
 麻生はこの部屋にいる。なんの根拠もなかったが、ドラスの本能は既に確信を得ていた。
 ドラスはドアのノブに手を掛け、ゆっくりとノブを押した。
「トワァァァ!」
 ドアを開けた瞬間、ドラスに向かって、蹴りの一撃が放たれる。
 ドラスは紙一重でそれを避けると、その一撃の主に向かって、体当たりをかけた。
 よろめいた隙を狙って、ドラスは後方へと下がり、襲撃者との間合いを取る。そして、その姿を確認した。
 黒いアンダースーツに緑色のラインが入った銀色の装甲。赤い複眼を持つその顔からはバッタをモチーフとしていることがわかる。
「やはり来たか、ドラス!」
(お兄ちゃんの声。そうか、それが闇を切り裂くっていうキックホッパーだね)
 その襲撃者から発せられた麻生の声に、ドラスは彼がホッパーゼクターの力によって変身した仮面ライダー、キックホッパーだと理解した。
 同時にドラスは麻生の意図も理解する。
(これじゃあ、お兄ちゃんを取り込むことはできないね)
 ZOへの変身は麻生自身の身体が変化したものだが、キックホッパーへの変身は麻生がスーツを身に纏ったもの。
 取り込もうとしても、キックホッパーの装甲は、堅固な鎧となり麻生の身を守るだろう。
(仕方ない。作戦通り、時間切れを狙うしかないか)
 ドラスの戦略は決まる。一定の間合いをとっての遠距離攻撃。
 首輪によって変身していられる時間が制限されていることはわかっている。キックホッパーだけ例外ということはないだろう。
 ドラスは踵を返すと、ドアを開き、その場からの逃走を試みた。
「逃がすか!」
 部屋を出たドラスをキックホッパーは追う。
(逃がさない。奴はここで倒す)
 麻生はドラスが来ることを予期していた。
 ドラスの目的のひとつは自分を吸収すること。ひとりになれば必ず襲いかかってくると思っていた。
 まだ、マシーン大元帥との戦いで受けた傷は完全に癒えておらず、体調は万全とはいえない。
 だが、ここで決着を着けておかなければ、いずれ誰かを巻き込んでしまうかも知らない。
 もう誰も犠牲者は出させない。
「トォ!」
 強化された両足で、地面を蹴る。加速を受けた身体は宙を翔け、ドラスの前方へと回り込んだ。
 逃げられないことを悟ったのか、ドラスは己のディパックより先端がジグザグという奇妙な刀身をした剣を取り出した。
 キックホッパーもそれに合わせて、構えをとる。
「グァァァァッ」
 先に動いたのはドラスだった。剣を振り上げ、上段から振り下ろす。だが、遅い。
 キックホッパーはそれを避けると、一気に間合いを詰め、ドラスへと拳を打ち込む。
 一発、二発、三発。間合いを広げぬよう拳を打ち込むと同時に前へ前へと進む。
 四発、五発、六発。そして、七発目を打ち込もうとしたとき、突如、キックホッパーの顔面を打撃が襲った。
(これは……尻尾か!)
 ドラスの背中から長く伸びた尻尾が、キックホッパーの顔面をはたく。一瞬、キックホッパーの視界からドラスが外れた。
 その隙を狙い、ドラスは剣を水平に構えると、キックホッパーの胸を突く。
 鋼鉄をも切断するその剣は、キックホッパーの装甲を貫き、彼の生身の部分へと迫った。鋭き刃が皮膚を裂き、続けて、肉の味を知ろうとなおも進んでいく。
「ぐっ、させるか!」
 キックホッパーは剣の鍔部分を狙って、蹴りを放つ。そして、その勢いを利用して、後方へと飛んだ。
 たちまち身体から抜き放たれる剣。しかし、その代償は少なくなかった。
 ジグザグになった刀身を持つその剣は、抜き放たれるときに、周りの肉を抉り取り、キックホッパーの鮮血と肉と装甲を飛び散らした。決して傷は浅くない。
 そして、キックホッパーとドラスとの間合いがまた開いてしまっている。
(俺に飛び道具はない。だが、奴には)
 ドラスは再びディパックの中から道具を取り出していた。小型ながらも強力な威力と連射性能を持つ銃。その威力は前回の戦いで実証済みだ。
 案の定、ドラスはそれを構えるとこちらに向かって、引き金を引いた。乾いた音が鳴り、無数の銃弾がキックホッパーに降り注ぐ。
 避けようにも狭い通路に身を隠せる場所はなく、弾き返そうにも、この数ではとても間に合わない。
(そうだ!)
 キックホッパーの脳裏に、マシーン大元帥との戦闘がフラッシュバックする。
 自分に放たれるはずが、真理に向かって放たれた凶弾。そのとき、自分がとった行動は……
「クロックアップ!」

―Clock Up―

 腰のスイッチをスライドさせると、ホッパーゼクターから音声が鳴る。すると、キックホッパーの世界は一変した。
 先程まで捉えるのも困難だった無数の銃弾が、ひとつひとつ視認できるほどの速度にまで落ち、ドラスのわずかな表情の移り変わりもわかるようになる。
 最も人間が他の動物の表情からその感情がわからないように、キックホッパーにはドラスの感情などわかる由もないが。
 キックホッパーは銃弾を全て弾き落とす。そして、再び自分の間合いに戻すため、ドラスへと突撃した。

―Clock Over―

 クロックアップの効果が切れ、世界が正常な時間の流れを取り戻す。
 だが、自分の間合いに戻すには充分だった。既にドラスは間合いの中だ。
 キックホッパーは手刀で銃を叩き落とすと、続けて、拳を頭部へと叩きこむ。再びドラスが尻尾を繰り出してくるが、同じ手は食わない。
 逆に尻尾を掴むと、それを力ずくで引っ張り、浮いたドラスの身体を壁へと叩きつける。
 2度、3度と、何度も何度も壁がへこむまで叩きつける。
「グァァァァ」
 溜まらず悲鳴を上げるドラス。しかし、それでも攻撃の手を緩めるつもりはない。
(ここで、ここでドラスにとどめをさす!)
 真理を失った悲しみ。救えなかった自分への悔やみ。殺し合いに乗った闇への怒り。全ての感情を力に変えて、ドラスへと叩き込む。
「トワァ」
 幾度となく壁に叩きつけられ、ぐったりとしたドラスを、キックホッパーは放り投げる。止めをさすためだ。
 キックホッパーはホッパーゼクターへと手をかける。
(止めのライダーキックだ)
 キックホッパーがホッパーゼクターのレバーを上げようとしたとき、子供と機械の無機質な声が混じりあったような声がした。
「オニイ……チャン、オコッテルン……ダ…ネ」
 声を発したのはドラスだった。よろめきながらも、なんとか立ち上がろうとしている。
「ナン……デ、ソンナニ…オコッテイル……ノカナ?ヒョットシテ…………オネエチャンノコトカナ」
 相変わらず表情からドラスの感情は読み取れない。だが、声からはわかる。その声には確かにこちらを侮蔑するかのごとき、ニュアンスが含まれている。
(何を言うつもりだ?……まさか!)
「オネエチャンヲ……『灰』ニシタノハ……ボクダヨ」
「!、………貴様ァ!」
 実際に灰にしたのはオルフェノクである影山冴子であるが、その言葉はキックホッパーに絶大なる効果を表した。
 一瞬にして、キックホッパーの心が怒り一色に染まる。体中の血液が沸騰し、自然と拳が強く握られる。
「ドラス!」
 ホッパーゼクターの脚部、レバーとなった箇所を跳ね上げる。

―Rider Jump―

 一瞬にして脚にエネルギーがチャージされる。その力で地面を蹴り、宙を舞う。
 続いて、レバーを下げると破壊エネルギーが怒りと共に左脚へと宿った。

―Rider Kick―

 怒りを込めた渾身の蹴り。これが決まれば、ドラスといえども破壊は免れない。
 程なくして爆発音が通路に響いた。
 だが、その爆発で破壊されたのはドラスではなかった。破壊されたのは……
「うぉぉぉっ」
 破壊されたのはキックホッパーの脚だった。
 左脚に装備されたアンカージャッキはへし折れ、緑色の装甲は吹き飛び、生身の脚を露出させている。そして、露出された脚は焼け焦げていた。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
「い、一体何が」
 キックホッパーは破壊された瞬間を思い出す。キックホッパーがライダーキックを放った瞬間、ドラスは何かを投げたのだ。
(あれは……首輪か)
 そう、ドラスが投げたのは、キックホッパーたちが首につけている首輪だった。強力なエネルギーがこもったライダーキックは首輪に当たると一瞬の内に首輪を破壊した。だが、それが命取りだった。
 強力な力で破壊された首輪はその瞬間爆発した。爆発自体は小規模のものだったが、その威力は凄まじく、キックホッパーの装甲を破り、麻生の脚へと致命的な傷を与えた。
 唯一、幸いといえるのは脚が吹き飛ばなかったことぐらいだろう。
「くっ、貴様」
 追撃がくる。キックホッパーは壁を背にどうにか立ち上がる。自分もダメージを受けたが、それはドラスも同じこと。
(まだ、戦える!)
 そう思い、キックホッパーは構えを取る。だが、ドラスはディパックをとると、こちらへと背を向けた。
(逃げようというのか?)
 これ以上戦っても無駄だと判断したのだろう。この戦いは痛み分けにして、次に繋げる。それは懸命な判断といえた。
「待て、ドラス!」
 しかし、キックホッパーは逃がすつもりはなかった。
(ここで逃がしてしまっては、また、新たな犠牲者が出ないとも限らない。真理ちゃんのように)
「うぉぉぉぉぉ!」
 気合を込めて、キックホッパーは両の脚で立つ。だが、やはり脚には激痛がはしる。とても立っていられない。
 このままではドラスを追うことは出来ない。
(ならば!)
 キックホッパーはホッパーゼクターに手をかけると、ベルトから引き抜き、変身を解除した。たちまち、キックホッパーから麻生の姿へと戻る。
 そして、すかさず、もうひとつの姿への変身の構えをとった。
「変身」
 麻生の呼びかけに応え、光を放ちながら、身体の細胞が人間から別の生命体への変化を始める。
 肌の色は肌色から緑へ。その眼は黒から赤へ。だが、心は変わらず、白のままで。
 やがて光は収まり、変身が完了する。ドラスの試作体ともいえる姿をしながらも、人の心を持ち続ける生命体。仮面ライダーZO。
 ZOの口からクラッシャーと呼ばれる牙が飛び出し、後頭部に空いた気泡から、空気が排出される。ZOが能力の全てを開放した証だ。
 ZOは地面を蹴り、ドラスへと飛び掛かっていった。
 防御を固めようとするドラスの腕を取ると、チョップで破壊し、そのままキックで脚を砕いた。
(思った通りだ)
 キックホッパーと違い、ZOは麻生自身が変化した姿だ。変身することで、麻生の肉体は根本から強化される。ZOの左脚は全快とまではいかないが、歩けるぐらいには回復、強化されていた。
 ドラスに吸収される危険性はあるが、もう二度と同じ愚は繰り返さない。
 ZOはドラスを圧倒する。お互いに満身創痍ではあったが、それならば相手より、より有利になる要素を持つ者が勝つ。
「ツヨイネ……オ…ニ…イ…チャン」
 ZOは物が投げられぬようドラスの両腕を破壊し、満足に動けぬよう両足を粉砕、不意打ちが出来ぬよう尻尾も切り取った。
 これでもうドラスは抵抗することが出来ない。剣も銃も握れず、尻尾も扱えない。唯一、レーザーを放つ可能性はあるが、恐らくそれは無理だろう。
 以前、ドラスと戦ったとき、ドラスは自分の変身が解けたのにも関わらず、止めをさすことができなかった。
 恐らくドラスにも首輪の制限というものが掛かっているはずだ。戦い始めて、以前に自分の変身が解けた以上の時間は既に経っている。
(レーザー……?)
 そのとき、ZOは自分の考えに何らかの違和感を覚えた。何かを見過ごしている。だが、その思考をドラスの声が遮る。
「デモ……ヒドイ…ヨ………バラバラニスルナンテ……イマノ…オニイチャンノスガタヲ………オネエチャンガミタラ……」
「うるさい!」
 もう挑発には惑わされない。冷静に、そして、確実にキックを決めるだけだ。
 ZOは飛び、キックの体勢に入る。一度、振り上げられた振り子が戻ってくるかのような軌道を描きながら、ZOのライダーキックは放たれた。
 それがドラスの頭部へと命中すると同時に、ZOは数度の細かな蹴りを叩き込む。
 そこに留まる術のないドラスの身体は、ZOに蹴られ、長い通路を吹き飛んでいった。
 長い静寂の後、壁にぶつかる轟音と、それとほぼ同時に爆発音が響く。そして、それに追従して、瓦礫が落ちる音。
「やったか」
 ZOはドラスの生死を確認するため、瓦礫へと駆け寄る。ドラスの亡骸はその瓦礫に埋もれていた。キックの衝撃のためか、既に頭部もなく、胸部のみが残されている。
 もはや、ドラスはピクリとも動かない。
(……これでドラスの手によって犠牲者が出ることはもうない)
 安堵すると同時に、激戦の疲れが襲ってくる。思わずZOは膝を突く。同時に左脚に激痛が走った。
(よくこんな傷で戦えたものだ。早く手当てをしないと)
 ZOは壁を伝いながら、自分が休んでいた場所、医務室を目指した。
 程なくして、医務室に辿り着き、腰を下ろす。
(この傷ではしばらくは戦えないな。だが、安静にしていればなんとかななるはずだ)
 一時は呪わしいと思ったこの改造された体だが、今は素直に頼もしく思う。普通の人間と比べ、回復のスピードは段違いだ。
(そう、俺は真理ちゃんとの約束を守らなければならない。一刻もはやく傷を治さなければ)
 手当てのために麻生はZOへの変身を解いた。
「!」
 その瞬間、背中を衝撃が襲った。
「……ぐはっ」
 その衝撃は麻生の背中を焼き、口から鮮血を吐かせる。
(一体何が?)
 麻生は後ろを振り向くと、信じられない者を目撃した。
「ド、ドラス!」
 そこにはドラスが胴体だけの状態で浮いていた。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
 耳障りな独特の笑い声を頭がないというのにドラスは上げる。
「な、何故?」
 問う麻生に、身体を輝かせ、ドラスは再び、レーザーを放つ。
「ぐわぁぁっ」
 右腕に続いて、左腕、その次は右脚。先程のお返しとばかりにドラスは麻生の四肢を焼いていく。
(そ、そうか。わかったぞ)
 麻生は先程感じた違和感の正体に気付いた。
 麻生は四肢を潰されたというのにドラスがレーザーを使わなかったことを、首輪の制限を受けている根拠にしていた。
 だが、それがそもそもの間違いだった。ドラスは制限を受けていたのではない。制限を受けているかのように戦っていたのだ。
 ドラスはキックホッパーとZOとの戦いの最中、レーザーは使わず、支給品である剣と銃での攻撃に終始していた。
 能力を使い始めたのは、ZOのとどめの一撃、ZOキックを受ける直前からだ。
 キックには切り離した頭部を命中させ、浮遊能力で吹っ飛んだように見せかける。そして、レーザーで壁を破壊し、さもキックの威力で壊れたかのように錯覚させた。
(今思えば、ドラスにしてはあまりにも弱すぎた)
 ドラスが本気で戦えば、キックホッパーやZOとは互角以上に戦える。
 あまりに戦いが有利に進んだことを麻生はおかしいと思うべきだった。だが、園田真理を殺された怒りが麻生の判断能力を狂わせていた。
 麻生はドラスの策略に自分が嵌ったことを知る。同時に今の状況がどれだけ絶望的なものなのかも。
(すまない。ヒビキさん、冴子さん、……真理ちゃん)
 絶望的な状況の中、麻生はドラスに向かっていった。


(3分か。結構もったね。さすがお兄ちゃん。あやうく制限時間を切るところだったよ)
 胸部のみとなったドラスの前には、麻生が横たわっていた。
 レーザーによって、身体のあらゆる部分が貫かれ、焼かれている。呼吸も浅く、ぴくりとも動かない。
(お兄ちゃんには苦労したな)
 キックホッパーという力を手に入れた麻生を手に入れるのは並大抵のことではない。
 10分しか自分の能力が発揮できず、その後は2時間もの制限が加わるこの戦いにおいて、自分の2倍の時間戦えるようになったのは大きなアドバンテージだ。
 だが、ドラスだからこそあるアドバンテージもある。それはネオ生命体であること。
 能力制限がされている間は確かに超常的な力は発揮できない。しかし、ネオ生命体であることまで変わるわけではないのだ。
 ドラスの身体のほとんどはゴミ捨て場などから収拾した金属で精製されている。ようするに木偶のようなものだ。
 本体を傷つけられない限り、いくら傷つこうとも死ぬことはない。
 金属で作られた身体はそれなりに強度もあり、銃を撃つ衝撃にも耐えることができる。そして、手足と同じく、尻尾は身体の一部分、制限が加わっても動かすことは可能だ。
(お兄ちゃん。お兄ちゃんの敗因はね、やっぱり人間であることだよ)
 麻生が気付く機会はあった。だが、ドラスを倒そうとするあまり、効率的な行動を取れなかったこと。それが麻生の敗因だった。
(いくよ、お兄ちゃん)
 ドラスの胸部が開き、麻生に向けて光を放つ。それはドラスの本体から発せられる光。
 放たれた光は麻生の身体を包みこみ、麻生の身体を粒子化させる。刹那、無数の粒子となった麻生はドラスの体内へと吸い込まれた。
(力がみなぎる)
 身体のうちから外へ、徐々にエネルギーが満ちていく。同時にくすんだ鋼色をしたドラスの身体は血肉が通ったかのように赤く染まっていく。
(これが新しい力……ううっ)
「グゥゥゥゥ」
(なにか……おかしいな)
 進化の途中で、身体が違和感を訴える。まるで魚の骨がのどに刺さったかのような異物感。
(何か僕の身体に取り込めないものがある?)
「グォォォォ!」
 咆哮を上げ、その違和感の原因を力ずくで排出する。胸からふたつ、金属の塊が飛び出してきた。
 ひとつはZECTと刻まれたベルト。そして、能力を制限するための首輪。
(僕のじゃないね。お兄ちゃんの首輪か。さすがに取り込むことは無理だったか)
 それらが排出されたことで、ドラスの進化は完了した。身体は赤く染まり、先程までとは比べものにならない力が身体を支配している。
(これなら制限されていた能力も使えるかも)
 ドラスは周りの金属という金属に語りかける。僕の下に来い。僕の力になれと。
 すると、医務室にある金属の数々は熔解したかのようにただ銀色のみの金属の固まりになり、ドラスに吸い込まれていった。
 瞬く間にドラスの胸部のみだったドラスの身体からは手が生え、脚が生え、そして、頭部が形成される。
 ドラスの身体は完璧に再生されたのだ。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
(凄いなぁ。たぶん、能力を発揮している状態でしか使えないんだろうけど、完璧に再生できるなんて)
 ドラスは自分の強化された能力に愉悦し、麻生に会おうとしていたとき以上の高揚を得る。
(今度はどれくらい戦えるか試してみたいな。……そうだ。首輪が外れたってことはお兄ちゃん、死んだことになるんだよね。
 なら、ここに戻ってくるかも。お兄ちゃんと一緒にいたもうひとりのお兄ちゃん)
 2時間後、ヒビキはドラスの予想通りの行動をとるようになる。


 ヒビキは血まみれの冴子を手近な建物へと運ぶ。誰が冴子を傷つけたのか?
 状況から判断すれば、それはあきらをさらった狼の怪人としか考えられない。
「ちくしょ!」
 思わず壁に拳を叩きつける。自分があの時、一緒に行動していればなんとかなったはずだ。冴子が血まみれになることも、あきらがさらわれることもなかった。
 だが、悔やんでばかりもいられない。今は肩に大怪我を追った冴子の治療が先決だ。
 ヒビキは手近な建物に入ると、研究所を出るとき、念のためと持ってきた応急処置用の道具を使い、冴子の治療を行った。
 包帯を巻き終え、冴子の体力回復を待っていると、たちまち時間は過ぎ、2回目の放送のチャイムが鳴った。
 放送で知らされる死亡者の名前。その最初に呼ばれた男の名前にヒビキは激しく動揺する。
 死亡者の中にあきらと明日夢の名前が含まれていなかったことには多少の安堵を得た。だが、そんな安堵を吹き飛ばす内容がその放送には含まれていた。
 その放送に絶対含まれてはいけない人物の名前が呼ばれたのだ。
「そんな、麻生さん」
 闇を切り裂き、光をもたらすと誓った勇士の名前。つい今まで自分と一緒にいた男の名前だった。
「ヒビキくん」
「冴子さん……」
 冴子もその放送を聞いたのだろう。真剣な面持ちでこちらを見つめる。
「聞いたわ、研究所に行きましょう」
「しかし、その傷じゃ」
「へっちゃらよ、こんな傷」
 ヒビキにはそれが強がりだとわかる。冴子の治療をしたのは自分だ。とても大丈夫といえる傷ではない。
 だが、ヒビキはその好意に甘えることにした。麻生に一体何が起こったのか。すぐにでも確認したかった。それに冴子をここ置いて行くわけにもいかない。
 放送が何かの間違いであることを祈り、ヒビキはバイクを走らせた。

 それから一時間と経たずにヒビキたちは研究所へと辿り着いた。バイクを止めると、ドアを開け、研究所へと入る。
(これは……)
 入った瞬間、ヒビキは何か圧迫感のようなものを感じた。邪気ともいうべき、邪悪なるものが発する存在感。
(いる。ここに邪悪な何かが)
 ヒビキは五感を研ぎ澄ませ、通路を進んでいく。
 その最中、転がった銃弾、何かが叩きつけられたかのようなへこみ、焦げた壁、そして、瓦礫の山を目撃する。
 それらはここで行われた戦いの凄まじさを物語っていた。
(麻生さんはここで誰かと戦ったんだ。しかし、あの麻生さんが敗れたというのか?)
 湧き上がる疑問を胸に、ヒビキは一際、邪気を強く発している場所を発見する。
 そこは麻生が治療を終え、身を休ませていた場所、医務室だった。
(ここだな)
 今まで数々の魔化網と対峙してきたヒビキでさえ、感じたことのない強大な邪気に、自然と身が引き締まる。
「冴子さんはここで待っていてください」
「……そうね、待たせてもらうわ」
 冴子もここの邪気を感じ取ったのだろう。一歩、身を引く。
(ここからは鬼の役目だ)
 ヒビキは懐から音叉を模した変身道具、音角を取り出し、壁を軽く叩いた。
――キィィィィン
 音角が鳴り響く。ヒビキはそれを額へと、ゆっくりと翳す。額に鬼の顔が浮かび上がる。
「変身」
 ヒビキの声に従い、身体を紫の炎が包み込む。身体を芯から燃え上がらせ、その姿を鬼へと変化させる纏いの炎。
「ううううう、はぁっ!」
 ヒビキが炎を振り払うと、そこには人助けを生業とする鬼、仮面ライダー響鬼が立っていた。
「……っ」
 冴子が息を呑む。鬼となった自分の姿に驚いているのだろう。
「行ってきます。シュッ」
 大丈夫という代わりに、敬礼に似た響鬼流のサインを冴子に送り、響鬼は医務室へと入っていった。

「ようこそ、もうひとりのお兄ちゃん」
 響鬼が部屋に入ると、鋼色の魔化網が悠然と立っていた。
(こいつ、話せるのか)
 怪物としかいえない容姿をしていながら、子供のような声で話す魔化網。その奇妙な組み合わせに響鬼は言い知れぬ恐怖を覚える。
「貴様が麻生さんを殺したのか!」
「お兄ちゃん?ううん、僕は殺してないよ。お兄ちゃんは僕と一緒になっただけ。お兄ちゃんは神となる僕と共に永久に生きていくんだ」
「話にならないな」
 響鬼は腰に携えた音撃棒、烈火を抜き取り、両の腕に構える。
「愚かな人間には理解できないかも知れないね」
「人間は愚かなんかじゃない。そして、人間を守るのが俺の仕事だ」
 睨み合う二人。先に仕掛けたのは響鬼だった。ふたつの音撃棒で素早く連撃を打ち込む。
「はぁっ!」
 だが、ドラスは左腕で軽々と受け止める。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。効かないよ、お兄ちゃん!」
 お返しとばかりに肥大化した右腕を振るう。
「がっ……」
 骨がきしみ、息が止まる。巨大魔化網に殴られた以上の衝撃が響鬼を襲う。
 その一撃で、響鬼は自分が危惧していた敵が想像以上の化け物であることを理解する。
(これを受け続けるのはやばい)
 響鬼は口を大きく開け、ドラスの顔面に火を吹きかける。怯んだ隙を狙って、自分のペースに持ち込むつもりだった。
 だが、すぐに自分の考えが甘いことを知る。ドラスはまったく怯まない。
「っ……ぐっ」
 ドラスの左手が響鬼の首を捉える。そして、いたぶるように徐々に力を入れていく。
 器官が圧迫され、息が止まる。響鬼は必死に腕を振り解こうとするが、がっちりと首にくい込んだドラスの指は、まるでその形が正しいかのように微塵も動かない。
(音撃…鼓……)
 響鬼はベルトの中心に装着された太鼓状の装備、音撃鼓を右手に取る。そして、それをドラスの左手へと押し付けた。
 たちまち音撃鼓は肥大化し、ドラスの腕へと広がる。
 闇に落ちようとする意識を精神力で保ち、左手に握った音撃棒を叩き付けた。
――ドン!
 太鼓を叩く音が響き、首を拘束するドラスの腕が若干緩まる。
(今……だ)
 二度、三度と音撃棒を打ち込む。ドラスの腕に広がる破壊の波紋。ついにドラスの腕が首から離れた。
 好機は逃さない。響鬼は右手にも音撃棒を構えると、本格的に音撃を打ち込み始める。
「猛火怒涛の型」
――ドン! ――ドン! ――ドン! ――ドドン!
 太鼓を敲くかの如く。強く、それでいてしなやかに音撃棒を敲き込む。
「ハァァァァァァァァ、ハッ!」
 気合一閃。ドラスの左腕が粉微塵に吹き飛んだ。
(よし、いける。力は強くとも、音撃が通じるなら魔化網と一緒だ。撹乱して、隙をつくり、音撃を打ち込めば勝てる)
 響鬼が見たわずかな光明。だが、ドラスはその光明がまやかしだと言わんばかりにあざ笑う。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。そうこなくちゃ。強くなきゃ、実験にならないもんね」
「実験?」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
 ドラスが笑い声を上げると、その声に応え、身体が赤く染まっていく。
 まるで自分が紅と呼ばれる強化フォームになるかのように。
(これは……紅?まさか、パワーアップしたということか)
 赤くなったドラスが左肩を上げると、棚から金属物質が引っ張られる。そして、それは瞬時に形を変え、ドラスの失われた左腕を形作った。
「再生した!?」
「ここからが本番だよ、お兄ちゃん!」
 振り下ろされる右腕。響鬼は音撃棒で防御するが、まるで鉛筆を折るかのたやすくそれをへし折り、脳天を直撃する。
 一瞬、飛びかける意識。それを気合で繋ぎとめる。
「パワーはこんなものか。次はスピードだね」
 ドラスが響鬼の視覚から消える。
「どこだ!?」
「ここだよ、お兄ちゃん」
 響鬼の後ろから聞こえる声。急いで後ろを振り向くが、響鬼の視界に飛び込んできたのはドラスの左腕。
 反射的に思わず眼を閉じる響鬼。だが、衝撃は顔ではなく、腹に来た。
「ぐぇぇっ!」
「これ以上、頭を殴ったら気絶しちゃうかもしれないからね」
 続いて、横から衝撃がくる。拳でも、脚でもない。それはドラスの尻尾だ。
 しかし、威力は充分。響鬼の身体は宙を舞い、棚に叩きつけられる。
(つ、強すぎる)
 ドラスの圧倒的な実力を前に響鬼の心が折れかける。だが、混濁する意識のなか、響鬼は自分に関わる人たちの顔を見た。
 自分と同じく人助けを生業とする鬼の仲間。
(イブキ、トドロキ、ザンキさん、サバキさん)
 ここで新たに出会った仲間たち。
(純子さん、草加、秋山、冴子さん、麻生さん)
 そして、
(明日夢!あきら!)
 そうだ、ここであきらめるわけにはいかない。残っている鬼は俺ひとりしかいない。俺は明日夢を、あきらを助けなければいけない。
 響鬼は立ち上がる。燃える心を胸に、例えどんな相手だろうともあきらめるわけにはいかない。
「ハァァァァァ!」
 響鬼は身体の隅々に力を行き渡らせ、それを燃料に更に身体を燃え上がらせるよう念じる。
(奴に対抗するためには紅になるしかない。夏じゃなくとも、心と体を燃え上がらせれば……なれるはずだ!)
「ハァァァァァ!」
 しかし、響鬼の願いは虚しくも叶うことはなかった。変わる予兆こそあるものの紅になるにはいたらない。
 それは首輪の制限によるものなのだが、紅になれないという事実は燃え上がりかけた響鬼の心を容赦なく消耗させる。
(なんで、なんで、紅になれないんだよ)
 絶望する響鬼に、再び尻尾の一撃が繰り出される。不意を付かれた響鬼は防御することさえ出来ず、まともにその一撃をくらう。
「ぐあっ」
「お兄ちゃん、何するつもりだったの?……もういいかな、大体自分の力がわかったし、殺しちゃうね」
(くっ、逃げないと)
 迫る死の恐怖に、響鬼は逃げることを選択する。だが、身体が思うように動かない。
 腹への一撃がじわじわと効いてきたようだ。
(なんとか、時間稼ぎを)
 響鬼はあきらより渡されたディスクアニマルのことを思い出す。
 音角を使い、3枚のディスクアニマル全てに色を与える。
「いけ」
 音角によって、仮初の命を持ったディスクアニマルはCDの形から動物の形に変わっていく。すると、響鬼にとっても予想外のことが起こった。
 鴉、獅子、大猿。3匹のディスクアニマルはそれぞれが模した動物の大きさまで巨大化し、ドラスの前に立ちふさがる。
(聞いたことがある。昔のディスクアニマルは動物の魂を込めていて、術者の力次第で巨大化することができると。これはそのディスクアニマルか)
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、面白いね」
 ドラスは自分に挑みかかるディスクアニマルに気を取られている。逃げるなら今しかない。
 響鬼は一直線に出口であるドアを目指す。後ろからはディスクアニマルが砕ける音。
(済まない、ディスクアニマル)
 自責の念に駆られながらも、逃げるため、ドアノブへと手を伸ばした。
 ドアが開いた。だが、開けたのは響鬼ではない。
 そのドアを開けたのは冴子だった。
 自分を助けに来たのか。冴子の好意はありがたい。
「冴子さん。早く逃げ……」
 一瞬、響鬼は何が起こったのかわからなかった。突如、現れた針状の長い剣が自分の左目を貫いた。
 それをしたのは……
「さ、冴子さん?」
「ごめんなさいね。でも、あなたの知り合いはもうふたりしかいないっていうじゃない。
 あきらちゃんにはもう本性が知られちゃったし、明日夢っていう男の子は子供だっていうし……もうあなたに利用価値はないわ」
 灰色の怪人の姿になった冴子の姿を見て、自分が騙されていたことに気付く。同時に自分が結果的にあきらを追い込んだ原因であることも。
「ありがとう、冴子お姉ちゃん。お姉ちゃんのおかげでお兄ちゃんと一緒になることができたよ」
「あら、しゃべれるようになったのね。……礼には及ばないわ、ドラスくん」
(こいつら、グルか)
 全身から力が抜けていき、床に突っ伏す。見るとディスクアニマルは既に粉々に砕かれ、破片になってしまっている。
(つまり、俺はあきらを窮地に追い込んで、その上、麻生さんもみすみす犠牲にしてしまったってわけか。人助けが鬼の仕事というのに、これじゃとんだ疫病神だ)
 先程と同じように自分に関わる人たちの顔が脳裏に浮かぶ。しかし、もう響鬼に力を与えてくれることはなかった。
(サバキさんは最後の最後まで戦って、人助けをして死んだんだ。それなのにサバキさんが命がけで救った純子さんを俺は救うことが出来なかった。
 ザンキさんだって、きっと人助けをして死んだ。それに比べて俺は、騙され、人を助けるどころか、犠牲にしてばかり。結局、俺は誰ひとり救えないまま、死ぬのか。
 ……いや、それもいいかも知れない。中途半端に鍛えた俺が人を助けようとしても、結局、不幸にするだけ。それならここで死ぬ方が一番の人助けだ)
 響鬼の心を絶望の闇が支配する。一切の望みを捨て、生きることすら望まないその心はまさに闇。だが、光が失われたわけではない。

 人助け。

 響鬼の生きる意味ともいうべき、それが心から消えない限り、仮面ライダーである資格は失われない。
 その証に、響鬼の心に惹きつけられ、一匹の生物が響鬼の手に飛来する。
(ディスクアニマル?いや、これは麻生さんの……)
 ホッパーゼクター。主人を選ぶ、そのゼクターに選ばれたことは、その証。
 ドラスと冴子の意識は響鬼から逸れていた。手負いの獲物などいつでも殺せると思っているのだろう。
 その隙をついて、響鬼は立ち上がると、床に転がるベルトの元に飛んだ。
(俺は光をもたらすことは出来ない。だが、少しでも光に近づくことが出来れば)
 響鬼はベルトを巻くと、鬼への変身を解除する。それと同時にホッパーゼクターをベルトにはめ込んだ。

―HENSHIN―

 電子音が鳴り響き、ヒビキの身体を銀色の装甲が包んでいく。装甲が形作るのは新たなるライダーの姿。
 キックホッパーと同様の姿をしながら、銀の複眼と装甲を持ち、左脚ではなく、右腕にアンカージャッキーを装備する。
 その姿の名が、変身が完了すると同時に高らかに鳴り響く。

―Change Punch Hopper―

「キックホッパー?麻生くんのベルトを使って変身したというの?」
「違う。この姿は……パンチホッパー。闇の中でも光を信ずる、仮面ライダーパンチホッパー」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。そうこなくちゃね、お兄ちゃん」
 好敵手の誕生に冴子は恐れ、ドラスはまた笑う。
 パンチホッパーはそんなドラスに向き合い、ベルトのレバーを上げた。

―Rider Jump―

 パンチホッパーは飛んだ。高く、ひたすら高く。パンチホッパーの狙いはドラスでも、冴子でもない。

―Rider Punch―

 強化された拳が天井を突き破る。その勢いのまま、パンチホッパーは天井裏へと入った。
「今はまだお前たちとは戦わない。だが、必ずお前は俺が倒す」

―Clock Up―

 パンチホッパーは加速すると天井裏を通り、その場から去っていった。

「逃がさない」
 追おうとする冴子をドラスは静止する。
「追わなくてもいいよ、冴子お姉ちゃん。もう時間だから」
 その言葉と同時に赤かったドラスの身体は通常時の鋼色の姿へと戻る。
「力を発揮できるのは10分だけ。その制限は変わらないんだ。だから、冴子おねえちゃん。首輪を外す方法、早く見つけてね」
 ドラスは自分のディパックの中から首輪を冴子に渡す。恐らく園田真理のものだろう。
「ありがとう。でも、危なかったわね。あのまま戦いが続いていたら、ヒビキくんに負けてたんじゃない」
 暗に今ならドラスを殺せるという意味も込めて、冴子は言う。だが、ドラスに動揺した様子は見えない。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。例え制限があったって、僕が負けることはないよ。だって、僕は神になる究極の生命体なんだから」
 聞きようによってはハッタリとも取れるその台詞。だが、冴子はそれが真実だと感じていた。
(この子は本当にそんな状態になっても負けない。この子にはやり遂げるだけの力を秘めている)
 冴子の身体が震える。それはドラスのという存在への恐怖と、それに出会えたことの喜び。
(本当は利用するだけのつもりだったけど、この子なら私に永遠を与えてくれるかも知れない。……この子は本当に神になる!) 
 一歩、神へと近づいたドラス。それに付き従う人間は、他の人間を絶望に染めて、神のそばへと寄り添おうとしていた。

【麻生勝 死亡?】
残り35人
【ドラス@仮面ライダーZO】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:市街地D-6エリア】
[時間軸]:仮面ライダーZOとの戦闘で敗北し死亡した直後
[状態]:健康。
[装備]:怪魔稲妻剣、GM-01改4式(弾数残りわずか)
[道具]:首輪(麻生勝)。配給品一式×3(ドラス、立花藤兵衛、麻生勝)。
 ラウズカード(ダイヤの4、8。クラブの7。ハートの3、4、7。スペードの4)。拡声器。
[思考・状況]
1:とりあえず休憩。
2:望月博士なしで神になる方法を考える。
3:首輪を外しこの世界を脱出する。
4:首輪の解除のため、冴子を利用する。
5:他の参加者は殺す。ただし、冴子には興味あり。
6:可能ならこの戦いに関する情報を得る。
[備考]
※1:ドラスの首輪は胴体内部のネオ生命体本体に巻かれています。(盗聴機能は生きています)
※2:ドラスはドクトルG、ヨロイ元帥、ジェネラルシャドウ、マシーン大元帥の情報を得ました。
※3:麻生は首輪が外れたため、死亡扱いになりましたが、ドラスの中で生きています。
ただし、ドラスが死ぬと麻生も死にます。
※4:赤ドラス化は能力発揮中のみ使用可能です。通常時は普通のドラスに戻ってしまいます。

【影山冴子@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻: 日中】
【現在地:市街地D-6エリア】
[時間軸]:本編最終話あたり
[状態]:肩にかなりの深さの裂傷。2時間は変身不可。
[装備]:なし
[道具]:首輪(園田真理)。アドベントカード(SEAL)。配給品一式。
[思考・状況]
1:生への執着。ドラスくんなら、自分の望みを叶えてくれる?
2:ドラスくんとの取引にのり、首輪の解除方法を探す。
3:あきらと巧に復讐。

日高仁志@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻: 日中】
【現在地:市街地D-6エリア】
[時間軸]:四十一乃巻。明日夢と桐矢を弟子にした後。
[状態]:軽いやけど。左眼に深い傷(失明?)。2時間は鬼、パンチホッパーへの変身不可。
[装備]:音撃鼓。音撃棒×1。変身音叉・音角。ホッパーゼクター&ホッパー用ZECTバックル。
[道具]:配給品一式。
[思考・状況]
1:麻生の仇をとるため、ドラスの打倒策を練る。
2:人質にとられている少年とあきらを助ける。
3:裁鬼と斬鬼の仇をとる。
4:ゲームから脱出する。
5:知り合い以外の参加者全員に不信感。
[備考]
※1:シャドームーンを魔化魍、もしくは闇に堕ちた鬼だと思っています。
※2:草加達にも若干の疑念が生まれました。
※3:HONDA XR250は制限により、あらゆる能力で変化することが出来ません。
※4:あきらを連れ去ったウルフオルフェノクを敵と認識しています。
※5:首輪の制限により、24時間は紅に変身できません。

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最終更新:2018年11月29日 17:30