高校生なのに、あたしは今キャンパスにいる。迷い込んだわけではなく、大学の授業を受けに来た。高校は、一番近いこの大学の教育学部と手を組んで「高大連携講座」なんてのをやっている。授業を通じて大学について理解を深めるのが目的のようだ。つまり、高校生が大学の授業を受けるということ。あたしは教育学部に入りたいとか微塵も思っていなかったけれど、担任がやけに勧めるから根負けした。「成績に加点されるし、いい機会だから」なんて言っても実際のところ、受講生が少ないと来年の受入数に影響が出るからだろうに。高校も頭数揃えるのに大変なんだ。とは言え、お兄ちゃんの通っているのがどんなところか、少し興味もあった。毎週学校終わりに急いで大学へ来るのが面倒ではあったし、少なからず緊張しているのに90分授業というのは慣れるまで辛かったけれど、今日で今年の授業は終わる。この年の瀬に忙しく歩く大学生の中、制服姿は人目を引く。視線を感じるこのアウェイ感、嫌いじゃない。高校より遥かに広い敷地を、ゆっくりと歩いて帰るのは楽しかった。
肝心の授業は先週小論文を出し、来年2月のテストも何だかんだでクリアすることが予想される。
肝心の授業は先週小論文を出し、来年2月のテストも何だかんだでクリアすることが予想される。
「今日は『学ぶ』ということについて、グループ内で話し合おう」
最後なのに厄介なの出してきたなあ。
近くの席の人と4人グループになった。こういう時高校生は色々策をめぐらせたりするのがめんどくさい。大学生はすんなり決めるけど。メンバーは高校生はあたし含め2人、女子大生2人。簡単な自己紹介の後、一人ずつ意見出したりした。「与えられた事を覚える勉強は高校までであり、積み重ねを元に大学から、自発的に問題を自ら決めて取り組む学びが始まる」という結果にまとまった。もう一人の高校生は知り合いだったけど話したのは今日が初めてだ。色々考えているみたいで熱く語っていた。そういう姿勢って凄いと思う。同じ年なのに、あたしはそういう対象もなく何となくここにいる。なんか申し訳無い。
話し合いのせいか、今日は時間が早く感じられた。使いもしない電子辞書やらを広げた机を片していると、先ほどの女子大生が一人、話しかけてきた。確か……綾瀬さん(年上を「さん」づけするのはぎこちない)。小柄ですごく可愛い。愛されキャラっていう感じ。
ほっぺちょっと赤いし。
頬染めし彼女は可憐なれ。
「あの、下の名前って『春』さん?」
「えっ……あ、はい」
「きゃ―素敵!いいなあ憧れちゃう。ごめんね突然。出欠確認の時から気になってたの」
キラキラした目かわい―。
「ありがとうございます」
「これ知ってる?」
綾瀬さんは手近な紙に「三人同日見、百花斉争艶。」と書いた。
「漢文ですか」
「そうそう。ある漢字を表すなぞなぞなんだけど、分かる?」
小刻みに顔を振ると、髪も小刻みに揺れる。
「え。分かんないです」
「『三人同日に見、百花斉しく艶を争ふ』って読むんだけど。あ、これヒントね。次の授業まで考えてみて」
宿題だされた。よって、こうして帰り道に歩きながら考えてみる。にしても綾瀬さんて、あたしより春っぽい。ピンクとか似合いそう。
なんで教育学部を選んだんだろう。
先生になるんだろうな。
なんで先生になりたいんだろう。
なんであたしになぞなぞ出したんだろう。
ふと見やると、お兄ちゃんがいた。あたしの足は駆け出して見慣れた背中にダイブする。かけた声は体と同時に着くから、あんまり意味ない。
まさか、お兄ちゃんとキャンパスを並んで歩けるなんて。
あたしにはまだ早いけど。
最後なのに厄介なの出してきたなあ。
近くの席の人と4人グループになった。こういう時高校生は色々策をめぐらせたりするのがめんどくさい。大学生はすんなり決めるけど。メンバーは高校生はあたし含め2人、女子大生2人。簡単な自己紹介の後、一人ずつ意見出したりした。「与えられた事を覚える勉強は高校までであり、積み重ねを元に大学から、自発的に問題を自ら決めて取り組む学びが始まる」という結果にまとまった。もう一人の高校生は知り合いだったけど話したのは今日が初めてだ。色々考えているみたいで熱く語っていた。そういう姿勢って凄いと思う。同じ年なのに、あたしはそういう対象もなく何となくここにいる。なんか申し訳無い。
話し合いのせいか、今日は時間が早く感じられた。使いもしない電子辞書やらを広げた机を片していると、先ほどの女子大生が一人、話しかけてきた。確か……綾瀬さん(年上を「さん」づけするのはぎこちない)。小柄ですごく可愛い。愛されキャラっていう感じ。
ほっぺちょっと赤いし。
頬染めし彼女は可憐なれ。
「あの、下の名前って『春』さん?」
「えっ……あ、はい」
「きゃ―素敵!いいなあ憧れちゃう。ごめんね突然。出欠確認の時から気になってたの」
キラキラした目かわい―。
「ありがとうございます」
「これ知ってる?」
綾瀬さんは手近な紙に「三人同日見、百花斉争艶。」と書いた。
「漢文ですか」
「そうそう。ある漢字を表すなぞなぞなんだけど、分かる?」
小刻みに顔を振ると、髪も小刻みに揺れる。
「え。分かんないです」
「『三人同日に見、百花斉しく艶を争ふ』って読むんだけど。あ、これヒントね。次の授業まで考えてみて」
宿題だされた。よって、こうして帰り道に歩きながら考えてみる。にしても綾瀬さんて、あたしより春っぽい。ピンクとか似合いそう。
なんで教育学部を選んだんだろう。
先生になるんだろうな。
なんで先生になりたいんだろう。
なんであたしになぞなぞ出したんだろう。
ふと見やると、お兄ちゃんがいた。あたしの足は駆け出して見慣れた背中にダイブする。かけた声は体と同時に着くから、あんまり意味ない。
まさか、お兄ちゃんとキャンパスを並んで歩けるなんて。
あたしにはまだ早いけど。