み子の民よ
目を覚ませよ
救いの時
満ちたり
なすべきことなさんがため
悔い改め
目さめよ
目を覚ませよ
救いの時
満ちたり
なすべきことなさんがため
悔い改め
目さめよ
今日は朝から音楽棟が開いているということなので、たまには公園ではなく、そこで歌を歌うことにした。
人少ないキャンパス。
耳を掠める冷風。
コートが、揺れる。
俺の好きな時間帯だ。自分の足音が聞こえるほどの静けさ。振動が足を伝わって、響く。
冬に向かってだんだん寒くなっていく。今朝、家を出るときにつかんだドアノブが冷たくて、驚いたのを覚えている。……いや、驚いてはいないか。その冷たさは、驚かせるほど神経に訴えかけてきたわけではなかった。ただ、したたかだった。
じんわりと、『冷』は染み入った。
「冬はな、朝と、夜だよ」
そんなことを、誰に言うでもなくぽつりとぼやいてみる。
冬は空気が澄む。すると、朝日はその太陽の光をそのままに大地に降り注いでくれる。夜は月。冴え冴えとした光が胸を射抜く。木々の影がくっきりと投げかけられる。
まるで切り絵の如くに。
――と、そこまで考えて、少し苦笑いをしてしまった。冬という季節のことを、思えば毎日考えているようだ。飽きもせず、よくやるよ。まったく俺は詩人だから仕方がない。詩人だったらこれぐらいしていてもしょうがないよな。まあ、自称なんだけどな。自称。
人少ないキャンパス。
耳を掠める冷風。
コートが、揺れる。
俺の好きな時間帯だ。自分の足音が聞こえるほどの静けさ。振動が足を伝わって、響く。
冬に向かってだんだん寒くなっていく。今朝、家を出るときにつかんだドアノブが冷たくて、驚いたのを覚えている。……いや、驚いてはいないか。その冷たさは、驚かせるほど神経に訴えかけてきたわけではなかった。ただ、したたかだった。
じんわりと、『冷』は染み入った。
「冬はな、朝と、夜だよ」
そんなことを、誰に言うでもなくぽつりとぼやいてみる。
冬は空気が澄む。すると、朝日はその太陽の光をそのままに大地に降り注いでくれる。夜は月。冴え冴えとした光が胸を射抜く。木々の影がくっきりと投げかけられる。
まるで切り絵の如くに。
――と、そこまで考えて、少し苦笑いをしてしまった。冬という季節のことを、思えば毎日考えているようだ。飽きもせず、よくやるよ。まったく俺は詩人だから仕方がない。詩人だったらこれぐらいしていてもしょうがないよな。まあ、自称なんだけどな。自称。
音楽棟につくと、やはりそこも閑散としていた。階段を上る自分の影が濃く見える。窓からはこの季節独特の優しい光が差し込んでいた。寒いが、暖かい。今頃、家の金魚たちもこの日差しにのびのびとしているのだろう。一号も、二号も日向ぼっこが好きだから。
金魚二匹。俺は彼らを溺愛している。名前は「トドロキ一号」と、「トドロキ二号」。俺の息子たちだ。ただの金魚とは言わせない。ましてフナといったやつは……どうしてやるかは考えておく。鱗の艶がほかの金魚とは違うのだ。金の中に気品がある。きっと、この光の中、輝いているのだろう。
自然と口が緩む。
だが静寂。
もうすでに練習室にはついていた。
防音加工の小さな部屋は、白く、古ぼけている。
所々崩れた、壁。
黒いピアノが、黙って俺を見つめていた。
鍵盤のふたは重く、冷えている。
こう考えると音楽家は凄い。こんなに冷えた楽器に熱情を注いで他人を感動せしめるとは。
鍵盤を押してみては、ぽろんと音が零れ落ちた。
さあ歌おうか。まずは声出しをして、それから楽曲へ。
もうすぐクリスマスが来るという。「来る」よりも「襲い掛かる」という表現をする人もいるこのご時勢だが、俺は、クリスマスが好きだ。美味しいものが一杯売られる。素敵な音楽も沢山流れる。ただ、雑音で騒がしくなることだけは、嫌いだけどな。
そんなクリスマスに歌われる歌を今から歌う。聖歌だ。クリスチャンでもなければ、誰かに聞かせたい訳でもないけれど、この歌は俺が好きなんだ。ただ、それだけの想い。それだけで歌う。
ああ、そうだ、妹が彼氏と一緒にクリスマスを過ごすらしい。親の離婚で生き別れになってしまった俺の妹。あんな親父に育てられてしまったけれど、いい相手が見つかって良かった。本当に、ね。
じゃあ、俺はそのことを祝して歌おうか。シスコンになっちゃうかな。まあ、良いんだ、俺は詩人だから。
自称だけどな。自称。
息を吸い込めば、肺の空気が膨張する。
冷える臓器。だが、そこに熱を投下せよ。
背筋を伸ばして、放て、この歌。
金魚二匹。俺は彼らを溺愛している。名前は「トドロキ一号」と、「トドロキ二号」。俺の息子たちだ。ただの金魚とは言わせない。ましてフナといったやつは……どうしてやるかは考えておく。鱗の艶がほかの金魚とは違うのだ。金の中に気品がある。きっと、この光の中、輝いているのだろう。
自然と口が緩む。
だが静寂。
もうすでに練習室にはついていた。
防音加工の小さな部屋は、白く、古ぼけている。
所々崩れた、壁。
黒いピアノが、黙って俺を見つめていた。
鍵盤のふたは重く、冷えている。
こう考えると音楽家は凄い。こんなに冷えた楽器に熱情を注いで他人を感動せしめるとは。
鍵盤を押してみては、ぽろんと音が零れ落ちた。
さあ歌おうか。まずは声出しをして、それから楽曲へ。
もうすぐクリスマスが来るという。「来る」よりも「襲い掛かる」という表現をする人もいるこのご時勢だが、俺は、クリスマスが好きだ。美味しいものが一杯売られる。素敵な音楽も沢山流れる。ただ、雑音で騒がしくなることだけは、嫌いだけどな。
そんなクリスマスに歌われる歌を今から歌う。聖歌だ。クリスチャンでもなければ、誰かに聞かせたい訳でもないけれど、この歌は俺が好きなんだ。ただ、それだけの想い。それだけで歌う。
ああ、そうだ、妹が彼氏と一緒にクリスマスを過ごすらしい。親の離婚で生き別れになってしまった俺の妹。あんな親父に育てられてしまったけれど、いい相手が見つかって良かった。本当に、ね。
じゃあ、俺はそのことを祝して歌おうか。シスコンになっちゃうかな。まあ、良いんだ、俺は詩人だから。
自称だけどな。自称。
息を吸い込めば、肺の空気が膨張する。
冷える臓器。だが、そこに熱を投下せよ。
背筋を伸ばして、放て、この歌。
聖なるかな
民すべてよ
神に感謝捧げよ
喜ばしき讃え歌を
この祝いのよき日に
民すべてよ
神に感謝捧げよ
喜ばしき讃え歌を
この祝いのよき日に
最初と最後に出てくる詩は、『聖歌第二〇一五番 み子の民よ 目を覚ませよ』の歌詞の抜粋です。一応、クリスマスソングらしいです。はあ……こんなんでいいんでしょうか(汗)