災魔とニンジャ ◆i1BeVxv./w



 その男は異様な姿をしていた。
 金色の体躯に、蝙蝠の翼。禍々しい角と鋭利な牙を持ち、胸には巨大な怪物の顔が鎧のように鎮座している。
 まるで悪魔の如き容貌だ。
 いや、その言葉は正しくない。彼こそが悪魔。
 災魔一族と呼ばれる悪魔たちの長にして、冥王の名を冠する者。

『ジルフィーザ』

 それが彼の名前だ。
 彼が門を潜り抜けると、そこには砂の荒野が広がっていた。
 ジルフィーザは早速、もたせれたディパックの確認を始める。
 まず彼が手にしたのは地図。それを使い、自分のいる場所の特定を始める。
「Gの10あたりか」
 次にジルフィーザは参加者名簿に眼を通し始めた。
 彼が知る名前はただ一人。だが、彼にとってその名前は重要な意味を持つ。
「ぬぅ、やはりドロップの名が」
 ジルフィーザはその事実に危機感を覚える。
 ドロップとは彼の弟の名前だ。彼には兄弟が3人いるが、その末席にいるのがドロップだった。
 竜族の血を引き、炎を操るドロップがそう簡単に殺されるとは思えない。だが、何分ドロップはまだ赤子だ。
 それに広間に集められた参加者たちはほとんどが人間だったが、中には人外の者も存在していた。
 獣魔のように、災魔と同等の力を持っている一族が混じっていないとも限らない。
 むしろ殺し合いをさせるぐらいだ。実力的に同等のものを集めているのが自然だろう。
「探さねばならん。一刻も早く。そして、ロンを殺し、ここから脱出する!」
「それ、ミーに手伝わせてくれないかい?」
「誰だ」
 突然、後ろから声が聞こえたかと思うと、砂が盛り上がり、緑色をした弾丸が飛び出してくる。
 緑色の弾丸は空中で体制を整えると、ジルフィーザの正面へと舞い降りた。
「先程から何者からの気配がすると思ったらお前か、シュリケンジャー」
 十字手裏剣型のゴーグルに緑色のスーツ。そして、金色の鎧を纏ったその姿はジルフィーザが告げた通り、天空忍者シュリケンジャーだった。
「ヘ~イ、自己紹介する間もなく、ミーの名前を知ってるなんて、ミーも相当有名人だね」
「馬鹿を言うな。自分の前に名前を呼ばれた奴の顔ぐらい覚えておるわ。特にお前は私が門を潜る直前に呼ばれたからな」
「どうりで。ミーが支給品を確認する間もなく現れたわけだ。すると、ユーは白鳥スワンさん?」
「ジルフィーザだ」
 シュリケンジャーとしては場を和ませるジョークのつもりだったのだが、クスリともされない上に即答されては立つ瀬がない。
 気を取り直し、シュリケンジャーは本題に入る。
「コホン。ところでジルフィーザ、話しは聞かせてもらったよ。ユーは探し人がいるようだし、殺し合いにも乗っていない。
 ミーもそうさ。そこで相談だが、ミーと組まないかい?」
「結構だ」
 ジルフィーザはまたも即答すると、もう用はないとばかりに歩き出した。シュリケンジャーの横をスッと素通りする。
「ウェイト!人探しなら、人数が多い方が有利……」
 引き止めようとするシュリケンジャーに突きつけられる杖。杖の先端では鋭い刃が光を放っている。
「人間の手など借りるつもりはない。わかったらこれ以上話しかけるな。今はお前の相手をしている時間も惜しいのだ」
「OK~、了解した」
「ふん」
 ジルフィーザは一笑に付すと、夜の闇へと消えていった。


「やれやれ、なかなかデンジャラスな相手だ」
 ジルフィーザが去り、溜息をひとつ。
 元々、すんなり交渉が締結できる相手とは思っていなかった。見た目で判断するのは良くないが、あの風貌はジャカンジャ側だ。
「まあ、脱出が目的みたいだし、あいつは放っておいてもいいかな。っと、確認確認」
 シュリケンジャーはジルフィーザが現れたために中断していた支給品の確認を再開しようとする。
 すると突然、シュリケンジャーの変身が解け、その素顔が顕になった。
「これは」
 シュリケンジャーは彼の主である御前様の命により、その正体を仲間であるハリケンジャーたちにも隠していた。
 そのため、彼は常に変身しているか、変装しているか、素顔を見せることだけは決してなかった。
 だが、今彼の素顔は荒野に吹く風に晒されている。
「変身には時間制限があるということか。そして、変身時間に制限があるということは、変身できるようになるまでにも時間が必要」 
 試しにシュリケンジャーへの変身アイテムであるシュリケンボールを使うが、シノビチェンジは行われなかった。
「結果的にジルフィーザにふられたのは良かったということか」
 シュリケンジャーはシュリケンボールを手で弄びながら、さて、誰に変装したものかと、思案するのであった。


【名前】冥王ジルフィーザ@救急戦隊ゴーゴーファイブ
[時間軸]:1話前
[現在地]:G-10砂漠 1日目 深夜
[状態]:健康。
[装備]:杖
[道具]:確認中
[思考]
第一行動方針:ドロップを探す。
第二行動方針:ロンを殺す。ただし、人間と組むつもりはない。


【名前】シュリケンジャー@忍風戦隊ハリケンジャー
[時間軸]:巻之四十三後
[現在地]:G-10砂漠 1日目 深夜
[状態]:健康。2時間変身不能。
[装備]:シュリケンボール
[道具]:確認中
[思考]
第一行動方針:とりあえず誰かに変装する。
第二行動方針:脱出のための仲間を探す。
備考
  • シュリケンジャーは変身に制限があることに気付きましたが、具体的な時間は気づいていません。

(2008/02/27(水))

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最終更新:2018年02月11日 00:51