独白 ◆Z5wk4/jklI



意識が浮き上がり、サンヨは浅い眠りから覚めた。
力が戻るまで、まだ一時の猶予がある。
それまで、時間潰しを兼ねて眠るつもりだったのだが、体は睡眠を欲していなかったようだ。

―――仕方ないネ。サンヨ、随分長く寝てたから―――


慟哭丸の封印の中、サンヨはロンの内で深い眠りについていた。
それから、どれ程の月日が流れたのだろう。
ふと気が付くと、あの忌々しい戒めは解かれ、サンヨはロンの前に立っていた。
「起きましたね、サンヨ。さあ、あなたにやって欲しい事があるのです」
そう告げるロンの顔は愉悦に歪んでいる。
「なあ、ロン、なんで封印が解けたヨ?」
いぶかしげに訊ねると、ロンは何も言わず皮肉げな笑みを浮かべてみせた。
永い時間の中でついに獣拳の流派が途絶えたのか、それとも慟哭丸の封印を司る者に何かあったのか。
・・・あるいはロンが何事か謀り、獣拳の使い手を黒く染めたのか、
その笑みからは、何通りもの答えが導き出されるようだった。
「いいけどヨ。何をすればいいヨ?」
「簡単なことです。いつものように私の手伝いをしてくれればいい。今から始めるゲームを潤滑に進める為のね」
ロンの背後には、多くの人間と、人間ではない者が横たわっていた。
「あいつらを殺すのか?ロン、お前がやった方がきっと早いヨ」
ロンは判っていないとでもいう様に、首を振った。
「そんな事をしても、なんの退屈しのぎにもならないでしょう。サンヨ、あなたには、ゲームの進行の妨げになる者を殺す役目を担って貰います」


それにしても、ロンのやる事はいつも回りくどい。
これと思う者には、必ず何かしらの仕掛けを施し、耳元に誘惑を流し込む。
そして、あの男のようにロンの思惑に逆らう者には、手酷く制裁を加える。
それも、必ず本人ではなく周りの人間に。
あの男が最も信頼を寄せていたであろう女は、もはやロンの手の中で踊る操り人形だ。
そして、奴の仲間の一人は見せしめの為にサンヨの手にかけられた。
その死体をサンヨは足先でつつく。
ひょっとして、恐れているのだろうか。ロンが?誰を?人間を? まさか。
サンヨは知っている。
ロンの思惑に従わなかった人間の落とした波紋を。
断ち切ろうと謀っても、断ち切ることのできなかった想いを。
何もかもかなぐり捨てた人間の持つ力を。
ロンの間近に控え、共に手痛い目にあわされた身にそれは実感をもって伝わってきていた。
だが、それがどうしたというのだ。

人間など、少し力を加えれば砕ける泥人形のようなものだ。
そう、例えばこんな風に。
頭を潰された衝撃でアクセルラーを取りこぼした手にサンヨは体重をかける。
サンヨの足元でそれはいとも簡単に踏み潰れた。
人など、こんなに容易に壊れるのだ。何を恐れる事があるだろう。
サンヨにとって、それよりも気になるのは、自分の首元で光る首輪だった。
着ける必要があるのかと訊ねるサンヨに、ハンデだとロンは答えた。
その方がスリルがあって楽しいと。
ロンが教えた通り、首輪は10分でボウケンブラックから戦う力を奪い、2時間の戦闘不能時間をサンヨに与えた。
さすがのロンも、即、命を奪う機能ぐらいはサンヨの首輪から外しているだろうが―たぶん、きっと、そのはず―
面倒な事、この上ない。
ロンの楽しみに付き合うのも大変だ、とサンヨは一つ大きな溜息をつくと、暇にまかせて、目を閉じた。

―――さあ、戦えるようになったら、どこへ行こうか―――


【名前】サンヨ@獣拳戦隊ゲキレンジャー
[時間軸]:ロンと一緒
[現在地]:C-8森林 1日目 深夜
[状態]:能力発揮済。1時間戦闘不能。
[装備]:なし
[道具]:未確認。
[思考]
第一行動方針:ロンの指示に従い、しばらく様子見
第Ⅱ行動方針:ゲームの進行の妨げになる者を殺す

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最終更新:2018年02月11日 09:00