赤と黒◆i1BeVxv./w



 深く生い茂った森。
 夜の闇を纏った木々たちは葉の緑をより濃くする。
 闇と組み合わさった森の木々たちは得も言われぬ不気味さをかもし出していた。
 そんな中、颯爽と歩く黒髪の男がひとり。
 男に物怖じした様子はない。当然であろう。幼い頃よりトレジャーハンターとして活動していた彼には、このような環境は慣れたものだ。
 男の名は伊能真墨。古代の秘宝プレシャスを回収することを目的としたチーム、轟轟戦隊ボウケンジャーのひとりである。
「ちくしょ、明石の奴、格好つけやがって」
 真墨の歩みは粗い。勢いよく草を踏みしめ進んで行くその様を見れば、表情を確認しなくとも、彼の機嫌が悪いことがわかる。
 その原因となる男。真墨が心に思い描くのは、ロンという得体の知らない相手に対して、堂々と対峙する明石暁の姿だった。

 1時間前――

「さあ、あの門をくぐり出発しなさい。バトルロワイアルの宴に。
 最後の一人になるまで、せいぜい私を楽しませてください」
 広間に集められた多数の人々を前に開幕の言葉は告げられた。
 その時点で自分が置かれている状況を理解できたのは何人いただろうか。
 見慣れない場所に連れて来られ、殺し合いをするよう告げられ、人が血反吐を吐き死ぬ姿を目の当たりにする。
 数分の内に起きた様々な出来事に、人は混乱し、思考を停止させる。
 かくいう真墨もその一人だった。
 何かをしなければならないとは思うが、その何かを考えることができず、ただ眼の前の男がしゃべるのを呆然と見ているだけだ。
 その様をロンは満足気に見つめ、一人目の名を告げた。
明石暁
 だが、少なくとも最初に名前を呼ばれた男の態度は違っていた。
 『不滅の牙』という二つ名を持ち、ボウケンジャーのチーフとして、数多くのプレシャスを回収してきた男――明石暁
 明石はまったく萎縮した様子を見せず、むしろ堂々と胸を張って、ロンの前へと進み出る。
 ロンはその姿を多少訝しげに見ていたが、構わず次の言葉を紡ぐ。
「さあ、まずはあなたからです。どれでも好きなディパックを取って、その門を潜りなさい」
 当然、ロンは自分の命令に明石が従うものだと思っていた。明石の堂々とした態度は所詮、虚構だと判断していたのだろう。
 しかし、明石は身を崩さず、視線だけをロンに向け、強い調子で言った。
「その前にひとつだけ確認しておきたいことがある」 
「なんでしょう?」
「たったひとりになった者にはなんでも願いを叶えると言ったが、それは本当か?」
 明石の問いにロンは嘲るような笑みを浮かべると、明石の顔を舐めるように見上げる。
「本当ですよ。永遠の命でも、世界を滅ぼす力でも、愛する者の復活でも、なんでもです。
 ああ、あなたには最高のプレシャスでも差し上げましょうか?」
「結構だ。欲しいものは自分の手で手に入れてこそ価値がある。
 それに、実際にこの眼で見ないことにはお前の言うことは信用できない」
「ほぉ。では、どうすれば信用していただけるのですか?」
「俺を殺し、そして、生き返らせてみろ」
 ロンの動きがピタリと止まる。
「……なかなか面白いことを言いますね」
「力の証明には丁度いいだろう」
「私としては先ほどのあれで力を証明したつもりなのですが」
 ロンは小津勇の亡骸を一瞥する。だが、明石は意に介さない。
「あれは首輪の力だ。ロン、お前自身の力の証明にはならない」
「ふぅ、いいのですか?もし、私に叶える力がなかったら無駄死にすることになりますよ」
「それはちょっとした冒険だな」
 どことなく軽い口調で明石はいつもの言葉を口にする。
 それがロンの気に障ったのだろう。心なしかロンの表情が険しくなる。
「いいでしょう。私がどれほどの力を持っているかお見せするとしましょう」
 ロンは明石に掌を向ける。すると、掌から眩い光が巻き起こった。
 強烈な光にその場にいた全員が眼をつぶる。
「明石!」
 思わず声を上げる真墨。
 やがて、光が治まると、その場から明石の姿は消えていた。
「貴様ぁ!」
 真墨は怒声を上げ、ロンへと詰め寄る。
 だが、その手がロンに届こうとした刹那、ロンの身体は金色のもやとなり、真墨の手から逃れていく。
「心配せずとも、会場となる場所に飛ばしただけです。
 今ここで力の証明をしても構わないのですが、これ以上、進行を遅らせたくありませんし、どうせ証明するなら反抗する気が起きないほど、大きな力を見せようと思いましてね。
 ただ、私にもそれ相応の準備というものがいります。まあ、証明はいずれ」
 ロンは憤慨する真墨を横目で見やると、ニヤリと笑った。

 その後、すぐに真墨の名前が呼ばれ、門を潜ることになった。
 真墨が飛ばされた先は森。ディパックに入っていた地図で確認した限り、B9エリアだ。
 一通り持ち物を確認すると、真墨は南西へと進んだ。目的地は人が集まることが予測される市街地。
 明石もきっとそこに来るはずだ。
「明石……」
 ひとりになり、多少冷静になると、明石が何故、あんな無謀なことをしたのか見えてくる。
 明石はロンの思惑に乗らない奴がいることを示したかったのだ。
 極限状態に追いやられた時の人間は意外と脆い。自分の命に危険が及べば、普段は殺し合いなどしない人間でも容易くマーダーになってしまう。
 そうならないためには『光』が必要だ。『闇』に囚われない強烈な『光』が。
 明石は自らの命を危険に晒して、それを示したのだ。
「ちくしょ、明石の奴、格好つけやがって」
 真墨は口では毒づいていたが、それは弱気になった自分の心を隠すための虚勢だった。
 真墨にとって、明石は越えるべき存在だ。
 自分とさほど変わらぬ年齢でありながら、既に『不滅の牙』と呼ばれる伝説のトレジャーハンター。
 彼を超えるためにボウケンジャーになったというのに、格の違いを見せ付けられてばかり。今までも、そして、今回も。
「いや、これは逆にチャンスだ。ここで脱出の糸口を探り、ロンを倒すことが出来れば」
 真墨は拳を強く握る。今は明石が一歩リードしている。だが、戦いは始まったばかり。いくらでも挽回のチャンスはある。
「超えてやる。絶対!」


 誰もいなくなった広間にロンはひとり佇んでいた。
「これで全員、会場へと送り出せましたね。それにしても……明石暁、気に入りませんね」
 次々と広間を後にした参加者たち。敵意を向けてくる参加者は相当数いたが、ただそれだけだった。意に介することはない。
 しかし、明石は他の参加者に厄介な影響を与えかねない。つまらない結果になる要因は早めに排除すべきだろう。
「少し、思い知らせてあげるとしますか」
 ロンはフードを被ると、金色のもやとなり、その場を後にした。


「もう少しで街か」
 休みなく歩き続けた結果、真墨は市街地のエリアまであとわずかな位置まで来ていた。しかし、街がある方向からは一向に光は見えない。
「予想はしていたが、街といっても、俺たちの他には誰もいそうにないな」
 だが、合流を目指すならやはり街に集まるはずだ。それに寝床とするなら、森より建物の方がいい。
「急ぐか」

――ガサリ

 その時、後ろから何かを踏みしめる音がした。
(誰かいる)
 真墨は懐に手を入れ、アクセルラーを握り締める。そして、ゆっくりと後ろを振り向いた。
 そこにはひとりの少女が立っていた。
 全身を黒いレザーの服で覆い、ブーツも、コウモリの羽のような髪飾りも全部黒。
 それだけだと大人の女性のように見えるかも知れないが、節々を彩る紫色のひらひらとした装飾が、どこか幼さを印象付けている。所謂ゴスロリというやつだ。
「俺の後ろを取るとはな、何者だ!」
 怒鳴りながら激しく睨み付ける真墨に、少女は眼に見えてうろたえる。
「ちょ、ちょっと待って。ワ、ワタシは別に襲おうとか考えていたわけじゃなくって、その、よければご一緒できないかな~と」
「………」
「本当だって。ワタシに戦う力はないし、支給品も身を守れそうなものじゃなかったし、仕方ないからここに隠れて、誰かが来るのをずっと待ってただけなんだから」
 訝しげな眼で少女を観察する真墨。だが、その今にも泣きそうな顔を見ていると、可哀想になってきた。
 元々女性の扱いはあまり得意じゃない。
「わかった。じゃあ、とりあえず一緒に街へ……」

――パン!

 突如、鳴り響く銃声。その音は後ろから。そして、衝撃は自分の背中から。
「なっ!?」
 真墨はゆっくりと大地へと崩れ落ちる。対象的に、真墨のその姿を見て、少女は跳び上がって喜んだ。
「やったね、メイ」
 木陰からもう別の少女が姿を現す。メイと呼ばれたその少女はライフルを携えていた。
「見事作戦成功だよね」
「だよね」
 二人の少女の名はナイとメア。不死のヴァンパイアであるバンキュリアが退屈を紛らわせるために自分を二つに分けた姿だ。
 故に彼女たちは最初から二人というアドバンテージを持っていた。
 それを利用したのが今回の作戦。
「ワタシが囮になって、隙を作ってぇ~」
「ワタシが支給品のこのライフルで撃ち殺す~」
「単純だけど、効果覿面だよね」
「だよね」
「「アハハハハハッ」」
 二人の勝ち誇った笑いが夜の森に木霊する。
「なるほど、そういうことか」
「……えっ。何、今の声」
「なんか嫌な予感」
 二人は恐る恐る声のした方向を見た。
 そこには先ほど崩れ落ちたはずの真墨がしっかりと大地を踏みしめ、立っていた。
「なんで~」
「なんで、なんで~」
 真墨はジャケットの前をはだけ、内側に着込んでいたものを見せる。
 防弾チョッキ。衝撃までは完全に防げないが、ライフルの殺傷力をなくすには充分な代物だ。
「お前たちにそのライフルと支給されたように、俺にはこの防弾チョッキが支給されていた。
 つまりお前たちの攻撃は俺には通用しないってことだ」
 啖呵を切る真墨に、不機嫌になるナイとメア。
「なんかたまたま助かっただけなのに調子に乗ってるよ」
「そうだね、どうする?」
 顔を寄せ合った二人は同時に呟いた。
「「やっちゃおうか!」」
 互いに頬を寄せ合う二人。すると、二人の身体は溶け合うように融合していく。
 やがて、ナイとメアだったものはひとつの怪人の姿を形作る。クイーンヴァンパイア、妖幻密使バンキュリアの姿へと。
「今度は頭を狙ってあげるわ、坊や」
 妖艶な大人のものへと変わった声で、真墨を挑発し、ライフルを構えるバンキュリア。
 対して、真墨も懐からアクセルラーを取り出すと、タービンを回した。
「ボウケンジャー、スタートアップ!」
 一瞬にして黒と白のスーツに包まれていく真墨の身体。
 頭が黒のメットに覆われ、頭上のヘッドライトが煌いたとき、その変身は完了する。
「迅き冒険者!ボウケンブラック!!」
「まあ、格好つけちゃって。これでも喰らいなさい」
 ライフルから発射された無数の弾丸が、ボウケンブラックに襲い掛かる。
 だが、ボウケンブラックは微塵にも揺るがない。
「ラジアルハンマー!」
 ヘッドライトの光からハンマーが形作られ、ボウケンブラックの手へと武器を精製する。
 そして、ボウケンブラックは精製された武器を、自らの正面でクルクルと回した。
 ボウケンブラックへと届く前に、高速で回るハンマーに弾かれ、地面へと転がる銃弾たち。
「なんですって!」
 驚愕の声を上げるバンキュリア。だが、ボウケンブラックの技はそれだけでは終わらない。
「ライトニングアタック!」
 回転するハンマーはその掛け声と共にボウケンブラックの手を離れると、光の円を描き、バンキュリアへと向かっていく。
「きゃあっ!」
 バンキュリアに接触すると同時に爆発を起こすハンマー。
 爆発の衝撃でバンキュリアは吹き飛ばされ、ハンマーはまるで意思を持っているかのようにボウケンブラックの手元へと戻っていく。
 ボウケンブラックは改めてハンマーを構えると、バンキュリアへ向かっていった。
「お、おのれぇ」
 よろめきながらも、ライフルの先端に付けられたナイフでバンキュリアは必死に応戦を試みる。
 だが、格闘術の差は歴然だった。ハンマーの重い一撃が、右肩、左脇腹、脳天、次々とバンキュリアに決まっていく。
「こ、このままじゃあ……」
「そろそろ止めだ!」
 ボウケンブラックが止めの一撃に選んだのはスリップストリームハンマー。
 相手を上空に跳ね上げ、それを追うようにこちらも大きく跳び上がり、ハンマーを叩きつける技だ。
 ボウケンブラックが止めの一撃を放つため、下段から上段へハンマーを大きく振り上げた。
 そのとき、不思議なことが起こった。
 上空に跳ね上げるための一撃は、ボウケンブラックの思惑より遥かに遠く、それこそ、バンキュリアの姿が見えなくなるほどに大きく跳ね飛ばしたのだ。
「きゃああああっ!」
 上空高く遠ざかっていく悲鳴。やがて、かすかに聞こえていた声はまったく聞こえなくなっていた。
 かなり遠くまで飛ばされたようだ。
「これじゃあ追うのは無理か」
 ふぅと、一息を吐く。だが、気まで抜くつもりはない。
「出てこい、居るのはわかっている」
 ボウケンブラックの耳にはバンキュリアに一撃を放つ前、その声が確かに届いていた。

――ゲンギ・小軽鋭化――

 ボウケンブラックは知る由もないが、物の重さを軽くする技だ。
 その技の主がのっそりとボウケンブラックの前に現れる。
「何者だ。あいつの仲間か!?」
「別に仲間じゃないヨ。ボウケンブラックを殺すには邪魔だったから、ちょっとどいてもらっただけだヨ」
 昔の中国武人のような甲冑に、非情に大柄な身体。そして、胸に飾られたバジリスクの顔。
「幻獣バジリスク拳、サンヨ。今度はサンヨがお相手するヨ」
「ふざけるな」
 ボウケンブラックはラジアルハンマーを振り上げ、一気呵成に叩きつける。
 だが、サンヨはそれを軽々と片手で受け止めた。
「何!」
「軽いヨ」
 動揺するボウケンブラックの隙を突き、サンヨはラジアルハンマーの柄を持つと、ボウケンブラックごと、投げ捨てる。
「がぁっ!」
 地面へと転がるボウケンブラック。しかし、ボウケンブラックは怯まず、ホルスターに携えられたサバイバスターを手に取った。
「サバイバスター!」
 接近戦が駄目なら、遠距離戦。ボウケンブラックの判断は間違っていない。
「ゲンギ・反重力鎧」
 ただ、それが有効な相手かどうかは別の話だ。
 サバイバスターから発射された光弾は全てサンヨの前で向きを変え、ボウケンブラックへと降り注ぐ。
「うわぁぁぁっ」
「止めだヨ!」
 駄目押しとばかりに怯んだボウケンブラックへ向かって、自らの幻気を練り固めた幻気弾を撃ち込む。
 その一撃は一際大きな爆発を引き起こし、ボウケンブラックの身体を焼いた。
 足の先から頭の上まで、痺れるような痛みがボウケンブラックの身体を駆け巡る。
「く、くそっ」
 あまりの衝撃にボウケンブラックへの変身は解除されていた。せっかくの防弾チョッキも実弾ではない弾の前ではなんの効果も発揮しない。
 ゆっくりと真墨の方へと近づいていくサンヨ。止めを刺すつもりなのだろう。だが、真墨はまだあきらめていない。
(あいつの能力はわかった。ラジアルハンマーやサバイブレードで対抗しても力押しではあいつには勝てない。かといって、サバイバスターで攻撃しても跳ね返される。
 ならギリギリまで接近してのデュアルクラッシャーなら、あいつも跳ね返せないかも知れない)
 真墨はアクセルラーを握り締めた。一歩一歩サンヨが近づいてくる。
(あと、3m、2m、1m、今だ!)
「ボウケンジャー、スタートアップ!」
 跳ね上がるように立ち上がると、真墨はアクセルラーのタービンを回した。
(次はアクセルテクターとデュアルクラッシャーの召喚を……)
 だが、真墨の願いは叶わなかった。真墨の身体はタービンを回したのにも関わらず、ボウケンブラックへと変身していなかった。
「ゲンギ・蔵備頓」
 サンヨが呟くと、幻気の光がまるで真墨を押し潰すかのように、その身体へと降り注ぐ。
 真墨は再び地面へと倒れ伏す。ただ、今度はまるで磔になったかのように指一本動かない。
「な、なんでだ?ボ、ボウケン…ジャー……ス…タート、アッ…プ」
 真墨はそれでも身体中の力を振り絞り、アクセルラーのボタンを押し、懸命にタービンを回す。
 されど、真墨の姿は変わらない。
「無駄ヨ。1度変身したら2時間は変身できないヨ。それがこの首輪の効果ヨ」
「な、なに!?」
「わかったら、これでさよならヨ」
 サンヨは足を真墨の頭に乗せる。
 そして、そのまま重く圧し掛かり――

「うわぁぁぁっっっっぁ」

――ベキリと小気味よい音を響かせ、そのまま頭を割った。


 足を赤く染まらせ、適当な場所へと腰を下ろしたサンヨに、金色のもやが降りてくる。
「ロン」
「よくやってくれましたね、サンヨ」
「ああ、お安い御用だヨ。だけど、良かったのか?当初の計画だと、しばらくサンヨは様子見のはずだったけどヨ」
「そのつもりでしたが、少し思い知らせてあげようと思いましてね」
 計画を順調に遂行させるため、参加者の中にサンヨという手駒を組み入れたものの、しばらくは参加者の自主性に任せるつもりだった。
 極限状態の中で、人間や怪人たちがどう動くか、非情に興味深かったからだ。今も計画の大筋には変更はない。
 だが、明石暁。彼の存在は計画の遂行の妨げになると、ロンは感じていた。
 彼と直接話したのは広間に対峙したときが始めてだが、わずかな会話だけで、明石が殺し合いに乗る男ではないということは容易に理解できた。そして、彼の思惑も。
 明石は自分を殺して、生き返らせろと言った。
 あの場で邪魔者だと殺すだけに留めていれば、願いを叶える力がないと見なされ、他の参加者に団結力を生むことになりかねない。
 かといって、殺した後、生き返らせたとしたらどうなったか。他の者はともかく、明石は怯みはしなかっただろう。
 それにあの場で言ったことは嘘ではない。生き返らせるにはそれなりの準備と時間がいる。
 それなら解決を急がず、じっくり策を練った方がいい。
 そして、ロンが考えた末の結論は、明石を排除するのではなく、彼を計画に組み入れること。
 逆に考えてみれば、彼ほどの男を落とすことが出来れば、計画の成功は間違いない。
 そう思いなおしたロンは彼の言うとおり、力の証明を行うことにした。
 自分に逆らえば、死ぬということを彼の近しい存在で理解させ、そして、願いを叶える力を持っていることを生き返らせることで証明する。もっとも生き返らせるのは真墨ではなく……
「ふふっ」
「?、どうしたヨ」
 真墨の死体の前で不適に笑うロンに、サンヨは不思議そうに首を傾げる。
「彼も運がない男です。明石の関係者でなければ、はたまたサンヨの近くにいなければ、もう少しだけ生きることができたかも知らないのに。
 そういう意味では逆に彼女は運がいい」
「彼女?」
 ロンはチラリと横目で何事かを確認すると、ニヤリと笑った。
「まあ、これでようやく面白くなることでしょう」
 ロンはぺろりと舌なめずりをすると、金色のもやとなり、その場から消える。
「ロンの言ってることはちっともわからないヨ」
 残されたサンヨは自分の力が戻るまで、その場で寝ることを決めた。


「あいつはやばすぎるわ」
 木々に身を隠しながら、バンキュリアは空を滑空する。
 身体が急激に軽くなり、空中高く弾き飛ばされた時は驚いたが、考えてみれば、自分には翼があった。
 なんとか体制を建て直し、隙あれば襲い掛かろうと、舞い戻って見れば、そこにはサンヨと名乗る怪人がボウケンブラックと戦っていた。
 そして、告げられた首輪の効果。粉々に砕け散ったボウケンブラックの頭。現れたロン。
 ロンは明らかにこちらに気がついていた。とてもじゃないが、まともに戦って勝てる気がしない。
「どうしましょう。頼ろうにも他にインフェルシアの出身はいないし、勝ち抜こうにもこの装備じゃ」
 バンキュリアの手に握られるのはライフルのみ。弾にも限りがある。
 これからどうするべきか、バンキュリアは途方に暮れる。
 すると、突然身体が痙攣したかと思うと、バンキュリアの身体が二つに割れた。
 当然、重力に従い、地面へと落下する。
「これがあいつの言ってた時間切れ~」
「いった~い」
 呑気な声を上げるナイとメア。だが、内心はそんな声とは裏腹に恐怖に支配されていた。

【伊能真墨 死亡】
残り40名


【名前】明石暁@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:不明
[状態]:不明
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
第一行動方針:?


【名前】ロン@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:不明
[現在地]:広間(マップ外)
[状態]:健康。
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
第一行動方針:願いを叶える力があることを参加者に明示する。


【名前】バンキュリア@魔法戦隊マジレンジャー
[時間軸]:Stage18(ブランケン死亡)後
[現在地]:C-8森林 1日目 深夜
[状態]:多少の打撲。ナイとメアに分離中。2時間一体化不能。
[装備]:一つ目のライフル銃@魔法戦隊マジレンジャー
[道具]:予備弾装。その他、支給品一式。
[思考]
第一行動方針:ロンから距離を取る。その後の行動については特に定めていません。
備考
  • バンキュリアは首輪の制限を知りました。
  • 予備弾装に催涙弾や消滅の緋色が含まれているかは後の方にお任せします。


【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:C-8森林 1日目 深夜
[状態]:能力発揮済。2時間戦闘不能。
[装備]:なし
[道具]:未確認。
[思考]
第一行動方針:ロンの指示に従い、しばらく様子見。

備考
  • 伊能真墨の支給品はスワン製防弾チョッキ@特捜戦隊デカレンジャーでした。
  • 真墨のディパック、アクセルラー、その他諸々は真墨の死体と共に置き去りにされています。


(2008/02/25(月))

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最終更新:2018年02月11日 00:49