Ⅰ.内容
この政令は、
学校教育法に規定される【保護者の就学義務】、また【都道府県の学校の設置義務】のうち
養護学校に関する部分を、昭和54年4月1日から施行することを定めたものである。
①保護者の就学義務
これまで就学猶予・免除措置によって
教育を受ける権利を制約されていた重度重複障害児に対する教育権を保障する方向性を明確にした。このような重い障害をもつ児童生徒は、通常、養護学校に学籍をおき、養護学校教育を受けることになる。その形態は、施設併設養護学校での教育、養護学校の分校・分教室での教育、施設
訪問教育、在宅で通常の養護学校への通学、在宅で訪問教育などである。また、就学義務を猶予又は免除する際には、保護者から市町村の教育委員会に対して願い出が必要となり、その際、当該市町村の教育委員会の指定する医師その他の者の証明書等その事由を証するに足る書類を添えなければならない。
②都道府県の設置義務
地方公共団体に養護学校を設置する義務を課した。盲・聾教育については、1948(昭和23)年度から学年進行で
義務制が実施され、1956(昭和31)年度にその完全実施をみたが、養護学校については、事実上、棚上げされていた。義務制に至らないゆえ、国の財政的な援助(負担金及び補助金)を受けられないことが、地方公共団体による養護学校設置を困難なものにしていた。
Ⅱ.背景
本政令に至る前には、1956(昭和31)年
「公立養護学校整備特別措置法」の制定、1960(昭和35)年度から開始された養護学校整備費補助、そして1972(昭和47)年の「養護学校整備7 ヶ年計画」の取り決めという経緯があったが、こうした進展の背景としては、①「障害児」教育の充実を求める各種親の会や「障害者」団体等の運動論との関連、②諸外国における
特殊教育の影響が挙げられよう。
Ⅲ.考察と課題
義務制以降、特殊教育の対象となった重度・重複障害をもつ子どもに対する教育の形態・内容・方法は未だ検討課題が多い。こうした子どもたちは、発達が非常にゆっくりであり、従来の
障害児教育が目指していた治療教育・障害の克服という考え方を越えた指導の価値を見出さなければならなくなった。
また、障害児をもつ児童・生徒に対して教育機会が開かれたことは評価すべきことであるが、
義務教育の実施は、分離教育が果たして平等なのかという新たな問いを生むことになった。(あ)
最終更新:2013年03月10日 17:25